ウチのキャラクターが自立したんだが   作:馬汁

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第3章 おいでよ!ドラゴーナの村
12-ウチのキャラクターと俺の会合


 再びログインすると、真っ黒なローブで身を包んだ俺がむくりと起き上がる。

 肌は白く、触れば固い。そんな体は、今では俺の”操作キャラクター”だ。

 

 もしかしたら元に戻ってたりして、と思ったのだがガッカリだ。

 

 まあそんな事は兎も角、現在時刻は6時半。太陽も東側にまだ傾いているものの、街は明るく照らされている。

 そろそろケイに会いに行く時間だ。彼女の部屋に向かおうと、自室の扉を開こうとする。

 

 ……のだが、開いた先にはケイが立っていた。どうも、俺が廊下に出る必要すらなかったようだ。

 

「おはよう。ソウヤ」

 

「おはよう、どうしたんだ?」

 

「なんでもないよ。ただ、ソウヤの気配が全くしないなあって思ってた」

 

 ……ログインしてなかったからな。

 というか、ログアウトする前に鍵を掛けていてよかった。夜中留守にしていたのが知られれば、どんな疑いがかけられるか堪ったもんじゃない。

 

「でもついさっき気配が復活したんだよね。なんでだろ?」

 

「気配のことはよく分からないけど、寝てる間は気配が出てこないんじゃないか」

 

「……そうかも」

 

 なんとか誤魔化せて、内心ほっとする。 

 

 それはそうと、こちらの世界での就寝時間中、ログアウトしてからリアルの方で黒歴史ノートを読み込んだのだ。

 ケイに直接関わるような情報は無かったが、それなりの収穫はあった。

 

 とりあえずケイに室内へ入るように促して、適当な所に座らせる。

 

「……それじゃあ、まず最初に話したいことがあるんだ」

 

「おおっ、張り切ってますねー」

 

「それなりには。で、その事を語る前に一つ質問。ケイの知る”魔法”って何?」

 

「ほう、中々鋭い質問だ」

 

 言うほど鋭いか?

 と思いつつベッドの端にでも座る。立って話をするのはあまり好きじゃない。

 

「こっちの魔法には属性があって、合計6種類。火・水・雷・土。そして光と闇だね」

 

「……という事は、それぞれの属性に象徴があるんじゃないか? 確か、技術、生命、エネルギー、創造、そして時と空間だったっけ」

 

「流石。物知り」

 

「合ってたか。うろ覚えだったんだけど」

 

 ゲーム内時間と現実時間の速度差もあり、急いでメモにしたのだが、その紙はこの世界に持ち込めないので、完全に記憶が頼りだった。

 しかし、見て覚えるより書いて覚えるのが効率的なのは周知の事実。正解を当てることが出来た。

 

 そんな事はともかく、一つ確定した。ケイの世界は俺のノートが元になっている。

 その結論を自分の記憶に刻むと、属性に関する話の続きをする。

 

「こっちの方は属性がその6つじゃない。火・水・雷・風・土の5つだけ」

 

「風?」

 

「風だよ。……ああ、そういえば」

 

 思いつきのそれを、すぐ確認するために魔法一覧のウィンドウを開く。

 俺がマネキンになった影響か、魔法は一切習得されていなかった。

 

「な、なな、なにそれ!」

 

「はい?」

 

 ケイがなにやら声を上げたと思えば、その目線の先に、しっかりとこのウィンドウが捉えられていた事に気付く。

 このウィンドウは自分にしか見えないはずだ。しかしケイはそれを認識している。なるほど、彼女が驚くわけだ。

 

 しかし、このウィンドウを知覚したという事実よりも大きな問題がある。それは、彼女がそれに異常に興味を示していることだ。

 

「あ、ちょ、まて、止まれ!」

 

 もはや猫じゃらしに飛びつく猫だ。

 ウィンドウに触れようと手を伸ばすケイだが、もちろんそれに触れることは出来ず、勢い余って前のめりに倒れてしまう。

 そして、その倒れる先にはウィンドウを操作していた俺が居て……。

 

「びゃ!」

「あだっ!」

 

 そのタックルに耐えきれず俺はベッドに叩きつけられ、そしてその上にケイがのしかかって来る。

 

「っく」

 

 しかし、俺はその攻撃を甘んじて受ける人間ではない。

 考えるよりも先にケイの肩をつかむと、俺は思いっきり押しのける。

 

「ラッキースケベはお呼びでない!」

 

「わ」

 

 俺の渾身の力で押しのけられたケイは、今度は後ろの方へ飛ばされる。

 尻もちをつくケイを一瞥して、俺は倒れたまま天井を見上げる。

 

「いたた……」

 

「痛いのはこっちだよ。タックルするならモンスターにしてくれ……」

 

 俺が高校生だったら色々と盛り上がるところだった。今の俺には無意味だったが……。

 

 

 まあ、ともかく気を取り直して。

 

「で、ケイにはこのウィンドウが見えるのか」

 

 倒れている姿勢から起き上がると、俺はステータスウィンドウを開いて見せる。

 

「見える見える」

 

「なるほどね……」

 

 これは……考え方をほんの少し改める必要があったらしい。

 

 今までは、”俺のキャラクターがマネキンへと変化し、出現したケイにスキルやステータスを引き継がせた”と考えていた。

 しかしこの様子を観る限りでは、”ケイがキャラクターに宿り、そこから追い出された俺はマネキンのカラダに移った”と言う方が正しいらしい。

 

 そうでなければ、プレイヤーキャラクターの特権が何故使えるのかが説明つかない。

 いや、それでも他人のステータス画面を盗み見出来る事は出来ない筈だが……。

 

 まあ、それは良いか。

 兎も角、今の彼女が”プレイヤー”としてシステムが利用できるのであれば……、

 

「……ケイ、試しにこの画面を意識して”ステータス”と声に出して」

 

「え、なにそれ?」

 

「いいから、やって」

 

 彼女もステータス画面を自ら開くことが出来る筈。

 

「……”すてーたす”? てわっ、なんか出てきた!」

 

 予想通りだ。しかも、俺のウィンドウがケイにも見えるのと同様、ケイの出したウィンドウを俺が見ることが出来るようだ。

 俺はそのウィンドウを裏側から見ているから読みづらいのだが、パッと見ではエラーを起こす前のステータスと殆ど同じだった。

 

「すごーい! なにこれ? 能力の数値化?!」

 

「……落ち着け。管理人に隣人に迷惑をかけるなと言われてるんだ」

 

「あ、ごめん……。でもこれ、凄いね」

 

「そう」

 

 VR世界の中でなら兎も角、現実世界でこんなものが出せる様になったら、そりゃあ凄いだろうな。

 しかもそれを、生身でやってるんだから。

 

「……この話は終わりでいいかな? 話の続きをしたいんだが」

 

「えー、もうちょっと眺めてても良い?」

 

「いつでも眺めれる物だし、別にいいでしょうに」

 

「むう」

 

 はいそこ、フグみたいに頬膨らまさない。

 とにかく、話の続きをすることにした。

 

「もう分かりきっているような物だけど、ケイは異世界から来たらしいね」

 

「そうなるかな」

 

 彼女も当然かのように把握しているようだ。

 この世界がゲームである、とまでは気づいていないようだが……。

 

「……そっちの世界の方に、キンダム王国はあるか?」

 

「あるね」

 

「なら、良い」

 

 これで確認は取れた。彼女は異世界(黒歴史ノート)の住民だと、確実に確認しておきたかった。

 それじゃあ、次の話だ。

 

「次の話。ケイ、お前はお」

「あ、ちょっと待って」

 

 俺の言葉が、ケイの待ったにより止められる。

 

「一方的な質問じゃ、不平等でしょ?」

 

「……まあ、別にいいけど」

 

 たしかに不平等だ。

 この会合に時間制限なんて無いし、思うがままに話し合っても損はない。

 少なくとも、朝食の時までは。

 

「ズバリ、ソウヤはこの身体の持ち主だったんでしょ? で、私が乗り移った時、どういう因果かわからないけど、その姿になったと」

 

「……」

 

「どう、正解?」

 

「……………ば、せ、あ、え?!」

 

「ええ、どした?!」

 

 俺が言おうとしていた事と完全に一致し、まさかさっきポロりと話してしまったのではないかと思考回路がこんがらがんらんがががが。

 お、落ち着け。落ち着かないと大変なことになるのです。

 

 

「……ふう」

 

「お、落ち着いた? 落ち着いてくれたなら逆に訊くけど、今までバレてないって思ってたの?」

 

 冷静になってから、ケイの言葉を静かに聞き取る。

 完全に俺は、”自分の友好関係をある程度知っている友人”だと認識されていると思っていた。

 要するに、バレていないと思っていたのである。

 

 目を伏せて――と言っても瞳はないのだが、諦めたような雰囲気を纏って頷く。

 

「えー」

 

 ……そうか、今までバレてたのか。

 

 そういえば、レイナとケイの関係を、まるで当事者のように話していた気がする。

 これでは、”ある程度友好関係を知っている友人”という枠からテイクオフしているようなものだ。

 多分ブラジルまで飛んでたかも知れない。

 

「因みに、何時から気づいてた?」

 

「あのダンジョンから出ていった時の後」

 

 人形になって直ぐじゃん……。

 

 

 それから数分の間、静寂の中で俺は脳内の情報を整理していた。

 それを見ていたケイだったが、俺が整理を終了させたところで、ようやく口を開く。

 

「もう良い?」

 

「大丈夫」

 

「ならば良しっ」

 

 ケイの身体の元の主が俺だった、という事を彼女が知っているだけだ。

 ぼんやりとシミュレートしてみたが、特に問題は思い当たらなかった。多分。

 

「それで、俺は何の話をしようと……ああ、今のでその話は半分済んじゃったのか」

 

 ケイの身体はプレイヤーキャラクターであるから、ステータスやスキルを閲覧出来ると言う話だった。

 

「そのステータスが開ける様になる能力も、元はその身体に宿っていた物だからな」

 

「うん、それはだいたい察してる」

 

 ケイ向けの説明だが、理解してくれたなら良し。

 

「それで、だ。お前の居た世界に存在しない”風属性の魔法”も、今なら使えるはずだ」

 

「……ほー?」

 

「世界が違えば魔法も違う。こっちで俺が覚えた魔法も、今でも使えるはず」

 

 このマネキンで魔法一覧を開いても空っぽだし、ケイが持っている筈だ。

 

「まず、”メニュー”を開くんだ」

 

「メニューとな」

 

「これを意識しつつ、言葉にすると良い。さっきと同じ様にね」

 

 俺が手本を見せるようにメニューを開くと、ケイも続いてメニューを開く。

 

「そこから選択肢を選んでいって、魔法一覧の画面に辿り……あー、俺が指示するから」

 

 これが、古代人が現代技術の塊に触れたときの反応なのだろうか。

 選択肢がたくさん表示され、目が泳いでいると言うに相応しい様子であるのが見て取れた。瞳の無い今の俺には出来ない芸当である。

 

 仕方なく彼女の横につくと、指差しで選択を誘導させる。

 そこで再起動したケイが、それに従ってウィンドウを操作していく。

 

 3回ほど画面にタッチした所で、魔法一覧がようやく現れた。

 

「……これが、ソウヤが覚えてた魔法?」

 

「そうだ」

 

「……属性ごとに1個か2個って、少なくない?」

 

 まあ、少ないだろうな。

 でも今の俺のレベルじゃあ珍しくないはずだ。多分。

 

「とりあえず、それらの魔法なら君にも使えるはず」

 

「こっちの魔法ってどう使うの?」

 

 それは……どう言うべきだろうか。

 彼女ならシステム的な補助を受けるはずだし、他のプレイヤーと同じように使わせても大丈夫か?

 

「まず”詠唱”、そして発動。このツーステップで大丈夫」

 

「詠唱って……何を言えばいいの? 名前?」

 

「魔法を意識して、”詠唱”と口にするだけ。これは頭の中でやっても良い」

 

「ほー?」

 

「詠唱と言った後は、必要な詠唱時間がを満たしてから、魔法名を口にして発動する。この2つが出来れば普通にできる」

 

 サルでも、とまでは行かないが、簡単なものだ。

 カップラーメンにお湯を注ぐという詠唱を経て、3分待ってから発動する、という事だ。

 

「なるほど、今やっても良い?」

 

「部屋を壊さないようにするなら。そうするとウィンドアロー辺りが良いか」

 

 そう進言すると、彼女はその場を立ち上がって、集中するような雰囲気で目を閉じた。

 果たして魔法は成功するだろうか。と思って、呑気に座っている。

 

「……『ウィンドアロー』!」

 

 魔法を放つ。

 同時に緑色のオーラを纏った”矢”が、俺の顔面に迫ってきて――

 

「あ」

「づあっ」

 

 顔面に鋭い衝撃が刺さり、俺は思わず仰向けに倒れる。

 痛くはないが、ダメージが大きい。慌ててステータス画面を呼び出すと、HPが半分に減っていた。

 

 流石にヘッドショットはダメージ補正が高かったようだ。

 俺を狙うにしても、お腹かそこら辺にしてほしかった。

 

「ご、ごめん」

 

「……誤射には気をつけて」

 

 これ、朝食を食べたら回復するだろうか。

 

 

 

 

 話し合いはまだまだ続く。俺は開きっぱなしにしている時計のウィンドウを横目に、ケイに更なる質問をする。

 まだ朝食までに時間はある。

 

「そういえばだけど、ケイは”自分の意思”でこの世界に来たのか?」

 

「だよ、光と闇の複合魔法でビューンって」

 

 世界を飛ぶ魔法か……。黒歴史ノートでは時を巻き戻したとあったが、やはりデタラメな魔法のレパートリーである。

 しかも、ダンジョンから帰還する時に使った転移魔法の事を考慮すると、”ケイの魔法”も問題なく扱えるらしい。

 

 しかし、そうか。

 自らの意思でこの世界にやってきた、と彼女が言うのなら、それ相応の動機があるのだろう。

 

「……もしよかったら、理由を訊いても?」

 

「……」

 

 すると彼女は口を噤んで下を向いた。言いづらい話らしい。

 俺も気まずそうに横を向くが、しばらくしてケイの様子に変化が現れる。

 

「まー、別にいっか」

 

 と言って、暗い雰囲気を微塵も感じさせない表情で顔を上げた。

 え、良いのか?

 

「あ、話す前に一つ質問。ソウヤは、ケイだよね?」

 

「………はい?」

 

 俺は俺だ。一時期”ケイを演じていた”が、しかし本質は俺のままだ。

 と格好付けて言ってはみたが、一体どういう意図の質問なのだろう。返答の内容を決め兼ねていると、ケイが唸り声を上げる。

 

「うーん、これは説明しづらいというか、理解を得られる説明ができるか自信ないし……。その、君が怒るかもしれない」

 

 俺が怒る?

 勝手に黒歴史ノートを発掘されても怒らなかったし、相当の事がなければ怒らないと思うが。

 

「話してくれ」

 

「分かった……。私が世界を渡るために使った魔法は、要点だけ言えば、”異世界の自分の身体に、自分の魂を送り込む”っていう魔法なの」

 

「”異世界の自分”?」

 

 世界単位の話になるとわかりづらい。

 気になる単語を口に出してみて、説明を求めるが……、

 

「そう、そして”異世界の私”である貴方の身体が私の魂の送り先に決まって、邪魔な魂は押し退けられて、私が宿ったの」

 

「……はあ」

 

 それでようやく、相槌が打てる程度の理解だけは出来た。

 しかし上辺っ面だけの理解で、俺にはよく分からないとしか言えない。

 

「うーん、わかんない?」

 

「少し」

 

「……じゃ、結論だけ言う。私は、ソウヤの人生を奪うのを承知でこの世界に来た」

 

「……そうか」

 

 ケイが言わんとする事を理解するが、なんとも思わない。そもそも俺の人生は奪われてないし、奪われたのはキャラクターだけだ。

 これはゲームだ。ゲームの中の人生を乗っ取られたところで、どうとでもなる。ましてや大したレベル上げなどしていないし、レアアイテムなど何も持っていない。

 

 そんな”キャラクター”の人生を乗っ取ったところで、俺は何も気にしない。気にする余地がない。

 この姿になったばかりの時、ダンジョンの中では多少取り乱したものの、今になって落ち着いて考えれば、それは大したことじゃなかったと気づいたのだ。

 

 だが、彼女はそうは思わないだろう。彼女にとって、この世界が現実なのだ。

 この世界の俺達は、キャラクターではなく、生きる人間なのだ。

 

「私は、貴方の人生を奪いました」

 

 故に、彼女はこうして謝るのだろう。

 

「ごめんなさい」

 

「……その謝罪は受け取る、人生奪われたって感じはしないけど」

 

「え、そうなの?」

 

「まあ」

 

 とは言え、彼女だけ腹をくくって告白したのでは不平等だ。

 ここは空気を読んで、俺も何か告白するべきだろうかと考える。

 

「……よし、今度は俺が衝撃の告白をするターンだ。心して聞いてくれ」

 

「え、ターン? そんな話だったっけ」

 

 まあまあ。

 と言っても、俺が知っている事はこれしかないな。

 

「俺、実はk」

「お早うございます、ケっちゃん!」

 

 突如ババンと扉が開かれ、そこから人が現れる。

 

「わ!」

「んなっ」

 

 二人の話し合いにヒビを入れるように割り込んできたのは、背の小さい魔法使い、レイナだった。

 

「あ、鍵閉め忘れてた」

 

 小声で呟く俺だったが、それを聞き逃さなかったケイは俺をじっと睨んだ。

 まあ、俺のミスだよな。

 

 しかし不幸の中の幸運か、俺はローブを着たままであった。

 別にバレても不都合は無いかもしれないが、言い訳をするのがとても面倒だから、そのまま身体を隠している。

 

「え、えっと。おはよ、よくこの部屋だって分かったね」

 

「はい! 食堂にもケっちゃんの部屋にも居なかったので、もしかしたらと思って来たんです!」

 

「そうなんだ……」

 

 とても気まずいような雰囲気をまとって、彼女は弱々しく返事する。

 一方俺は、レイナが扉の前から離れるのを見計らう。

 

 目をキラキラさせてケイに寄っていくレイナだが、彼女は随分とケイに懐いているらしい。

 なら、都合が良い。

 

「よし、行くか」

 

 俺はさっさとフードで顔を深く隠しつつ退室することにした。

 

「あ、ちょっと待ってよソウヤ!」 

 

 待ちません。

 

「そう言えば、ソウヤさんとケっちゃんは、一緒の部屋で何を……あ、ごめんなさい。質問するべきじゃなかったですね」

 

 違います。

 

「いやっ、そういうのとは違うってば! これは今後の活動について意見交換しててさ……」

 

 兎も角、ケイがレイナに足止めされている間、俺はささっと離れていった。

 

 ……そういえば、ケイがこの世界に来た”方法”は聞いても、”理由”は聞いていなかったな。

 まあ、良いけど。

 

 

 

 

 自室から脱出して、一足先に食堂の方へ降りていく。

 俺の特殊な格好のせいか、階段を降りる途中で視線が集まっている気がした。

 

 まあ、仕方ないか。

 ため息を吐き、階段を降り切って食堂の床に足をつけると、目の前に立ちふさがる人物に思わず足を止める。

 

「管理人……?」

 

「明日、ソウヤさんの当番、よろしく」

 

「当番?」

 

 管理人が向こうを指差すから、その方を見てみると、そこには壁に掛かった当番表があった。

 そして思い出す。この宿は、宿泊客が当番制で朝食を作るのだと。

 

 宿のルールだと言うのなら甘んじて受けるが、もう少し気を使ってくれはしないだろうか。流石に部屋を借りた日の2日後は無いだろ。

 しかし、そんな俺の不満を知ってか知らずか、管理人は逃げるようにカウンター向こうの扉へ入っていった。

 

 俺は追いかけることもせず、俺に集まる目線に込められた物が”同情”のそれに変化したのを感じながら、黙々と席に付いた。

 

 

 

 因みに、今日の朝食は脳筋戦士のドワーフによる肉の丸焼きであった。

 パンやお米にとても合う味だったと思う。

 

 あと、口が動くマネキンで助かった。

 でもこの身体どうなってんだ俺。鏡があったら、食事している自分の姿を見たい所だった。

 ケイも同じような事を思っていたのだろう。遅れてやって来た二人組は別の机で朝食をとっていたのだが、その二人のうち片方、ケイがチラチラとこちらに視線を送って居るのを俺は見逃さなかった。




なんだこの回は、つまらんぞ!
まあ、新章のプロローグということで。

補足「キンダム王国」
黒歴史ノートの中に出てくる王国。多分、もう二度と出てこない。
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