伝承・無限軌道   作:さがっさ

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自身の短編集のようなもので予告を投下したものの本編を書き始め
一応の第一話ができたので投稿します。

これから始まる物語は、少年少女と伝承とメカと青春の話にしたいと思ってます。
どうかよろしくお願いします。


第一話 入学式と再会と土蜘蛛 その一

―――時は20XX年、この時代にあるパワードスーツが誕生していた。

 

 その名も、インフィニット・ストラトス―――通称IS(アイエス)―――既存の戦闘兵器をはるかに凌駕した性能をもつ、パワードスーツである。

 

 元々は、宇宙空間での個人での自由活動を目的としたマルチ・スーツであると開発者から発表されていたが、ISの持つこれまでの兵器とは比べ物にならない機動力、搭載可能な武装の数と多様性にまかせた攻撃力、何よりもIS自体の防御能力はすさまじく、既存の科学力では実現しなかったシールドエネルギーによるバリアが基本機能として搭載されていることにより生半可な攻撃では、ISに傷一つ付けることはかなわないだろう。

 このような圧倒的性能を誇るISの登場により、世界の軍事バランスは瞬く間に崩壊した。今では、ISの保有機体数によって国の軍事力が表せるといっても過言では無くなってしまっていた。

 

 しかし、ISにも弱点が存在していた。一つには、ISを形作る核となるコアの絶対数が限られていることにより世界全体でのISの機体数が最高で467機しかない事。

 これにより、21の国と地域からなる「アラスカ条約」通称IS条約を結び、ISの軍事転用の禁止、ISの加盟国間の保有台数の調整や、開発者が日本人であったためISの技術を独占していた日本への情報開示とその共有を求めることとなった。

 ISの軍事転用が禁止された事によりISは主に競技用に活動の場を移しているが、各国の抑止力となっていることに変わりは無かった。

 

 ―――そしてもう一つは、ISを動かすことが出来るのは女性のみであったことである。

 

 なぜ、女性にしか動かすことが出来ないのかは開発者も分かってはいなかった。ISのコアが男性による起動を拒否し続けていた。

 これらの事情から、世界では女性の軍事参入が進行し、社会では女性を中心とした勢力がここ5年の間で瞬く間に大きく拡大した。これまでもその芽はあったのだろうが、社会は男性では無く女性を中心としたものに生まれ変わりつつあった。

 

 今ではISは世界の命運を握っているといっても過言では無くなっていた。

 

 しかし、知っている者は知っていた、ISを超える力を持つ存在がいることを。そのような存在は世界中のあらゆる場所に在り、世間では知られていないだけなのだと。人類のとりあえずの平穏は、見せかけの物でしかなく、あっけなく壊されてしまうようなものであると。

 

 それは、古くから伝えられてきたものの実在であった。

 

 それは、伝承に記されているものたちの力の証明であった。

 

 それは、人々が忘れてきたものたちの過ちであった。

 

―――だが、誰も知らず、想像さえも出来なかったことがあった。

 

これは、誰にも予想しなかった必然ともいうべき運命から生まれた、偶然の出会いから始まる物語である。

 

これは、ある少年が偶然の出会いを果たしたことにより始まった物語である。

 

伝承・無限軌道

 

これは、少年少女と、伝承のものたちの物語である。

 

 

 

 

 

 それは、ある晴れた春の日、気温も高くなってきており、冬はいつの間にか消え、過ごしやすい季節になっている事を感じていた。道すがらの、桜はまだ咲くには早いのか、つぼみが多く見受けられた。

 世間でいうと今日は、多くの学び舎で入学式が行われているであろう4月の頭の日であった。

 多くの新入生はこれからの学校生活に期待に胸を膨らませ、多くの在校生は、新入生の歓迎とともに自身の所属する部活動への勧誘に力を入れ、多くの最高学年となる者たちは、最後の学校生活となるであろう一年に思いをはせていた。

 それは、ISを学ぶためにアラスカ条約の規定に基づき設立され、各国から少女たちがISについて学ぶために集まる、IS操縦者育成用の特別高等学校、IS学園も例外では無かった。

 しかし、どうやら今年のIS学園の入学式は例年通りの雰囲気では無かったようだ。

 ISの注目度から、入学式には多くの報道陣が入学式から取材のために学園の正門を取り囲むのは例年通りではあったが、その報道陣の数からして去年の倍ほどであった。

 学園側の警備も春休みの間に強化したらしく、その度合いは監視カメラが分かりやすく増えている等、目に見えるほどであった。

 生徒たちの間には、ひっきりなしに噂が飛び交っていて、誰も落ち着きを見せないでいた。

 

 なぜ、今年のIS学園の入学式はこんなあわただしいことになっているのだろうか。

 

 その原因となった少年は、入学式を終えた後最初のHRのために自身のクラスに行くと、自身の名前から予想される出席番号とは異なる、教室の真ん中の最前列の席で好奇の目にさらされながらそれを耐えるためのせめてもの自己防衛として、机に突っ伏していた。

 

(やめてくれ…!俺をそんなに見ないでくれ…頼む!)

 

 少年の祈りは通じることは無く、教室の中は異様な緊張感に包まれていた。

 一応、HRは担任の先生が緊急の会議でいないため副担任の先生の元開かれていたが、少年に注目している女子の意識を話に持っていくには経験が足りなかったらしく、あれこれ試したのち苦肉の策として最初に自己紹介を行うことにしたのだが、いかんせん教室の女生徒のほとんどが、自己紹介をしている子も含めて、少年のことに夢中になっていたようであり、これではもう一回改めて自己紹介をする羽目になりそうである。

 

(だめだ…!みんな俺を動物園のパンダのように見てやがる)

 

 試しに、少年が目線をちらりと周りに向けると、目があった子はしきりに周りと話し始め、その反応はまさに

 

(ほんとに動物園の人気者のパンダの気分だ…それも動物園の目玉のやつ…)

 

 少年は特別注目されるのが嫌いなわけでは無かった。中学での授業中にクラスの前での発表も人並みにはできる方ではあったと思っている。しかし、いくら何でもここまで注目されたことは人生でおよそ初なのではないだろうか。

 副担任の先生は何とか自己紹介を進行させているが、どうしても注目は少年の方におおよそ集まっていた。

 少年が再度周りの方を見渡し、窓際の方に視線をなげた。その先にいるのは、長い黒髪をポニーテールにして黄色のリボンで結んだ、少女がいた。

 少年が視線を投げた後、すがるように会釈したものの、少女は巻き込まれるのを恐れたのか、それまで、少年に注視していた視線を窓に逃げるように向けた。

 

(箒に見捨てられてしまった…けど仕方ないか、アイツ思い出してみればコミュ障だったし、この好機の視線に関わることすら嫌がりそうだ)

 

 どうやら、昔の彼女より多少は成長し、いつも言葉が足らずに男女問わずトラブルになり、クラスでの友達は自分しかいなかったほどのコミュ障も治っているのではないかという少年の予想は外れたらしかった。

 実際、彼女の頭の中にあったのは、久しぶりに会った少年のことと、度重なる転校のたびに繰り返してきたにも関わらず、慣れない自己紹介をどう乗りきるかで一杯で、とても少年の助けになるどころか、気づく余裕も無かった。

 そうして、少年がこの好機の目線をどう乗り切るか考えて、いっそ周りの評価度外視で居眠りを始めようかと考えていたところに、副担任の先生がよってきていた。

 

織斑(おりむら)くん。織斑 一夏(おりむら いちか)くん」

 

 少年は気づいていないらしかった。

 

「織斑くん。織斑一夏くんっ」

「へっ!?はっはいっ!?」

 

 少年は突然の大声で、話しかけられ、戸惑ったのか声が裏返り、そのまま起立してしまった。

 副担任の先生の方も、いきなり起立した少年に驚きつつも何とか体制を立て直してから

 

「えっえっと、おどろかしてゴメンね?大声だったよね?でっでも、あのっ自己紹介が織斑くんの番なんだよね、『あ』から始まって『お』だから、織斑くんの番になるんだけど、だっ大丈夫かな自己紹介?ダメかな?」

 

と、ペコペコと頭を下げながらお願いされれば、いくら少年でも状況は理解したらしく

 

「いや、あの、そんな謝んないで下さい先生に謝られても困りますから。俺ちゃんと自己紹介するんでとりあえず落ち着いて下さい」

「ほっ本当ですか?お願いしますよ?やっ約束ですからね!ちゃんと、自己紹介お願いしますね?織斑くんっ」

 

 少年は、自分の席から立ちあがり初めてクラス全体を見回すことが出来た。

 今度はクラスの全員がこちらに視線を向けていた。さっきまで背中に受けていた視線とは比べられるはずもなく家に帰らせてくれと真剣に願うようになっていた。

 しかし、いつまでも黙って教壇の前に立っていてはこれからの学園生活で支障をきたしかねないほど印象が悪くなるかもしれない、そう思い少年は何とか覚悟を決めて自己紹介を行うことにした。

 

「えー、コホン。俺の名前は織斑一夏です。よろしくお願いします」

「えっと……いっ以上です!」

 

 全校で唯一の男子生徒の自己紹介を一言一句逃さないように身構えていた教室の面々の多くが困惑し、中にはずっこけている者もいた。

 まさか、いくら何でも自己紹介で出る情報がいささか少ないのではないか、もしかして前振りなのではと思ったのか眼前の男子の次の言葉を待ちつつ、期待をまた寄せはじめ。

 

「……以上です」

 

 どうやら聞き間違えでは無く、本当に自己紹介を終えようとしていた。

 教室の女生徒たちが落胆を見せようかとした次の瞬間、教室の扉が開いたと思えば居場所なさげに自身の席に付こうとしている少年の背後に影が迫った。

 

「どうやら貴様は、高校生になっても自己紹介が出来んようだな」

「はっ!そっその声は!」

 

 少年が振り向くのと、同時に少年の頭がはたかれた。

 

「いっ――痛ってぇ、何すんだよ、あとどうしてここにいるんだ千冬ね、痛ってぇ!」

 

 バァンッ!と音がして、少年がうずくまっていた。少年をはたいたとされる影の正体は、黒のスーツにタイトスカートで鋭い釣り目をした女性が手に出席簿と思わしき物を持っていた。どうやらあの出席簿で少年の頭をはたいたらしい。

 

「まず、お前に2つ言うことがある。一つは、これから一緒に学ぶクラスメイトにはきちんと自己紹介程度はしておけ、もう一つは、私がここにいるのはこのクラスの担任が私だからだ。あと、ここは学校で私は教師、お前は生徒だ。よって、けじめをつけて織斑先生と呼ぶように」

「いや、3つ言ってるじゃん――」

「細かい事は気にするな、とりあえず席につけ。お前の自己紹介はとりあえず後でまた時間を作ることにする。織斑以外にも自己紹介をしていない者もいるようだがまた次の時間にすることとする。後、遅くなってすまないな山田先生。クラスへの挨拶を任せきりにしてしまった」

「いっいえ、大丈夫ですよ織斑先生!会議は終わったようで良かったです」

 

 そうして、釣り目の女性が、副担任の先生と言葉を交わしつつ、少年を教壇から彼の席に送りつつ入れ替わるように教壇に立った。

 

「諸君、私がこのクラス、一年一組の担任の織斑 千冬(おりむら ちふゆ)だ。あと、一応最初に自己紹介はしたと思うが念のために副担任の」

「はい、同じく一年一組の副担任となりました、山田 真耶(やまだ まや)です。よろしくお願いします」

「さて、入学おめでとう諸君。これから一年間はとり合えず私が君たちの担任となるわけだが、私の仕事は君たちを一年で使いものになる操縦者に育てるのが仕事だ。もちろんIS操縦者志望だけでは無い事は承知しているが……関係はない。私の言うことはよく聴き、よく理解しろ。出来ないものには出来るまで指導してやる。逆らってもいいが、私の言うことは聞け、いいな?」

 

 いきなり姉が現れたと思えば、いきなり自分のクラスの担任だと知らされた弟、一夏は、IS学園で教師をやってることは知っていたがまさか担任になるとは想像もしてはいなかったらしく叩かれた頭を押さえつつ茫然としていた。

 一方、千冬の一見厳しいように聞こえる挨拶を受けたクラスの女生徒はというと

 

「キャーーーー!千冬様、本物の千冬様よ!」

「ずっとファンでした!」

「私、お姉様に憧れてこの学園に来たんです!北九州から!」

 

 おおむね、喜んでいた。

 ここぞとばかりに騒ぎ始める女生徒たちに、千冬はあきれた顔をしていた。どうやら今まで似たような状況がいくつかあったらしい。

 

「……はぁ、全く、毎年よくこんな感じのやつらばかり集まるものだな?いくら女子校といえどそんな漫画みたいなことが、と思っていたらこのありさまではな」

 

 千冬がため息をつきながらうっとおしそうにしているものの、雑に扱われている感じも彼女たちの琴線に触れたらしく、さらに黄色い歓声が大きくなってきた。

 一方、弟である一夏はといえば、自身の姉の同性からの異様な人気ぶりを雑誌等々などで察してはいたものの実際に目の当たりにしたことで改めて感じる女子校のお雰囲気に軽い絶望を感じ始めていた。

 

 

 

 

 

 さて、興奮し続けている女生徒たちを無視しつつ、千冬が連絡事項を伝えたところで、時間となり最初のHRは何とか終了した。

 今は、合間の休み時間であるが、一夏は相変わらず檻に入れられている気分であった。

 教室の女子達は言わずもがな、どうやら一組に噂の男子生徒がいるらしいことを聞きつけた女生徒が廊下からこちらの様子を見ていた。誰から話しかけるかの牽制をしているらしく、一夏本人からすれば無視してほしいところではあるし、いっそのこと話しかけてもらうのが一番良かった。

 しかし、このまま待っても状況は良くはならないと感じたのか、一夏は自分から動くことにしたらしい。自身の席から、窓際の席に行ってそこで一見、虚空を見ている女子に話しかけた。

 

「箒、おい箒」

「…………」

 

 返事もこちらを見る様子もない。無視されていると感じた一夏は、頼みの綱に見放されそうになっていることに絶望しつつも、くじけず話しかけ続けることにした。

 

「おーい、箒ー、篠ノ之さーん。篠ノ之箒さーん」

「ふぇっ!?はっ、いっ一夏!?どっどうしてお前が目の前にいる!?」

「えっ、素で気付いていなかったの!?」

 

 どうやら、本当に一夏に話しかけられていると気づいていなかったらしく、驚いて席から立ちあがっていた。

 その少女は、腰まで届くであろう長い黒髪を黄色いリボンでポニーテールにしており、身長は女子の平均的であるものの纏っている雰囲気から―――今は、驚きのあまり崩れているが―――長身のように感じられるスタイルの良いといった見た目であった。

 

「えっと、ここじゃ話しにくいからどっか場所を移そうぜ?」

「えっあっ、そっそうだな、こっここじゃなんだからな!」

 

 という少女の言葉を聞いたと思えばその手を取って一夏はやけくそ気味に教室を出て、廊下の女子達をかき分けて何とか階段の踊り場までたどり着いた。

 つれてこられた少女の方は手を握られて連れ出された事に恥ずかしさとうれしさで興奮しつつも何とか、話しかけられたのがずっと話したいと思っていたもののタイミングがつかめないでいた久しぶりに会う幼馴染であったのかその少女は深呼吸をしつつ平静を取り戻しつつあった。

 

「すーはー、良し。では改めて、久しぶりだな一夏」

「ああ、小4の時ぶりだから6年ぶりだな、箒」

 

 少女の名は篠ノ之 箒(しののの ほうき)、小学生に入ったぐらいの頃からの幼馴染であり、同じ道場で―――箒の実家の剣道道場なのだが―――剣道を習っていた仲だ。とはいえ、一緒に過ごしたのは小4ぐらいの頃までで箒が家の事情により引っ越してしまったために一夏と箒はまさに6年ぶりに再会を果たしていた。

 

「でも、相変わらず髪型ポニーテールなんだな。おかげで直ぐに箒だって分かったけど」

「そっそうか、それは良かった」

「?良かったって?」

「なっなんでもない、それよりお前は剣道を続けてるのか?お前の実力なら真面目にやってれば最低でも県大会には出ていると思っていたのだが、生憎おまえの名前を聞かなくてな」

「いや、実は箒が引っ越してから一回やめちゃってな。ほらうち家計事情が厳しいだろ?それで中学は部活にも入ってなくてなずっとバイトしてた」

「………そうか…仕方ないとはいえ残念だな……」

「そういう箒はどうだったんだ、お前も剣道凄かったからどっかの大会で優勝してたり、てっきり全国大会に出場してるかと思ったんだけど新聞にも載ってなかったし」

「ああ…私は、ちょっと事情があって引っ越し続きでな。中学の剣道部に入ろうにもすぐ引っ越してしまうから団体戦は言わずもがな、個人戦に出るのもいい顔をされなくてな、剣道部に入っても練習だけだったりで2年の頃にはもう部活にも入らず個人で鍛錬していた」

「そうか…でも剣道続けてたんだな。俺はやめちゃったからあまり言えないというか、申し訳ないけどお前が変わらないのはうれしい」

「…………」

「なっなんだよ?そんなににらみつけて…悪かったよ剣道やめて」

「そうではない!いや、それもあるのだが…とにかくあまりそういうのを言わない方がいいぞ、ここは女子校なのだからな」

 

 箒は顔を赤くしつつ、複雑な顔をしていたが、一夏は顔をひねるばかりで意味を理解していないようだ。

「…その様子ではあまり分かってないようだがら言っておくが…ここは女子校でお前は唯一の男子なのだぞ分かってるのか?」

「?分かってるさ、ここがほとんど女子校だってことぐらいは。それよりそろそろ時間だろ、教室に戻ろうぜ」

「あっ、待て!一夏!」

 

 一夏は首をかしげつつ携帯電話から次の時限が始まるのを見ると急いで教室まで向かっていった。箒は、そんな一夏の様子から話の半分も理解していない事を察しつつも後に続くのだった。

 

 




まだ、伝承も何もありませんがとりあえず第一話中には出していきます。
とりあえずの予定として、基本は一話を3つほどに分けていく方針です。
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