ウチのキャラクターが自立したんだが   作:馬汁

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18-ウチのキャラクターと俺のトカゲ狩り

 足跡を辿って結構経ったか、大体20分の間森の中をずっと歩いていたが、突如としてケイが立ち止まる。

 

「敵、向こう」

 

 指をさす方向を見る、よく分からないが、ケイがそう言うのなら居るんだろう。

 いくら目を凝らしても見えない姿を捉えるのを諦め、ケイのほうに目線を移す。

 

「リザードって言葉通じるかな?」

 

 小声で言われるが、俺は少し悩んで。

 

「分からない」

 

 ドラゴーナは拠点を聞き出そうとしていると聞いたが、言葉が通じるとまでは聞いていない。

 モンスターだから言葉が通じないかもしれないし、知的生命体だから言葉が通じるかもしれない。

 

「そっか、じゃあ一回だけ試そうか」

 

「尋問するのか?」

 

「そ。後ろからこっそりと……」

 

「……頑張れ。俺はここで待つ」

 

 俺には隠密行動する様なスキルも技術も知識も無い。

 付いて行っては足を引っ張るだろう。

 

「何かあったら私を呼んでね」

 

「了解」

 

 特に問題は起きないだろう。

 手身近な木の根元に腰を下ろして、気配を消しつつあるケイの後ろ姿を見送った。

 

 

 ケイを見失ったところで、俺は座ったまま後頭部を木に預ける。

 ぐったりとした俺の視線は上を向くが、丁度この木が太陽光を遮っていて、あまり眩しくない。

 

 どれぐらいしたら戻ってくるんだろうか。

 もしケイが敵に見つかりでもしたら、すこしぐらいの戦闘音がこっちにも聞こえるだろうが……、

 

「……そんな事はないか」

 

 確信して言える。

 リザード一体ぐらいなら、きっと剣をズバっとやって終わりになる。

 

 特に心配する必要もない。眠ってしまう勢いで気を休めても問題ないだろう。

 いや、本当に寝るつもりはないが……。

 

【ピロピロン】

 

「……ん」

 

 メール? 

 母からだろうか、無言でシステムメニューを呼び出し、メールを開く。

 

 送信者:レイナ 件名:無題

『何か欲しいポーションとかありますか? よかったら作った分をケっちゃんにおすそ分けします! o(>▽<)o』

 

 ああ、レイナか。顔文字まで付けちゃって、相変わらず女の子してるな。

 とは言っても、ポーションを買ったばかりだし、なにも足りないものなんて無いけど……。

 

 ……。

 

 

 ……あれ? 

 

「……んなっ、ええ?!」

 

 なんでケイへのメールがこっちに来てるんだ?! 

 まさか、何かの手違いで送り相手を間違えたワケじゃないよな! 

 ああ、そうか! これはバグか。というかバグだな! そういえば俺自身バグの塊の様なもんだし! 

 

 そう、バグ……バグなら……うん。

 

「どうすれば良いんだこれ」

 

「どうしたの?! ……って、無事じゃん」

 

「あ、ああ」

 

 さっき大声だしたから、急いで戻ってきたのか。ケイは本当にやさしいなホントウに……。

 目線をあげてケイの方を見ると、心配そうな眼差し……だったのが見えた。

 

「さっき少し……ってなんだそれは?」

 

 ケイの後ろにリザードがぶっ倒れていた。

 いや、ぶっ倒れているというよりは、引き摺られていたというべきか。リザードの意識は失われているようで、ぐったりしている。

 

「リザードだよ」

 

「いやそれは分かるけど」

 

「そう? まあ、何事もなかったなら別に良いんだけど。そういえば、さっき変な音が聞こえなかった?」

 

「変な音?」

 

 なにか物音でもあったんだろうか。メールに夢中で気づかなかったが。

 

「うん、なんかピロピローって」

 

「ピロピロン?」

 

「うん。聞いたこともない音だった。新種の鳥でも居るのかな?」

 

 見当違いなことを言うケイに、俺は指をさして言う。

 

「……それ、メールの通知」

 

「めーる?」

 

 聞き慣れない通知音で気付いてない様だが、彼女も何かメールを受信したらしい。

 システムメニューの操作に慣れていないだろうし、手伝った方が良いだろうか。

 

「システムメニューの機能の一つ。やってみて」

 

「あ、うん。『システムメニュー』」

 

 続けて、現れたメニューを操作し、それらしきものを探るように操作している。

 少しぐらいは慣れているのだろう。少し戸惑いを見せていたものの、メールを開くことに成功した。手伝いはいらなかった。

 

「これは……手紙?」

 

「そんな感じ。運ぶ人も要らないし、盗まれることもない手紙だ。しかも、書いた人が送ってから一瞬で届く。で、ピロピローは届いたのを知らせる音だ」

 

「おー、異世界凄いね」

 

「驚かないんだな……ってそのメールは!」

 

 俺の方に届いていたのと同じ内容じゃないか! 

 彼女が展開しているウィンドウを裏側から見ているが、間違いない。文章はさっき俺が見たものと同じだった。

 

「どうした?」

 

「いや、それ……っ」

 

 途中まで言いかけて、口を閉じる。

 なにか言っても、”現実”としてこの世界を生きている彼女には通じない。

 

「ええ……と、気にしないで、どうぞ読んでくださいな」

 

「えー」

 

 俺の変わり身に戸惑うケイ。言っても本当に仕方ないんだ、これは。

 

 

 

「……なるほど。ポーションってどれぐらい残ってる?」

 

 俺の挙動不審を気にする様子もなくメールの内容を読み終えたケイだが、ふとこっちに問いかける。

 

「体力ポーションが7つ、魔力が6つ。というか買ってから全然使ってないな」

 

「そっか……」

 

 一応、異常状態を治癒するポーションだったり、一時的にステータスを倍率で上昇させるポーションがゲーム上に存在するが、それは持ってない。

 それをレイナに頼んでも良いかもしれないが……。

 

「というかそのリザードはどうするんだ」

 

 先ほどから地面にぐったりとしている一体のリザードの事だ。もう尋問は終えているんだろうか。

 

「ああ、尋問はここに戻ってくる前に終わったよ。聞き出した直後にソウヤの声が聞こえたからね」

 

 そう言って、彼女が手にした剣でリザードの喉を刺した。

 光となって散る様子を見ながら、俺が持つ懸念を口に出す。

 

「嘘だった場合は?」

 

「嘘でも問題無い。森を焼き尽くせばいいし」

 

「おい」

 

「冗談」

 

 それはシャレにならない冗談だ。止めてくれ。

 これはゲームだし、そもそも木が燃えたりしないかもしれないが、それはそれだ。

 

 片手で頭を押さえつつ、歩き出すケイに付いて行く。

 

 

 ・

 ・

 ・

 

 

「……自分で言うのはアレだけど、守りながら戦うのは大丈夫なのか?」

 

「守りながら……まあ、守るために力を付けたんだし、それぐらいはね」

 

「”恋人”の事か」

 

「うん、私が女の子になって、二つ目の人生を始めた理由」

 

 いや、逆だろう。

 

「二つ目の人生を始めて、女の子になったんだろ。因果が逆転してる」

 

「おっと、……てへっ」

 

「おい、元男」

 

「むむむっ」

 

 ……とは言え、彼女が自立する前は俺もノリノリで女の子してたからな。人のこと言えない。

 

 

「そういえば、ねえソウヤ」

 

「なんだ」

 

「君の前世の”恋人”、どんな感じだった?」

 

 はあ、俺の前世……? 

 

 ……ああ、そうか。彼女にとって、俺は”異世界のケイ”、もしくは”並行世界のケイ”として見られているのか。

 これは、また演技(ロールプレイ)しないとな。

 

「前世、あー……。その、無いんだ」

 

「え、何が?」

 

「……前世の記憶が無いんだ」

 

 ”記憶が無い”。そう口にして、”俺自身”の事を連想してしまう。

 

「無い……?」

 

「ああ、無い。辛うじて一部の記憶は残ってるが、無いも同然だ」

 

 “俺がケイとして”話を合わせながら、ぼんやりと虚空の記憶を掘り返す。

 けれど、今口にされた言葉を裏切るように、記憶の中からは何も出てこない。

 

 しかし、掘り返された”無”の中から、一つだけあるものが出てきた。

 

「……トラック、だったか」

 

「とら……なにそれ?」

 

 記憶喪失の原因だが、確かその車で轢かれたハズ。とはいえ、その直後に記憶が飛んだワケだから、“聞いた話”となるのだが。

 ついでに言えば、記憶を失う機会となった事故には二人目の被害者が居る。詳しくは知らないが、時々母がその人について話してくれる。俺と同じ年だとか、今もずっと意識が無いままだとか。

 

「あ、もしかしてそれが”彼女”の名前なんだ!」

 

「は?」

 

 そうして、今更になって気づく。無意識に名称を口にしたせいか、盛大な誤解をされてしまった。

 まずいな、俺は独り言が多い方じゃないと思っていたんだが。

 というかトラックが俺の彼女なワケがあるか。あるワケがない。

 

「悪いが、人名ですらないぞ……」

 

「なるほど」

 

「何がなるほどだ、アホ」

 

 俺がツッコむと、彼女は適当にごまかすように口笛をひゅーひゅーと吹く。

 ……しかも普通に上手いし。

 

 

 ふと、ケイが立ち止まる。それに対して地面をじっと見下ろしていた俺は、彼女に肩を掴まれるまで気付かずに歩いていた。

 

「あ……」

 

「前方に見えますのは、リザードの本拠地(仮)(カッコカリ)でございまーす。……って事だから、気をつけて」

 

「すまん、俺が前に出ると危ないな」

 

「大丈夫。どんなに危なくても、土魔法で閉じ込めてあげるから」

 

 ヤンデレかよ。

 

「安心して、私の土魔法はドラゴン100匹にも耐えるよ」

 

「逆に100ドラゴン分の力がないと、閉じ込められたときに脱出できないって事か」

 

「そうそう」

 

 こりゃ閉じ込められたら文字通り土葬されるな。怒らせないようにしよう。

 

「じゃ、ソウヤはここで待つと言う事で」

 

「おう」

 

 俺の返事に、ケイは瞬きを2度パチっとして見返してくる。

 そろそろ行かないのか、と不審に思っていると、突然足元からゴゴゴという音が振動と共に伝わってくる。

 

「え」

 

 そうして、視界の下から伸びてくる壁を唖然と眺める。

 

「30分間後か1時間後には戻っ───」

 

 耳に届いていた空気の流れる音は途切れ、ケイの声は中途半端に俺へ届いた。

 そしてハッっとした頃に、ようやく気付いた。閉じ込められてしまったのだ。別に怒らせてもないのに、閉じ込められてしまった。

 

 

 お、落ち着こう。慌てても正しい対処が出来得る可能性は低い。

 まずは観察だ。この、全方位を包む異常に硬い土を見る。

 

 これ、隙間無くないか? 完全に光が届いてない……と言っても、あのダンジョンの時みたいに何故か視界は利くんだが。というかこれ空気大丈夫か。

 このゲーム窒息とかいう要素無いよな? 水中ならまだしも、完全に閉鎖された空間で窒息する様な事は……。

 

 ……あるかもしれない。

 というか、あると仮定して行動しなければ、酸欠で倒れるリスクが重い。リスポーンしてこの空間から消えれば、より心配をかける可能性もある。

 

 ええと、酸素を消費しない状態って、とりあえず運動量が少ない方が良い筈……だよな? 

 そうすると睡眠状態に限りなく近い方が良いか。

 幸いケイの気遣いのお陰で、この()()は中はやや広くなっている。壁に上半身を預けるように寝れば、消費は少なく済むはずだ。

 

 そうと決まれば、酸素が無くなる前に実行だ。俺は壁の隅に座り込んで、壁に身を預け、目を閉じた。

 この密閉空間の中で、生き延びる為に。

 

 

 ・

 ・

 ・

 

 

「30分間後か1時間後には戻ってくるから、じゃあね」

 

 そう言ってソウヤを私の土魔法で()()した後、向こうの拠点の方向に進んだ。

 未だに目視できないけれど、”気配”がその存在を証明してくれる。

 

 もしリザードから聞き出した情報が偽物だとしても、さっきまでと同じ方法で余裕でたどり着ける筈だ。

 

「ま、多少のショートカットにはなったね」

 

 幸い、情報は嘘のものじゃなかった。

 ようやく村らしきものを見つけて、私は確信する。これがあのリザードの拠点らしい。

 

 しかしリザードの拠点という割には、どこか生活感が残っているように見える。さっき訪れたドラゴーナの村、カル村に似た空気感を想起させもする。

 きっと、普通の村を占領して、リザードが拠点にしたんだろう。

 

 ざっと見渡すと、あちこちに立つ櫓と武器を持ったリザードが視界に入る。本来あったであろう、村の穏やかな空気は、すでに無かった。

 

 すると、村を奪われた村人は……どうだろうな。皆殺しになっているかもしれない。

 本来の村の住民がドラゴーナだった場合、敵対しているリザードは彼らを生かさないだろう。

 

「うーん、一気に指揮官(ボス)を倒せば良いかもしれないけど、制御を失った戦力ほど予測出来ないものは無いし……」

 

 どうやって殲滅させるか、考える。

 私の目標は、村の奪還とか拠点の占領とかじゃなくて、ただリザードを殲滅させる、というものだ。

 だから、出来る限り敵を逃がしたくない。

 

 ……時間はかかるけど、警戒されないように一人ずつヒッソリ始末すれば確実で安全かな。

 そうすると上から目は邪魔だから、櫓の敵は最初に落とすとして……。

 

「『転移』」

 

 密かな声だけど、ちゃんと構築された魔力によって魔法が発動。視界が一瞬で切り替わる。

 そして、目の前のリザードの口を掴み、声が出ないようにしつつ喉を裂く。

 

「カァ˝」

 

 口からでは無く、喉から声が聞こえてくる。

 その声を聞き流しつつ、傍に置かれていた弓矢を拾って次の櫓へ転移する。

 

 それを数回繰り返し、全ての櫓を攻略したところで、早速地上の掃除に手を付ける。

 

 まず、櫓の真下に居るリザード目掛けて飛び降り、それを下敷きにしつつ着地。同時に剣を突き立てた。

 けれど、リザードはこの一匹だけじゃない。直ぐ近くに他のリザードが居たから、この場面を目撃されてしまった。

 

 まあ、”警戒されない”様に倒すとは言ったけれど、”見つからない”様に、とは言ってないからね。

 

 頭の中で『詠唱』と小さくつぶやき、魔法を発動する用意をする。

 それに必要な詠唱時間はかなり短く、0.5秒にも満たないタイミングで発動した。

 

「『ウィンドアロー』」

 

 この世界の魔法を発動、そして接近。こっちの魔法は頭を空っぽにしても放てるのが強みだ。

 だから……、

 

「『掴んで』」

 

 風の矢を放った直後に、私の魔法で土を敵の足に絡ませる。

 こうして、二つの魔法を同時発動できる。

 

 二つの世界の魔法を両方習得した、この私にしか出来ない芸当だと思う。

 場合によっては、私の他に同じようなことが出来る人が居るかもしれない。けれど、コレは大きなアドバンテージになるだろう。

 

 風の矢は喉に直撃し、リザードが助けの声を上げるのを遅れさせる。

 その内に弓に矢をつがえ、放った。

 

「……よし」

 

 リザードは倒れ、動かなくなった。

 血の代わりに立ち上る光と消えゆく死体を眺める。

 

 

 ……何時見ても不思議だ。この世界の生き物には、血が通っていないんだろうか。

 正直この様子を見ていると、この生き物達はモンスター達は、全て作り物なんじゃないかと、そう思ってしまう。

 

 きっと、この世界の生き物は元々そういうモノなんだろうけど……。

 

「……さ、早く済ませよう」

 

 リザードの気配が消えるまで、倒し続けないといけない。

 ソウヤには1時間後には戻ると言ったし、さっさと倒して回らないと。

 

 

 ・

 ・

 ・

 

 

 村が幾分か静かになった。気配も少なくなった。

 これで東半分のリザードは倒した。異変に気付き始めるリザードを順に倒していけば、この拠点は静かになる。

 

 けれど、そんなリザードがざわざわと騒ぎは始める。

 死体は残らないから、異変に気付いた様子ではなかった。それじゃあ、騒ぎ始めた理由は何んだろう。

 

 すると、遠くから聞こえてくる音に、空へ振り向いた。

 

「ドラ……ゴン?」

 

 驚いた、ドラゴンだ。しかも見たところ……まだ子供の様に見える。それにこっちへ一直線に飛んでいる。

 ドラゴンの奴隷や部下のような種族であるリザードの事だ、ドラゴンと何か関係を持っていてもおかしくは無い。

 

 ……と、思っていたんだけれど。

 

「ドラゴンダ、ドラゴンガ襲ッテ来タゾ!」

「弓矢ヲ持ッテコイ!」

「使エナイ奴は家ニ引ッ込ンデロ!」

 

 ……情報が間違っていたのか、もしくはこのリザードが普通と違うのか。

 何故だかドラゴンと敵対している様子だった。

 

 もしかしたら、ドラゴンにも二つの勢力があって、それと敵対している可能性だってある。

 後でキャットちゃんにでも訊いてみようか。

 

「うーん、静かなままの方が都合がよかったんだけど……」

 

 まあ、ドラゴンとこのリザードの戦いが落ち着くまで隠れてようか。

 そう思って、ソウヤの元へ転移魔法で向かおうとする……直前だ。

 

「ギァァァァァ!」

 

 ドラゴンの、若さの残る咆哮が村に響く。

 そして、ついにドラゴンは空から炎を撒き散らしだした。

 

「……戻ろう」

 

 騒動が過ぎた後に、生き残りを処理すれば良い。

 予定は変わったが、殲滅させる見込みは無くなった訳じゃない。ちょっとだけ危険になっただけだ。

 

 そうして、私は今度こそソウヤの元へ転移する。

 

「『転移』」

 

 視界が一転、木造建築の並ぶ場所から、不自然に四角い土の箱のある場所にやってくる。

 さっき私が作った()()()()()だ。作るときには魔法でちょちょいとやったのだから、崩す時も魔法でちょちょいっと。

 ほら、簡単に崩れたし、ちょっと気を付ければソウヤに土がかかんない様に出来……る……し? 

 

「……」

 

 なんという事だろう。

 崩されたシェルターの中には、力なく倒れているソウヤの姿があった。

 

 

「……え」

 

 頭が真っ白になり、私はソウヤの方へ駆け寄った。

 

「どうした、何があったの?!」

 

 叫ぶように言っても、ソウヤは起きない。

 まさか、毒とか病気とかじゃ……! 

 

 焦る心を押さえつつ、ソウヤを抱え上げながら転移の魔法を構築して発動。

 今度はレイナの部屋の前に転移して、扉の向こうから呼びかける。両手はふさがっていてノックする事はできなかった。

 

 

 ・

 ・

 ・

 

 

「レイちゃん、レイちゃん!」

 

「どうしましたって、ええっ?! ソウヤさんがぐったりして、一体何があったんですか?!」

 

「気を失ってるの! 私一体どうすればばば」

 

「気を?! あ、ああわわ、ええっと、状態異常回復のポーションは……ありました、気絶回復のポーションを飲ませます!」

 

「うん、お願い!」

 

 ふと、口に何かを押し込まれる感覚の後、喉に何かが流れていく。

 なんか、甘い。

 

「……お、起きません。わあああ、大変ですっ。気絶回復の効果が無いっていう事は、もしかしたら気絶する程の重い異常状態とかかもしれません!」

 

「それって大丈夫なの?! 死なないよね?!」

 

「あ、あわわあわ、慌てないでくだひゃいっ!」

 

「レイちゃんが落ち着いて!」

 

 一体何が起きて……。

 喉に流し込まれた液体の感覚によって、意識が僅かに引き上げられる。僅かに開いた瞳が、この騒ぎの様子を観察していた。

 

「とりあえず体力ポーションで延命して下さい! 私は使えそうなポーションを探して来ます!」

 

「分かった、飲ませる!」

 

 わけがわからない。というか、眠い──と、寝起きでボケた頭は思考放棄を選択した。

 俺は瞼を閉じると、気を失ったふりをして、喉に流れ込む液体を静かに受け止めた。




悪い意味での締まりのないオチ。
次の話で何とかなるので問題ない。

所で、「She」の彼女と、「GirlFriend」の彼女ってややこしいと思うの
こういう時は日本語が不便だと感じる
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