「……ソウヤ、落ち着いた?」
ケイに強引に肩を掴まれ、その直後に転移を使われたその後。
すぐ横にいる彼女は、俺を睨みつつ言葉をかけた。
「ごめん、取り乱した。まさか銃なんてものがあるなんて……」
「その銃ってヤツは、邪竜を目前にした農民みたいな反応をするほど恐ろしいの?」
現代人としては邪竜ほどでもないが、剣と魔法の世界が現代兵器チートされる
「銃は、弓矢やクロスボウと同じような遠距離武器だ。威力が比較的高い上に、使いやすさも段違いだ」
そして、俺が知りうる限りの銃の知識を共有した。物によっては連射出来ることや、弾数の限りについても、出来るだけわかりやすく伝えた。
「……なるほど」
説明を終えて、ケイは少し思考してから理解したと頷く。
「対策は?」
「物陰に隠れる。弾が尽きた隙をつく。俺が思いつくのはこれだけだ」
物陰に関しては、ケイが自由に壁を作れるから問題はなさそうだ。
「この盾は?」
ケイは盾を持っていなかった筈だが、と言おうとする前に、ケイは手に持った剣に岩を纏わせ始めた。そうして出来上がったのは、盾の形に成形された岩塊である。
「それ……確か前も使ってたな」
「うん。で、これは耐えられそう?」
「欠けるかもしれないが、貫通はしない筈。過信はしないでくれ」
「大丈夫、それでも十分」
あの様にいつでも盾を形成できると言うことは、欠けても岩を付け足す事が出来るのだろう。ケイが言う様に、貫通さえしなければ特に問題は無さそうだ。
「さーて、あの隊がどこに行くのか見ておきたかったのだけど、諦めよっか」
それは誠に申し訳なく思っている。
「それよりも、レイナはどうやって探すんだ?」
「空から速やかに見つけるか、或いは地上でゆっくりと這い回るか。……どっちが良い?」
その悪意のある表現は一体なんだ。空一択とでも言うつもりか。
「飛べるのか?」
「飛べると思った?」
「飛ばないのか」
「あたりまえじゃん。ただ……」
何を訳の分からないことを言っているのだろう、ケイは地面に剣を突き刺すという奇行を済ませると、俺の方にニヤリと微笑んだ。
「……?」
「空に転移する事ぐらいなら、造作もないさ」
直後、本日3度目の転移により送られた先は、大地から遠く離れた……空であった。
「っはぁ?!」
驚きのあまり、その場に屈み込む。手足を地面につけ、どうにか状況を理解しようとする。
「って、……地面がある?」
空を落ちている最中だと言うのに、俺たちは地面に足をつけていた。もちろん、それは大地の一部ではなく、平たい形をした岩だった。
10メートル程の幅の地面は、よく見ると鳥の形、或いは飛行機の様な形をしていた。
まさかこの地面もケイの仕業だろうかと、彼女がいる方へ向く。彼女は、飛行機にも似たこの地面の舵をとる様に、地面に突き刺さった剣の柄を握りしめていた。
いや、地面に突き刺しているのではなく、剣を中心に岩が接ぎ合わされたのだろう。
「どう言う事だ!」
「ドラゴンは、あの巨体をどうやって飛ばしてると思う?」
落下によって大きく風切り音が鳴る空間の中で、大きな声で問いを口にした。
「こんな状況で考えろと?!」
「はい不正解。ざんねん!」
今のは解答じゃない。とツッコミを入れようとする前に、ケイが余裕ある表情で解説を始める。
「答えは、大きな翼!」
「そんなので飛ぶわけが……!」
言葉を言い切る前に、“岩の鳥”は翼にあたる部位を動かし、羽ばたいた。その際に大きく揺れ、反射的に鳥の一部分を掴む。
よく見ると、風の向きが変わっていた。落下によって、下から上に流れて行った空気はすでに無く、代わりに前から後ろへと流れる風が肌を打ち付けていた。
「マジ……か?」
「マジマジ。飛ぶというよりは、滑空と言うべきなんだけどね。取り敢えずここから下を見ててくれない?」
急に変な転移をした上、この無茶振りだ。こんな高所から下を見るなど、腰が引けてしまう。
だが、ケイが思いつきで空に転移したり、そんでもって空の旅を経験したりするのは、なるべく早くレイナを探すためにやっていることだ。
……よし。
「了解」
アパート三階以上の高所はてんで駄目な俺だが、VR世界でならやってやる。スカイダイビングだってやってやる。
恐る恐る下を見れば、例の弾を打ち上げる兵器と、ゴマの様に小さく見える人影が見える。
兵器の付近、かつ森の中だとレイナは言ってくれたが、森の中は少ししか視界が通らない。何かもっと目印になるものがあれば簡単に見つけられるのだが……。
「……ケイ、ここから地上の魔力の様子とか見れないか?」
「無理」
流石に距離があると無理らしい。ならば次なる手は……。
「メールだ」
レイナに魔法なりなんなりを打ち上げてもらい、確認出来次第そこへ向かおう。
敵に魔法を目撃されるかもしれないが、俺らは飛んでいるから一足先にレイナの元に来れるだろうし、確保後は転移でどうにかなる。
「ケイ。レイナに目印になる魔法を出してもらう。確認次第向かってくれ!」
「はいはい。目印を見落とさないでね?」
考えを伝えつつ、さっそくメールを作成。目印を打ち上げて欲しいと言う内容で送信する。
それから目印を見逃さぬよう、しっかりと地上を見つめる。そこには敵の弾が打ち上げられているのみだ。
……しばらく地上に注意を向けていると、場にそぐわない物が視界に入る。
ドラゴンのように赤いシルエットだが、それはドラゴンのように翼を広げ、そして羽ばたいている。
……というか、見えたそのままにドラゴンだった。様子を見ると、なにやらあの兵器を攻撃しているようだが。
「あれは……」
「お、見つかった?」
「いや、ドラゴンだ」
ケイからの言葉に、俺は本来探すべきものを思い出し、気を取り直す。
するとちょうど、ドラゴンや兵器から少し離れた森の辺りで、なにかが爆発した。
「って、ドラゴンがここに?!」
「落ち着け、レイナの場所が分かった。あの辺りだ」
俺が指をさすと、ケイがその指の先を追ってその地点を見る。そこには、爆発による煙が未だに残っていた。きっと、あれはレイナの「マジックグレネード」だ。
しかし、ケイは銃を目前にした俺と同じような動揺を見せている。いや、さっきの俺よりはマシだろうが。
「でもドラゴンが……ああもう、わかった。私に捕まってて」
「転移するのか?」
「ううん。手早く行きたいのは山々なんだけどね」
そう言って差し出されたケイの左手に、俺は取り敢えず握っておく。
なんだか嫌な予感がする。万が一何かがあって俺が落下する様な事があれば、無理にでも道連れにしてやろうか。
「行くよ」
して、嫌の予感はすぐに的中してしまった。この鳥は急降下を始め、その上に乗る俺らは強風に晒される。落下中の特有の浮遊感よりも、強風で弾き飛ばされそうだった。
姿勢を低くするケイに習い、俺も頭を下げる。少なからず浴びる風の量は減ったが、どうしても怖い。人間は生身で飛ぶものではない。
「地上に近づいたらどうする?!」
このまま墜落するつもりなのであれば、死んででも脱出してやろうか。
当然と言うべきか、ケイは何も考えてないワケではない様だ。彼女は俺の方を向いて、微笑みを返した。そして無言で正面に向き返る。
「……本当に考えてるんだよな?!」
そして俺の心配とは裏腹に、森の中に突入しようとする寸前、直角に近かった降下角度は一気に引き上げられ、岩の鳥は森のすぐ上を滑空する。
「そろそろ降りる、掴まって!」
と言われても、とっくに俺はケイに掴まっている。もっと掴めというのか。
何をするかと思えば、岩の鳥が羽ばたくのをやめて、代わりに翼で俺たち二人を包んだ。
次に翼によって視界が遮られた前方から、木々がバキバキと折れる音がしてくる。
降りると言うか、これではただの不時着じゃないだろうか。
木をへし折るごとに減速し、遂に停止すると岩の鳥は形を崩してしまった。
「う……うぇ」
「見つけた!」
「え?え?」
確かに目印の真下にレイナが居たらしく、ケイがレイナに声をかける。
俺はと言うと、地面の存在に感動して跪いているところだった。いや、実の所は腰が引けて座り込んでいるだけなのだが。というか吐きそう。
「えっと、あの、今のって」
驚きを隠せないでいるレイナだが、それも仕方ない事だ。メールの指示に従った直後に、岩の鳥が文字通り森の木々を割って突っ込んできたのだから。
「”おい、こっちだ!”」
「うげ」
外国語が聞こえて、俺は慌てて戦闘準備をする。ケイはすぐに壁を作り、俺たちをその後ろに隠した。
「この手を!」
「”チクショウ、ドラゴンがこっちに来てるぞ!”」
転移を開始するのだろう、レイナは訳も分からないままケイの手を取り、俺もケイの手を掴む。知らない言葉の声がより近くなってくるのを感じたが、きっと大丈夫。
「よし、『転移』!」
・
・
・
「ドラもん、一体どうしたのだ?!」
敵部隊の気をひくため、上空の遠くで威圧をかけて居た我がペットだが、その様子がおかしい。
ホースに乗り、移動しながらも上空に目を向ける。
「グアアァァ!」
ドラもんの視線の方向に何かがあるのか、そう思ってそっちを見ると、まるで流星の様に急降下する
「こんな時に……!」
ドラもんは、初めての同族に対して極めて大きな反応を示している。
不都合な方向に向かう状況だが、ドラもんがああなるのも無理はない。
ドラもんは実の家族や、同族の所在でさえも知らないのだから。
「予定を早めるか……?ホース、目的地を変えるぞ!」
作戦の内容は簡単だ。ドラもんが彼らの射程外から威嚇してもらい、別の方向から私が狙撃するのだ。
そして、彼らが警戒どころではなくなったところに、爆弾を持たせたキャットに兵器を爆破してもらう。
本来、狙撃地点はもう少し遠くなのだが、今回はなんとか作戦を成功させるため、すぐ近くの場所で即座に狙撃を開始するのだ。
そう、『狙撃』だ。
この時こそ、シウム村で見つかったこの武器の出番だ。
「……よし、ここで良いぞ」
私の言葉に、ホースは減速して止まる。そこから降りてすぐに、武器を構える。
以前に入手した、この世界には存在しないはずの武器……ライフル銃の中に弾が入っているのを確認し、じっくりと狙う。
ステータス補正か、高い『器用』によって手ブレは抑えられ、正確に狙うことができる。
銃自体の精度も、この距離の狙撃に足るものだという所は確認済みである。
「目標をセンターに入れて、引き金を引く。これほど便利な武器は、正に文明の利器と言うにふさわしいな」
音で耳を貫きかねない程に煩く響く銃声の後に、私はレバーを一度操作してから構え直す。
文明の利器とは言え、生憎とスコープといった様な気の利いたものはなく、アイアンサイトなる照準器が付いている。あまり長距離射撃には向かない。
しかし、重要なのは敵の無力化ではなく、注意を引くことだ。幸いな事に、彼らはこの一発で”スナイパー”の存在を感じ取った様だ。すぐに身を隠そうとあちこちへ走り始めた。
「ふむ、そういえば、スナイパーには観測手なるパートナーが決まってついてくると聞く」
次弾の用意をする間に、敵は全員隠れてしまったようだ。狙うべき箇所が見当たらず、やや暇になった私はホースに話しかける。
ホースは馬であるが、私自慢のペットだ。多少のコミニュケーションぐらい、主婦の世間話の様に済ませられる。
「どうだ、ホースもやってみるか?」
「ブルル」
否定的な返事のそれを聞いて、私は残念そうに息を吐く。
「まあ、ホースがそういうのであれば諦めよう」
さて、囮目的である以上、一発だけ撃って終わりというのでは少々物足りない。
敵が隠れている場所に狙いを合わせると、一発引き金を引いた。
「……ほう」
まだ2発撃ったっきりだが、敵はコチラの位置に大まかな目星をつけた様で、撃ち返してきた。
しかし、敵が持っているのは総じて拳銃だ。しかも、なるべく身を出さないようにしながら撃っているから、精度もご愛嬌。ホースもそれが分かっているのか、足を畳んで頭を下げるぐらいで、逃げようとは一切しない。
「狙いづらいが、撃たないわけにはいかないな」
敵は撃つために最低限しか身体を出していない。つまり、銃を持つ手のみ、あるいはひょっこりと覗く頭部のみだ。それを狙い撃ちするには、かの有名な狙撃手の腕を借りなければならないだろう。
だが、出来ないものはしかたない。私はそのまま敵を狙って、撃つ。
銃弾は僅かに逸れ、敵が遮蔽物に使っている木に当たった。もう少し右だったか。
「む?」
と思ったのだが、その木の後ろから敵が苦しそうに飛び出てきた。どうやら銃弾が貫通し、敵に当たったらしい。
「なるほど、貫通か」
幸運の女神様だけは、敵よりも先に私の姿を見つけたらしい。いや、今はスナイパーと呼ぶべきか。
とは言え、そろそろこちらの正確な位置も割られた頃だろう。そろそろ移動する頃合いか。
「ホース、位置を変えるぞ」
激化する射撃から身を隠しながら、その場から離れる。ホースも立ち上がると、すぐにその場から逃げていく。
少ししても、敵は同じ箇所を、つまり今まで私が隠れていた場所を狙い撃ちしている。どうやら私が未だにそこにいるとでも思われているらしい。
次の狙撃地点に見切りをつけた所で、ふと爆音が響いた。それと同時、私の幻影を狙う銃声は途切れた。
「キャットだな、上手くやってくれたようだ」
隠れながら様子を見るが、兵器があった所には、地面を削り取った跡と兵器の破片だけが残っていた。
私への注意も多少薄れた様子だから、軽く狙って敵の方を撃ってやった。すると敵も思い出したようにコチラへ撃ち返してきた。そうだ、それで良い。
「よし、兵器は潰した。合流地点へ迎え。キャットよりも先にたどり着けたら、その手柄はホースの物だぞ?」
ホースが背負う鞍に跨がりながら、何気なく焚き付けてみると、ホースは負けん気を一杯に走り出した。
この子は競走馬でも無いのに、特に走りでの勝負事に拘る。中々面白い馬である。
「……っと、競うのに夢中になって、敵の真正面に出ないようにな」
「ヒヒン」
流石に競争好きにも程があるらしい。それだけはやらかさないと言わんばかりに嘶いた。
・
・
・
『捕虜獲得により、新たな情報を入手しました(情報レベル+40)』
『情報レベル:60
我が国、『パープ』に『加護』がある限り、決してこの銃を手放さない。貴国らに求めるのは、余りある恵みを内包する地。そしてこの地に生きる者が持つ『加護』である。それらを手放さないのであれば、我らは銃と加護の力を存分に振るってさしあげよう。~王城に送られた手紙の訳文~』
何が書きたいのか分からなくなってきました
テロップ通りに書いてるのですが
ケイのチートっぷりをソウヤが「お前マジやべえ」って言いながら物語を進めるのはデフォなんでしょうが
うーん?
それはそうと
実は、物語の中心人物としての「主人公」は二人なんだ。さあ、誰だろう
まあ、数秒で分かるよね
それはそうと
実は、物語の中心人物のカップリングとしての「ヒロイン」は二人なんだ。さあ誰だろう
まあ、数秒で分かるよね
それとそれと
次回のお話は来年かもしれないね。冗談だけど。いや、冗談でもないかもしれない。
こうでも言っておかないと、俺が「早くお話を作らないと」って焦っちゃうんだ。だから、時間を空ける
一度整理した方が、満足行く文が書けると思ってるから。
追記・たぶん眠気が頭にドンと乗っかってて頭がおかしくなってる。ワケわからん後書きはその所為。でも消す気はない。書き換えはする。した。