俺は壊れかけていた。
あのクロトの依頼で付近の村の様子を見る護衛を突き合わされた。
何でも、都の貴族が税を上げ、その影響がどれほど酷くなっているのか知りたいそうだ。
正直、クロトが偽善でそんな真似をするとは思えなかった。しかし奴曰く「私自身が外道でロクデナシなクズなのは自覚している。実験体にした君に許しを請う気はないしな。私も周りの人間がどうなろうと知ったことではないと思ってはいるよ。だが、私の才能を知る人間は一人でも多い方がいい。私の父のような命の冒涜者にだけはなりたくはないのだよ。何故なら、いずれ神となる私を崇めるのだからなぁ!ハーッハッハッハ!」
成程、実にクロトらしかった。
だが、その村の光景は想像を絶するほど酷かった。
税で食べるものをすべて奪われ、飢えていた村人だった。
共食いしている人がいた。
土を食べてる人がいた。
苦しみで自殺している人がいた。
死んだ人間の死体が散乱していた。
気が狂いそうだった。辛うじて、クロトが術で俺の正気を保った。
「酷いものだ。私は贅沢は嫌いだから最低限の生活しかしていない。贅沢する暇があるなら術の研究と開発をするからだ。だが、都の連中はお構いなしに贅沢をし、肥えている。見るに堪えないほど醜かったな」
だが、それは・・・・・・仕方ないことだ。奪うものと奪われるもの。そうなってしまうのは自然の摂理なのかもしれない。
だが、これは余りにも・・・・・
俺に彼らを救うことは出来ない。無力だ、俺は
「君は救世主にでもなる気か?まあいい。ならお勧めの寺に行くと良い。水晶のように純粋な君はあの寺がお似合いだろう。ああそれと、実験にはもう付き合わなくていい。安倍晴明や芦屋道満と言った術士を超える手立てはもうできているのでな」
そう言ってクロトは俺を置いて都に帰っていった。
◆◇◆
クロトに進められて向かった先にあったのは、大きな寺だった。
「君がクロトさんが言っていた武闘家かな?僕は聖命蓮。この寺の僧だよ」
寺から出てきたのは、年若い青年だった。
ん?かすかに人間以外の気配を感じる?でもコイツからじゃない。
「ああ。この寺はね、姉さんの希望で妖怪と共存しているんだ。と言っても、毘沙門天様の弟子と使い。修行僧となった女性の妖怪がいる程度だよ」
・・・・・・なんなんだよここは。クロトの奴、一体何を考えて俺をここに紹介したんだ。
「さて、彼の話だと君はここの僧になりに来たんだよね?じゃあ、頭を丸めようか」
え?は?ちょ、ちょっと待て何の話だ?てか、アンタは頭を丸めてないだろ!
「姉さんに止められてしまったから無理なんだソレ。じゃあ、行こうか」
は、放せ!やっ止めろぉーーーーーーーーー!!外見の優男とは思えない怪力で俺は強制的に奥に連れていかれた。
そして俺は髪を失った。
今回のゲストは聖命蓮。東方プロジェクトの聖白蓮の弟(故人)です
次回、修行編。