とある魔術の事象選択《オールセレクト》   作:ロッソネロ

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セレクト9

大和が現場近くに到着したのと同時に大きな爆発音が鳴った。木山が警備員と戦闘しているのか?、と思ったが彼女は能力開発を受けたという記録はなかった筈だ。

 

(百聞は一見に如かずだな。さっさと向かった方がいいなこりゃ)

 

大和はさらにスピードを上げ現場に接近する。すると、目標である木山春生と気絶している初春、そして花瓶に駆け寄る御坂の姿があった。

超能力者である御坂を目の前にして一歩も退かず、尚且つ今にも戦闘を開始しそうな木山の様子を見る限り何かしらの能力を持っているのは確実だった。このまま御坂にヤらせて弱ったところで木山を攫ってもいいのだがそんなことすれば後々面倒なことになるのは目に見えている。ここは初春と御坂を庇うフリをして木山と戦った方がいいと判断した大和は、両者の間に降り立った。

 

「ん? 君は誰だ? ここに何をしに来た」

 

「名乗るほどのもんじゃねェよ。ちィと知り合いを見かけたんでなァ、気になって来ただけだよ」

 

「あ、アンタ!! なんでここにいんのよ!?」

 

後ろで御坂が騒いでいるが大和はそれを無視して御坂に言う。

 

「電気ネズミ、ここはオレに任せてそこの花瓶連れて離れてろ」

 

「え?」

 

「だから、そこの花瓶連れて離れてろ。花瓶が後ろにいたら暴れられねェだろ」

 

御坂は何か言いかけたが、今はそんなこと言っている場合ではないと思い口を閉じる。ただ一言、気を付けなさいよとだけ言うと初春を抱えて一旦この場から離れていった。

 

「いいのか? 君のことは知らないが彼女は超能力者だろう。2人で戦った方が賢明だろ思うが」

 

「要らねェ心配だな、オレはアイツよりも強い。テメェはこれから嫌ってほど味合うことになる」

 

「それは実に興味深い。君に1万人の脳を総べる私を止められるかな?」

 

その言葉と同時に木山が片手を大和に向けるとサッカーボール程の炎の玉が生成され大和に向かって飛んでいく。大和はそれを難無く躱す。

大和が攻撃を躱したのを見ると、今度は木山は右手の指を握り締める。すると、道路の割れ目から炎が一直線に大和に向かって噴き出す。

 

「ほォ、スゲェな。多重能力者(デュアルスキル)も幻想御手のお陰か?」

 

炎を躱しながら大和は言った。

 

「その呼称は適切ではないな。私の能力は理論上不可能とされるアレとは方式が違う。言うなれば多才能力者(マルチスキル)だ」

 

木山の周囲にいくつもの小さな水の塊が発生し、それが弾丸のように大和に飛んでいく。大和は圧倒的な動体視力でそれを全て躱し切る。

 

「ほう、君も何かの能力者のようだな。一連の動きを見る限り身体強化系の能力者かな?」

 

「さァな、当てて見ろよ」

 

大和はゴキゴキと首を鳴らす。いかにも余裕だと言わんばかりの態度だが木山は特に気にすることなく口を開いた。

 

「何故私の邪魔をする。私はある事柄について調べたいだけなんだそれが終われば全員解放する。誰も犠牲にはしない」

 

「誰も犠牲しないねェ…。オレは誰が犠牲になろォがどォでもいいんだよ、テメェが何をしよォとな。オレはテメェを統括理事会に連れて行く、それだけだ」

 

統括理事会という単語を聞いて木山の表情が変わった。木山からすれば統括理事会は憎むべきあの実験の首謀者に当たる存在だ。

 

「君は…統括理事会の人間なのか……?」

 

「違ェよバカ。オレはとあるお偉いさんにテメェを連れて来るよォ依頼されただけだ。まァテメェが連中を恨むのも無理ねェな。何せ大切な教え子にあんなイカれた実験させたんだから」

 

「あの実験を知っているのか!? なら何故邪魔をする!! 学園都市が君達が日常に受けている能力開発アレが安全で人道的な物だと君は思っているのか!? 学園都市は能力に関する重大な何かを我々から隠している!学園都市の教師達はそれを知らずに180万人にも及ぶ学生達の脳を日々開発しているんだ! それがどんなに危険な事か分かるだろう?」

 

「面白そォな話だな。テメェ連行した連中に聞いてみるわ」

 

大和は一気に木山との距離を詰める。人間の目では追うことのできないスピードで接近された木山に大きな隙が生まれた。

大和は掌で空気を圧縮させ木山の腹部にそっと沿える。

 

「お前の見た闇なんてほんの一端、お前が関わるにはこの街の闇は深すぎる」

 

その言葉と同時に圧縮された空気が拡散し、木山の身体が後方へ吹き飛ぶ。そのままコンクリートの柱に激突し、木山は意識を失った。

 

「あっけねェな。1万人の脳もこの程度か」

 

気絶した木山を連れて行くべく大和は手を伸ばしたが、丁度それと同時に御坂が戻って来た。最悪のタイミングだった。

 

「何する気? まさか殺すとか言うんじゃないでしょうね」

 

「テメェじゃあるまいしんなことするか」

 

まァここで死んだ方が楽だろォが…、と大和は呟いたが御坂には聞こえなかった。

大和はどうやって木山を連行するか考え、御坂は書庫の記録では無能力者である大和がどうやって木山に勝ったのか考えていた。

もしかしたらあのツンツン頭のように書庫に載っていない能力なのかもしれないと御坂は考えたが、その思考を中止させるかのように気を失っていた筈の木山が突然叫びだした。

 

「あああああああああああ!!!!!」

 

大和と御坂は反射的に木山から離れる。すると、木山の頭の中から頭上に輪っかが浮かんでいる胎児のような生物が現れる。

 

「はっ?」

 

突如、現れた未確認生物の出現に御坂は思わず声をあげた。

 

(胎児?こんな能力………聞いた事ないわよ。肉体変化メタモルフォーゼ?……いやでも、これは……)

 

この胎児は木山が何かしらの能力を使って生み出したものかと御坂は思った。だが胎児を生み出す能力なんて聞いたこともないし何より木山が今能力を使っているようにも思えない。

事態を把握できないのは大和も同様で御坂が横目で彼を見ると、困惑した表情をしている。

 

(オイオイ、何だこりゃ…? まさかコレも幻想御手の副産物なのか?)

 

大和が考えている間に胎児の目がゆっくりと開かれる。

 

「キィィャアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!」

 

目が開いたのと同時に胎児が叫び声を上げる。

鼓膜が破れそうになるぐらいの音量の叫び声は地面を剥ぎ取る程の爆風を発生させた。

 

「グッ…! なんて音出してやがる! 耳がイカれそォだ…!」

 

大和は耳を塞ぎながら鉄塊と聖人の脚力で、御坂は砂鉄で作った盾で爆風と飛んでくるコンクリートの破片を防ぐ。

 

「何なのよ!? アレ!!」

 

「知るか!! とりあえずテメェ攻撃しろ!!」

 

「言われなくたってやるわよ!!」

 

御坂は胎児に向けて電撃を放つ。すると、胎児は電撃を防ぐことも避けることもなくあっさりと直撃した。

 

(爆ぜた!? 血も出てないし生物じゃないの!?)

 

すると、爆ぜた部分が徐々に再生していき胎児の目が大和と御坂を捉えると、2人の足元から土の柱のようなものが向かってくる。

 

「ちょ、ちょっと!? 何すんのよ!?」

 

「黙ってろ!! 事態が事態なんだから文句言うんじゃねェ!!」

 

大和は御坂をお姫様抱っこすると後方へ飛び上がる。当然胎児は2人を追撃してくると思ったが予想に反して胎児は2人の逆の方向へ進んでいった。

 

「追撃してこない…? 闇雲に暴れてるだけなのか?」

 

「ちょっとアンタ!! アレ!」

 

空中で大和は御坂が指を差す方を見る。

視線の先には僅かに残った動ける警備員が胎児に発砲していた。勿論そんなもの効く筈もなく弾が貫通しても再生し、どんどんと胎児は大きくなっていく。しびれを切らした警備員の1人が背負っていたグレネードランチャーを発射する。

 

「やったの?」

 

爆風で何も見えないが全弾命中したので御坂は倒したのかと思ったが。

 

「甘ェよ。こォいう場合は大体やられてねェ」

 

大和の言葉通り、眼鏡はかけた女性の警備員の前の2人の警備員が突然吹き飛んだ。さらに胎児の身体から触手が1本、女性の警備員に伸びていく。

 

「チッ! 手前のかかる連中だ!」

 

大和は御坂を抱えたまま空中から女性の警備員に接近し、左手で彼女を掴むと引っ張る。

先程まで女性がいた場所は見事に陥没していた。

 

「助けてくれてありが………じゃなくて民間人がこんなところで何してるの!?」

 

「んなことよりさっさと逃げろ。テメェ死にてェのか」

 

御坂と女性を離すと、大和はパンパンと服に付いた砂埃を払いながら言った。

 

「悪いけど、ここで逃げる訳にはいかないのよ」

 

女性は胎児の進行方向にある建物を指差す。

 

「あの建物何かわかる? 原子力実験炉よ」

 

大和は素直にこう思った。不幸だと。

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