気張れなかった結果。前の投稿期間と合わせると11ヵ月(マジカマドカ…)…。
花陽ちゃんの誕生日回も書けなかったぜ_| ̄|○ ガックリ
まあ、遅れた原因として文字数と、何処かで詰まるとそこからスムーズに行かないってとこですかね。実際にも文章にグダグダ感が漂っています…。
視点は凛ちゃんオンリー。ところどころ毒舌要素が強くなってるかも。
「1、2、3、4、5、6、7、8…」パンパン
あの見学から少し日にちが経った。先輩たちの立ち上げたμ'sも段々学校に知れ渡るようになっていた。やっぱり、話題のものは広まるのも早い。凛のクラスでもチラホラその話題が耳に届いていた。
「穂乃果先輩、動きが大きくなっています。海未先輩はもっと笑顔に」
「「は、はい!」」
μ'sは今、いずれ来る初ライブの日に向けて頑張ってる。練習も走り込みでの体力強化に加え、先輩たちが考えた振り付けの確認作業まで行っていた。
初ライブまでやらなきゃいけないことは多かったけど、今はそれが落ち着いてる。最大の問題だった曲もいつの間にか完成。後は衣装と振り付けを覚えることかな? それでも間に合うかどうかの怪しかった状態よりは大分前進した気がするにゃ!
「はい。それでは五分間休憩しましょう」
凛たちも凛たちであれからちょくちょく顔を出している。今は主にお手伝いというか、マネージャーみたいなこと、かな。
手拍子を送っていたマミちゃんが休憩の声をかけると、先輩たちは呼吸を一つ、神社の影の方に腰を下ろす。役割的にマミちゃんが全体的な動きの確認とまとめ、凛が先輩たちのサポートといった感じ。
ちなみに何でマミちゃんの方はそうなったかというと、先輩たちが一生懸命考えただろう振り付けを一日でほぼ完璧に覚えてしまったからだ。それで先輩たちが思い切ってお願いしたんだ。ずーっと思ってたんだけどマミちゃんってめちゃくちゃハイスペックだよね。凛はもちろん先輩たちもこれには驚いてたもん。
「ふぅ、終わったぁー!」
「まだ放課後の練習がありますよ」
「凛ちゃん、私たちの動きどうだったかな?」
「最初の時よりはキレもあったよ。ことり先輩も穂乃果先輩もよく動けてたにゃ」
「おっ、凛ちゃんありがとー!」
「ありがとうございます」
三人にタオルと飲み物を手渡す。マミちゃんのハイスペックさで凛の行動が何だか霞むにゃ。雑用くらいしかできてないもん。先輩たちはそれでも充分だって言ってくれてるけどね。
「それにしても二人がここまで真面目にやるとは思いませんでした。穂乃果は寝坊してくるとばかり思ってましたし」
「大丈夫! その分、授業中でぐっすり寝てるから!」
それはそれでどうなのって凛は思っちゃうんだけど。まあ、凛が言える口じゃないんだけどね。凛も授業の半分以上は寝てるし。
マミちゃんのジト目が何とも痛いにゃ…。
「マミちゃんも凛ちゃんも朝早くからゴメンね。本当に助かってるよ♪」
「いえ、私たちが好きでやっているだけですので気にしないでください」
「そうそう! これも成り行きだにゃ!」
早起きは確かに辛いけど、これも廃校阻止のため一生懸命頑張ってる先輩たちのためにゃ。凛たちが弱音を吐いちゃダメだもんね。
(それに、こうしてみんなで何かをやり遂げようとするのって楽しいし!)
「もうどうせならさ、凛ちゃんもマミちゃんもμ'sに入っちゃいなよ♪ 今ならμ'sお姉ちゃんたちがセットでついてくるぞー♪」
「学年が一つ上だからってお姉ちゃんはちょっと…にゃ。それに仮にお姉ちゃんでも穂乃果お姉ちゃんだけはないにゃ」
「えぇ!? ちょっと何で穂乃果だけさー!?」
「一応、穂乃果ちゃんって下に妹さんがいるだけどね」
「うわー、絶対妹さんに煙たがられてるやつだにゃー…」
「むぅ~!! 何でそんなこと言うのさーー!!」コラー
「わっ、逃げろにゃ!」
穂乃果先輩が追っかけてくるので凛は即座に反応する。んにゃっ、ホントに体力がついてる!? いつもだったら練習終わりにグテーとしてるのに、穂乃果先輩もなかなかやるようになったにゃ!
「だったら、凛はコレにゃ!」
「! ふふっ、元気いっぱいやね♪」
「あーっ!! 東條先輩の後ろに隠れるのはずるーい!!」
「むふふっ、これが凛の最終奥義「巫女のご加護」にゃ!」
「いや、副会長を巻き込んで何やってるんですか…」
「「巫女のご加護」っ! 凛さんもなかなかネームセンスがあるわ…!」
「マミちゃん、そこは感心する所じゃないよね!? 穂乃果ちゃんも凛ちゃんも周りに迷惑かけちゃダメ!」
呆れた視線が地味に来るけど気にしないにゃ。巫女服姿の生徒会副会長ごと東條希先輩の後ろから穂乃果先輩を眺める。もう一つ上の先輩を盾にされて、穂乃果先輩は「ぐぬぬ…」という顔を浮かべていた。効果は抜群だにゃ!
一方の東條先輩、凛たちの行動に特に怒っている様子もなくただただ微笑ましそうな表情を向けている。何だか同じ高校生のはずなのに凄い母性を感じるにゃ。それにマミちゃんに似て大人っぽい。胸はそれ以上のメロンだし、向かうとこ敵なしにゃ!
「君たち、ずいぶん仲良くなったんやね。まるで本当の姉妹みたいやん♪」
「えぇー……いくらなんでもゴールデンレトリバーっぽい先輩の妹はイヤだにゃー…」
「ごっ!? も、もうっ! それ以上言うと穂乃果も怒るよ!?」ワンワンッ
「ふふっ、本当に仲がええんやね♪ でも、喧嘩の前にお客さんが一人来てるみたいやで?」
東條先輩は階段の方へ視線を向ける。何だろうって視線を辿ると、音ノ木坂の制服で赤い髪が特徴的な子がコソコソーとしてるのが見えた。さっきまでプンプンしていた穂乃果先輩の表情が一気に変わる。
「あっ! おーい、西木野さーん! まーきちゃーーん!」
「ヴェエ!?」
凛と同じクラスメイトの西木野真姫さんだ。穂乃果先輩の急な呼びかけに、西木野さんは不機嫌そうな顔で振り返る。
「ちょっと大声で呼ばないでっ!」
「? どうして?」
「恥ずかしいからよ! もう!」
「うふふ、ホントは名前で呼ばれるのが嬉しい癖に~♪」
「嬉しくないわよ! 勘違いしないでっ!」
こっちに近づいてきた西木野さんは頬を赤らめながら文句を言う。ちょっと意外な一面かも。普段の西木野さんは小泉さんほどじゃないけど周りと距離を取りたがるタイプだ。クラスでも一人でいることの方が多い。そんな同級生が曲がりなりにも先輩に向けてタメ口でしゃべってる。これは相当仲良くないとできないことだにゃ。やっぱり、西木野さんと先輩たちって仲が良いのかなぁ。特に穂乃果先輩とはかみ合いそうにないのに…。
というか、西木野さんは何でこんな時間帯に神社に来たんだにゃ?
「そうだ、あの曲! 三人で歌ってみたから聴いて?」
「はあ? 何で?」
「だって、真姫ちゃんが作ってくれた曲でしょ?」
「ええー!? 結局、西木野さんが作った曲なのかにゃ!?」
「ちがっ! きょ、教室で私じゃないって断言したでしょ!?」
「曲を聴いた身ではあるけど、あの声はどう考えても西木野さんの声としか…」
「だよねぇ?」
「はい。確かに西木野さんの声だったと記憶してます」
「ぐぐっ…」
やっぱり、あの曲は西木野さんが作曲したらしい。いつ間にか後ろで様子を見ていた三人の的確なツッコミにぐうの音も出ない西木野さん。思った以上に顔に出やすい性格なのかも。押されるとちょっと弱いって感じかな? つい最近
「くぅ~……がおーっ!!」
「は、はあ!? 何やってんのよ!?」
「うっひっひっひっひっひ…♪」
ホントにこの先輩は何やってるんだにゃ。西木野さんに羽交い絞めし、不敵な笑みを浮かべて顔を近づける。これじゃ変質者が何かだ。西木野さんも困惑気味に悲鳴上げちゃってるし…。
そんな凛でも呆れちゃうような光景の後、穂乃果先輩は西木野さんの耳にイヤホンを差し込んだ。
「ぃよーし、作戦成功ー!」
「レトリバーせんぱーい、普通に差し込むだけじゃダメだったのですかー?」
「普通にやったら真姫ちゃん逃げちゃうもん。ていうか、レトリバー先輩って何!?」
「れっ、レトリバー先輩…」プルプル
「ちょ、ちょっとマミちゃんまで笑わないでよー!」
「……で、これは何なの?」
まあ、そんなことはともかくにゃ―――
「え、えっと、結構上手く歌えたと思うんだ。曲を作った本人にも聴かせてあげたいよ!」
「だから、私が作ったんじゃ―――」
「拒否権はなーし!」
「ちょ、ちょっと!?」
「それじゃあ行くよぉ!」
「μ's!」
「「「ミュージックスタート!!」」」
先輩たち三人が口を揃えると、iPodの真ん中のボタンを押した。終始不機嫌そうだった同級生の顔も、この時だけは柔らかかった気がする。
始まりを告げるような心地良い風が流れたような気がした…。
「ふふっ、良い風が流れとるね…」
それからはまたトントン拍子に日にちが流れて行った。気づけばμ'sの初ライブが明日と迫っていた。本日、午前最後の授業に終止符を打ち、凛は思いっきり伸びーをする。
「ふぅー! おっひるごっはんだにゃー♪」
「凛さん。机にヨダレが残ってるように見えるのは気のせいかしらー?」
「ぎくっ! な、何のことかにゃ~…?」フキフキ
片手に弁当箱を持つマミちゃんの呆れたようなため息が響く。まあ、凛がぐっすり眠られるのも勉強できるマミちゃんのおかげみたいなもの。後でちゃんと教えてくれるし、いろいろとフォローも入れてくれる。学業面ではホントに頭が上がらないにゃ。
「……私が勉強できないタイプだったらどうするつもりだったのかしら」
「え、えへへ…」
「マミ、甘やかしたらダメよ。そいつ、甘やかしたら甘やかした分だけダメになっていくタイプだわ」
「なっ!? 何てこと言うのさ、真姫ちゃん! 凛はそんなだらしなーいタイプじゃないよ!」
「宿題終わってなくてマミに見せて見せてーって言ってたのは何処のどいつかしらね?」
「ぐはっ!」
あれ以降、西木野さん、いや、真姫ちゃんとも話す機会が増えた。今では下で呼び合う間柄だにゃ。最初はちょっと怖い人だなーとか思ってたけど、基本的には杏子ちゃんとあんまり変わらなかったみたい。ただ単に素直になれなかっただけ。人見知りでホントは誰かと友達になりたかっただと思う。お嬢様故にプライドも高かったんだ。
「ま、真姫ちゃんのオニー! 凛の救済ポイントを潰しにかかるなんて酷いにゃー!」
「何が救済ポイントよ。たまには自分の力でやりなさい」
「ぐぬぬ……仲良くなった途端、お母さんみたいなことを言い出したにゃ…」
今ではそんなプライドもなくなって凛たちと普通に話せている。真姫ちゃんから私も混ぜてもらえないかしらと真っ赤な顔で言われた時はビックリしたけど、凛もマミちゃんも快くおっけーした。それから付き合っていく内にだんだん仲良くなって……こんな感じで落ち着いてる。
「こうなったら奥の手にゃ! 真姫ちゃーん! 真姫ちゃん真姫ちゃん真姫ちゃん!」
「ヴェエ!? ちょっといきなり何すんのよ!?」
「むふふ、凛の救済ポイントの邪魔をするなら毎日こうしてやるにゃ! ほっぺすりすり攻撃にゃあ!」
「こ、このっ! あなたね…!」
こんな感じで落ち着いてるにゃ!
「こーら、凛さん。真姫さんが嫌がってるから止めましょ。それに宿題を自分でやりなさいっていうのは私も賛成です。たまには自分の力でやらないとね」
「えぇー……むぅ、しょうがないなー…」
「べ、別に嫌というわけじゃ…ないんだけど…」
「「え?」」
「!? い、嫌に決まってるでしょ!? 人が見てるのかもしれないのに頬を合わせるのなんて…!」
ほっぺを赤らめながら髪の毛をクルクルする。まあ、仲良くなっても素直じゃない所は変わらずだね。凛とマミちゃんは笑顔で顔を見合わせる。
「へぇー……人が見てなきゃ良いんだね? ほっぺすりすり攻撃?」
「は、はあ!? 誰もそんなこと言ってな―――」
「じゃあ、私も機会があったら加わろうかしら? 凛さんと一緒に真姫さんを挟んで♪」
「ちょ!? マミまで…!?」
「おー、いいねいいね! 真姫ちゃんサンドイッチの完成にゃ!」
「ふふっ、可愛らしい名前ね♪」
「ちょっと止めてーー!!」
その時が来るのが楽しみだにゃ。マミちゃんと一緒になって笑う。頬を膨らませてた真姫ちゃんも次第に表情を崩しクスクスと笑い出した。
でも、真姫ちゃんとこんな風に仲良くなるなんて思わなかったなぁ。病院院長のお嬢さんって聞いてたからちょっと話しかけづらかったし、マミちゃんはともかく凛とは釣り合わないって凛本人が考えちゃってたから…。やっぱり、人を見た目だけで判断しちゃダメだってことだね。凛も人のこと言えないよ。反省反省。
「ははは…あっ! 小泉さーん!」
「……」
三人で笑い合っていると、小泉さんがそばを通りすぎようとしてるのが見えたので声をかける。良いこと続きの流れに乗り、凛は思い切って口を開いた。
「今日こそは凛たちと一緒に食べてもらうよー。一人で食べるのなんてやっぱつまんないしね!」
「……」
「それにスクールアイドルのこともちゃんと―――」
「「凛(さん)!!」」
それにマミちゃんと真姫ちゃんが待ったをかける。さっきまでのほんわかとした空気はもうなくなっていた。
「ご、ごめんなさい、小泉さん。凛がいつも…」
「……別に。気にしない」
それだけ言うと小泉さんは廊下の方へと出て行ってしまった。凛は二人を睨み付ける。
「むぅ……どうして止めたの? まだ小泉さん、何も言ってなかったのに…」
「言わなくても分かるでしょ。ていうか、高坂先輩含めて何回断られてるのよ…」
真姫ちゃんはため息を吐く。穂乃果先輩のやってみなちゃ分からない精神に乗っかって、凛も積極的に小泉さんと関わろうとしてる。隙を見てスクールアイドルの話題を出し、興味を促すような言葉をかけたりもした。まあ、結果は先輩ともども散々なものだが…。
「でも、分からないでしょ? もしかしたら急に興味が出たりするかも―――」
「無理よ。マミと同意見だけど、興味があるとは思えないし、そもそもアイドルっていうのには向かない性格よ。本人もその自覚があるんじゃないの?」
「でも、性格だけで判断しちゃ…」
「そ・れ・に、本人は「用事がある」の一辺倒なんでしょ? だったら本当にやってる余裕もないんじゃない?」
「……でも、凛は」
「凛さん。これ以上は小泉さんにとっても迷惑になると思うわ。穂乃果先輩にも言える話だけど、少し間を空けた方がいいんじゃないかしら?」
「……うん」
マミちゃんの言葉にしぶしぶながらも頷く。今はダメ…なのかな? 二人して無理だって言うけど、凛は無理だって思ってない。しつこく誘れば、嫌々でも興味が出てくるはず。時期に気にし出すようになるはず。
真姫ちゃんの時もそれで上手く行ったって先輩が―――
「ちょっと今凄く失礼なこと考えてない?」ズイ
「と、とんでもないにゃあ」
(それに……絶対似合うと思うんだけどなー…)
真姫ちゃんにジト目で睨まれながらも、凛は小泉さんが出て行った扉を見つめてしまうのだった…。
「私、今日"は"病院の方に顔出さなきゃいけないの。あなたたちとは一緒に行けないわ」
今日"も"の間違いでしょ。まったく、いろんな理由をつけて真姫ちゃんは素直じゃないなー。
というツッコミを入れ、ほっぺを引っ張られたのはともかく、今日もいつもの二人でμ'sに顔を覗かせることとなった。ちなみに今日は明日に迫る本番に向け、英気を養うという意味で練習はお休み。今回は軽くミーティング的なことをするだけ、かな?
「いてて……真姫ちゃんめ、ほっぺ引っ張ることでもないのに…」
「あ、あはは…」
ほっぺを摩りながら屋上へと向かう。
「それにしてもあっという間だったわね。本番まで」
「うん。もう明日が本番かーって感じだもん。何だか一気にワープした気分にゃ」
「ふふっ、何よその表現」
「えへへ…」
吹き出すマミちゃんを見て、凛も釣られて笑っちゃう。でも、そんな表現が合っちゃうってほどあっという間だった。それだけ充実してたってことなのかもしれない。
「明日のライブ、どうなるのかしらね…」
「大丈夫だよ! 三人ともあんなに練習したんだし、本番でも絶対やってくれるよ!」
「……ええ、そうよね」
まったくの初心者ながらあそこまで良くなったんだ。それは練習を見てきた凛たちがよく知ってる。まだぎこちない部分もあるかもしれないけど、あの三人の表情には何かやってくれそうな雰囲気がある。絶対大丈夫なはずだにゃ!
「後……そろそろ私たちのことも、ね」
「……うん」
「凛さんはどう思う? μ'sのこと?」
「凛? 凛は良いなーって思ってるよ。練習見てても一緒に踊ってみたいって思っちゃうこといっぱいあるもん」
「そう。良かった、私と同じ気持ちね」
「でも、あんな可愛い衣装で踊る凛の姿は……ちょっと想像できないな…」
「凛さん…」
ことり先輩にライブ用の衣装をこっそり見せてもらった時も、「可愛い! 着てみたいな」と思う自分がいた反面、「でも、凛が着ても似合わないんだろうな」っていう自分もいた。ライブをすることになればあのような衣装に着替えるのは当たり前。そんな姿の凛をみんなの前に見せつけることになる。想像もできないし、想像もしたくない。
いつまでもウダウダ昔のことを、凛らしくないっていうのは自分でも分かってるんだけどね…。
「あっ、ご、ゴメンね! せっかくあの時マミちゃんが励ましてくれたのに…」
「良いのよ。自分のペースで向き合っていけばいいんだから…」
「……うん。ありがと」
優しいなマミちゃんは。やっぱり、マミちゃんに話してよかった。安堵するように凛は息を零す。
「そういうマミちゃんはどう? さっき同じ気持ちって言ってくれたけど」
「私の方もまだ問題が残ってるから、ちょっとね…」
「……それって前に話してた言えない内容と関係あるの?」
「それも…あるわね。まあ、一番はイメージがまだ固まってないってことなんだけど。―――それに」
ふとマミちゃんは後ろに目を向ける。一瞬、だけど凛の知らないマミちゃんの表情が出たような気がした。
「そ、それに?」
「……」
どうしたんだろ、と凛も一緒になって振り返る。後ろには誰もいない。なのにマミちゃんの真剣な顔はそうではないと物語っていた。―――まるで、いない何かに魅入られてるかのように。
凛の背中が一気に冷えた気がする。今日はどっちかっていうと暑い方にゃ…。
「……気配を感じたと思ったんだけどね」
「な、なな何さ! 後ろに何がいるっていうのさ!」
「……」
「ま、マミちゃん!」
「……ふふっ、なーんてね」
「へ?」
マミちゃんの突拍子のない声で我に返る。見るとマミちゃんのいつもの笑顔が広がっていた。……ややイタズラっぽい表情にも見える。
「なーんにもないわよ。早く行きましょ♪」
「う…えええええっ!? そこまで溜めてそれはないにゃあ!!」
「うふふ、凛さんってからかうと楽しいわね♪」
「からかってたの!? も、もうっ、マミちゃんのイジワル!」
「ゴメンゴメン♪」
てっきり幽霊でもいるんじゃないかってヒヤヒヤしたんだからっ!
真面目なマミちゃんということもあって、こういうイタズラをされると何か信憑性が増しちゃう。はっきり言ってシャレにならない。
「さ、先輩たちも待っている頃でしょうし早く行きましょ。ドン♪」
「うん…って、遅れてるのはマミちゃんのせいにゃ! というか待つにゃー!」
なーんか最近はマミちゃんに振り回されてばかりな気がするにゃ。まあ、それだけ凛に心を許してるってことなのかもしれないけど。凛的にも悪い気はしないし!
フライング気味に階段を駆け上がるマミちゃんを、頬を膨らましながら追いかける凛だった。
「気のせい、だったのかしら…?」
「じゃーん! ここでライブのチラシを配ろう!」
「何の前振りもなしにゃ…」
場所は変わって秋葉原。簡単なミーティングだけで終わると思ってたんだけど、穂乃果先輩の提案で今日は秋葉原でチラシ配りをすることとなった。相変わらずいきなりではちゃめちゃな先輩だにゃって思ったけど、今ならその強引さも分からなくはない。
凛は一人の先輩に目を向ける。
「ひ……人がたくさん…」
海未先輩である。チラシの束を抱えガタガタと震えてる…。
「当たり前でしょ。そういう所を選んだんだから」
何でも海未先輩は極度の恥ずかしがり屋だったらしい。人前に出るということを意識した途端、こんな感じになっちゃったんだとか。
海未先輩は何でも楽々こなしそうなイメージがあったため、この弱点はちょっと意外だった。ましてや運動部所属。強心臓どころかとんだ豆腐メンタルだったにゃ。
(矢、とかどうやって飛ばしてるんだろ…)
「ここで配ればライブの宣伝とかなるし、大きな声出してればその内慣れてくると思うよ」
そもそも何でその弱点を克服するのがライブ前日なんだにゃ。もちろん海未先輩の気持ちは凛的にはすごーくよく分かるけど、何もこんなギリギリでやるようなことじゃない気が…。
「せ、先輩しっつもーん! 海未先輩のこの弱点に気づいたのって…」
「ん? 今日だけど?」
「おっそいにゃー!!」
「あ、あはは、ごめんね…」
それじゃあどうやっても焼き…おにぎり(付け焼き刃)だにゃ! マミちゃんも不安そうな表情を覗かせる。
「でも、本日中に治すというのは流石に厳しいのでは? 人それぞれ性格とかありますし…」
「い、いえ、凛にマミ。やらせてください。井の中の蛙、大海を知らず。今の私はまさしくそれです。このままでは二人と共に立つことすらできません。……不肖園田海未、覚悟を決めて大海へ飛び込んで見せましょう!」
「「海未ちゃん!」」
何でだろう。カッコいいこと言ってるはずなのに失敗する未来しか見えない。何となく分かるよね、マミちゃん? コレ、漫画とかアニメとかでよくあるパターンだよね?
何とも言えない凛たちを余所に、海未先輩は「お客さんは野菜、お客さんは…」と呪文のように呟き―――そして、
「!!」カッ!!
「こ、ここなら大丈夫だよね?」
「まあ……ここなら…」ガーン
場所は戻って学校。えっと、結論から言うとやっぱダメだったみたいにゃ。そこで場所を学校に戻して、下校途中の生徒たちに声をかけるということになった。
見慣れてるだけあって、海未先輩の表情も秋葉原の時よりは幾分マシに見える。緊張気味なのは変わらないけど…。
「あのー……そもそも今回のライブに学校関係者以外の方々は招待できましたっけ? 生徒会長にそこら辺の許可は…」
「ハッ!」
「そ、そういえば…!」
「あぁ…はは、忘れてたね…」
凛もすっかり忘れてたよ。いやー、そういうとこ気づける辺りマミちゃんはさっすがだなー。
「忘れてた、じゃないですっ! 何も知らずこのチラシを配ってたら大変なことになってましたよっ!」
「ぴぃっ! で、でも、まだ配る前だったし…」
「結果オーライってやつだよ! 結果オーライ! 野球と同じやつだよ!」オーライオーライ
「穂乃果タイチョー! エラーしたけど何とかアウトにしましたにゃ!」アウトニャ
「分かりにくい例えを持ってこないでくださいって、二人は何コントしてるんですか!」
怒られちゃったにゃ…。
「と、とにかく配りませんか? 時間も有限ではありませんし…」
「マミ! あなただけです! この中でまともと言えるのは…!」
「(・8・)」
「ええー、マミちゃんも枕投げの時に変な必殺技叫んで―――」
「凛さん、配りましょ♪ 皆さんも♪」
「「「「は、はい(にゃ)!」」」」
マミちゃんの威圧感に圧倒され、凛たちは颯爽とチラシを配ることにした。お泊まり会の時の悪夢が甦る。この中ではマミちゃんを怒らせると一番怖そうだにゃ…。
「ファーストライブやりまーす! よろしくおねがいしまーす!」
「よろしくおねがいします!」
「ありがとうございますに…ますー!」
「明日おねがいしまーす♪」
かくしてチラシ配りを行うことになった凛たち。チラシ配り自体は皆初めてらしいけど、海未先輩以外は特に問題ないように見えた。先輩二人はポジティブな性格もあって声のかけ方がスムーズだし、マミちゃんもマミちゃんで「スマイルください」級の笑顔で応じてる。凛も猫語が出そうになることを除けば大丈夫。緊張もない。
「お、おね……っ…お願いします!」
「……いらない」
「あ…あぁ…」
やっぱり問題は海未先輩だにゃ。声をかけられず、生徒の素通りを許しちゃってる。勇気を出してツインテの子にチラシを差し出してもスルーされちゃう。踏んだり蹴ったりだった。
見兼ねた穂乃果先輩は海未先輩の元に近づく。
「もー、ダメだよ、そんなんじゃー」
「穂乃果はお店の手伝いで慣れてるかもしれませんが、私は…」
「ことりちゃんも、それに後輩の凛ちゃんもマミちゃんもちゃんとやってるんだよ? 先輩としても恥ずかしいよ?」
「そ、それは……うぅ…」
お、おう。何か今日は穂乃果先輩の方がしっかりしてるにゃ。普段はいつも逆なのに…。
(初対面の人が見たら勘違いされそうだにゃー)
「とにかく、それ配り終えるまで止めちゃダメだからねー!」
「そ、そんな、無理ですよ…」
「海未先輩大丈夫にゃ! 海未先輩は何でもできるってイメージ、凛にはまだあるよ!」
「私たちを名前で呼ぶのも慣れてきたじゃないですか。それと同じ感覚で良いんです、海未先輩」
「凛、マミ…」
まだ何処かオドオドした様子は見せていたが、凛たちの応援に海未先輩は覚悟を決めた表情になる。深呼吸を一つ。
「やります。やってみせます! これ以上一人の人間として、そして、先輩として後輩に不甲斐ない姿を見せるわけにも行きません!」
「うん! 海未ちゃん、ファイトだよっ!」
「μ'sファーストライブやります! よろしくお願いします!」
声を張り上げ、通り過ぎようとした生徒にチラシを差し出す。今度はどうだろう。……受け取ってくれた。やっとチラシの一枚を配ることができたにゃ!
「ほっ……よかったぁ。二人とも海未ちゃんに檄を飛ばしてくれてありがとね♪」
「檄を飛ばした、ってほどじゃないんですけどね」
「マネージャー的なこともしてるし、このくらいは当然だにゃ!」
「えへへ、やっぱり二人ともμ'sに入ってくれないっかな♪」ガバッ
「にゃにゃっ!?」
「こ、ことり先輩!?」
ことり先輩なりの感情表現なのか、マミちゃんと一緒に後ろから抱きつかれる。いきなりのことでビックリしちゃったけど、こういうのも信用してくれているみたいで何だか嬉しい。ことり先輩のあったかさに思わずぷわぷわぁってなっちゃう。
「あっ、ずるいずるーい! 穂乃果も穂乃果もー!」
「こらっ、穂乃果! ことりも遊んでないで配ってください!」
「は~い♪」
海未先輩の指摘にニコニコ顔のことり先輩はパッと凛たちを離す。もうちょっとあのままが良かったなぁ、なんて。マミちゃんも余韻が残ってるのかぽわぁって顔のまんま。ことり先輩の身体は人を安心させる温もりがあった。
「まったく……あっ、よろしくお願いします!」
「……」
海未先輩の方は慣れてきたのかチラシも―――
「って、花陽ちゃん!?」
「にゃっ!?」
「っ!?」
「なっ!?」
「ちゅん!?」
ことり先輩とじゃれ合っている間に通り過ぎたのだろうか。海未先輩の配るチラシを受け取る小泉さんの姿がそこにはあった。
「え? ええ!? こ、この子が噂の小泉花陽さん!?」
「ほ、本当なのですか、穂乃果?」
「う、うん。いきなり姿を表すからビックリしたよぉ…」
予想外の人物の登場に先輩たちは三者三様の反応を見せる。ちなみに勧誘を率先して行っていたのは穂乃果先輩だけだったので、他二人の先輩にとっては初対面になる。真姫ちゃんの時と同じ状況って言えば分かりやすいかな。
「あ、あれ? でも、この時間帯だったらとっくに帰って―――」
「飼育委員」
「あっ……そ、そっか…」
要は飼育委員でアルパカの世話をしていたため、帰るのが遅くなった、と。たった一言、必要最低限も満たないこの言葉だけで凛は納得させられてしまう。小泉さんは横目で凛たちを見る。
「あなたたちも、コレに?」
「あ、いや、凛たちはまだマネージャーみたいな感じで…」
「……」
「……そう」
それだけ言うとチラシに目を戻す。スクールアイドルに関しては凛と穂乃果先輩がしつこいほど話題に出していた。ほとんど右から左状態に見えた手前、ちゃんと興味を持ってくれてたことにちょっとだけ嬉しく思う。それは穂乃果先輩も同じ気持ちだった。
「えへへ……それでどうかな、花陽ちゃん。このチラシを見るってことは、ちょっとはスクールアイドルに興味を持ってくれたってことなのかな?」
「……高坂先輩」
「ん? なになに?」
「私のことを名前で呼ばないでください。吐き気がします」
「ひどっ!? 名前で呼んだだけだよ!? 何もそこまで言わなくてもいいじゃん!?」
一つ上の先輩に使う言葉じゃないよねと抗議するが、相変わらず小泉さんの目線はチラシの上。その表情からは前髪に隠されてよく見えない。……辛うじて唇を噛む彼女の姿が見えた。
「あの……小泉、花陽さん。申し遅れました。私は園田海未と申します。この度はこちらの高坂穂乃果が申し訳ありません」
「え? え? 海未ちゃん? 何で穂乃果が悪いことになってるのかな?」
「勧誘、勧誘と小泉さんにしつこく付きまとっているのは穂乃果でしょう! 否が応にも鬱陶しくなります!」
「ええ!? でも、それだったら凛ちゃんも…」
「凛は割とソフトな方だにゃ」メソラシ
「うっそだぁ! 凛ちゃんだってしつこく誘おうとしてる癖に!」
「凛と小泉さんは同じクラスメイト故に許されるのです。穂乃果は違うでしょう!」
「理不尽だあぁ!!」
な、何とかお説教は免れたにゃ。海未先輩の長いお経を耳に入れることだけはご勘弁だにゃ…。
「大体、穂乃果は毎回毎回見境がないのです! 西木野さんの時だって―――」
「あっ…あーーっ!! そういえば海未ちゃんが明日のライブで緊張するって悩んでるんだったー! 花陽ちゃん、何か良いアイデアとかないかな!?」
「露骨すぎるにゃ、レトリバー先輩」
「う、うるさいよ、この裏切り者ぉ!」
「まあまあ……でも、もし意見があるなら聞くだけ聞いてもいいんじゃないかな、海未ちゃん」
「ふ、ふむ。まあ、それもそうですね…」
海未先輩の熱が引いていくのが分かった。ことり先輩は海未先輩のいなし方が上手い。毎回毎回いいタイミングで確実に止めてくれてるもん。……それだけ海未先輩がことり先輩に甘いってことなのかもしれないけど。
穂乃果先輩から安堵の息が漏れる中、視線は小泉さんに集中する。やがて、小泉さんは口を開いた。
「コレは、園田先輩一人で行うんですか?」
「そっ、そそそそそんな! いくらなんでも一人ではっ! 穂乃果とことりがいなければ私は…」
「一人でやれてたらこんなチラシ配りなんかしてないもんねー」
「海未ちゃんは極度の恥ずかしがり屋なんだぁ。明日のライブも緊張してできませんって悩んじゃって…」
「そうですか。……贅沢な悩みですね」
「え…?」
「もう少し、周りをよく見た方がいいと思います。後、無意味な行動はしない方がいい…」
それだけ言うとチラシを鞄の中に入れ、小泉さんはそのまま校門を抜けて行った。
割と想像もしなかった辛辣な言葉に、凛や先輩たちがポカーンとする中―――
「な……何よっ。先輩方にもあんな態度…」
「わわっ、マミちゃん! おおお落ち着いて!」
「落ち着け? 凛さんは落ち着いていられるの? 廃坑阻止のために何も動いてないあの人にあんだけ言われてっ!」
「ま、マミちゃん、そう怒らないであげてぇ! きっと小泉さんも悪気があって言ったんじゃ…!」
「そそ、そうだよ! 意外と叱咤激励なのかもしれないよ! 周りをよく見ろかぁ~…。うんっ、良い言葉だと穂乃果は思うなっ! ねっ、海未ちゃん!」
「周りをよく……なるほど……確かに私は…」ブツブツ
「たっ、大変だよぉ! 海未ちゃんが悟り開いちゃってるよ~!!」
この後、マミちゃんを宥めるのと海未先輩を元に戻すので時間を使ってしまった。気づけば夕暮れ時。もう遅いということり先輩の判断で、最後は各自解散という形で落ち着いた。
帰り際、先輩たちに「明日、絶対見に行く! だから、先輩たちも頑張ってにゃー!」とエールを送り、凛たちは帰路に就く。ちなみにマミちゃんは「ティロ・フィナーレと叫べばいいのです! 何もかもスッキリします!」。夜、叫ぶつもりなのかな…。
正直、不安は尽きない。意味合いは違うけど、小泉さんの「無意味」って言葉もグサッと刺さった。でも、今まで頑張ってきたことは絶対に嘘を吐かない。凛はあれだけ頑張ってきたμ'sを信じてる。
(μ's、ふぁいと~…)
「おーー、にゃあ!」
明日、いよいよ本番を迎えることになる…。
まあ酷い言葉ばかり言っちゃってる花陽ちゃんですが、実際は海未ちゃんにアドバイス?とかしてる辺りは優しい子です。チラシも何気に貰ってあげてますしね。
ただ、マミさんとの対立は免れないかも。やっぱり「苦手」ではなく「嫌い」に近いなぁ…。
また真姫ちゃんですが、凛ちゃんたちと早々に仲良くさせました。やったね、真姫ちゃん!
真姫ちゃんは意外と書きやすい方かも。ツンデレキャラとか書きやすいのかな? ちなみに一番書きにくいのはのんたんです。←エセ関西弁とかあんまり分からんw
最後に今回お気に入り登録をしていただきました、
蒼海 燐音さん、ありがとうございました!
次は悪くても3ヵ月以内に更新したいです! でも、これ言っちゃうとフラグになっちゃうんだろうなー(汗
それでは次回の更新も頑張っていきます! 次回はファーストライブ+○○との戦闘です。戦闘描写どうしよっかなー。