ウチのキャラクターが自立したんだが   作:馬汁

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幕間-俺の声

 ヘルメットの形状をした、VR空間に意識を運ぶ装置。

 俺はそれを、じっと見つめていた。

 

「……」

 

 何故これ程にVR装置に注目しているのか。

 以前からずっとあった疑念を、今改めて思考しているからである。

 

 向こうの世界では、何故かケイが居る。

 姿格好のデータは、キャラクリエイトの時点で俺が作成していた。しかし、他の情報は何処からやって来た?

 

 例えば、ヴァーチャルファンタジーに存在しない転移魔法。アレはケイが独自の研究によって生み出された魔法で、ゲーム内には存在しないはずだ。

 

 性格に関しても、『ケイの旅路』で描写されている方のケイと殆ど似ている。

 偶然の一致か、あるいはあの物語に関わる何かから引き出されたか。

 

 

 ……ここまで考えて、そしてもう一つの可能性に目を向ける。

 

『ケイはデータ的な存在ではなく、本当に別世界から転移して来た』

 

 なんて、馬鹿げた可能性だ。別世界なんて、存在するわけが無い。

 もし別世界が存在すると言うならば、人の手によって作られた仮想空間がそれだ。

 

「……」

 

 気を取り直そう。

 まず、あのVR装置の仕組みについて調べよう。

 

 スマホからインターネットにアクセスして、検索をかけ、あらゆるページに飛んで情報を探る。

 調べる前からすでに備わっている知識もあるが、それでは調べ事の役に立てることは出来ない。

 

 VR装置はヘルメットの形状をしているが、それは脳を包む為だ。

 ヘルメットが脳の信号を読み取り、仮想空間でのキャラクターを動かす。

 逆にヘルメットが脳に信号を送り、仮想空間から得られた情報を知覚させる。

 そんな役割を、この装置は担っている。

 

 しかしこの情報があっても、「だから何だ」止まりになってしまう。もう少し詳しく……。

 

 

「……!」

 

 しばらくして、俺が求めているような情報が載ったページを見つけた。

 専門的な知識が自前に備わっていないと、理解が難しいかもしれないが……。とにかく読まなければ始まらない。

 俺は、文章と図が並ぶページを、ゆっくりと読んでいった。

 

 

 ・

 ・

 ・

 

 

「~~」

 

 頭が痛い。

 なんて事だ、あまりの情報量に、俺は大半を理解できなかった。

 

 やはり大学を途中で降りたのがいけないのか、記憶喪失とその障害が数年続いたからと言って、卒業を諦めたのがいけなかったのか。

 

 むう……。

 

 ただ、情報は多少得られた。

 VR空間に意識がある間、現実の体が動かないようにアレやコレや対策している事と、障害者のリハビリ利用に効果的である理由。

 この2つはある程度理解した。逆に言えば他の事はサッパリだ。

 

 けれど……うむ、なんというか……。「だからなんだ」としか言いようがない。

 得られた情報に、ケイに関わる何かが含まれているとは全く思えない。

 

 俺は自身の頭の悪さに嘆いて、天を仰いだ。いや、天井を仰いでいる。

 

 

 そう言えば、と、このリハビリ利用に関しての情報を思い出す。これに関しては、俺も同じ事をやっていると言えないだろうか。

 足をうまく動かせない人間を、まず仮想空間に放り込んで、仮の身体で運動させるという一例を、ここでは挙げていた。

 それを繰り返す事で、現実の足も自由に動かせるようになる、と。

 

 ……もしかしたら、俺もゲーム内で沢山会話をすれば、何時かは現実でも喋れるようになれるのでは?

 と思って、「それは確かに」と自身の発想に頷く。

 

 しかし、数秒でそれは難易度が高い事に気付く。

 俺は確かに喋れるが、その声が伝わるのはケイだけである。

 

 ……誰もいない所で沢山独り言を喋る、という手もあるが、その手を進んでやる程精神は図太くない。

 そりゃたまに独り言を言うが、喋ろうと思って喋るものではない。

 

 はぁ、と声にならない息を吐く。

 そもそも医者からは、記憶が無いのと、声が出せないのは、同じ原因から起きている症状だと言われている。

 

 その原因とは、心的外傷……長ったらしい。

 簡潔に言えば、「トラウマ」。それが記憶と声を失った原因である。

 

 トラウマによって記憶を閉じ込め、それでも尚続くストレスによって声が出なくなる。と言うのが、医師の意見だ。

 

 

 普通に考えて、頭を強く打ったのが記憶喪失の原因だと、俺は思うのだがな。




トラウマを抱えた主人公、ここに参上。
さて、次回はまた別の章となります。こーごきたい。
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