その1 『神裂と大和 2人の聖人が出会うとき』
己の力に苦悩した聖人 神裂火織は単身イギリスに渡った。右も左もわからない神裂に一人の少年が声を掛ける。
「行くアテがねェなら、一緒に来るか?」
2人の聖人が出会うとき、物語は始まる!
その2 『ステイルと大和 天才が見出した天才』
僕は嫌だった。偉大な父と比べられるのが。父と比べて僕は凡小な存在だった。
けど彼は違った、僕を僕として見てくれた…。
因み二つとも作者の勝手な想像です。
オレは聖人だ。聖人の強さの説明は省くがとにかく聖人は普通の人間とは色々と違う点がある。
例えば生まれつきの幸運体質。神の子である聖人は運命の赤い糸とか、神のご加護とかそういったものに恵まれている。だから宝くじを引けば殆ど当たるし絶体絶命のピンチでも奇跡が起こったかのように助かる。
オレと同じ聖人の神裂はこの幸運体質に苦悩していたようだがオレは全く気にしない。
ところが最近、オレの幸運体質が揺らいでいる。
原因は多分オレの親友で『不幸の避雷針』こと上条当麻の幻想殺しだろうがとにかく色々と面倒なことに巻き込まれる。つい先日もインデックスというガキの保護を引き受けさせられた所だ。
そして今日も、
「お腹減った」
不幸はオレから離れてくれないらしい…。
ーーー
事の始まりはオレが何時ものようにマスターの喫茶店にココアを飲みに行く道中だった。
普通に歩いていると当然誰かがオレにぶつかってきた。
文句の一つでも言ってやろうと思ったのだがオレにぶつかったヤツはフラフラとその場に倒れてしまったのだ。
これが普通のヤツだったら手を差し伸べていただろうが、倒れたヤツの服装はなんと巫女服。どうやら女のようで髪は腰まで伸びた黒髪だった。
この学園都市に巫女服、かなり頭のおかしいヤツってのはすぐわかったし何よりコイツから途轍もなく面倒な匂いがする。1秒でも早くこっから逃げ出したかったが周りから突き刺さる視線がそれを許さない。
傍から見ればオレがぶつかったせいで女が倒れた、そんな感じに見えたのだろう。
とりあえずオレは女に意識があるのか確かめることにした。
「オイ、大丈夫か?」
オレが声をかけると唸り声のような声が返ってきたのでどうやら意識はあるようだ。とりあえず病院にでも連れて行くかと思った瞬間、女が顔を上げオレに言った。
「お腹減った」
オレの直感は当たった、コイツは果てしなく面倒なヤツだ。
女が言うには空腹の余りフラフラと彷徨っていると運悪くオレとぶつかった所で限界を迎えたらしい。
なんだつまり、オレのせいだと言いたいのかこのクソアマは。
できることなら放置してさっさと喫茶店に行きたかったが風紀委員にでも通報された面倒なので、仕方なくオレは女を近くのファーストフード店に連れて行く。
「何でも。頼んでいい?」
「喧嘩売ってんのかテメェは」
オレの脅しを完全無視して女は一番高いセットを頼んだ。
このクソみたいな暑さのせいか店内は満員だったが奇跡的に空いていた席にオレと女は座る。
こんな時にツイていても全く嬉しくない。
「貴方は食べないの?」
「生憎腹は減ってねェんだよ」
「そう。ご馳走さま。でもまだ足りないから他のもの食べる」
そう言って女は手を出して金を要求してくる。
なるほど、どうやら本気でオレに喧嘩を売っているらしい。ブチ殺してやろうかと思ったがジッとオレの顔を見てくるので仕方なくオレは財布から金を取り出すと女に渡す。すると女はそのままレジへと向かって行った。
我ながら随分とオレも丸くなったと思う。
イギリスにいた頃はやれ棘だらけの薔薇とか残り1秒の時限爆弾とか沸点の低さをよく揶揄された。
学園都市に来て3年、どうやらオレも人並みの甘さとか優しさってのを覚えてしまったらしい。
「あれ? 神鬼じゃねぇか」
そんなことを考えてると後ろから声がしたので振り返る。
するとそこには上条とインデックス、そしてクラスメートの青髪ピアスの3人がいた。インデックスの持っているトレイにシェークが3つ乗っているのを見ると多分席がないのだろう。
「相席してもいいか…?」
その言葉を聞いた能力者としてのオレの頭脳がある名案を閃く。
「どォぞどォぞ、オレちょっくらトイレ行ってくるわ」
そう言ってオレはトイレとは反対方向の、出入り口の方に逃げるように去っていく。
イヤ、訂正しよう。逃げるようにではなく逃げた。
☆ ☆ ☆
店を出てから数分後、オレは教会にいた。
これ以上面倒なことは嫌だったので喫茶店は諦めて寮に閉じ籠るつもりだったのだが土御門に呼び出されたのだ。
この教会は仕事の打ち合わせに使う場所なのでまた暗部の仕事かと思ったが何故か今日は神裂も一緒だった。神裂もいるということは魔術関連の案件か。
「早速だけどオニやん。三沢塾って知ってるかにゃー?」
三沢塾…確かシェア1位を誇る進学予備校だったな。
「知っているが、それがどォかしたのか?」
オレが訊ねると返答の代わりに神裂が封筒を渡してきた。中身は三沢塾に関して書かれた資料と写真で、写真に映っていたのはさっきの巫女服の女だった。
「三沢塾に写真の女性が監禁されています。今回の任務はその女性の救出です」
資料には三沢塾に出入りする者のチェックリストや見取り図、さらには電気料金表なのだがどっか見てもおかしな点があるものばかりだった。
その中でもオレが気になったのは…
「…妙に部屋が多いな。いくら学生の街にある塾とはいえこの数は異常だ」
「その通りぜよオニやん。今から向かう予定の三沢塾学園都市支店は半端に能力開発を知ったせいで『これを知る自分達は選ばれた』と思い込みカルト宗教もどきと化したんですたい。で、連中はその『教義』に従い写真の女を拉致監禁したって訳ぜよ。けど問題はそこじゃない」
土御門は一息置くと続ける。
「問題は三沢塾が魔術師、正確に言うとチューリッヒ派の錬金術師に乗っとられたから事態がややこしくなったんだにゃー。元々は
なるほどな、確かに魔術師が絡んだとなると統括理事会もおおっぴらに動けないのだろう。もしそれで
能力者ではあるが魔術師でもあるオレならその辺は上手く対応できると踏んでいるのだろう。いい迷惑だ全く。
「ふーん。じゃあなんでその錬金術師は三沢塾も占領したんだ?」
「そもそも錬金術師の目的は
神裂の口から出た『吸血殺し』という単語にオレは眉をひそめる。
「……読めたぞ。その錬金術師ってのは吸血殺しを利用して吸血鬼を捕まえるってのが本当の目的だな? けど確保する前に三沢塾に先を越されちまったから仕方なく建物ごと吸血殺しを確保した」
「物分りが良くて助かるぜいオニやん。何が目的でそんなもの欲しいのかはわからないが碌でもないのは明白ぜよ。早急に吸血殺しを保護する必要がある」
「確かになァ。しかし吸血鬼か、まさかまだそんなもんを本気で狙うヤツがいるなんざビックリだよ」
吸血鬼の存在はオカルトを大真面目に扱う
吸血殺しって能力がある以上実在するもんなんだろうが、そんなもの狙うのは碌でもないことに使うのは目に見えている。
「まァ何でもいいけど。というかこの程度の案件に聖人2人も使う必要なんざねェだろ」
「私は任務ですぐに日本を離れないといけません。ですから今回は私の代わりにステイルと、そして上条当麻が救出を手伝う予定です」
上条が? てっきり土御門かと思っていたが何故アイツなんだ?
「オイ待て、なんであの野郎なんだよ? アイツは魔術師じゃねェんだぞ?」
「教会は貴方と上条当麻をインデックスの裏切りを防ぐ足枷を命じました」
それを聞いた瞬間、オレは今自分の置かれている状況を全て理解した。
やっぱりオレが思った通り教会の連中はどこまでも根性腐ってやがる。
「『首輪』が外れたインデックスの裏切りを防ぐためです。もしどちらかが教会の意に従わなかったら即刻インデックスを回収する事になりました」
『大至急連れ戻せ』
なんで連中がそんな大甘な処置で落ち着いたのかが今わかった。あの腹黒女のことだ、インデックスの首輪が外されたのが知った時点で幻想殺しを確保することにしたんだろう。
連中の嬉しい誤算はそこにオレが関わっていたことだ。インデックスと上条が関われば必ずオレは教会に従うと踏んでいるのだろう。
「まぁそういう訳だからしっかり頼むぜオニやん。残念ながら土御門さんは何もお手伝いできないんですたい」
「お生憎様、初めからテメェなんざアテにしてねェよ。神裂、この女の名前は?」
「
ハァ…ほんとツイてねェ。