とある魔術の事象選択《オールセレクト》   作:ロッソネロ

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セレクト14

オレは上条とステイルに遅れて三沢塾の前に来ていた。

さっきまで上条から何件か電話がきていたがどうせ一緒に行こうって誘いだろうだからオレは全て無視した。ド素人のお守しながら救助なんて死んでも御免だからな。

 

オレは顔を上げ、三沢塾のビルを観察する。が、何も怪しいところはない。魔術師が占領してるというのにだ。

 

(テロリストが立て籠もってるっつゥのにこの静けさ。それに土御門が言ってた地脈や龍脈の流れも感じない)

 

オレは魔術以外にも風水や陰陽道もかじっている。必要悪の教会時代に面白そうだから土御門に少し習ったからだ。

それ曰く、世界には地脈や龍脈っていう人間でいう血管のようなものがあるのだがこのビルからは全くそれが感じない。上手く隠蔽したようだが逆に何もなさすぎて目立っている。

 

(にしてもアウレオルスも随分と堕ちたもんだな。そこまでして錬金術を完成させたいのかねェ…)

 

アウレオルスとは今回の三沢塾占領の実行犯でフルネームはアウレオルス・イザード。錬金術師としてはトップクラスの実力者でオレとステイルの知り合いだったりする。

 

(しかし悲しいかな、他人を頼った時点でもォテメェの末路は決まってる)

 

オレは異常だらけの三沢塾に躊躇なく入る。

入った瞬間にオレが気付いたのはビル内部に充満する魔力、おそらくアウレオルスの魔力だろう。これだけの魔力、何かの結界でも使っているのだろう。

 

「入塾希望者かな?」

 

振り返るといかにもインテリ面したスーツの男が話しかけてきた。

 

占領されてるってのにこの落ち着き…。周りを見ても生徒達もいつもと変わらないように過ごしている。それを見てオレはこの結界の正体を見破る。

 

おそらくこの結界、コインでいう表と裏のようなもの。表にいるコイツや生徒達には裏で起こっていることには気付かないから占領されてるってことにも気付かない。となると、多分裏にいるヤツから表のヤツには干渉できないのだろう。

オレが未だ表の世界にいるのは極限にまで聖人の魔力を抑えているからか。これだけ微弱な魔力に気付くのはインデックスぐらいだろう。

 

正体を見破った上で、オレはこう答えた。

 

「違う、ここにいる錬金術師ブッ飛ばしに来たんだよ」

 

オレがそう言った瞬間、周りの空気が一転した。

オレの言葉を聞いた男は突然振り返り自分の仕事場に戻っていき、ビル内部の雰囲気は敵意と死が充満する戦場へと変わった。

 

普通のヤツならこの雰囲気に飲まれてしまうだろうがオレには何ともない。何せこの雰囲気の中で今まで生きてきたんだからな。

 

進んでいくとエレベーターの横の壁にもたれ掛かっている鎧を纏ったヤツがいた。鎧の足元には大量の血溜まりができており鎧は潰されている。

 

(アレは確かローマ正教の…なるほど、裏切り者の元同僚(アウレオルス)を殺しに来たって訳か)

 

死体は見慣れているのでオレは特に気にすることなくエレベーターのボタンを押す。が、案の定もの凄く硬く全く反応しない。

仕方ないので階段を登ろうとした時、オレを見る複数の視線に気付いた。

 

振り返って見るとオレの姿は見えない筈の表の世界の生徒達がジッとオレを見ている。直感でコレはマズいと感じたオレは魔力を解放し、構える。

 

(チッ、自動の警報ってとこか。となると…)

 

オレの予想通り、生徒達が口を開くと呪文らしきものを唱え始める。

能力開発を受けた者は魔術を使えないので生徒達の身体は徐々に傷付き始めるがそれでも呪文を唱えるのを止めない。操られているのだろう。

 

「オイオイ、それ以上は止めとけ。じゃねェと、死んじまうぜ?」

 

オレは剃で呪文を唱える生徒10人、一人一人の背後に回り込み意識を奪っていく。肉体だけを操られているのなら意識を奪えばしばらくは止まる筈だからだ。

 

予想通り、意識を失った生徒は力なく地面に崩れ落ち、ピクリとも動かなくなった。

 

「全く、酷ェことしやがるな。目的なためなら手段は選ばねェって訳か」

 

全員を気絶させてオレはパンパンと手を払いながら言う。

この調子じゃ何人か死んでる生徒もいるかも知れないな、まぁオレには関係ないけど。

 

そんなことを思いながら階段に向かおうとした時、ヒュンと何かが飛んでくる音が聞こえた。反射的にオレがその場から横っ飛びすると、さっきまでオレが立っていた場所が金色の黄金へと変わった。

 

「唖然。この距離で我が瞬間錬金(リメン=マグナ)を躱すとは……貴様何者」

 

振り返るとイタリア製の革靴を履いてそこから伸びる2メートルに届く細身の身体には、高価な純白のスーツに包まれていて髪は緑でオールバックのような髪型をしていた。

 

アウレオルス・イザード、今回の事件の犯人だ。しかし妙だな、まるで生きた人間の感じがしない。

 

「さァな、何者だと思う?」

 

「なに? 憮然。貴様私を馬鹿にしているのか」

 

「おーよくわかったな。実はそォなんだよ」

 

その瞬間、またヒュンという音が聞こえた。オレはさっきと同じようにそれを躱す。アウレオルスの袖から鏃が出ていた。

 

「憮然。貴様は生きてはここから出さん。ここで生きたまま黄金となるがいい」

 

殺意を秘めた目で睨むアウレオルスに、オレも応えるように殺意を向けた。

 

「そりゃあオレの台詞だ。このオレに喧嘩売って、タダで済むと思うんじゃねェぞ」

 

オレが発する桁違いの殺意と魔力にアウレオルスは一瞬怯む。オレはその隙を逃さず、一気に距離を詰めて強烈な蹴りを鳩尾に見舞った。

 

「ご、がァ…!?」

 

「おっと、まだだぜ?」

 

素早く蹴り飛ばしたアウレオルスの背後に回り込み、オレはヤツの頭を掴んで床に叩き付ける。裏の世界にいるので通常の倍以上の衝撃がアウレオルスの身体を襲う。

トドメと言わんばかりにオレは鉄塊で硬くした右足を上げ、踵落としの要領で振り下ろす。

 

「鉄塊・屋台崩し」

 

鉄塊で強化された聖人の踵落としはアウレオルスの胸に直撃する。

感覚的に肋骨が砕け、肺も心臓も破裂しただろうな。オレはう呻き声すら上げずに死んだアウレオルスを冷たく見下ろした。

 

「悪ィな、オレと一戦してェなら本物連れて来な。人形で勝てるほどオレは甘くねェ」

 

そう冷たく吐き捨て、オレは階段を登って行った。

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