魔法少女はなよ☆マギカ 創造と贖罪の物語   作:フィム

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伏線にすると決めたものを次の回で明かす小説があるらしいw

すみません、更新までずいぶんと遅くなりました。今回の文字数は過去最大文字数ですね。本来はここで切る予定ではありませんでした。主に回想とキュゥべえのせいです。分かりにくい説明等も多いので、すっ飛ばしちゃって良いですね(推奨w) 原作改編(というより、加えた要素)にも注意です。
また、穂乃果、海未、(後、少しですが真姫)が今回初登場です。キャラ通りに動かせるだろうか…?

11/7追記
タイトルと一部文章を第5話に移行しました。一応区切りは良くなってると思います。


第4話 因果と器

 

「一年生のみなさんこんにちは! スクールアイドルの高坂穂乃果(こうさかほのか)です!」

 

「「……え?」」

 

 一限目終わりの休み時間の始まりは、太陽みたいな少女のこの一言から始まった。

 

 

 

 それは私たち一年生が手慣れたように二限目の準備をし始めていた最中の出来事だった。三人組の内の一人が失礼しますと堂々と入って来るなり、教壇に立ち、いきなりこのような発言を言い放ったのだ。表情は何処か自信に満ち溢れている。

 当然、周囲は何のことかと呆気に取られる。それが私や凛さんのように多少認知していたなら幾分マシであったが、生憎ほとんどの生徒がこの学校にスクールアイドルが起ち上げられたという事実すら知らない。まだ日が浅いというのもあった。というか、存在を知ってた私たちも少し意表を突かれている。

 

「ま、マミちゃん。もしかして、あの人たちが…」ボソボソ

「多分、ね。でも、何しに一年生の教室に…」ボソボソ

「初ライブの宣伝、とか…?」ボソボソ

 

 ライブの宣伝、確かにその可能性はある。ただ、こんな直接的な宣伝は教師や生徒会長側の許可が下りないんじゃないかしら? 特に生徒会長はとても厳格な方で有名。ロシア生まれのハーフもしくはクォーターから「氷の女王」と異名が付くほどだ。当人たちも理解してないわけではないでしょうに…。

 三人の胸元のリボンの色は赤色、二年生で私たちの先輩に当たる人たちだった。第一声を発したサイドテールが特徴的な先輩は困惑気味に表情を変える。

 

「あれ? 全く浸透してない…?」

「当たり前です」

 

 その隣の大和撫子風の女性がピシャリと言う。表情に表れやすい方のようであなたには付いていけないと言わんばかりの呆れ顔だった。そして、もう一人は―――

 

(? えーっと…)

 

 見覚えがあった。あのミルクティー色の髪色と後頭部のトサカのような結び方は確か…。

 

「それで穂乃果ちゃんが言ってた歌の上手い子って……え?」

「あっ」

 

 ちょうどその人と目が合った。間違いない。凛さんとすれ違いを拗らしてた時、私のことを笑顔で励ましてくれた南ことり先輩だ。

 ことり先輩だと気づいた私は慌てて頭を下げる。彼女も私のことを覚えていたようでぱぁっと笑顔が広がる。

 

「あっ! あなた、ちょっといい?」

「え? 私?」

 

 一方、高坂穂乃果と呼ばれる先輩は、お手洗いから戻ってきた赤髪の同級生、西木野真姫(にしきのまき)さんに声をかける。どうやら初ライブの宣伝ではなく、歌の上手い子=西木野さんを探していたらしい。もしかすると顔だけで名前までは知らなかったのだろう。さっきの部活紹介紛いなこともそのついでだったのかもしれない。

 

「むふふ~、よいではないか~よいではないか~♪」

「ちょ、ちょっと離しなさいよ!」

「私は上級生だよ~♪」

「くっ…」

 

「い、意外。西木野さんってあの先輩たちと仲が良いんだー…」

「いや、あの様子からそうとも限らないと思うんだけど…」

 

 西木野真姫さん。その赤髪は紅茶に例えるとローズヒップティを彷彿させる。上品かつ気品溢れる女性で、それでいて何処か近寄り難い雰囲気を発している。性格はやや大人びていてクール。自身もそんな性格を熟知してるのか、自分から何かを話しかけることはほとんどない。休み時間は図書館や音楽室に一人でいると凛さんは言っていた。

 高坂先輩に両肩を掴まれ、その西木野さんは半ば強引に教室の外へと連れられる。他の二人の先輩も外に―――

 

「あっ、海未ちゃん。ちょっと穂乃果ちゃんと先に向かってて」

「? それは良いのですが、まだここに用事が残っているのですか?」

「うん、個人的にね♪」

 

 もう一人の先輩を先に行かせ、ことり先輩は私の席へ軽快に歩みを進める。その表情は旧友に久しぶりに会えたかのようなそんな嬉しそうな表情だった。

 

「えへへ、久しぶりマミちゃん♪」

「久しぶりって、一昨日会ったばかりですよ?」

「いーの! あの後、気がかりで気がかりでしょうがなかったんだから! もう、どうなったかちゃんと報告してきてよ!」

「そ、それは……すみません…」

「まあ、でもその様子だと仲直りはできたのかな?」

 

 ことり先輩は側にいる凛さんの方に目をやる。凛さんはいきなり近くまで来た見知らぬ先輩に少し驚いているようだった。まあ、無理もないわね。私とことり先輩のことを交互に見渡す。

 

「え…っと、マミちゃんこの人は…?」

「リボンの色で分かると思うけど、二年生で―――」

「南ことりって言うんだ。一昨日、マミちゃんが落ち込んでたところを励ました先輩だよ。あなたがマミちゃんの喧嘩相手だった子かな?」

「喧嘩…っていうかすれ違いみたいな感じだったんだ。私は星空凛って言います。何ていうかお騒がせしました」

「うんうん、仲直りは良いことだぞー♪」

 

 お互いに自己紹介を済ませる。何となくだけどことり先輩は人付き合いが上手だと思う。人見知りしなさそうなタイプだ。

 

「ん? 南…?」

「どうしたの凛さん?」

「いや、南、って名字にちょっと聞き覚えがあって…」

「あっ、そうなんだ。私、この学校の理事長の娘なんだ。親子なんだよ。ただ、その事で注目されるのはちょっと嫌なんだけどね」

「そ、そうだったんですか? 単に同姓かと…」

「うん。あっ、でも、変に畏まらなくてもいいよ。私のことは普通の先輩として接していいから」

「にゃー、それにしても若かったなー。南先輩のお母さん…」

「ふふっ、ここでは理事長って呼ばないとね。後、私の呼び方はことりでいいよ♪」

「うん! 凛のことも凛って呼んでね、ことり先輩! 

「おおー、凛ちゃんは元気いっぱいだねー♪」

「えへへ~♪」

 

 ことり先輩は凛さんの頭を優しそうに撫でる。凛さんも凛さんで何だか気持ちよさそうだった。ことり先輩の母親が理事長という話からあっという間に仲良くなった気がする。凛さんは既に友達感覚なのか敬語が抜けてるし、ことり先輩も特に気にしてないのか注意する素振りもない。人付き合いの苦手な私にとってこれをどう捕らえて良いのやら。ちょっと複雑な気分だ。

 

「それにしても驚きました。まさか、ことり先輩が掲示板に載ってたスクールアイドルの一員だったなんて…」

「うんうん! 急に部活紹介みたいなこともしてビックリしたよ!」

「あ、あはは……穂乃果ちゃんが一昨日音楽室で会った子を見つけるんだって聞かなくて。それに一年生で、ピアノが弾けて、歌が上手、くらいの情報しかなかったから…」

「でも、凛は凄いと思ったなー。下級生の教室にドカドカ入り込むあの姿は」

「私も上級生のクラスに出入りする時は躊躇するかも。後、凛さんはナチュラルに毒を吐かない」

「まあ、そこが穂乃果ちゃんの良い所なんだよ。こうと決めたら絶対に曲げない。私の大切な幼馴染みなんだ。もちろん海未ちゃんもね」

 

 まるで自分の宝物を自慢するかのように語ることり先輩。一昨日話していた大切な友達というのは、恐らくあの二人のことを指すのだろう。嬉しそうに見える反面、やはり何処か寂しそうにも見える。それは一昨日の時より、より強くなっているようにも感じられた。

 あくまで私の目から見て、だけど…。

 

「それにしても二人もスクールアイドルのことよく知ってたね。まだあの掲示板の情報だけだったのに」

「うん! 凛たちとしても凄い興味があったもん! 一体どんなユニットなんだろうって!」

「? そうなの?」

「はい。実は私たちもスクールアイドルを始めるかどうかで悩んでて…」

「ええぇ!? そ、それってホントぉ!?」

 

 目を見開き、机の上に身を乗り出す。あまりの勢いに私と凛さんは少し仰け反る。

 

「で、でも、初ライブを見てからって約束してるし、今どうこうじゃ決められないよ…」

「お互い保留状態なんです。ちょっといろいろあって…」

「うーん……そっかー。あー、でも惜しいなー。マミちゃんと凛ちゃんが入ってくれればちょうど五人で部活申請も取れるのに」

 

 部員を揃えられると思い込んでいた矢先、ことり先輩はちょっとだけ悔しそうな表情を見せる。でも、こればかりは私たちが出した結論だからどうしようもない。今、こんな中途半端な状態で入られても、志を共にしている三人にとっては邪魔なだけ。逆に迷惑になりかねない。

 渋々ながらことり先輩も納得してくれているようだった。

 

 

「あっ、それじゃあさ!」

「「?」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ことり先輩の提案はこうだった。今日の放課後、もし良かったら私たちの練習風景を見に行かないか。まだ基礎練習の段階だけど近くの神田明神(かんだみょうじん)でやっているから。要は部活見学のお誘い。先輩は私たちがスクールアイドルに興味があることを知り、より興味をもってもらうためこのような提案を出したようだ。

 私たちは一瞬キョトンとしてしまったが、特に用事もなかったことでお互いに二つ返事で了解した。私も魔獣狩りにはまだ時間がある。

 

「でも、何で神田神社になるんだろ?」

「練習場所が決まってないとかじゃないかしら? 部活としてまだ認定していないわけだし」

 

 神田明神は音ノ木坂学院からほとんど目と鼻の先に位置する神社だ。通学時、私もそのそばを横切っている。階段が長いという印象はあるが、特に立ち寄る理由もなかったため、神社の様子に関してはほとんど何も知らない。私より地元出身の凛さんの方が詳しいのかも。認知度は割と高いらしく、大晦日になると人でごった返すという。

 現在は神田明神に向かうため、その道中を二人で歩いている。凛さんは楽しみと言わんばかりにクルクルと踊っていた。

 

「にゃー、それにしても楽しみだなー。どんな感じで練習するんだろー?」

「……」

「やっぱ、走り込みなのかなー。スクールアイドルって結構体力も使うし…」

「……そうね」

 

 そんな凛さんの後ろ姿を、悟られぬようじっと見つめる。

 今日、なるべく昨日のことは考えないようにしていた。でも、内容が内容だけに考えるなと言われても無理に近かった。ズキッと胸の奥が痛くなる。凛さんに隠し事をしているみたいで気分が悪い。

 

 

 だって、これは凛さん本人の事なんだから―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの後、凛さんが寝息を立てたのを見計らって、私と佐倉さんはキュゥべえの待つリビングへと足を踏み入れた。キュゥべえは私たちがお風呂に入浴している間、放り投げられた部屋から上手く場所を移動していたらしい。それは最終的に凛さんの目に留まることはなかった。

 

 キュゥべえと顔を会わせるや否や、佐倉さんはどういうことだと言わんばかりにソファに腰下ろす。さっきのテレパシーでの内容は「ボクのことは適当に誤魔化してくれてもいい」。魔法少女の素質がある者は魔法少女にならないかと積極的に勧めるキュゥべえ、故に先の消極的な発言は私たちも驚きを隠せなかった。

 凛さんがキュゥべえを目視できるということは、素質になるだけのものは持っているはずだ。それなのに何故手を引いたのだろう。もちろん、凛さんには契約させてもらいたくない。普通に人としての人生を全うしてもらいたい。反面、キュゥべえの不可解な行動にも疑問が残る。それは(私が)必殺技を叫ぶ所を叫ばなかったあの気味悪い感覚に近かった。

 

 

「彼女、星空凛は魔法少女になるだけの因果量はあるが、魔法少女としての"器"がない。それだけの話さ」

 

 

 そして、問い質した結果、返ってきたキュゥべえの言葉。因果? 器? 一体、何を言ってるの? 聞き慣れない言葉に私は戸惑う。今まで魔法少女として生きていた中、このような単語を耳に入れたのはこれが初めてだった。表情から察するに佐倉さんも同じ気持ちだったのかもしれない。

 動揺する私たちを余所に、キュゥべえは動かない口で淡々と言葉を繋いでいく。

 

「魔法少女というのはね、奇跡から生まれた言わば副産物みたいなものさ。本来、叶わない祈りが叶うことを人は奇跡と呼ぶ。逆にそれは本来回るはずだった運命の歯車をねじ曲げるに他ならない。自然の摂理を破壊するのと同じことさ。当然、それ応答の対価を伴う。その祈りが大きければ大きいほどにね。なら、どういう者がその対象に入るのか。ボクが契約に値するのか」

「一つは生まれ持った因果の大きささ。魔法少女の素質がある者は、普通の人間と比べて因果量の差異が大きい。因果が強ければ強いほど運命を変える要素にも繋がる。そうだね、分かりやすく言うと意志が強い者、覚悟が強い者、憧れが強い者、自分の信念を曲げない者などがその傾向に値する。要は自分を持っているか持っていないかの差かな」

「じゃあ、あたしらもその因果ってやつが強かったから…」

「魔法少女に…」

「人並みに、ね。キミたちの因果量は魔法少女としては至極標準的なものさ。―――でも、彼女は」

 

 キュゥべえは凛さんが寝ているであろう部屋に視線を送る。

 

「彼女の因果量はキミたちを遥かに凌駕するほどだった。まったく、あの学院(・・・・)には信じられないの一言だよ。まさか、これほどの素質で、尚かつ不確定要素の者が合計8名(・・・・)も存在するなんて」

「……は? 8名?」

「ちょっと待って。あの学院ってまさか…」

 

 思わず口を挟んでしまった。それだけ私たちにとって衝撃的すぎた。

 

「国立音ノ木坂学院。あそこには星空凛と同様の者が後7人も存在するって意味だよ」

「「!?」」

 

 私たちは驚愕のあまり立ち上がってしまった。どういうことなの? 何でよりによって私の通っている学校で8人も。これは単なる偶然? それとも…。 

 不意に汗が滴り落ちる。 

 

「学院に入る直前だね、何処か異様な空気を感じ取っていたんだ。気になったボクは学院内の生徒を調査しようと動いた。最初は本当に驚いたよ。この広い千代田区一区間の一学院に8名もの不確定要素がまとまって集まっているのだから」

「そ、そんな話、急に言われても…!」

「つーことは、凛を含めた8人の人間は魔法少女の素質があるってことか…!」

「違うね。さっきも言ったよ。彼女たちは不確定要素だとね」

 

 キュゥべえは私たちに視線を戻す。

 

「それがもう一つの要素、器へと繋がるんだよ。魔法少女に適した器と一般的な人としての器、ボクが認識する限り人はそれぞれ二種類の器に分類される。それは祈りを叶える上でも非常に重要なキーワードとなる。脆弱な器で契約されてもデメリットにしかならないからね。例えるなら器はグラスコップってとこかな。ボクはそれを見極める支配人」

「ぐ、グラスコップ? 支配人?」

「想像して御覧。透明なグラスが器、容器の水が因果、被せる蓋を境目、持ち上げる力を契約、そして、上下の高低を祈りの大きさとね。システム的にもこの構成で成り立っているはずだよ」

「? どういう意味だよ。訳分からねえ…」

「つまり、祈りが叶い、魔法少女になるかならないかは、グラスを下に落として砕けるか砕けないかを計るのと同意義なことなんだ。本来なら宙にも浮かべない所、ボクが契約という形で持ち上げている。そして、砕けず残ったものは蓋が外れ魔法少女という形で世に残る」

「一般的なグラスなら砕ける所を、魔法少女に適したグラスなら砕けないってこと…?」

「魔法少女とは条理を覆す存在さ。グラス()が砕けないのも不思議じゃない」

 

 頭が痛くなるような話が続くが、キュゥべえの言っている事は要するにこうだと思う。

 キュゥべえと契約して祈りを叶えるには、魔法少女に適した強固な器と通常ではあり得ない因果量が必要。そのどちらか片方でも揃ってなければ契約の対象にすら入らない。さっきの例で挙げるなら、水が足りなければ興味を持ってくれないし、強度が足りなければ簡単に砕けてしまう。支配人(キュゥべえ)はそれら全てを丁寧に見極め、高低を調整し、グラスを下へと落とす。砕けなければ魔法少女という形でそこに残る。差し詰め外気の悪い空気なんかが魔獣ってとこなんだろう。私は簡単に推測した。

 

「はあ~~……何か分かるような分かんないような。あたしにはちと難しい話だぜ…」

「でも、待って。それじゃあ、凛さんたちは?」

「……」

「キュゥべえの話だと私たちを凌駕する因果量があるって言ってたわよね。それなのにキュゥべえの目に留まらないのはおかしい…」

 

 考えられる事とすればどちらか片方が足りない…。

 

「もしかして、凛さんたちの器は一般的な人としての器と変わらない。つまり、契約できるほどの器じゃないってこと? もし、仮にでも契約すれば…」

「! まさか…」

「その通りさ。祈りこそは叶うだろうけどその代償として存在自体が消えるだろうね。だから、ボクは契約自体を反故したのさ。どちらにしてもメリットがあるとは思えない」

 

 凛さんに自身の正体を明かさなかったのも、凛さんの好奇心旺盛な性格を考えてのことなのだろう。魔法少女の存在を周囲に明かすことも考えられなくない。そうなると今まで以上に動きづらくなるのは必須。凛さんを信用してない訳じゃないけど、こればかりはどう転ぶか分からない。それは他の7人にも同じことが言える。

 

「でも、ちょっと待てよ! そもそもあたしらを超える因果を持ちながら、一般的な器に収まることなんてできんのか! 普通だったらそれも…」

「正直、ボクもそこが一番分からない点さ。何故、その平凡な器でここまで納められることができるのか。ボクの存在が見えるほど保持できているのか…」

「素質持ちでもキュゥべえからコンタクトを取らないとまず見えないものよね…」

 

 最初はキュゥべえの方からだと考えたが、契約を交わすつもりがないならわざわざ正体を明かす必要はない。そもそもキュゥべえは嘘を吐かない。

 結果、凛さんはキュゥべえのコンタクト無しで存在を認識することができる。

 

「それに星空凛含め8名の不確定要素の因果は生まれ持った因果量でないと分かる。恐らく外部から因果律として繋がれたんだろう。それ以外にこの膨大な因果量は説明のしようがない」

「どういうことなんだよ?」

「特異点にされたってことさ。つまり、何者かが彼女らに因果律を繋ぐように仕向けた。もちろん、どのようにして繋げたか、どのような経緯があって繋げたかまではボクの知るよしもないけどね」

「……っ!」

 

 私は憤りを覚えた。他の7名は名前すらも知らないが、凛さんは誰かに恨みを買うような子じゃない。私のことを友達として受け入れてくれた本当に優しい女の子だ。それなのにこの仕打ちは何なの? どうしてこんなことができるの?

 彼女が、彼女が一体何をしたって言うのっ…!

 

「お、おい。大丈夫か、マミ…?」

「杏子。さっきのキミへの質問に答えてあげるよ。平凡な器に収まるかどうかという質問さ。答えはノーさ。既に彼女たちはボクの姿が目視可能なほど因果を溜め込んでいる。これは本来ならあり得ない状況さ。魔法少女でもないただの人間がボクの姿を明確に映し出しているのだからね。いつ限界が来てもおかしくないよ」

「!? って、ことは…」

 

 

 

「今の状態で契約するのと同じ結果さ。これ以上因果を溜め込めば不確定要素8名の器は崩壊し、自分という存在が世の中から永久に認知されることもなく、文字通り完全消滅するだろうね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ちゃん? マミちゃん!」

「!!」

 

 不意に顔を持ち上げる。見上げると凛さんの心配そうな表情が目に入った。

 

(しまった。考えすぎてた…)

 

「どうしたの? 何か怖い顔してるよ…」

「い、いえ、別に何でもないのよ。気にしないで」

 

 慌てて笑顔で繕う。でも、それだけでは凛さんは引きそうになかった。凛さんの眉が少しだけ吊り上がる。

 

「マミちゃん、凛がさっき言った言葉覚えてる?」

「え…っと、走り込みもするのかな、だっけ?」

「それも確かに言ったけど最初の方だし、さっきの言葉は「あのグループの一員になりたいって思えるだけの何かを見つけたいな」だよ。やっぱり、ちゃんと聞いてないじゃん」

「そ、それは…」

「今日一日元気もなかったし、もしかして悩み事? 何かあったの? 杏子ちゃんと喧嘩でもした? 凛、何でもマミちゃんの相談に乗るよ?」

 

 両肩を掴まれ、軽く揺すぶられる。思わずまた俯いてしまった。

 言えないよ、凛さんが消えるかもしれないなんて。馬鹿正直に話せない分、凛さんの優しさが今は痛い…。

 

「ゴメンなさい、凛さん。今は言えそうにない。事故の時みたいに割り切れそうにないもの」

「! ご、ゴメン。無理に聞き出そうとしちゃったね…」

「ううん、気にしないで。心配してくれたのよね? ありがとう」

「マミちゃん…」

 

 今はじゃない、"絶対"に言えないんだ。これは心を許し合えば話せる内容とは訳が違う。消滅にしろ魔法少女にしろ、一般人に、ましてや張本人にそう易々と話せるような内容ではないのだ。下手すると凛さんの日常に影響を及ぼしかねない。

 凛さんの立ち位置は光で私の立ち位置は影だ。それは仮にスクールアイドルになったとしても変わらない。どうあがいても私が光を拝むことはない。影は影のまま一生を終える。そんな世界に凛さんを染めてはいけない。影にしてはいけない…。

 

 まともじゃないのは、私たち(魔法少女)だけで充分だから―――。

 

「こーら、これから練習見に行くのにそんな顔しない。先輩たちも心配しちゃうわよ?」

「うん…って、それはマミちゃんのせいだにゃー!」

「ふふっ、ゴメンゴメン。じゃあ、神田明神まで競争しましょ♪」

「な、何だかいきなりだにゃ。でも、負けないよー!」

「よーい、ドン!」

「ああーっ、ズルイにゃー!」

 

 今はこの笑顔を守りたい。そのためだったらどんなことだってする。大切な友達を消滅させたりなんかしない。必ず救ってみせる。絶対に…!

 だから、今は楽しもう。今日、この一日を…。

 

 

 決意を新たにした私の足は不思議と軽やかであった。

 

 




最近、マミさんのキャラはこれで大丈夫かと心配になりかけるフィムですw

はい、今回はキュゥべえのせいで難しい説明が多かったです。ここまで考え付くまでに時間(更新が遅くなったのはココのせい)がかかっちゃいました。まどマギ知ってないと分かりにくい説明かも。

原作改編という名目で加えました「器」ですが、魔法少女の素質がない者に因果律が繋がるとどうなるかと考えた結果、人それぞれに器というリミッターがあり、(普通ではあり得ないが)上限を超えると砕け散るという、絶望要素を思いつき、本編で採用しました。
凛ちゃんを含めた8人の人間(誰でしょうねw)は一般の人よりも器の上限があり、ギリギリではありますが因果量が収まっている状況。ただ、これ以上は危険で、少しでも加えられたら器は崩壊→存在ごと世の中から消滅。契約しても8人は魔法少女に適した器ではないため祈りこそは叶うが結局は消滅、とある意味では詰み状態。キュゥべえとしてもメリットがないため自身の正体に関しては明かしませんでした。

前回の「凛ちゃんがキュゥべえのことを見れるにも関わらず、キュゥべえ自身は契約にあまり乗り気じゃない」はこういう理由です。明かすタイミングは今回で大丈夫だったのかなー…。

ちなみに今現在の謎的なものは、

・黒フードの魔法少女の正体

・黒い未確認生命体の正体

・未だに未確認が1体しか見つかっていない現状

・杏子のバイト先

・誰が因果律として繋げているのか←new

・何故一般の人よりも(不確定要素の8名は)因果量を溜め込められるのか←new


に、なっています。この中では一番最後の謎(何故一般の人(以下略))が明かされるのが遅いかな。頭の中では一応出来上がっているつもりです。

最後に今回お気に入り登録をしていただきました、
TARUTARUさん、ネギ・グラハムさん、★絶対零度☆さん、ゆーーーーんさん、ありがとうございます。
次回は更新が遅くならないよう努めたいです! 次の更新ダレカタスケテー! 
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