ガタンゴトン。
音が聞こえる。
ルビィは、耳に入ってくる音に目を覚ました。
「ん? ここは・・・・・・」
起きようとして、体の痛みに顔をしかめた。
自分が今いる場所を確認すると、長いすの上であることがわかった。
何でこんなところで寝てたのか。疑問に思ってあたりを見回してみる。
すると、
「こんにちは。起きたみたいですね」
「ピギィ! ええと、あなたは・・・・・・」
ルビィが目を開けると、メッシュの入った髪の女性が目に入った。
てかてかに光ったおおよそ私服では考えられないデザインの服に身を包んでいる。何かの制服だろうか。
見慣れない場所に怪しい格好の人と少し狭い部屋に二人というこの状況。
ルビィの思考はある結論に達する。
「ここはどこ? もしかしてルビィ、誘拐されて・・・・・・。ピギィィィイイイ」
「ちょっと、落ち着いて。誘拐とかではありませんよ。あなたが倒れていたので、ここに運ばせてもらったんですよ」
「へ? そうなんですか?」
自分がさらわれたと思って騒ぎ出したルビィだったが、女性が冷静に笑顔で説明すると状況を理解し始めた。
「それじゃあ、ルビィを助けてくれたんですか?」
「はい。とは言っても、ここまで運んだのは私ではありませんけどね」
「そうなんですか・・・・・・。ありがとうございます」
ここで寝ていた前の記憶が曖昧ではあったが、彼女の言うとおり道ばたに倒れていたなら大変だ。
自分の住む近くでなんて信じたくはないが、不審者がどこにいるとも限らない。道ばたで倒れていたなら、格好の餌食になって、それこそ誘拐でもされていたかも知れない。
そのままにされていたらどうなっていたか。考えただけでぞっとする。
ルビィは、自分を助けてくれた人と女性に感謝した。
そのこともあり、彼女に対しての警戒はなくなっていた。
「そうだ。お名前はなんていうんですか?」
「ああ、申し遅れました。私は、ナオミって言います。そうだ。ちょっと待っててくださいね」
ナオミは、ポンと手を叩くと部屋の奥にある小さなキッチンでなにか作業をしていた。
なにをしているのだろうと見ていると、程なく何かが完成したのか、ナオミはそれを持って戻ってきた。
「はい、どうぞ」
「これは、なんですか?」
彼女の前のテーブルに、カップが一つ置かれた。
「コーヒーです。それを飲んで、落ち着いていただけたらなぁっと思いまして」
「あ、ありがとう」
ルビィが落ち着けるようにと気を遣って置いたのだろう。
状況の整理が付かない自分を見て飲み物を出してくれるなんて。なんていい人なのだろう。
ルビィは、その心遣いに感謝しながらカップに口を付けようとする。
つけようとして、しかし中身を見て口にカップの縁を持って行こうとしていた手が止まった。
「な、なにこれ・・・・・・」
思わず疑問の声を漏らした。
カップの中に入っていたのは、おおよそ飲み物とは思えないクリームだった。
いや、コーヒーにはウインナーコーヒーのようなコーヒーの上にクリームを乗せるものもある。
ルビィは、そのクリームをウインナーコーヒーの一種ではないかと考える。考えるのだが、今度はクリームの色という新たな疑問が首をもたげてくる。
なぜなら、そのクリームの色は白ではなく赤や青。出してくれたナオミには悪いと思いつつも、飲むことがためらわれる飲み物だった。
「ええと、これは・・・・・・」
「私の自信作です。飲んでみてください」
「で、でもこれ」
「絶対おいしいですから。ささ、早く飲んでみてください」
「うぅ・・・・・・」
彼女は、ルビィのことを気遣って入れてきてくれたのだ。その思いはむげにできるものではない。が、今まで見たことのない色のクリームがふんだんに使われた彼女がコーヒーと呼ぶそれを飲むのはためらわれてしまう。
どうすればいいのだろう。
飲むべきか、飲まざるべきか。
ルビィの頭の中で、それぞれのさらにそれぞれを乗せた天秤がゆらゆらと揺れていた。
どうしようどうしよう。
考えに考え抜いて、ルビィは意を決して結論を出す。
「ん――。・・・・・・」
ルビィは、再びカップを持つと唇を押し当て、口の中に正体不明の液体を流し込んだ。
堅く目を閉じ、最悪の状況に備える。
「あ、おいしい」
「よかったぁ。お口に合って」
おいしかった。
それも、ルビィがいままで飲んできたコーヒーの中で一番と言えるほどのおいしさだった。
ルビィは、コーヒーの苦みが苦手だった。コーヒーに持つイメージはまさに大人の飲み物という感じで、そんなに率先して飲もうとするものではなかった。
今回飲んだものにも確かに苦みも少しあった。が、ルビィはそれを苦手だと感じなかった。
その理由は、コーヒーの上にふんだんに乗せられた異色のクリーム。
なんとも形容したい不思議で濃厚なクリームは彼女の舌を優しく包み込み甘くとろけるのだ。
とはいえ、そんな濃厚なクリームも大量に使われているために、そのままでは飽きてしまう。それを飽きさせないために一役かっていたのがルビィの苦手とするコーヒーの苦み。クリームがあることでコーヒーの苦みも心地よいものとなっていたのだ。
飲むまで、そのコーヒーに難色を示したルビィは、
「すみません、その・・・・・・」
「はい、なんですか?」
「申し訳ないですが・・・・・・」
おずおずと申し訳なさそうに、飲み干したカップを女性へと押し出した。
どうしたのかとナオミは様子を伺うとルビィは、
「おかわりをいただけますか?」
「はい。よろこんで!」
恥ずかしそうにそういった。
ナオミは、それを聞くとカップを受け取って再びキッチンへ向かった。
ルビィに自分のコーヒーが気に入ってもらえたとわかったナオミは、最初に入れたときよりうきうきした様子で作業を始めた。
「ふぅ。おいしかったぁ」
ナオミが入れるコーヒーの威力は絶大だった。
おかわりもすぐに飲み干し、そのおいしさにしばしの間放心するくらいに絶品だった。
コーヒーを飲み終わったルビィは、長椅子の背もたれによっかかってほっと息をついた。
目覚めた瞬間には、自分が誘拐でもされたのではないかと動揺していたルビィだったが、おいしいコーヒーに心を満たされ、すっかり警戒を解いていた。
ルビィは、すっかり落ち着いたところで改めて部屋の中を見回した。
まず、ガタンゴトンという音ともに小さく揺れるこの部屋。
誘拐などではないという言葉に安心してしまっていたが、どうやら普通の部屋ではない。
その部屋は長細い形状をしており、側面には均等な距離に四角い窓が開いていた。
ルビィが寝かされていたのは、部屋の短辺の半分くらいの長さのいす。そのいすの前には、同じくらいの長さの机があった。
ルビィは、この形状の部屋にどこか見覚えがあった。
いや、正確には同じような形状の部屋を見たことがあった。
ルビィが見たことがあったのは、もっとたくさんの人がひしめき合うような場所だった。
座席はすぐに埋まってしまうため、立ったままでいる人を考慮して、天井からはつり革とそれを支える金属の棒があって……。
「え、ちょっと待って」
ルビィは、何かに気づいて一番近い窓から外を見た。窓からの景色を見て、彼女は絶句した。
その景色から、ここがどこなのかはわからなかった。なぜならその景色は、おおよそ普通では見ない光景だったからだ。
その景色にあるものを確認しようとしてもできない。右から左へと景色が流れていってしまう。
部屋の周りのものが動いているのか。いや、動いているのは彼女がいる部屋自体だ。
そう。彼女が見た覚えがあったのは、電車の内装。
彼女がいるその場所も、電車の車両のような形状をしていたのだ。
が、彼女が言葉を失ったのは、自分がいる場所が電車のようなものの中だということがわかったからだけではない。
窓から見えるのは、いくら進んでも代わり映えのしない景色。
それだけ聞けばなんてことはないかも知れないが、それは比喩などではなかった。本当に変わらない風景だった。
空は、でたらめに色を混ぜ込んだガラス細工のような虹色。そして、その下に広がるのは、真っ白な砂漠。どこまで行ってもどこを見ても砂漠。
もしここに放り出されでもしたら気がふれること間違いないと思ってしまうほどなにもない景色だった。
「本当に・・・・・・、ここ、どこ?」
ルビィは、目の前に広がる砂漠をみて、涙目で呟いた。
「ったく、結局見つからなかったじゃねえか」
見たこともない場所に迷い込んでしまった事実に気づいたルビィの耳に、新たな声が聞こえた。
その声は、少し前に聞いたことのある声。ルビィは、すぐさま声のした方へ振り向いた。
すると、
「まぁ、そうかっかしてもいいことないで」
「そうそう。探すのとかだるいし、焦らず待とうよ。釣りも焦らずじっくりってね。それに、手がかりはちゃんとここにいるわけだし」
「うるせぇなぁ、分かってるよ。おいナオミ、コーヒーだ」
「かしこまりました!」
自動ドアが開き、その奥から見覚えのある人物? たちが顔を出した。
「あら、起きてたんだ。大丈夫、お嬢さん?」
「へ? あ、ああ」
全身真っ青で、体のあちこちに六角形の模様のついた亀人間のような人がルビィに気づいた。
彼は、ルビィを見るなり、ルビィの横に座った。
「いきなりあんな怪物に襲われちゃうなんて、災難だね。怖かったよね? でも大丈夫。僕が守ってあげるからさ」
「おい亀。いきなりナンパしてんじゃねぇよ」
「先輩。いくらなんでも、こんな子供に手は出さないよ。失礼しちゃうな」
「諦め。自分の日頃の行いが悪い」
「さっきまでぐっすりだったよね。よく寝れた?」
いきなりなれなれしく話す青い亀を、続いて現れた赤い鬼が引っ張って立たせる。
どうやら、女性に対していつも口説くように接しているようで、黄色い熊も赤鬼に同意する。
「ああ、ええと、その……」
いきなりの口説き文句に困惑していたルビィに、紫の竜はさっきまでの話を全く無視したことを彼女に聞くものだから、ただでさえ状況を整理できない彼女にその機会を与えない。
が、どこかで切り出さなければ一向に状況が整理できないままだ。
ルビィは、意を決して声を上げた。
「あ、あの!」
「な、なんや。いきなり大声出してどうしたん?」
「あの、あなたたちは、なんなんですか?」
ルビィの問いに4人は顔を見合わせるが、それもそうかと頷いた。
「ん、俺たちか? 俺たちは、イマジンだ」
「そんなこといきなりいっても分からないでしょ?」
赤鬼は、自分たちの総称を答えるが、それではルビィには伝わらない。そこで変わって青亀が口を開く。
「イマジンっていうのは、人のイメージを得て実体化する、未来人の精神体ってとこかな」
「すみません、まったく分かりません」
「さっき君といっしょにいた馬みたいな奴もイマジンなんだよね。ああ、でも僕らはあいつとはちがっていいイマジンだからそこらへんは理解してほしいな」
「あいつらも僕たちももとは、過去にいって歴史を変えるーとか、使命がなんだーって言われて来たんだよねぇ。でも、僕は別にそういうの全然興味なかったし、ほかに楽しいこと見つけたからここにいるんだぁ」
「そう。あいつら、過去を変えてこの時間の出来事も変えようとしとる悪い奴や。俺たちは、そういう悪いイマジンと戦ってるっちゅうわけやな」
「過去を変えて、未来を変える・・・・・・」
いまいちピンとこない言葉の応酬に頭が追い付かないルビィだったが、過去を変える、そして未来を変えるという言葉に引っ掛かりを覚えた。
そう、ルビィも今日、イマジンのような理解できないもののほかに、普通では説明のつかない現象に直面していたのだ。
「歴史を変えるって。じゃあ、スクールアイドルがなくなってしまったのってイマジンのせいなんですか?」
「なんや、そのすくーる、なんちゃらっちゅうのは」
「スクールアイドル。簡単に言うと、学校の部活などでアイドル活動を行っている高校生のことです。歌ったり踊ったりすごく楽しくてきらきらしてて。ルビィもスクールアイドルやってたんですよ。ただ楽しくやってるだけじゃないですよ? 年に2回、夏と冬に1回ずつラブライブって大会があって――」
「――ちょっと、ルビィちゃん。少し落ち着いて」
「はっ。はい、ごめんなさい・・・・・・」
「君がそのスクールアイドルが好きだっていうのはわかったけど、今は要点だけ話してくれると嬉しいな」
「は、はい。ええと、昨日も変わらずルビィたちAqoursのみんなでそのラブライブで優勝する事を目指してがんばってたんです。なのに、今日起きたら、そのスクールアイドルがなくなってて、みんな知らないって言ってて……。う、うぅ……」
話していて、ダイヤから始まるスクールアイドルについて聞いた時の反応を思い出してしまった。
スクールアイドルが大好きなルビィには、それは何度思い出しても許容できるものではなかった。
ルビィは、悲しくなって泣き出すてしまった。
「おう、どうした? 涙はこれで拭いときぃ」
「あ、ありがとうございます」
すると黄熊がティッシュを手渡した。
ルビィは、それを受け取ると、涙を拭きながらどうにか気を落ち着けようとした。
「よくわからねえなぁ。なくしものが全部イマジンの仕業とは限らねえだろ」
スクールアイドルという単語に聞き覚えのない赤鬼は、単なるなくしものだと思ったようだ。
それをイマジンのせいといえるのか腕を組む。
と、そこで何かに気づいたのか顔を上げる。
「って、ん? ちょっと待ってよ・・・・・・」
赤鬼は、いきなりぐっとルビィに顔を近づけた。
鼻と鼻が触れ合いそうな距離で、赤鬼の黒い瞳が、ルビィの目をにらみつける。
「お前、いまなんて言った?」
「な、なんですか? ルビィ、なにかおかしなこといいましたか?」
「先輩、いちいち怖がらせないでよ。でも、僕もちょっと引っかかったな」
急接近した赤鬼の顔を青亀が引き離す。すると、青亀はもう一度ルビィの横に座った。
「ルビィちゃん、スクールアイドルがなくなったとか言ってなかった?」
「はい。今日、朝起きたら、スクールアイドルが、Aqoursがなくなってて。・・・・・・ううっ」
「ちょっと泣かないで。先輩、女の子を泣かせるとか、最低だよ」
「わ、わりぃ」
一応、いきなり顔を近づけて怖がらせてしまったと自覚があったのか、赤鬼は、そっぽを向きながらも謝罪した。
そんな姿を見ながら青亀は、腕を組んで何かを考え始める。
「これは興味深いね」
「ん、なにがや?」
「スクールアイドル。アイドルって入ってるだけあって、さっきのこの子の話からもスクールアイドルは、僕たちが知っているアイドルとそう変わらないものだと思うんだよね。アイドルって、特定の何かを指している言葉じゃないし、そんな一日二日でこの世から消えてしまうものじゃないよね」
「そうか。すくーるあいどるってのが何かはいまいち分からねえが、そういうことならイマジンの仕業に違いねぇ」
それがただのものであるなら、ただなくしただけだとかイマジン以外の原因がいくらでも考えられる。しかしアイドルは、固有の何かを指すものではなく、そのような行動を行っている人の総称だ。それをなくすためには、それこそ人の記憶からなくしてしまうくらいのことをしなければならない。
そんなことが出来るのは、過去へ飛ぶことのできるイマジンくらいだ。
そうなれば、ルビィのいうスクールアイドルが消えたというのは、ほぼイマジンの仕業だとして間違いないと確信した。
が、青亀にはもう一つ引っかかっている点があった。
「それもそうなんだけど、イマジンによってそのスクールアイドルが消えちゃったなら、この子がそれを知ってるのっておかしくない?」
「たしかに・・・・・・」
青亀の疑問に赤鬼、そして黄熊と紫竜がルビィの方へ顔を向ける。
「「「「もしかして――」」」」
「ピギィ」
今度は4人同時に声を上げた。
いきなりの4人同時の声に驚くルビィに、赤鬼が問う。
「お前、特異点か?」
「とくいてん?」
またもや聞き覚えのない言葉に困惑するルビィ。しかし紫竜は、ルビィの返答も待たずに騒ぎ出した。
「へぇ。お前、特異点なんだ」
「と、とくいてんって、なんなんで――」
「――じゃあ、また電王になれるんだ」
「でん、おう?」
もはや、ルビィは置いてきぼり。
紫竜に続いて、今度は赤鬼が立ち上がった
「それもそうだな。久しぶりに、俺のチョーかっこいい必殺技を披露してやるか」
「必殺技? なんのこと?」
「あのイマジンと戦うっちゅうこっちゃ」
「た、戦う?」
ルビィが問うと、黄熊は物騒なことを言い出した。
「せや。言うたやろ? 俺たちは、悪いイマジンを倒してるってな」
「そう。過去を変えようとしてるイマジンを倒して変更を阻止したり、不当に変えられてしまった時間があったら、その変化の原因を正して元の時間の流れに戻したりするのが僕らなんだ。君がいうようにスクールアイドルがイマジンによって消されちゃったみたいだから、それを正すのも僕らの仕事ってわけ」
「本当ですか?」
青亀から彼らの目的を聞き、ルビィはやっと表情を明るくした。もしかしたら、ずっとこのままスクールアイドルがない世界で生きていかなければならないのかとも考えていた。そこに、スクールアイドルが戻るかもしれないという知らせ。
それは、ルビィ一気に元気にするには十分なことだった。
ルビィは、一番近い青亀の手を取った。
「じゃあ、お願いします。どうか、スクールアイドルを、元に戻してください」
「うん、任せて。僕らが必ず元に戻してみせ――」
「――なに言ってんだ。お前も戦うんだよ」
「え?」
「え? じゃねえよ。お前も戦うんだよ」
何を言っているのだろう。やっと希望が見つかったのに、ルビィは再び固まってしまう。
ルビィは、ただの女子高生だ。スクールアイドルとして鍛えていたとはいえ、格闘技をやっている人からしたらはるかに軽い鍛錬だ。
そんな、少女に戦えと? いったい何を言っているのかルビィには全く分からなかった。
「ルビィも? ・・・・・・むりむりむりむり! ルビィ、戦うなんて無理ですよ」
「なに? お前。スクールアイドルとか言うのを取り戻したいんだろ」
「は、はい」
「なのに、それを他人に任せきりにしようていうのか」
「それは、そうですけど。戦うなんて、やっぱり無理ですよ」
「安心しろ。なにも、お前だけで戦えなんて言ってねぇ。俺たちと一緒に戦ってくれさえすれば」
「無理だよ。ルビィ、全然強くないし」
「特異点のお前だったら戦う力は大丈夫だ。それに――」
「――戦う力があっても、ルビィには無理だよ」
「なっ。お前……」
「え、あの……」
「まあまあ、今はそのことは置いておこうよ。どうするにせよ、まずはあのイマジンを探さないと。ルビィちゃんは、あのイマジンになにをお願いしたの?」
まずい空気を察知した青亀は、赤鬼を抑えつつ話を変えた。
赤鬼は、しぶしぶ椅子に乱暴に座った。
ルビィは、赤鬼が今にもキレだしそうになっていたことに震えていたが、青亀のおかげで赤鬼が矛を収めたことでほっと胸をなでおろした。
そして彼女は、怪物と話した時のことについて話した。
ルビィの話を聞くと、青亀は顎に手をやった。
「それちょっとやばくない?」
「ど、どういうことですか?」
ルビィには、それの何がまずいのかわからなかった。
彼女がイマジンに話したのは、「この世界が夢だったらいいのに」というお願いというより、独り言に近いものだった。
それがそのイマジンに聞かれたところでまずいことになるとは、彼女には考えられなかった。
すると、彼女がピンと来ていないことを察した青亀は、その理由について話し出す。
「イマジンって、過去へ行くために現代の人と契約するんだよね。過去へいく方法はただ一つ。契約者の願いを叶えること。でも、大抵のイマジンは、ちゃんと契約者が思った通りに願いを叶えようとはしない。勝手に解釈をねじ曲げて無理矢理契約を果たそうとするんだ」
「それって、どういうことですか?」
「つまり、ルビィちゃんの「夢だったらいいのに」っていう願いを、たとえば町をめちゃくちゃにして悪夢のような光景にすることで契約完了ってしようとするかもしれないってこと」
「そんな・・・・・・」
ルビィは、青亀の話を聞いて、ようやく自分のしてしまったことに気が付いた。
そして、それを聞いて赤鬼も事が切迫していることを悟った。
飛び上がるように椅子から立ち上がると、ルビィの手をつかんで立ち上がらせようとした。
「こうしちゃいられねぇ。さっさとあのイマジンを見つけるぞ。お前も来い」
「っちょ、無理ですよ。ルビィなんかが行っても・・・・・・」
「あぁ? お前、すくーるあいどるってのがなくなって、悲しかったんだろ、辛かったんだろ? だったら、それを取り返したいって思わねえのかよ」
「悲しかったよ、辛かったよ。できるなら、取り返すことができるなら取り返したいよ。・・・・・・でも、ルビィなんかにそんなこと」
いくら言っても立ち上がろうとしないルビィに業を煮やした赤鬼は、乱暴に彼女の手を放した。
「ああもういい。お前と話してるとイライラするぜ。お前みたいなしみったれた奴といっしょに戦うなんて、こっちから願い下げだ」
「先輩」
「ってぇ! 頭を叩くんじゃねえよ。なにしやがる!」
「なにしやがるじゃないでしょ? まったく女の子にそんなムキになって」
「男だ女だなんてのは関係ねぇんだよ。大切なもんを守りたいって思うのに理由なんていらねぇだろ。それに、大事なのはなにができるかじゃねぇ、なにがやりたいか。だろうが」
「――っ」
ルビィは、赤鬼の言葉に息をのんだ。しかし、そんな彼女の反応に気づかない赤鬼は、彼女から離れていく。そして、
「俺は先に行くぜ。見つけたら、このイライラの分もボコボコにしてやっからな!」
彼は、自動ドアを通って走っていってしまった。
どうも、幸村です。
投稿しましたよ、第2話! というかBパート。
スクールアイドルがなくなってしまったのが、イマジンによるものかもしれないということ。
そして、ルビィが特異点であることが判明しました。
ルビィが特異点ということは、私が何をしようとしているかすでにわかってしまっているかもしれません。
まぁ、もし私が同時連載してる仮面ライバーものを読まれている方でしたら、もはや確信のレベルだと思います。
今回はBパートということで、1話はCパートまで続きます。
モモタロスたちが変に暴れまわったりしなければ、そこまで期間を空けずに投稿できると思います。
なので、同時連載とともにお楽しみ頂けたらなぁと思います。
ではでは