魔法少女はなよ☆マギカ 創造と贖罪の物語   作:フィム

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二週間ぶり更新のわりにはちっとグダっちまったと思う。タイトルも正直意味不明だしw
まあ、とにかく更新だけはできました。どうそ!



第3話 見えるもの見えないもの

 

「さて、今日はこんなもんか…」

 

 この日、最後の魔獣を刈り終わり、人通りが少ない場所で変身を解く。最近は魔獣の数が日を追うごとに減っている気がする。キューブもそこまで回収し切れてない。あたしはため息を吐く。

 

 今でも一昨日のことは鮮明に思い出される。魔獣は黒い未確認生命体に噛み殺されていた。紫色の眼光で、まるでこの地区の縄張りを乗っ取ろうとするかのように…。

 もちろん、魔獣自体の個体が減るというのは悪いことではない。放っておけば人は生気を吸われ廃人同然となる。魔法少女にとっても倒さなければならない敵だ。けれども、魔法少女とて時間に限りもある。あたしの場合、バイトの勤務中は(無理に抜けることはできなくもないが)魔獣刈りができない。どうあがいても人を救えない時間帯は出てくる。それを補ってくれてるとするならば未確認生命体も悪くはない。ポッキー箱からポッキーを一本抜き、口に咥える。

 

 ただ、良いことばかりも続かない。未確認生命体が人にも危害を加える可能性がある。あたしが襲われたのが良い例だ。となると魔獣と同じように処理しなければならない。現状だと黒い奴の方が圧倒的に厄介だ。

 また、あたしたち魔法少女にとって魔獣から排出されるキューブは下手すれば命の次に大事なものだ。あれがないと魔力の回復もできないし、浄化もできない。ソウルジェムが黒く濁り切ったらそれまで。円環(えんかん)(ことわり)というやつに導かれる。実質、魔法少女としての死を意味する。それ故に魔獣の数を減らされても困るんだ。

 

「ついでに未確認野郎もいねえっと…」

 

 黒フードの魔法少女から貰ったグリーフシードとやらを手に取り、ジッと見つめる。恐らく黒い獣から排出されたもので間違いないが、これが魔獣のキューブと同じようにソウルジェムを浄化できるものとは限らない。罠の可能性だってある。そもそも浄化できるもんを何で敵か味方かも分からないあたしになんかにあげるんだって話だ。

 分からないことはまだ続く。キュゥべえの言葉通りなら、あのフード女はあたしたちよりも先に奴らを見つけ出し、そして、始末していることになる。あの時は先に見つければいいと啖呵を切ったが、よくよく考えるとあたしやマミみたいなベテラン魔法少女がここまで探し出せないなんてことがあり得るのか。もちろんお互いの時間帯の関係もあるが、それにしては遭遇率が悪すぎる。黒い奴が後どのくらい居るかは知らねえが、それを差し置いても一昨日の一体が初めてなんて…。

 

 

「……ちっ、頭いてぇー」

 

 あんまり深く考えるタイプではないので少し疲れた。こういうのはマミとかほむらとかの方が得意だから、そっちに任せとけば何かしら分かってくるかもな。あたしは戦闘方面担当だ。

 マンションが見えてきた。グリーフシードをポッケにしまい、二本目のポッキーを咥える。ちなみにキュゥべえの奴は今どっかに出かけてる。まあ、夕食の終わり頃には帰ってくるだろう。マンションのエレベーターに乗り込み、5のボタンを押す。

 

「はぁ…」

 

 話題を変えよう。今日、新たにバイト先で新人さんが入ってきた。店長の話だと道中でスカウトしたらしい。何でも数十年に一人の逸材だとか…何とかで。

 おっとりしていて最初は大丈夫かコイツって目で見てたけど、数十年の人にあたしの心配は不要だったらしい。仕事内容や客の接待も一日でほぼ完璧に覚え、店内イベントの歌コーナーでも可愛らしい歌声を披露。気も遣えることから仲間からの評判も悪くない。あたしから見ても今日一日だけで充分すぎる活躍だった。ちょっと嫉妬の気持ちすら沸いてくる 。

 

 実はあたしもスカウトで今のバイトに就いてたりする。ちょうどマミの世話になり続けている現状にうーんと考えてた時期でもある。当初はどんなバイトかも深くは聞かず、まあ、いざとなったら魔法もあるし大丈夫だろう気分で入った感じだった。

 でも、やってみたらそりゃあもう恥ずかしいったら恥ずかしい。仕事内容こそ覚えたものの、客の接待に関しては未だに慣れない。背中がむずがゆくてしょうがない。客からは店内一のツンデレ娘とか言われる始末だし、あたしのことを様付けで呼んでくるキモイ奴もいたりした。挙句の果てには踏ん付けてくださいと来たもんだ。その時はマジで気持ち悪かったよ。

 

 そういうのを考えると、あの子はたった一日だけでよく順応したなって印象だった。アレな客を天使のような笑顔でもてなす姿はまさに圧巻。ああいうのを才能っていうのか…。

 

「何てゆーんだっけ? 確か何とかスキー…だった気がするけど」

 

 キンと音が鳴ったので、エレベータから降りる。あの店は制服を脱ぐまでは本名を使わない決まりだ。何でも客の夢を壊さないためだという。いや、あたしにはよく分からねーけどさ。

 まあ、何にせよ新しく入った奴の顔や名称くらいは覚えとかないとな。一応だけどあたしも先輩って位置づけだしね。

 

 軽く伸びをし、一つの扉の前に立つ。あたしは何の躊躇もなく取っ手に手をかけた。

 

「たーだいまー」

 

 ちなみにマミの方はお友達と仲直りできたらしい。昨日、呆れるぐらいの馬鹿面で話してくれたからまず間違いないだろう。

 まっ、あたし的には暗い顔で部屋で居座られても邪魔なだけだったし良かったけど。お礼とばかりに高そうなケーキも食ったし万々歳だ。

 

 

「いやー、今日も魔…」

「えへへ、マミちゃんの料理楽し……」

 

 

 ……ただ、その友達が来ることは前もって伝えておけよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 仲直りから次の日、マミちゃんのとこで泊まる約束をし、その手料理を今か今かと待ちわびていた。そこにいきなり現れた赤髪の女の子。ポニーテールの髪はマミちゃんよりも長く、目元はちょっとキリッとしていた。何となく雰囲気的に西木野さんに似てるかも。ポッキーを口にくわえ、不機嫌そうに凛のことを見つめる。

 確かマミちゃんは居候の子がいるとか言ってたっけ。もしかしてこの子がそうなのかな?

 

「あら。おかえりなさい、佐倉さん」

「……はぁ」

 

 料理しているマミちゃんの方に視線を向ける。特にそこには会話らしきものはない。マミちゃんも既に料理の方に集中していた。佐倉さんと呼ばれる女の子は苛立つように髪を掻きむしる。凛がここにいるのは予想外と言わんばかりの様子だった。

 え…っと、まずはともかく自己紹介しなきゃね!

 

「わ、私、星空凛って言うんだ! マミちゃんと同級生で―――」

「友達だろ? 知ってる」

 

 視線を凛に戻し、座っているソファの方へ近づく。そして、ポッキー箱を突き出してきた。

 

「佐倉杏子だ。マミんとこで世話になってる」

「え、えっと…」

「……食うかい?」

「あっ、いただきます…」

「敬語はいらないし、佐倉でも杏子でも好きに呼べばいい。ちなみにあんたよりは年下だよ」

 

 ややぶっきらぼうにそう言うと、凛の隣側にドカッと座り込む。勢いが良かったのか凛の身体が二回ほどバウンドした。

 この子、ホントに年下なのかにゃ? 普通相手が年上だと分かれば、ちょっとは(かしこ)まる所なんだけど…。

 

(そんなに年上っぽくないかな、凛って…)

 

「じゃ、じゃあ、杏子ちゃんって呼んでいい? 凛も敬語はいらないよ」

「ん」

「えっと、杏子ちゃんはこの時間帯まで何してたの? 遅いとマミちゃん心配するよ?」

「バイト。帰りにゲーム店に寄ってた」

 

 ポッキーをポキポキさせながら答える。あ、凛もポキポキさせようかな。

 

「バイトかぁ。杏子ちゃんはどんなバイトしてるの?」

「あ、それ私も気になるわね」グツグツ

「べ、別に。てか、マミは料理に集中してろよ。あたしが話してるんだからさ!」

「はーい♪」

「ったく…」

「……」

「……」

 

 決してマミちゃんだけのせいじゃないけど、中途半端に言葉を挟んだせいで次話すタイミングがズレた。会話がちょっと続かない。凛はそこまで人見知りじゃないけど、威圧感のある人は少し苦手だ。隣にいる杏子ちゃんの顔は未だに不機嫌そうである。

 しばらく、料理のグツグツ音とポッキーのポキポキ音だけが響く中、

 

「だあああっ、もう!! こういう空気は苦手だああ!!」

「!!」ビクッ

「あ、わ、わりぃ。じゃなくて、その…マミのことありがとな」

「え?」

 

 大声で乱れたこともそうだけど、いきなりのお礼にビックリした。振り向くと、杏子ちゃんはそっぽを向いている。

 

「マミの奴、中学の時から友達ができなくてずっと悩んでたんだ。自分の気持ちを素直に話せる友達がほしいってずっとな…」

「……」

「あたしってさ、ぶっきらぼうで口も悪いし、ちゃんとマミの相談に乗ってあげられたのかどうか分からない。あんたたちが喧嘩した時もさっさと仲直りしろって突き放したくらいだよ」

「そうだったんだ…」

「だから、本当に嬉しかったんだと思う。やっと、まともな友達ができたって…」

 

 その言い方だと杏子ちゃんはまともな子じゃないように聞こえてしまう。凛の見た目、杏子ちゃんは確かにぶっきらぼうで口も悪そうだけど、何処にでもいる普通の女の子だ。まともじゃないようには見えない。

 

「杏子ちゃんは違うの? 凛、まともに見えるよ?」

「……あたしの親は両方死んでる。学校にすら通ってないし、友達もいない。挙げ句の果てにはマミんとこで居候だ。そんな奴がまともと言えるか? まあ、それらを差し引いてもあたしはまともな奴じゃないんだけどね」

「……」

「はっ。くだらねえこと話しちまったな。わり―――」

「えいっ!」

 

 未だそっぽを向き続ける杏子ちゃんの首元に抱きつく。そして、マミちゃんの時と同じようにほっぺにスリスリ攻撃する。

 

「なっ!? てめっ、いきなり何を…!」

「えへへ、杏子ちゃーん♪」

「どわあああ! や、止めろおお!」

 

 顔を一気に真っ赤にし、むずがゆそうに杏子ちゃんは抵抗する。料理中のマミちゃんもこっちに気がつき、クスクスと笑う。凛も杏子ちゃんの反応が良くて笑っちゃった。

 

「な、何だよホントいきなり…!」

「あはは、マミちゃんと同じこと言ってる♪」

「いや、普通言うだろ。誰だってこんなことされたら…」

「そうだね。でもね、本気で嫌がってないようには見えない」

「はあ?」

 

 意味が分からないとばかりに杏子ちゃんは動きを止める。

 

「杏子ちゃんはまともだよ。ちなみにマミちゃんもまとも。二人とも寂しがり屋なだけだにゃー」

「ったく、何をどうしたらそういう判断になるんだよ…」

「だって、杏子ちゃんも人恋しいってことでしょ。未だに離せとか言わないあたり」

「……離せ」

「遅いにゃ」

 

 それにね、と凛は続ける。

 

「心も温かいよ。心が冷たい人だったらこんなこと絶対に嫌うと思う。人の心がちゃんとあるってことだにゃ。マミちゃんのことも気遣ってたし、何より凛が抱きついても嫌な感じしなかったし♪」

「はぁ……どういう基準なんだよ…」

「凛の基準! 後、凛は親がいないとか何とかで人を判断しないよ!」

「あっそーかよ。何かさやかみてー…」

 

 呆れたように呟く杏子ちゃん。でも、その表情からは柔らかいものを感じ取れた。初対面の固さというのはもうそこには存在しなかった。凛はそのままソファの上でぴょんぴょんと跳ねる。

 

「ねえねえ、杏子ちゃん。凛と友達になってよー!」

「ふん。ダメ押しってとこかい?」

「うん! 友達の友達は友達って言うし、それに凛も杏子ちゃんのこともっと知りたいし!」

「マミだけで良いじゃんか。あたし、マミよりは優しくないし―――」

「杏子ちゃん、友達になりたい癖に素直じゃないにゃー♪」

「だーれが友達になりたいとか言った?」グイグイ

「ほおこひゃん、いひゃいにゃ~」

 

 凛の両頬をグイグイと引っ張られる。むむっ、これはまだまだ素直じゃないね。凛は凛で抵抗を意味を込めて、杏子ちゃんのお腹辺りを生で触ってみる。スベスベしてて女の子にしては引き締まってるように感じた。

 

「ひゃんっ! て、てめ…!」

「んふふ、ひゃんふぇ…」

「笑うなっ! もっとグイグイする…うっ…」

「あ、離れた。杏子ちゃんのお腹気持ちいいにゃ~♪」

「こ、こら。くすぐったいからやめっ…」

「凛って呼んでくれたら止めるー♪」

「うひゃあっ!」

 

 身をよじりながら杏子ちゃんは抵抗する。最初の時の不機嫌顔はなんだったのか。凛々しい顔は崩れ、真っ赤なお顔で目元をうるうるさせてる。凄い可愛い。これには凛もドキッとしちゃった。これがいわゆるギャップ萌えとか言うやつなのかにゃ!?

 

「くぅ……り、凛! いい加減にしねーと怒るぞ!」

「やーっと呼んでくれた。でも止めなーい♪」

「脇にまで手伸ばすなっ、きゃんっ!!」

 

「こーら、凛さん」

「にゃ?」

 

 凛の頭に軽くチョップが入る。見上げると、マミちゃんの柔らかい笑顔が目に入ってきた。

 

「そろそろ佐倉さんも可哀想になってきたしこのくらいで許してあげましょ。料理運ぶの手伝ってくれる?」

「ご飯!? 待ってましたにゃ!」バッ

「ぜぇー…ぜぇー…飽きたオモチャのように扱いやがって…」

 

 凛が離すと同時に文句を言う。息も絶え絶えで今にも噛みつきそうな表情である。ちなみに全然怖くない。八重歯も見えたことから、さながらワンちゃんのようにも見えた。

 

「えへへ、食べ終わったらまた遊んであげるね。杏子ちゃん♪」

「うるせえ! 凛、後でホント覚えとけよー!」

「ふふっ♪」

 

 可愛い顔で睨み続ける杏子ちゃんを余所に、凛はルンルン気分で料理を運ぶのだった。

 

 

 

 

 

「マミちゃん、これおいしいにゃあ♪」

「あら、良かった♪」

 

 夢中でシチューを口に運ぶ。シチューの他に野菜の前菜、ミートスパゲッティ、フランスパンなどの洋食系がガラステーブルの上を占拠している。見た目にも拘ってるようで各料理盛り付けが加えられていた。どれもこれも美味しそうで、まるでここは天国のように思えちゃう。さながら最後の晩餐気分だった。もちろん食べ終わった後に死ぬとかそういうのはないんだけどね♪

 それにしてもマミちゃんってホント何でもできるなぁ。この部屋の物の配置や内装だって普通の女子高生が考えたとは思えないよ。居心地も良いし、何だか自然とリラックスできちゃう。直角三角形のガラステーブルを使ってる辺りにもセンスを感じられた。

 

「けっ、ありがたく食えよ。クソ猫が」

「何で杏子ちゃんが偉そうなんだにゃ。後、凛はクソ猫じゃないよー」

「佐倉さん、そんなこと言っちゃダメ。仲良くしなきゃ」

「ふんっ」モグモグ

 

 こっちはこっちでさっきのことで根に持ってるのか、フランスパンの千切ったものを口に放りそっぽを向く。思いっきり拗ねてるのが丸分かりだった。何だかやりすぎちゃったかな?

 

「ご、ゴメンね、杏子ちゃん。凄い可愛かったからつい…」

「かわっ! ごくんっ! べ、別に可愛くねーよ!」

「いや、ホントホント! 最初は杏子ちゃんの方が年上っぽくて大人の余裕みたいなものがあったもん。それが一気に崩れてまるで妹みたいな―――」

「だああっ! 恥ずかしいから止めろぉっ!」

「ふふっ、妹みたいね。ある意味合ってるのかもね♪」

「合ってねえぞ、そこっ!」

 

 凛たちの集中攻撃に勘弁してくれとばかりに声を張り上げる。杏子ちゃんってホントに面白い子だにゃ。最初の時の怖い印象が完全になくなってる。今ではずっと前から友達だったかのような感じだった。

 

「でっ! そっちの方はどうなんだよ!?」

「え?」

「?」

「スクールアイドルだっけ!? 結局、お前たちはやるのかやらないのかって話っ!」

 

 杏子ちゃんは強引に話題を変えようとする。

 マミちゃん、杏子ちゃんに話したんだ。まあ、杏子ちゃんはバカにするとかそういうことはしなそうだし全然問題ないけど。凛はマミちゃんと目を合わせ、お互いに頷く。

 

「保留…って形になったわ」

「凛も保留。まだイメージが浮かばないっていうか…」

「ふーん。でもよ、マミの話だと学校がこのままだと廃校になるんだよな? そんなチンタラしてて大丈夫なのか?」

「うぐっ! 杏子ちゃんの癖に痛いところを突いてくる…!」

「ホントね。やっぱり確信犯だわ…!」

「おい。さっきからあたしの扱い酷くねえか」

「でもねでもね! 学校で凛たちよりも先に立ち上げたスクールアイドルがあるらしいんだ! 名前は未定だけど講堂で初ライブもやるんだって!」

 

 ちなみにもう一度掲示板の方を覗くと、ユニット名、名前募集の箱が置いてあった。ただ、名前を決めようにも本人たちの特徴とかが全然分からないから決めようもない。……一応、マミちゃんと一緒になって入れたけど。

 

「あの後、二人で話し合ったけど、その初ライブを見てから判断しようって話になったわ。もし私たちが今二人で始めようにも、向こうが正式の部として成り立っているならこちらとて手は出せない。同じ活動内容の部活は原則作れない決まりなの」

「もっともまだ二人で人数不足だし今はどうにもならないけどね…」

「じゃあ、もしスクールアイドルを始めるなら、向こう側と同盟を結んで始めるって感じか。馴れ合いみたいであたしはあまり好きじゃねーなぁ」

「惹かれるものがあったら、だけどね。ともかく、この一ヶ月の間に自分の進退は決めたいわね」

「凛も!」

「そっかー…」

 

 杏子ちゃんは納得したように息を吐く。

 

「でも、マミはともかく凛は大丈夫かぁ? そういうのに向いてないんじゃねーの?」

「ちょっ!? さ、佐倉さん!!」

「……それってどういう意味で?」

「え? ああ、別に可愛くないとかそう言う意味じゃねえぞ。ただ、ちょっとバカっぽいし付いていけるのかなーってこと」

「……へ?」

 

 凛が可愛くないから似合わない、じゃなくて、ただ単純に凛の頭の悪さの方を心配してる…の? 杏子ちゃんはニヤニヤと笑っていた。

 

「な、何それ!? 凛はそこまでバカじゃないにゃ!」

「だって、歌とか振り付けとか覚えないといけないんだろ? 凛にそんなことができるのかなー?」

「そのくらい凛だってできるよ! バカにしないでほしいにゃあ! そもそも何で凛が頭が悪いなんて決め付けられるんだにゃ!」

「だって、凛みたいなタイプ実際にいたもん。頭が悪くてよくあたしに突っかかってたなー。まあ、流石に語尾に「にゃ」とかは付けてなかったけど」

「ぐすっ。うえぇーん、杏子ちゃんがいじめるー!!」

「へへーんだ。さっきの仕返しだ。杏子様を舐めるなよー!」

「はぁ……もう佐倉さんったら…」

 

 バカにしないって信じてたのに酷すぎるにゃ! お返しできたことに今日一の笑顔を浮かべる杏子ちゃん。その額に思いっきり「バカ」って書きたい気持ちでいっぱいだ。杏子ちゃんのことを涙目で睨みつける。そんな凛にマミちゃんが助け船を出してくれた。

 

「ほらほら、凛さん泣かないで。佐倉さんも心の中では応援してるのよ、凛さんのこと」

「は?」

「んにゃ?」

「口ではああ言ってるけど、佐倉さんって素直じゃないから遠回しでこんな言葉になっちゃうのよ。ちょうど今みたいな感じでね。まったく…」

「ち、違えよ! マミ、お前何言ってんだよ!」

「素直に可愛いから似合ってるって言ってあげればいいのに。これじゃ凛さんの悪口を言ってるようにしか聞こえないわ」

「ぐっ…!」

 

 図星を付かれたような表情になる。杏子ちゃんは恐る恐る凛の方に視線を向けた。

 

「えっと……まあ、悪くないとは思うし似合ってると思う。頭もまあ―――」

「佐倉さん」

「うっ、わ、わりい…」

「う、ううん、凛の方もゴメンね。でも、似合ってるって言ってくれて嬉しかったかな」

「! あ、あたしは応援するよ。もしお前たちが始めるんだったらさ…」

「杏子ちゃん…!」

 

 顔を赤くし、またまたそっぽを向く。どうやら照れ隠しする際、自分の顔を隠す癖でもあるらしい。凛の頬も自然と緩む。今日一日だけで杏子ちゃんの良い所、悪い所をいっぱい知れたような気がした。

 

「えへへ、杏子ちゃーん!!」

「う、うわあっ! こっちくんなー!!」

 

 そんな杏子ちゃんに近づくが、危険を察知した猫のように飛び上がって避けた。でもでも、凛も諦めない。

 

「むむっ、何で逃げるのさー!」

「おめえがまたお腹を触ろうとしてきたからだろ!?」

「そんなことしないよー! ただ、抱きしめるだけにゃー!」

「同じだー!!」

 

 凛も立ち上がって追いかける。しばらく二人でドタバタやった後、ベランダが見える窓付近で杏子ちゃんを確保した。家の中なのに捕らえるのに結構時間かかったかも。

 

「ぜー、はー……お前、案外速いな…」

「はー……杏子ちゃんこそ。凛が本気にならないと捕まえられないなんて…」

「なあ。何かと嬉しくなったらくっつく癖ホントに止めてくれないか? 心臓に悪い」

「えぇー、杏子ちゃんって反応面白いのにー」

「仕舞いには殴るぞ」

「はいはい、食事中に暴れない。早く食べないとお料理も冷めちゃうわ。デザートもあるのよ?」

「デザート!? やったー!!」バッ

「扱い慣れてんのな、ったく…」

 

 杏子ちゃんを離し、テーブルの方に戻ろうとする。でもね、杏子ちゃん。嬉しかったのはホントだよ。もし凛たちがスクールアイドル始めることになったら真っ先に教えてあげるからね。その時は約束通り応援してね!

 心が熱くなるのを感じながら、ふと窓の奥へと視線をやる。

 

 

「……? ねえ、マミちゃん、杏子ちゃん」

「ん?」

「なあに、凛さん♪」

 

 

 

「あの白いぬいぐるみ、何で中に入れてあげないの?」

 

 

「……え?」

「なっ!?」

 

 二人は驚きの表情でベランダの方を覗き込む。確かにそこには白い猫みたいなぬいぐるみが一匹、まるで凛たちを観察するような感じで佇んでいた。わざとこんな形にしてるのかな? でも、中に入れてあげないと可哀想だよ。  

 

「お、お前……コイツのことが見えるのか…?」

「え? うん。この白い猫みたいなやつでしょ? 目が赤いビーズみたいな」

「まさか…」

「もしかして見えちゃダメだったものなの? 入学式の時、マミちゃんが持っていた物だと思うけど…」

「!?」

 

 多分間違いないと思う。マミちゃんとぶつかっちゃった際、そばに落ちていた物だ。ぬいぐるみだと思ってそこまで気に止めなかったけど、そこまで重要なものかな? 二人の反応は大げさと言わんばかりの驚きようだった。

 

「っ! ……いうこと?」

「は、はぁ?」

「ねえ、どうしたの? ただのぬいぐるみなんでしょ?」

「そっ……そうだったわね。こんな所に置いてあったなんてね」

「ずーっと探してたんだ。マミがなくなったーなくなったーてな」

「……二人とも?」

「ま、まったくマミったら忘れっぽくておっちょこちょいだなー。あはは…」

 

 杏子ちゃんは窓を開け、そのぬいぐるみを片手に他の部屋が続く方へと放り投げた。そして、何事もなかったかのようにガラステーブルに滑り込む。マミちゃんはマミちゃんで笑顔だけど何やら思い詰めたような表情。

 二人して何かを誤魔化してるような様子だった。

 

「さっ、食べようぜ」

「そうそう。料理が冷めちゃうわ」

「え? でも…」

「うおっ、これホントにうめえなぁ! マジでこんなのも作ったのかよ!」

「ふふっ、手間かけて作ったかいがあったわ。凛さんも早く早く」

「う、うん…」

 

 正直、まだちょっと気になっていた。でも、二人の様子からこれ以上聞き出すのは野暮だと思えた。何より人に知られたくない秘密の一つや二つくらいある。それがあのぬいぐるみとどう関係しているのかは分からないけど、これ以上はもう止めておこう。凛の本能がそう伝えていた。

 

「そ、そうだよね。せっかくのお泊まりなんだから楽しまなきゃ! 杏子ちゃん、それいただきー♪」

「あっ、こら!」

 

 今はこれが正解だと思う。でも、いつかは教えてくれるよね。マミちゃん、杏子ちゃん…。

 

 

 

 

 

 その後、二人はいつも通りだったと思う。凛も楽しすぎてぬいぐるみのことなんて忘れちゃっていた。三人でお風呂入った時はマミちゃんのが大きくて、杏子ちゃんとどっちが大きいかで言い争っていた。ちなみにデザートでもどっちが大小かで取り合い、マミちゃんがじゃんけんで決めるよう促され、最終的に杏子ちゃんの元へ。あの時のドヤ顔は一生忘れないと思う。

 とにもかくにも楽しい時間はあっという間に過ぎていった。枕投げで怒ったマミちゃんに(杏子ちゃんと一緒に)ボコボコにされた後、最後は三人して川の字で寝ていたと思う。

 

 

 

「彼女、星空凛は……になるだけ因果量はあるが、…………ない。それだけの話さ」

 

 

 

 夢の中で、そう誰かが呟いた気がした…。

 

 




本当はキュゥべえの話の方まで加えたかったんですけど、文字数の問題と今後の展開を考えてと伏せておくことにしました。ある種の伏線みたいな感じです。

今回は凛ちゃんにキュゥべえの存在を認識させる回となりました。あそこまで書くのに結構長かったです…。
また、杏子ちゃんが目立った回でもありました。ひょっとして凛ちゃんに弄られすぎか?w


ちなみに今現在の謎的なものをまとめますと、

・黒フードの魔法少女の正体

・黒い未確認生命体の正体

・未だに未確認が一体しか見つかっていない現状

・杏子のバイト先

・凛ちゃんがキュゥべえのことを見れるにも関わらず、キュゥべえ自身は契約にあまり乗り気じゃない


と、なってます。まあ、内二つぐらいはすでに分かったかもしれませんが、全て拾っていけるように頑張りたいです。

さて、次回はようやく、ことり(は前回出ましたが)ほのうみが登場。やーっと「ラブライブ!」二年生組が出せそうです。正直、ここまで疲れた…。
それでは次回の更新も頑張っていきます! たびたび訂正とかはしますがご了承ください。
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