「……」
「……」
なんとも言えない。とは正にこの事だろうか。
横でケイが一歩引く。
何と言うか……何と言うべきだ? ああいや、言うべき言葉が出て来ても、その言葉を口にしても聞こえないだろう。
それぐらいの事も忘れてしまうような驚きであった。
「……イツミ?」
「そそっ。イッツミー、イツミ! なんてね?」
「とりあえずちょっと外行こうか」
「えっちょ、ケイちゃん力つよいたたたた!」
問答無用である。イツミと自称する女性を外へ引きずっていった。
それを呆気にとられていた状態で見ていたが、我に返ってすぐに追いかける。
2人の姿が裏路地に入っていくのを見つけて、俺もそこに入る。
「ペットの数は?」
「3匹……」
「一緒に潜ったダンジョンで戦ったのは?」
「……ストーンゴーレム?」
追いかけてみると、どうやらこの女性が本人であるかの確認をしている様子だった。
答えを聞く限り、十分に本人である可能性はありそうだが。
「あ、ソウヤくん! ほんのちょっとだけでもいいから、助けてくれないかなー?」
無理だ。俺は首を横に振った。
「質問の続き、答えなさい。性別は?」
「ぃぃいいほっぺ抓らないで痛いいひゃいいひゃい!」
女性のほっぺが伸びる伸びる。
しばらくして、十分だと思われたタイミングで手放される。
「いったいなーもー。そりゃ勿論お……んなですよぉっ?」
「……女?」
「女ですっ」
「ふうん……。顔赤いよ」
「赤くないですし?! ……え、赤くなってる?」
……男なのか?
しかし身振り手振りを見る限り、大げさだが女々しい仕草が見られる。……演技の技術があれば、男でも十分できる範囲だと思うが。
『問:俺とのファーストコンタクトでの状況を述べよ』
「んえっ、と。ソウヤくんとの? 確かケイちゃんとキャットに奇襲されて、地面に転がってましたよね?」
ふむ。
正解ではあるのだが、疑心を持ってかかるとすれば……。
「影武者っていう可能性もあるな。本人の協力を得た他人なら答えられそうだ」
「……それじゃあ最後に2つ。キミのペット達はどんなの?」
「猫又と、馬と、ドラゴンですよー。個人的にはドラゴンちゃんが自慢の子かなあ」
これも正解だ。しかしケイには何か策がある様子だが。
「そのドラゴンで、襲撃した場所の名前。最近の物から並べてみて」
「それはー……、個人情報?」
「リザード」
「あー、なんだ。知ってるんじゃん。はいはいシウム村ですよシウム村。いくらなんでも慎重すぎませーん?」
「私に訊かれるであろう質問への対応を“本人”から教わってたら、普通に質問したところで無意味でしょ?」
なるほど。イツミ本人が影武者を用意していたとしても、その裏をかけば、かなりのリスクを軽減できるだろう。流石ケイ。
「うーわー。名探偵プレイ来たー」
対してイツミ(仮)は、ケイの発言にうんざりした様な態度で、大きく後ずさってみせた。
「で、信じてくれた?」
「信じるよ、私は。……所で、それが本当の姿、とでも思っていいのかな……?」
「どーかなー」
「……」
ケイの問いかけと沈黙には、俺も同じ気持ちである。
イツミの本当の性別について、ケイが一度言及したが……。
「はあ……。良いよ、答えはいらない。私達のパーティへようこそ。なんかあったらそこら辺に捨てるから」
「ヒドイッ! 私とケイちゃんの仲でしょお?」
「今からでも捨てよう」
「うわあん待ってえ!」
ケイが用済みとでも言うように踵を返す。俺もとりあえず付いていくと、後ろで慌ててイツミが追いかけてくる。
……本当の性別は未だに確定していないが、今わかっているのは、この態度は演技であると言うことだ。
以前の仮面姿と今の姿で、言動にギャップがありすぎる。
もしこれが演技でないとすれば、二重人格とでも言われた方が納得する。
そもそも彼の狙いは、変装による錯乱。そして追手だという貴族とその配下から逃れるというものだ。
俺がここまで混乱しているのだから、効果十分という事で良いじゃないか。
正しく思考停止。だが今ではこれが最適解である。
「変装という意味では、効果テキメンだな」
「……パーティを組むのは、ほとぼりが冷めた頃までね」
「うんうん、私もそれぐらいにしよーかなーって思ってたとこ!」
「街にいる間は基本的に自由行動、今も旅という名の観光をしてるみたいな物だからね。依頼、戦闘、採集はなるべくみんな一緒の方がいいだろうね。非常時はメールで……ああ、フレンド登録ってのをしないといけないんだっけ」
「よしきたーっ! やっぱりMMO友達の最初はコレだよね?」
イツミは何時もあんな感じなのか?
疲れないだろうか。数時間したら休ませる必要もあるかもしれない。
ケイがウィンドウを呼び出して、ポチポチと操作して友達の証を取り出す。
相手も同じように取り出すが……。
「あっ、えーっと……、コレ今のマイブームなんですよー!」
出てきたのは、見覚えのある仮面の模様で飾られた、黒塗りの証である。
なるほど。もう疑う必要はなさそうだ。
「うん、確証が持てた。よろしくイツミ」
「アハハ……。そうだ、これからはイズミって呼んでくれませんかっ?」
「イズミ? まあ、わかったよ」
『イ
「そっちじゃないよ?!」
どっちにしろ発音は同じだろうが。
気にしすぎだろう、と俺はニヤニヤと見つめた。
ま、どうせ変装の一環だろうし、存分にその名前で呼びつけるとしよう。
『よろしく、イヅミ』
「直す気ないし!」
・
・
・
「パーティとは言ってるけど、実質は巻き添えだよね」
とりあえず今日の宿を探す為、町を歩いていると、ケイが思い出したように話をする。
何の巻き添えかと言われれば、言うまでもなく”逃亡生活“である。
イツミの行動が悪であったかはともかく、彼……いや、彼女がやった事が犯罪であることは変わらない。
「本当、迷惑だよ。依頼として請けたとは言え」
「そんなー。私はケイちゃんの魔法を頼りにしてるんですよぉ?」
「余計タチ悪いと思うんだけど……」
ケイの転移能力があれば、たしかに逃走と言う面では有効だろう。だが……。
『ドラゴンハンターという存在が、共犯者だと思われるまでは良い。しかし、ドラゴンハンターとケイが同一人物だと判明したらどうなる?』
「そういうこと。依頼っていうつもりでやってるけど、割りに合わないなら直ぐに止めるから。こっちはマットーに生きたいの」
ケイの代わりに一通り説明し、イヅミは陽気そうな顔をやめて考え込む。
その無表情が、
「じゃあ逃げる時、囮になってくれるんです?」
「囮ね……。まあ、正体が悟られない程度にやれば十分でしょ」
かなり甘く見た考えだが、それで心配させるような程ケイは弱くない。
それ相応の上級者、つまり高レベルのステータスやスキル、そして実力が伴ったプレイヤーが頭数を揃えて来なければ、苦戦させることすら難しいかもしれない。
「そもそも、相手はどんな奴なの?」
確かイヅミは、ある貴族にちょっかい出して、追われているんだったか。
問いを受けた彼女は、少し考えてから顔を俺たちの耳元に近づけて、
「貴族と、その配下……プレイヤー」
ささやき声で、問いに応じた。
「続きは向こうで。ね?」
・
・
・
目当ての宿を見つけ、早速3つの部屋を借りると、ケイとイヅミが事前に示し合わせたかのように、俺の部屋に集まってきた。
しかもそこにはキャットも混ざっており、部屋に入ってから一番最初に詠唱を開始した。
「『サイレントホロー』……。はい、おっけーデス」
「あ、それって私と一緒にアイザックを探してた時のやつ?」
「音の遮断をする魔法なのデス。幾らでも恥ずかしい話ができるのデスよ」
キャットがベッドに腰掛けて、ふにゃあと欠伸をする。
ここは俺の部屋なのだが。
しかもお菓子を取り出してボリボリと食べ始めた。……うめえ棒の屑をベッドのシーツに零さないでほしい。
「まずは、こっちから質問。追っ手の詳細は?」
「ギルドです。規模で言えば小か中くらいですかねー。ただ貴族がバックにあるので、資金だけ見れば結構なものですよ」
「数と実力は並デスが、装備に関しては強力な物が用意されてるのデス。……もしかしたら、お姉さんの足元にも及ぶかもしれないデス」
そこまで強力なのか……?
すると結構厳しい戦いに遭う可能性がある。
ケイは涼しい顔で聞き流しているが。
「自信ありげだな」
「え、なんで?」
……聞いてなかったのか? キャットの話だと、ケイ相手にマトモな戦いが出来るみたいな事を言っていたが。
「ううん、何というか。イズミ達が私の真面目な戦いを知ってる訳じゃないし」
「……つまり、イヅミ達が知るケイは、お前より弱いってことか」
「そうそう。合ってるけどなんか詩的だねソレ」
「何を話しているのか片方聞こえなかったデスが、ケイちゃんの実力はそんなモノじゃないっていう事デスか?」
キャットが答えを求めて問いかけるが、ケイは黙り込んだ。喋るわけ無いだろう、とでも言いたげな笑みだけを見せる。
「まあまあ、余裕があるだけ良いじゃ無いですかあ。でも一応情報は共有しておきます。相手の事はわかった方が良いですよね」
「ん、それなりに相手の事分かってるんだ?」
「はい。ギルド名は『剛の大剣』。戦士中心の硬派なギルドデスが、例の貴族の私兵として活動しているのデス」
「NPCが運営してるけど、プレイヤーがそのメンバーとして加入してます。資金があるギルドだから、良い装備やアイテムを求める人にとっては良い所なんですよねえ」
キャットに続けて、イヅミが解説をする。
逆に、冒険者として活動し、プレイヤーが運営するギルドに入ろうとするNPCも居ると聞いたことがある。
NPCとプレイヤーの違いと言えば、死の重みとシステム、そして世界の見え方である。
「今現在、ギルド全体が私を追っているのは確かなんですけど、どうやら仲の良いギルドさんも協力してるみたいです。なので、相手が戦士だけとは限りませんよ。多分」
「そっか」
そして、これから相手にする可能性のある敵の情報を次々と提供してもらう。
剛の大剣と呼ばれるギルドを中心として、イツミが手配されている。討伐、捕獲に報酬が出る形となっているらしい。
だから、これといった捜索範囲などは無いのだが、もし注意するとすれば、人の注目を避けるにはもちろん、件のギルドメンバーが居るであろう場所だろう。
そのギルドメンバーが多く居ると思われる地域や、貴族自体の情報などを教えてもらう。
王国の貴族であり、功績からその立場を得たタイプだ。領地やその領民に対する扱いは雑であり、金を好むとの事。
「そうだ。変装の効果は少なくともあるんだけど、どこから情報が漏れてるのかは分からないから、念入りに細工しておきたいんです。へへー、てっきり忘れちゃいました」
「細工?」
「そうですねー、2人の騎士に守られたご令嬢っていう設定とか面白そうです。あ、でもそういう立場の人間だと、すぐに足が付いちゃいますか」
「……いや、設定って」
「私達の物語ですよ。イツミという存在から印象を遠ざけるために、必要です。それに楽しそうですしっ」
……設定?
「あー、まあ、良いんじゃないの。……どうしたの、ソウヤ?」
「む、いや、なんでもない」
ケイの設定を書いた当時の俺は、どういう気持ちだったんだろうな。
調べ始めてこの世界で何日も経つが、未だに分からない。
「ふうん。……そうだ、こういうのはどう?」
「おおっ、何か良いのが浮かんだんです?」
「ケイ、ソウヤ、イヅミ。満月の夜、運命のイタズラによって3人は引き合わされ、そして強敵と剣を交える。その末に敗北してしまった3人は……」
なんか始まった。
「……」
「ん、気に入らない?」
「なんというか……なんかジャンプっぽいですそれ」
「ジャンプ?」
ふむ、そんな設定だとちょっとだけ厳しいのではないだろうか。
自分の中に浮かんだ設定を、ささっと文字に変換する。
『別々の理由を持つが、同じ敵を討つと言う目的を持った3人。異なる価値観や動機に時折摩擦を生みながらも、お互い力を高めていっているという設定だ』
「なんで私達が摩擦を生まないと行けないんです?」
細目で睨まれながら反論された。言われてみればそうだ。
「それにほら、そんな明確な目標なんて掲げていたら、それに向けて本当に行動しなきゃならないじゃないですか。私は面倒ですよそんなの! せめて、もうちょっとゆる~い感じで行きましょうよ。例えば、世界を巡る旅をしている旅人と、2人の傭兵とか」
「……なんで私たち、騎士とか傭兵なのさ?」
「じゃあ逆に訊きますけど、そのナリでそれ以外の称号を与えられると思ってるんですか?」
「あ、確かに」
確かにこの鎧姿ではそれ以外の呼び方はあんまり考えられない。
冒険者には色々あるから、この姿でも違和感はないと思うのだが……、それよりも先入観が勝ってしまう。
「でもさ、“大怪盗イツミ”が混ざっているとは思えないような、そんな強い印象のある設定じゃないとダメじゃないの?」
「言い出しっぺでもないのにそんな拘りますか。……いや、確かにそうですけど」
『カルト宗教を布教する3人というのはどうだ?』
殆ど思いつきだが、インパクトがあるし、それなりに活動の自由度も高いだろう。
「ついて来る印象に衝撃がありすぎです。私たちそんな変人にならないといけないんですか?」
「なんか面白そうなのデス。誘い文句は『ネコを崇めよ』でどうデスか?」
イヅミはこの案に反論するが、意外にもキャットが乗ってきた。
ネコを崇めるとは中々珍しいが、なくはなさそうだし、何より胡散臭くない。この設定に沿った言動をしても、生暖かい目で見られるだけに済むだろう。
「いや採用しませんし、キャットはどこでそんなネタを仕入れてきたんです?!」
「ダメなのデスか?」
「だめなのか……」
「2人揃ってどうして落胆するんですかっ!」
「まあまあ、とりあえず落ち着こうよ。ソウヤ、確か茶葉があったよね? 用意してくれるかな」
ケイの静止によって、設定の決定が先延ばしにされる。確かに、少しだけ落ち着いたほうが良さそうだ。
ポットはあるが、ここでキャンプファイヤをする必要はない。ここの主に、キッチンを使って良いか質問してみよう。
「なんで私ツッコミ役なんかやってるんだろう……」
・
・
・
「あ、美味しい……」
うむ、気に入ってくれて何よりだ。
ツッコミ役がなんだとかボヤいてたらしいが、これで落ち着いてくれるだろう。
「人形のくせに生意気なのデス」
悪気がなさそうな顔で言われて、悪口なのかが判断がつかずに肩をすくめる。
「あ、キャット! そんなこと言っちゃいけませんっ」
「別にいいよ。気にしないし」
それは本来俺が言うことだと思うぞ。いや、構わないが。
イヅミが紅茶をまた一口して、ふう、と熱い息を吐く。
この変装をするまでのイツミからは想像も出来ないような色気が、漂ったような気がした。
「設定の参考までに訊きますけど、ケイちゃんはどんな経緯でこのゲームに?」
「ゲームに?」
ちらと俺の方へ視線が向けられる。
確かにケイには答えられない問いだろう。代りに俺が返答の内容を考えるが……。
「……いや、そうだね」
何を思ったのか、俺の言葉を待たずにケイが語り始めた。
「私はね、この世界へ人を探しに来たんだ」
「え、それって出会い系? ケイちゃんってそういう人──」
「ついでに言うとね、私は異世界からやってきたんだよ。前に言ってた気がするけどね」
「……異世界?」
「そ。元々はそこで人探ししていたんだけど、中々見つからなくて」
そうして、ケイの話は続く。
ケイの世界での探し人は、何年も掛けて行われた。しかし見つかることはなかった。
そしてある日、彼女は決意した。
同一人物が居るかもしれない、平行世界。そこへ向かうための魔法を開発し、発動した。
時空を超える魔法により導かれたのは、この世界であった。
既に俺が知る物語。ケイ自身が歩んできた物語。
「私の旅の目的は、その人を見つけること。それがこの世界に来た理由であって、そして成さなければいけない事」
「……」
ケイの長い
俺も黙っていたのだが、それはケイの物語を聴くためではなく、何故この話を繰り出したかという疑問について考えるためだった。
「それが、ケイちゃんの
しばらくの沈黙の後、イヅミがポツリと放った言葉で、俺はハッと顔を上げる。
ケイの顔を見ると、彼女は微笑んで頷いていた。
「ま、異世界からの冒険者なんて、非常識すぎて認める気にもなれないだろうけどね」
「まさか、けっこー面白かったです」
……ああ、なるほど。
ケイは、その物語を真実としてではなく、あくまで設定として明かしたのだ。
そうか、そういう事か。
……なら、こうしてみるのはどうだ?
『ならば俺は、その平行世界でのケイにあたる存在だ。ケイの探し人が異世界にも存在するのであれば、ケイが異世界に存在してもおかしくない』
「ちょ、ちょちょ、話がちょっと大きくなってきてません?」
「元々大きいじゃん。2つの世界を跨ぐ物語なんだし」
「あ、確かに……」
『そしてイツミは、吟遊詩人だ』
「はえっ?!」
「ほお」
俺の頭に浮かんできた架空の物語を、淡々と綴っていく。
『人探しを続けるケイは、世界を跨ぐ転移による副作用の影響を受けた俺と出会った後、吟遊詩人を旅に連れて行く事を決める。大衆と関わる機会が多い彼ら彼女らは、ケイの目的の助けになると思ったからだ』
「そ、それが私なんですか?」
『そうだ。お前はケイの目的を聞き、旅中の危険を退けるのを条件に人探しに協力することにしたのだ』
「お、おお……なんかワクワクしますね……」
「うん、面白いね。ねえイズミ、この設定にする?」
調子に乗って色々と設定を生やしてしまったが、イヅミはお気に召しただろうか。
ワクワクするとのことだったが、変装の一環としての実用性を考慮すると、設定の面白さは判断に関わらないだろう。
「うんうんうん。ケイちゃんが主人公格なのはちょーっと気に食わないけど……」
ダメか。もう少し別のものを考えるべきか?
そう思って別の設定を考えようとして……突然、イヅミが立ち上がって、満面の笑顔で俺たちを見下ろす。
「でも、うん! 採用!」
「おー」
“これはめでたい”と、ケイが拍手で設定の決定を祝う。
結構非現実的な設定だと思ったが、まさか採用されるとは……。
「人探しの旅と言うことは、各地を転々とするということ。逃亡生活にも丁度良いじゃないですか! 壮大な設定も、“イツミ”という存在から遠ざけるのに一役買うでしょうし、何より、なんかワクワクします!」
「わくわくって」
「良いじゃないですか! 条件さえ揃えば、何でも良いんですよ何でも!」
ま、まあ、お気に召したのであれば、こちらとしても嬉しい。考えたのは殆ど俺で、他は既存の物語だったからな……。
「楽しそうデスね、ご主人」
「楽しいですよ。そりゃもう! よくこんなの思いつきますよね!」
「え? そりゃまあ、ね。あはは……」
「ソウヤくんも!」
え?
ああ、いや……確かに物語を作ると言う点においては、腕に覚えがあるのかもしれない。
記憶としては、全く残っていないが。
「ところでご主人」
「うん?」
「ご主人って、歌と楽器は出来るんデスか?」
「出来るわけないじゃないですか」
……。
……何故採用した。
アクションシーンがまるで無い、ゆったりした物語ばかりが続いている気がする。
気のせいか。