ウチのキャラクターが自立したんだが   作:馬汁

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第7章 MECHA:BECOME FAMILY
48-ウチのキャラクターと俺の冒険準備


 新たなる冒険に向け、これまでとは違う武器や防具を求めた俺たちは、とりあえず馴染みのある工房へ顔をだすことにした。

 その工房の独特な外観は相変わらずだが、信用はできる。なんたって、ある魔法使いの友人の、その友人であるからだ。

 

 そう。ここはリーチェの(愛の)工房。レイナからは、この人のリアルでの性別は女性だと聞いている。そんな情報を提供しているからには一定の信頼を得ていると確信するが、わざわざこの人の目の前で、実際の性別に関して訊くのはあんまりよろしくない。当のリーチェが俺たちをどう評価しているのかはわからないのだから。

 

「すっかり有名人じゃねえか!」

 

「アハハ……」

 

「なんだあ、全く嬉しそうじゃないな?!」

 

 ……多分、悪い評価ではないと思うんだが。

 

 リーチェの言う通り、ケイはそう見られてもおかしくないような表情をしている。ケイは目の前の筋肉に恐縮しているのだ。その文字通りに。

 俺から言わせてもらえば、あれでも大分マシになっているような気がするのだが。

 

「弁当売りの少女をやってたかと思えば、今度はドラゴンスレイヤーってなあ! ハッハッハ!」

 

「ぷぁっ」

 

 ふむ、放心するまでの時間が多少伸びているな。やはりマシになって行っているようだ。

 リーチェが豪快に背中を叩いたりしなければ、もっと記録は出せていたはずだが。

 

 ……じゃなくて。今ケイに放心されたら困るのだが。これから装備を選んでくれなきゃ困るのだが。

 

「おい、ケイ。おーい」

 

「……」

 

 ああ、駄目だこれ。

 頭を掻いてから、仕方なしとケイの方を引いて安全地帯へ退避させる。出口に近いほうが精神的に安定するだろう。

 

「ううむ、お嬢さんはどうしたんだ?」

 

『実はケイ、立ちながら瞑想する修行をしてて。変なタイミングでも瞑想できるようにするのだとか』

 

「おお、流石は魔法剣士じゃねえか! 何時でも何処でも精神を統一することで、魔法の制御を確実にする……例え近接戦闘中でもと……!」

 

 そのつもりで言ったつもりはないのだが。まあ、そういうつもりとして受け取ったのならば良しとしよう。即興の作り話だし。

 突如居眠りする女性、とかいう印象がケイについてくるリスクに付いては、彼女に全て任せよう。

 

『今日は、ケイが剣の手入れをするために来た。ついでに装備の更新も』

 

「剣? ああ、あの。レイナから話は聞いているぞ」

 

 その剣とは、あの剣である。硬直しているケイの背中の鞘から剣を引き抜いて、リーチェに見せる。

 ケイ曰く、土属性の魔剣。魔種の剣、魔種化した剣とも。ケイがイツミと共にダンジョンを探索した際、手に入れたものだ。

 

「さてさて、早速見せてもらうぞ……確かにこれは、土属性の力が籠められている」

 

 ケイがこの剣を使う時、やや特殊な使い方をしているのは俺やレイナ等が知っている。

 剣に土を……岩なのか金属なのかは定かではないが、刀身を延長させるのは勿論、盾の形状に土を集めることで攻撃を防いだりする。

 その使い方の中で一番独特なのは……あの”岩の鳥”だ。

 

「話を聞いた限りでは、かなりの()()()()()されていると思ったのだが……」

 

『能力?』

 

「おう。今見た感じだと、こいつには土属性魔法の詠唱速度向上と、同じく土属性魔法の精度向上がそれに当たるな」

 

『分かるの?』

 

「これでも魔法特化の武器を扱ってるからなあ! だが聞く話と比べると、ちと能力の強度がしょぼいのだが……」

 

 大方、ケイの技量が高かったのだろう。別世界の技術を持ち込んだケイが引き起こす”非常識”、つまりこのゲームの世界において不自然な事象は、ほとんどレアアイテムの効果だということにしている。こうして勘違いするのも仕方ない。

 真実が露見すれば、ケイ自身の力に惹かれて面倒事が寄ってくるだろうが、最初から隠さないでいるよりはマシだ。

 

『別の装備品の効果』

 

「なるほどなあ! ケイのお嬢ちゃんはレアに恵まれているねえ」

 

 こういうカバーストーリーが積み重なれば、そういう話になるのも致し方ないだろう。よくよく考えたら、架空のレアアイテム目当てで強盗でも集まったりする可能性もある。

 やはり力というものは、面倒事の源だということだろうか。

 

「まあ良いぜ。思ったよりメンテは簡単に済みそうだしな。防具の方はいいのか?」

 

『一度大きく損傷したけど、簡単な手入れで十分だったらしい。今も新品に近い』

 

 その損傷というのも、ドラゴンとの戦闘で出来たものだ。ケイが器用に魔法を使いながら修復してしまったが。

 

「おーおー器用なこったねえ。この剣の手入れも自分でやりゃあ良かったんじゃないか?」

 

『必要なら製作者に頼む』

 

「餅は餅屋ってワケか。ハハハ! 確かに防具の方はあんま慣れねえし、こっちも楽でいい。……うし、今から取り組むが、新しい武器が欲しいんなら探してみな。こっちは数分程度で片を付ける」

 

 数分とな。装備品のメンテナンスというのはそんなに簡単にできるものなのだろうか。というよりメンテナンスという言葉は似合わないと思うのだが。やはりゲームだからその辺りは簡略化されているのか。

 しかしこのゲーム、現実に対して時間がかなり引き伸ばされるからか、広い世界の中での膨大な移動時間はヤケにリアルだったりする。お蔭で移動時間丸々を昼寝に費やしても余ったり等。少々不便な点があったりする。世界は広いより狭いほうが生成も管理も楽なはずなのに、そこを広くしてまでそうしている。

 だと言うのに、武器のメンテナンスとなると数分だ。せめて数時間じゃなかろうか。嗚呼、簡略化されるラインは一体何処にあるというのか。

 

 

 それはとにかく。

 

「ケイ、ケイ」

 

 このゲームの時間的部分に関するシステムについて考察するのは程々に、筋肉の無い平和な空間となったここで放心しているケイの名を呼びかける。

 

「あ、あれ? 私は何処?」

 

「何を言っているんだお前は」

 

「え、あ……ああ。うん、冗談」

 

 その反応で冗談とか言われても信用出来ないのだが。

 

「まあ良いけどな。なんか気になる物は無いのか? 今のうちに物色したほうが吉だ」

 

「ああ、わかった。……筋肉は?」

 

「お前の武器をメンテ中。感謝するんだな、勝手に剣を引き抜いて渡しておいた。大丈夫、筋肉菌が付いて戻ってきたりしないから」

 

「いや、筋肉嫌いだからって流石にそこまでじゃないから」

 

 そうだろうか。日頃の反応を見るに、筋肉が触れた物体はハンカチで拭いたりしてからじゃないと触れたくない的な感性を持っているのかと。

 

「あ、そういえば修復の料金は?」

 

「見てないのか? あれに書いてあるぞ。武器防具の修復は一定のライン(剣が折れる等の深刻な損傷)までは一律500Yだとさ」

 

「ああ、これ……気づかなかった。筋肉に注意が引き付けられてた」

 

「見惚れてたか」

 

「何を言ってるんだキミは」

 

 まあまあ。

 所でこの工房を選んだのはケイの方だ。メンテの為だけに来たわけではなかろう。態々嫌いなものを我慢してくる理由にはならない。そもそもメンテに関しては、俺が勝手にやった事なのだし。

 

「で、何を買いに来たんだ?」

 

「ああ、ちょっとね。売れたりしてなかったら、確かこの辺りに……あった、これだ」

 

「これは……」

 

 短剣か。小回りの効く武器だし、身の回りの作業に役立ったりする。某恐竜狩りのハンター達は、毎日お世話になっていることだろう。

 

「確かに冒険には必要だな」

 

「それとキミの護身用にね。弓矢じゃ近接戦闘時にどうしようもならない」

 

 いやあ。心配をかけてしまってこちらも申し訳ない。確かに近接戦闘で弱いのは否定できない。マトモなステータスの体があれば話は別なんだが。

 

「しかも見た所、魔術面で工夫されてるみたいだし……。というか、この工房の大半の売り物がそうだね。あの容姿で魔法に精通してるなんて信じられないんだけど」

 

「ああ、エンチャントの事か。 冒険者なら必須……なのかは知らないが、まあ便利な効果が付いてくるんだろうな。具体的な効果は分かるのか?」

 

「まあ分かるよ。これは水属性かな? 水属性はやり方次第と氷として扱えるようになるけど、こっちは普通に水っぽい」

 

「ほほう」

 

「へえ。魔力を込めて作動するのか、でも戦闘用じゃないねコレ。戦闘に使えないこともないけど」

 

「あー、戦闘用じゃないけど使えないこともない……?」

 

「うん、実践してみせたほうが早いか」

 

 ケイがその短剣を手に取ると、余った方の手からなにかを生み出す。泥水だ。ボールの形状に留められている液体に短剣を漬けてから引き抜くと、それだけで短剣は泥でコーティングされた。

 

「大丈夫かそれ? 商品だろ」

 

「大丈夫大丈夫。で、これに魔力を込めると……ほら」

 

「……おお」

 

 魔力を短剣に込めたと思わしきタイミングの後、何処からともなく水が短剣に纏わり付いて、短剣を中心に渦巻く。それを数秒程続けて、これまた水が何処かに消えていく。すると泥でドロドロだった短剣は、新品同様の姿に戻った。

 

「なるほど、綺麗になるのか」

 

「うん。血は綺麗に拭えるから血で錆びないし、使い方次第では水で摩擦を軽減しつつ皮や防具を貫通できる筈。まあ物によるけどね」

 

「なるほどなー」

 

 地味だけど便利なアイテムのようだ。言わば洗う必要のない包丁だ。なにそれ一家に一本欲しい。

 

「これから長く使う分には良いんじゃないかな。素材も作りも申し分ないし」

 

 ……なにが魔法の方が得意だ。とケイが愚痴をこぼす。ここの魔法職向きの杖とかも中々の代物だと素人目にも分かるが、物理職向きの武器も中々の物に見える。いや、素人だからそう言えるのだろうか。

 

「じゃあ、これ買うのか?」

 

「うん。量産されてもおかしくないぐらいの需要がある筈だけど、残っててよかった」

 

「いくら商品に需要があっても、店があの外観だからな……」

 

「あの外観だからねえ」

 

 

 

 

 メンテナンスの済んだ武器と新しい短剣を受け取り、支払いを済ませた俺たちはまた別の所へ赴いた。

 場所は街の中央に位置する市場。中々の騒がしさと人気に、俺達は二人揃ってローブにフードと、完全にダブル不審者なスタンスで歩いていた。

 

「やあ」

 

 ある時は、明らかにヤバげなオーラの漂うアイテムに囲まれた店の者に声をかけられた。

 

「ひっ」

 

 逆に俺たちの容姿に対して恐れる者もいた。

 

「お、なんだあの2人?」

 

 呑気に興味を示すプレイヤーらしき者も数人。

 

「……俺たち、目立ちすぎやしないか?」

 

「不満言わないの。私だって我慢してるんだから」

 

「ああ、わかったよ」

 

 俺1人ならともかく、2人揃ってこれだから目立ちに目立つ。ケイの方は腕を通す袖の無いものを着ているが、黒尽くめであるのはどちらも変わらないから、大した差ではない。

 これではご近所の学校に不審者情報が届くに違いない。2人揃って仲良く警察とお話は勘弁である。

 

 しかし、ケイは今やドラゴンスレイヤーな有名人。転移魔法やらを駆使し、単独でドラゴンを相手取る戦闘力を備えた彼女は、様々な所で話題に上っている。

 

 聞くところによると、転移魔法の利便性に目をつけた商会は、彼女を利用した、あるいは類似の能力を利用したビジネスを計画しつつあるとか。

 豊富な魔法、技術、底力に目をつけたギルドは、この()()()()()に協力してもらうべく行動しているとか。

 ここまでくると、不審者になってでも姿を隠すべきだとわかる。俺は文句を言わないことにした。

 

 そういえば、一部の人々の間で、断片的な情報からケイの姿を絵として再現しようとしている所があるらしい。

 ……一度あのページを見てしまったが、特徴は捉えてるのに絶妙にケイとして認識できない現状にあった。しかも、巨乳派や貧乳派で騒いでいたり、ツンデレキャラかお姉さんキャラかだとか議論していた。後者は絶対容姿の再現と結びつかないと思うのだが。

 

 一瞬身を隠す必要なんて無いんじゃないかと思ったが、やはり可能性という物がある以上、こうするに限る。

 

「所で、市場で何を買うんだ? ポーション?」

 

「それはレイナに頼めばいいでしょ。私が買いたいのはね……お、見つけた」

 

 ある露店を見つけたケイは、そこに向かう前に数回咳払いをしつつ喉の調子を確かめるように鳴らした。

 一体何をするつもりなのだろうかと、遠目にその様子を見ていたのだが。

 

「すいませーん。これぇ、3人分くださいな☆」

 

「?!?!?!」

 

「あ、は、はい! お値段は……」

 

「あらぁ、ごめんなさぁい。今細かいのが無くてぇ……」

 

「ひっ……! そ、それじゃあ端数を差し引いて安く……これでどうでしょうか!」

 

「わあ、ありがとー☆ あなたって優しいのね―☆」

 

 ……。

 

 ……。

 

「……お前」

 

「……なに」

 

「誰?」

 

「うっさい黙って私の買い物に付き合えバカ!」

 

「ああ、なんだ。ケイか」

 

「く……」

 

 苦虫和えのピーマンゴーヤサラダの大食い大会でも終えたような顔をされた。

 いやだって、あの声だぞ。お前何処であざとい属性を手に入れてきたんだ? いや、あれをあざといと言って良いのだろうか?

 そもそも俺はそんな子に()()()覚えはありませ……いやまて。あったぞ、作中にそんなシーンが。

 例の物語の中に、どうしても欲しい物を買う時の交渉の最終手段として、あのような手法を取る描写があった。確かあの時は、非常に貴重なオリハルコンを入手するシーンであったか。

 

「ま、まあ。女の武器は交渉の場でも効果を発揮するしな? 俺は別に反対するつもりはないし? あ、もし女としての意識が芽生えて、俺に気があるとか言わたら逃げるからな」

 

「するかっての! 姿を隠してるんだから、声も変えなきゃ効果薄いでしょ!」

 

「あ、ああ。そういう事か。……それであの対男性用声帯か」

 

「うん」

 

 はあ。つまりはあれが最終手段、と。

 ……本当に最終手段だな。そんな気軽に使うべきものじゃない。いやホントに。

 

「あー……、どうだった? 私のアレ」

 

「なんと言うべきか……。顔を隠してなければ、脅迫にはならなかっただろうな」

 

「へ?」

 

 へ? って……このケイ、分かってないのか? あの人怯えてたし、お金を受取る手も震えてたぞ。

 

「いやさ。俺たちの容姿って、言ってしまえば暗殺者だろう? でも暗殺者の印象を逆算すると、自らの美貌を武器として持ち合わせているという印象もあるわけで」

 

「??」

 

「……俺がこの姿のままイケボの囁き声で、”あれぇ、僕の財布の中身じゃあ足りないやぁ。少し安くしてくれる?”なんて言われたらどう思う?」

 

「あっ」

 

 気づいてくれたか。

 ケイのアレは確かにあざといし、男ウケも良いだろう。しかし扱い方を間違えれば、一気に脅しになってしまう。

 

「声のトーンだけ変えて、あの妙な喋り方だけは止めておいたほうが良いぞ。ケイ」

 

「あい……」

 

 その方が賢明だ。

 なんというか、知り合いにあの手段を取るような事がないければ良いのだが。レイナのお店であの手段を取ったら、ケイの頭が何かに遠隔操作されていないか、疑わなければならない。

 リーチェが相手だった場合は……、あの精神状態じゃああの手段はとれそうにない、実質気にしなくても良さそうだな。

 

 

「で、何買ったんだ?」

 

「ああそうそう。この魔道具だよ、知ってるよね?」

 

「お、レーダーか。確かに便利だな、連絡を取らずともお互いの位置が把握できるし、マークした敵の位置情報も共有できる。……でもなんで3人分?」

 

 俺はレーダーと呼んでいるが、パーティミニマップとも呼ばれるこの道具。基本的には一人一個持つだけで十分なはずだ。

 普段2人で行動している筈の俺たちだが、実は目に見えない3人目が……、

 

「ただの予備。失くすかもしれないし、壊すかもしれないし、レイナと共に行動する事もあるかもしれない。その為の3つ目だよ」

 

「ああ、なるほど」

 

 なんて事はなかった。いくら仮想世界でも、怪談話が実現される事はなかった。

 

 しかし、ケイが言うことは尤もである。生産スキルがあるならまだしも、旅の途中に物資を補給出来る物なんて限られている。食料はそこらの自然の恵みから貰えても、魔道具とかがそこらに生えているわけがない。

 

「まあ、余裕を持つのは当たり前だけどね。あんまり重い荷物を持つのは得策じゃないけど、私にはアレがあるし」

 

「だな」

 

 ケイマジックのひとつ、四次元ポケットの魔法は誰もが欲しがる便利マジックだ。これがあれば、どんな過酷な長旅も、備え次第では快適ツアーになる。キングサイズのベッドだって持ち運べるだろう。買えるかは別として。

 

「さて、と。他にも買うものがあるんだ。さっさと済ませちゃおうか」

 

「おう」

 

 

「そういえばあの交渉術、またやるのか?」

 

「……高い買い物になるなら」

 

 まあ、妥当な判断だよな。

 




この章はちゃんとプロットがある。
最初ののプロットと、バージョン2のプロットが。
それとバージョン3が最近出来て、この後もバージョン4が出来る予定。

つまり固まってないってヤツですな。
でも章が長くなるのは確定事項。15話ぐらい行くんじゃないかな。
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