7月20日、今日から世の学生全てが楽しみにしていたであろう夏休みが始まる。
今年は例年以上に暑いらしく、暑さと太陽の光に我慢できなくなったオレは予定よりかなり早く目が覚めた。この暑さ、太陽がオレに喧嘩売ってるとしか思えない…。
(いくらなんでも暑すぎんだろ…。つーかなんで扇風機止まってんだァ?)
昨日の夜に回していた筈の扇風機が何故か止まっていた。電源スイッチを何回押しても全く動かない。故障だろうか? 仕方ないのでオレは備え付けのクーラーのリモコンのスイッチを押す。しかしクーラーも扇風機同様に動かない。機械に頼ることを諦めたオレは何か冷たいものでも飲んで涼もうと冷蔵庫を開けた。その瞬間、何か腐ったような強烈な異臭がした。
「ブハッ!? な、なんだこの臭い!? つーか冷蔵庫も壊れてやがるじゃねェか!?」
基本的に冷蔵庫にはあまり多く食材を入れないので被害は小さい。オレにとって重大なのは所狭しと置かれたカフェオレやココアが全て全滅していることだった。暑い日の朝は冷たいココアかカフェオレを、寒い日の朝は暖かいココアかカフェオレを飲むのがオレの日課だ…! このままでも飲めるだろうがこんなクソ暑い日にそれだけは御免だ。
食材も全滅だろうしココア飲むついでに朝メシで食うかと思ったオレは玄関に向かう。すると、誰かがオレの家のドアを叩く音が聞こえた。十中八九、上条か土御門だろうが。
ドアを開けると、前に立ってたのはやはり上条だった。それだけなら何も問題ないが上条の後ろに腰まで伸びてるだろうクソ長い銀髪にシスターが着るような純白の修道服を着た外国人の少女がいた。
ガキを見た瞬間、オレは無言でドアを閉じた。
「おいちょっと待て神鬼!!! お前が想像してることしてないから!!!!!」
怒声を上げながら上条はドアを開ける。
上条の説明はこうだ。布団を干そうとした時この女の子がベランダに引っ掛かっていて第一声がおなかへったらしい。あいにく上条の部屋にはこの女の子に食わせてあげる食べ物がなく緊急事態としてオレの所に助けを求めに来たらしい。
「オイ、オレんちはいつからテメェの食糧庫になった」
「頼む!! こんな時頼れるのは神鬼しかいないんだ!」
オレはチラッと上条の後ろにいる銀髪のガキを見る。格好から見てまず学園都市の人間じゃないのは明らかだ。十中八九コイツは魔術サイドの人間だ。その割には全く魔力を感じないが…。
「オイ、なにジーと見てやがる。オレの顔に何か付いてんのかァ?」
銀髪のガキがさっきからジーとオレの顔を見ている。喧嘩でも売ってるのか。
「……君から微弱だけど魔力を感じる。もしかして、君も魔術師なの?」
「ハァ? 魔術師? なんだそりゃ? 寝言は寝てから言え。んなもんある訳ねェだろ」
そうは言ったが内心オレはかなりドキッとした。
オレの首にぶら下がっている青い石のネックレス、これは学園都市に来た時に土御門がくれた魔力を抑え込む特殊な道具だ。これ自体にも本当に若干だが魔力が秘められているのだが、まさかこんな微弱な魔力を感知するとは…。
「寝言じゃないもん!! 魔術はあるもん!!」
「あーわかったわかった。魔術はある。んなことよりテメェ腹減ってたんじゃねェのかよ」
「忘れてた……。思い出したら一層おなかへったかも…」
とりあえず、コイツらに何か食わしたら摘み出そう。そうオレは心に決めた。
「悪ィがオレんちも食材は全滅だ。だからコレで我慢しろ」
そう言ってオレは上条と銀髪のガキにカップ麺を渡す。カップ麺が置かれた瞬間、銀髪のガキはいただきまーす!、と言ってカップ麺にかぶりついた。オレは奇跡的に一本だけ生き残っていた缶ココアを飲む。
「まずは自己紹介からだね。私の名前はね、インデックスって言うんだよ」
インデックスだと…? 確か土御門が探していたヤツの名前も…
「誰がどう聞いても偽名じゃねか!!!」
「見ての通り教会の者です、ここ重要。ちなみにバチカンの方じゃなくてイギリス清教の方だね。それと 禁書目録〈インデックス〉の事なんだけど・・・あっ魔法名ならDedicatus545だね」
「もしもし?もしもーし?一体ナニ星人と通話中ですかこの電波は?」
ビンゴ…イヤ、最悪の状況だ。土御門が探していたヤツを最初に見付けたのがよりによって一番面倒臭いヤツだだった。
(オイオイ、これって最悪の状況じゃねェか…。コイツの性格考えりゃ風紀委員とか警備員の方がマシなんじゃね?)
あっという間に上条とインデックスがたいらげたカップ麺のゴミを片付けながらオレはチラッとインデックスを見る。
まさかこんなガキが103000冊の魔道書を司るヤツとは…。実物を見るのは今回が初めてだがとても信じられない。
「そういえばどうしてお前はあんな所に引っ掛かっていたんだ?」
上条が誰もが気になっていたことをインデックスに訊ねる。オレは聞かずとも大体わかるが。
「落ちたんだよ。本当は屋上から屋上に飛び移るつもりだったんだけど」
確かにこの学生寮と同じようにビルとビルが並んでいて隙間はだいたい二メートルぐらいしかない。
走り幅跳びの要領で飛べば何とか飛び越える事が出来るだろう。
上条はなぜそんなことを?、と聞くとインデックスは、
「追われていたからね」
信じられないぐらい普通に、インデックスはそう答えた。
一瞬空気が止まったが上条がまた訊ねた。
「追われていたって何にだよ?」
「魔術結社にだよ」
今度は別の意味で空気が止まった。
魔術結社、おそらく必要悪の教会のことだろう。まったく、本国の問題をこんな極東の国にまで持ち込むのは勘弁して欲しい。尻拭いさせられるのはオレと土御門なんだから…。
インデックスの話を聞いて上条は魔術の存在を頭から否定して、インデックスも魔術はあると言い張っている。このままだと埒が明かない、というか帰ってくれないと判断したオレは話を進める。
「この際、魔術の有り無しなんざどォでもいいだろ。なんでテメェは追われていた」
勿論オレはその理由は知っている。コイツの持つ103000冊の魔道書が狙いだということは。案の定インデックスはそう答えた。
「じゃあその103000冊の魔道書とやらはどこにあるんだよ? まさか馬鹿には見えないとか言うんじゃないだろうな?」
上条の質問にインデックスは「馬鹿じゃなくても見えないよ」と答えた。上条はもう付き合ってられないといった表情をしているがオレはそんなこと無視してある提案をした。
「上条、納得できねェならその右手でコイツの魔術消してみろよ。テメェも魔術師なら一つか二つぐらい何か魔術使えんだろ?」
オレの出した提案に上条は納得したようだが何故かインデックスは困った表情をしていた。
「わ、私は魔力がないから魔術は使えない……」
あー確か土御門がそんなこと言ってたような気がする。すっかり忘れていた。
「じゃあ何か魔力が篭ったもんはねェか? 流石にそれぐらいはあんだろ。コイツの右手は幻想殺し〈イマジンブレイカー〉とかつってなァ、触れるもんが異能なら何でも打ち消す訳わかんねェ右手なんだよ」
「それならこの服。これは「歩く教会」っていう極上の防御結界なの。布地の織り方、糸の縫い方、刺繍の飾り方まで全てが計算されているの」
歩く教会、確か法王級の防御力があるとかいう代物だった気がする。この世に数えるほどしかない特注品でオレも実物を見たのは初めてだった。
そうですかい、と言って上条がインデックスに触れた。本当に魔力が通う代物ならここで木っ端微塵になる筈なのだが何の変化もない。
「あれ?」
「ほらほら何が幻想殺し(イマジンブレイカー)なんだよべっつに何も起きないけど?」
インデックスは両手に腰を当てて小さい胸を大きく張るインデックスだが次の瞬間にはプレゼントのリボンをほどくようにインデックスの衣類がストンと落ちた。頭の一枚布の帽子は右手で触れなかったので無事だがそれ以外は全部床に落ちている。
つまりインデックスは完全に素っ裸の状態だった。
現在の自分の状態がわかった瞬間、インデックスは目に涙を溜めながら上条の頭にかぶりついた。