とある魔術の事象選択《オールセレクト》   作:ロッソネロ

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セレクト4

電気ネズミとの戦闘の翌日、オレは土御門から大事な話しがあるって言われ屋上に呼び出されていた。野郎のいう大事な話しっつゥのは十中八九仕事のことだろォが学校で話すなんざ初めてのことだった。

 

「鬼やん、禁書目録って名前知ってるかにゃー?」

 

実物は見たことねェが名前だけなら聞いたことある。確か頭ん中にとんでもねェ数の魔道書がブチ込まれているヤツだっけなァ…。

 

「その禁書目録が学園都市に侵入したらしいぜい。ついさっきねーちんから連絡があった」

 

「オイオイ、マジかよそれ。つまり必要悪の教会の魔術師が侵入したっつゥことだろ? それってかなりマズくねェかァ?」

 

「その通りぜよ。禁書目録単体では魔術は使えないらしいけど、問題はこの街の人間が禁書目録と接触すること。もし禁書目録に何かあったら大問題に繋がるんですたい」

 

大問題どころじゃねェだろボケ。流れの魔術師ならともかくちゃんとした組織に所属する魔術師相手に何かすりゃあ戦争に繋がる可能性だってある。

 

「なるほど、オレを呼び出したのは禁書目録を探せっつゥことか…。オーケー、わかったよ。今すぐ行くからテメェは適当に………」

 

「いや、鬼やんには別のことをしてもらうぜよ。ぶっちゃけ鬼やんには今回みたいな仕事は期待できないからにゃー」

 

……認めたくはねェが確かに期待はして欲しくねェな。別にできなくはねェが人探しとか諜報活動みてェな仕事は得意じゃねェ。一刻を争う事態なだけに土御門に任せた方がよさそォだな。

 

「鬼やん、幻想御手〈レベルアッパー〉って聞いたことあるかにゃー?」

 

「知らねェなァ。なんだそれは?」

 

「能力の強度〈レベル〉を簡単に引き上げることができる代物らしいんですたい。ネット上の都市伝説みたいなもんだから俺も詳しくは知らないけどにゃー」

 

「ふーん。で、それがどォした? まさか都市伝説を調査しろとか言うんじゃねェだろォな?」

 

「ところがどっこい、それがあながちただの都市伝説じゃねーかも知れないんですたい」

 

ハァ? んなもんただの都市伝説に決まってんだろォが。簡単に強度を引き上げるもんがありゃ誰も苦労しねェっつゥの。

 

「最近よくニュースになってる連続虚空爆破事件は鬼やんも知ってるな? あれは正確には量子変速〈シンクロトン〉っていう能力の応用らしいんだが学園都市で爆発に使える強度の能力者は一人だけ。だけどその能力者は現在意識不明で入院ときてるんですたい。事件が始まったのは1週間前だがその能力者が意識不明になったのは8日前ときた。そしてそれとほぼ同時期に幻想御手の噂が広く認知されるようになった。これを聞いても単なる都市伝説で一蹴できるかにゃー? 鬼やん」

 

確かに怪しいことこの上ねェな…。けど身体検査〈システムスキャン〉の後に短期間で急激に力をつけたって可能性もある。

 

「一応補足しておくぜい。書庫〈バンク〉の記録と合わない強度の能力による犯罪はこれだけじゃねーんだぜい。先日起こった強盗事件、あれの犯人の1人も明らかに記録以上の出力の発火能力者だったらしいんだにゃー」

 

「そこまでくると単なる都市伝説じゃねェ可能性がでてきたなァ。じゃあもし仮に、幻想御手が実在してたらどォすりゃいい?」

 

「早急に開発者を見付けて確保する。その後のことは統括理事会に任せてくれとさ」

 

統括理事会? ヤツらが出てくるほど重大なことかコレ?

 

「統括理事会ったァ随分大きく出たじゃねェか。そんな必要性、オレには全く感じねェんだが」

 

「能力の強度というのは決まったカリキュラムを進めて上げていくってのが連中の言い分なんですたい。その過程を無視して強度を上げるというのがあまりよろしくないらしいんだにゃー。まぁ土御門さんからすればどうでもいいけど」

 

まぁ確かにどうでもいい理由だな。でも報酬も悪くねェし何より統括理事会からの依頼だァ。ここらで連中に恩売るのも悪くねェだろ。

 

だけどオレは知らなかった。このことをきっかけに、学園都市のイカれた内情の一端を改めて見せ付けられることになるとはなァ…。

 

 

 

 

☆ ☆ ☆

 

 

学校が終わって、オレは寮へ帰りながら幻想御手のことを考えていた。オレが疑問になってんのは一体どォやって能力の強度を上げてるのかだァ。

能力の強度は演算力の高さに比例する。演算力なんざそォ簡単に上がるもんじゃねェ。一体何をどォしたら短期間で強度を急激に上げることができんだァ?

 

んなことを考えてると後ろからズボンを引っ張られた。なんだァ?、と思い振り返ると小さなガキが目に涙を浮かべながら立っていた。

 

「なんだァ?」

 

「あ、あのね……ここに行きたいんだけど…迷子になっちゃったの……」

 

ガキの持ってるメモを見るとセブンスミストっつゥ服屋の行き方が書いてやがった。

 

「おにーちゃん、ここに連れて行って……」

 

ぶっちゃけ断りたかったが涙を堪えながら、しかも消えそォな声で言われたら断るもんも断れねェよ…。流石にオレもそこまで鬼じゃねェ。

 

「……わかったよ。連れて行ってやっから離れんじゃねェぞ」

 

「うん……」

 

まだ泣きそォだよこのガキ。まァ仕方ねェか…。ただこのまま泣かれたらオレが誘拐犯と間違われるかもしれねェ。

 

「オイ、ちゃんと連れて行ってやっからそんな面すんな。コレやるからよ」

 

オレは学生鞄から飴玉を出してガキにやる。超甘党のオレは常に何か甘いもんを持ち歩いている。まさかこんな形で役に立つとは思わなかったぜ…。

飴玉をやるとガキは笑顔になった。それでいい、ガキはガキらしく笑ってりゃいいんだよォ。

 

 

 

 

セブンスミストには無事到着したが問題はこっからだった。何故だか知れねェがこのガキはオレに懐いちまったらしい…。連れて行ったらすぐに帰るつもりだったんだが一緒に着いて来てと言われもォ1時間ぐれェ振り回されている。

 

「お、オイ! 少し休憩させて……」

 

オレは疲れていた。肉体的にではなく精神的に。オレは休憩を願ったがんなもんガン無視でガキはまた洋服コーナーに走り去っていく。もしかして女の買い物ってこれが普通なのかァ? やっぱり必要悪の教会の連中がおかしかっただけか…。

 

近くにあったベンチに座ろうとした時、全身鏡の前で挙動不審な電気ネズミが目に入った。あれじゃあただの不審者じゃねェか…。

 

「テメェ、何やってんだァ? 不審者にしか見えねェぞ」

 

「ふ、不審者!? ってアンタか!!」

 

電気ネズミの手にはダッセェ柄のパジャマが握られていた。ハッハーン…なかなか可愛い趣味あんじゃねェか。

 

「な、なによ…ニヤニヤして……」

 

「別にィ。ただテメェも歳の割りには可愛い趣味してんなァと思って」

 

「余計なお世話よ!! というかなんでアンタがこんなところにいんのよ!?」

 

「オレだって好きでこんなところ来ねェよ」

 

事情を説明しよォとするとガキが洋服を持って帰って来た。オイ、コイツの前でおにーちゃんはやめろ。要らねェ勘違いされる。

 

「なにアンタ、妹がいたの? 全然似てないけど」

 

「勘違いすんじゃねェよバカ。このガキが迷子だっつゥから連れて来てやっただけだァ」

 

「そう。まぁそれはさておき…この前のリベンジを…」

 

まだ懲りてねェのかよ…。どこまで目の敵にされてんだオレ。

 

「テメェも懲りねェな全く。テメェじゃオレには勝てねェよ。それにちったァ周りを見ろ。こんなに人がいる場所、しかもガキの前でヤるつもりかァ?」

 

「うっ……」

 

オレの指摘が応えたのか電気ネズミは黙り込んだ。電気ネズミは連れだろォか、黒髪ロングのガキと頭に花瓶を装備したガキに何か言って消えた。トイレでも行ったのかァ?

なら丁度いい、ガキはガキに任せて帰るとすっか。オレは連れて来たガキに帰ると言おうとしたがガキの姿がなかった。またどっか行きやがった…。

 

「あ、あの……」

 

花瓶のガキがオレに話し掛けてきやがった。ビクビクしてんじゃねェよ。喧嘩売ってんのかァ?

 

「御坂さんのお知り合いの方ですか…?」

 

「まァ一応、な。それがどォかしたかよ?」

 

間近で見ると改めてスゲェ花瓶だなァ…。一体何考えてやがる。

花瓶の次にオレの目に入ったのは腕に巻かれてる腕章。コイツ、風紀委員〈ジャッジメント〉か…。なるほど、オレと正反対の世界に住むヤツか。

 

「い、いえ! 随分仲良さげに話していましたから…」

 

オイオイ、仲良さげだと? テメェ本当に風紀委員かァ? どォ見てあの雰囲気で仲良く見えんだよ。オレはこんなヤツが風紀委員で大丈夫なのかと少し心配になってきた。

 

「もしかして、御坂さんの彼氏さん!?」

 

今度は黒髪ロングのガキが目をキラキラさせながらそォ言った。笑えねェ冗談はやめろ。アイツの彼氏なんざ命が幾つあっても足りねェよ。

 

「私、佐天涙子って言います! 今日から御坂さんの友人やってます! この花飾りの子は初春飾利。よろしくお願いします! 御坂さんの彼氏さん!」

 

「いつの間に彼氏になってんだ…。悪ィがアイツとはそんなチャラチャラした関係じゃねェ。寧ろギラギラした関係……」

 

そんなくだらねェやり取りをしてる間に電気ネズミが帰ってきた。それと同時に花瓶のガキの携帯が鳴った。どォやら相手は風紀委員の同僚らしい。最初は何やら焦った様子だったがみるみるうちに花瓶のガキの面が真剣なものになっていく。

 

「御坂さん! ここで重力子の加速を観測しました! 今すぐ避難を!」

 

なるほど。次に標的はここかァ。となると、近くに実行犯がいる可能性が高ェ。何かいい情報を持ってるかもしれねェし確保すっか。

花瓶のガキの言う通りに避難しようとしたら何故か電気ネズミに捕まった。オイ、離せ。

 

「避難誘導、3人でした方が早いでしょ? アンタも手伝いなさい」

 

ハァ? 何言ってだコイツ、んなもん風紀委員に任せとけばいいだろ…。

結局電気ネズミに押し切られる形でオレは避難誘導を手伝った。そのお陰もあってか思った以上に避難誘導はスムーズに終えた。

 

ふーん、あの花瓶のガキ…最初はかなり頼りなかったがなかなか風紀委員の腕章がサマになってんじゃねェか。腐っても風紀委員って訳か。ん? ちょっと待て、風紀委員…?

この時はオレはあることを思い出した。それは今までの虚空爆破事件の被害だ。

 

(確かこの事件、全てで風紀委員が確実に負傷している。いくらなんでも多過ぎる…。まさか…! 犯人の本当の狙いは!)

 

オレが花瓶のガキを呼ぼうとするとオレの連れて来たガキが花瓶のガキにカエルのぬいぐるみを渡していた。確か爆弾は何かでカモフラージュしていた筈…! ありゃあ確実に爆弾だァ!

 

「ガキ!! 今すぐそれを捨てろ!!」

 

オレの言葉と同時にぬいぐるみの真ん中から小さな球体が発生した。花瓶のガキはぬいぐるみをガキの手からはたくと守るようにガキを抱き締める。あのガキ…自分が盾になるつもりか!

 

「逃げてください!! あれが爆弾です!!」

 

んなもん見りゃわかるっての! 電気ネズミがガキ2人庇うよォに前に立った。何をする気だ…?

 

(超電磁砲で爆弾ごと吹き飛ばす!!!)

 

電気ネズミがポケットからコインを取り出そうとしている。だが焦ってやがんのかコインを掴み損ねて床に落としやがった。

 

(あのバカ!! 肝心なとこでミスりやがって!!)

 

オレは聖人の脚力を全開にして一瞬にして電気ネズミの前に立つ。

 

剃〈そる〉

目に見えぬほどの速さで地面を蹴ることで瞬間移動したかのように高速移動する。

オレが電気ネズミとの決闘で最後に使ったのがコレだァ。そしてオレが電気ネズミの前に立ったのと同時に、爆弾は凄まじい爆音と共に爆発した。

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