Pipe dream ~とりあえず逃げ出してもいいですか~ 作:無農薬“Loser”無謀
なのにスクフェスで希のsrしか持ってない。
勝負は来月の9日。
待っててねぇーー!
初心者の素人なので拙い小説だと思いますが、ご容赦ください。
「陸君、ほんとうにこうしたかったの? 」
「おい希、また関西弁忘れてるぞ! 」
「陸くん!ふざけないでよ! 」
「あぁー、すまんすまん。泣かせるつもりは毛頭微塵もミジンコ程も無かった 」
「何やねん、それ」
「おっ!まんま関西人のツッコミ!」
「・・・」
「まぁ、真面目な話をするとだな。もう決まった事だ。 こればかりはどうしようもない。お前のスピリチュアルパワーでも手を出せない領域の話で、既に完結してるんだ。どんな形であれな。ただまぁ、そこは才気溢れる俺だから、大丈夫だろうさ」
「でもっ!こんなこと、無い。有り得ないでしょっ!」
涙目で訴える希。
流石にここでまた関西弁忘れを指摘したら怒るだろうな、なんて事を考えてる時点で、俺は全くもってどうしようもない人間ってことだな。
だからありがたい。こんな俺のために涙を流してくれることが。
だから離れたくない。この居心地の良すぎる日々を。
「ツケが回ったって事ですかいな ・・・」
「ツケ?何を言ってるの? 」
「まぁ、最後だから言っておくが、俺はすこぶる幸せだった。本当に楽しかった。短い間だったがな。こんな俺でも、ああ、幸せだったよ 」
「何やねん、それ!幸せになったことでツケが回ったって言いたいの? 」
「・・・」
「馬鹿なこと言わないで!幸せになるのに条件なんていらないのよ!何でいつも、そうやって・・・ っっ!」
途中で言葉を詰まらせた希だったが、言わんとすることは全て分かった。
多分、希はこんなふうに思っている。
今となっては自分の言葉が何の力も持たない、ただ俺の覚悟を邪魔するだけの我が儘だって。
当然だ。全ては俺の落ち度。賢しいお前にバレちまうなんて、本当にイレギュラーだった。
だから、
「悪いな」
それだけしか返せなかった。
泣き腫らした希の、綺麗な両眼のレンズには、心配するな、なんて言い出せない、情けない相貌の俺が写っていた。
こんな顔ができるのは希の前だけかもしれない。
多分一生涯。
本当に悪いことをしている。
「悪いが、この事は他言無用で頼むよ」
「・・・ 」
「すまんな」
「いつも謝ってばかりやねんな、陸君は」
「・・・すまんな」
「ほら、また謝った!」
希は普段のイタズラっ子のような表情に戻っていた。
そして笑う。
俺も一緒になって笑った。
それから何を話したかは覚えていない。他愛もない世間話だったり、軽口の応酬だったりした気がする。
最後に俺はこう言った。
「希、じゃあそろそろ。お前には借りを作りっぱなしだけど、最後にもうひとつ頼んでいいか」
「ひとつと言わず、何でも叶えたるよ、今日だけは」
「じゃあふたつ」
「最後まで謙虚やね」
「一つはにこの事だ。あいつはしばらくスクールアイドルをやめてしまうと思う。だけど必ず、また輝きを求めて走り出すはずだ。それまでの間だけでいい。にこの事をよろしく頼めるか 」
「頼まれたりせんくても、にこっちはウチの友達やから。言われなくともそのつもりよ。まかしとき!」
「ありがとう。もうひとつの願いは」
「・・・うん 」
「名前を、呼んでほしい 」
「名前、やね?」
希はそれから10秒ほどの間を置いて俺の願いを聞いてくれた。
はかない表情で何度も名前を呼ぼうとして、涙をこらえるように何度も詰まらせながらも、最後は心地良い声音が俺の心を満たした。
「稲光 陸君。またね」
それは決して叶わない願いだったけれど俺は思わず頷いてしまった。
そうして俺は。
ーーーーーー
星も見えない夜の歓楽街に俺はいた。勤欲と金欲で彩られたチープなネオン光は、やはり見た目とは裏腹に華やかさなんてものは感じられない。そんな風に見えるのもきっと俺が負け犬だからだ。
濁って錆び付いた黒色の瞳には、そんな風にしか映らない。
最近、その事をやっと自覚できるようになった。大人になったとも言えるのだろうか。無価値な身の程を知るまでに、かなりの代償を払い時間を浪費してきた俺の人生観では、そんな感慨を湧かせるので精一杯だった。
二年前。高校を退学になってから、俺は、家を捨ててこの街に身を落とした。
後悔なんてものは微塵も無かった。むしろ、来るものは拒まない、危なげな夜の彩飾に見とれちまう虫並みの感覚で、根拠の無い自信を片手にフラフラと吸い寄せられてしまった。
「俺はまだまだやれる男だ!」
これが自意識過剰な引きニートと変わらない阿呆の台詞だったと、今は分かる。
首もとまで流砂に飲み込まれた状態で、それでも上しか見ていなかったようなもんで、あの頃の自分は、まったく言語道断に馬鹿者だったわけだ。
いいや、ただの自暴自棄だっただけかもしれない。
あぁー、情けねぇな。
こんな台詞しか出てこないことが情けない。
シャブ中だって、もっとまともな精神状態だろうに。少なくとも、薬を買うために金を用意できる能は持ち合わせている。丸腰でこの街に飛び込んだ俺よりマシさ。
案の定筆舌に尽くしがたいしょうもない二年間を過ごし、その結果がこの様だ。
しょうもない人生しか送ってこなかったが、それでもしょうもない高校時代から抜け出して、しょうもなさを更新するとは思っていなかった。
もし、こんな時にあいつがいたら。
俺になんて言うんだろうか?
あのツインテールの童顔貧乳は、偉そうに何を言って来るのだろうか。
そんな絵空事を想像してみるものの、生憎だが、あいつが俺にどんな顔を見せてきてくれてたか、とっくに忘れちまっていた。
想像しようもなかった。
当然だ。俺から切り捨てたんだから。
「チッ、 くだらねぇな。」
俺は喉の奥のほうで舌打ちしたくなったが、喉の奥に舌がないので、普通に舌打ちした。
「フゥー」
そして、深呼吸するかのように、ゆっくりと嘆息。
10秒ほどそうしたら、もう嘆息する気も起きなかった。
ただ、やはりモヤモヤが沈殿している。
たかだかこの程度思考したくらいで濁ってしまう、俺の脆い心よ。
残念ながら一生の付き合いになりそうだ。
「くだらねぇくだらねぇくだらねぇ」
そう呟いて、ポケットから一本のタバコをくわえる。紫煙で肺を満たし、嫌な気分と一緒に吐き出した。
よし、スッキリした。
俺はまだ5分は吸えるタバコを、地面に吹き捨て靴底で火の始末をつける。
ポイ捨て?そんなことより仕事の時間です。
ーーーー
「山田さーん!山田さーん!」
ぼろアパートの一室の前に俺は佇んでいた。
1オクターブ高い声で、セールスさながら扉をノックする。
喉に負担がかかるのだが、どうやら、この部屋の主である山田は、そんな事は露知らず、居留守を決め込む腹積もりらしい。
いやね、扉も壁も薄いから中でゴソゴソしてるの丸聞こえだから。
そろそろ、窓から逃げ出してもおかしくないので俺は強行手段に出ることにした。
俺は左足を軸に右足を腰のあたりまで浮かした。
で、あとは扉を蹴るだけ。
「っらぁー!」
脆い強度の扉は簡単に内側に開いた。
すかさず中に入ると、怯えた様子の山田が腰を抜かしていた。
「山田さーん!何だ、いるんじゃないっすぁ!あ、もしかして寝てましたか?ハハハ」
俺はそんなお気軽な調子で土足で上がり込んで、山田の前まで来た。
ダラダラと汗を流し始めた山田を見ていると、この後の展開が特段嫌になってくるのだが、そこは仕事だ。
ちゃんと、俺は割りきれる。
世間話も面倒なので、俺はすぐに本題に入った。
「山田さん。忘れてたわけじゃないと思うんですけど、今日ね、支払期限の日なんですよ!万が一忘れてたら大変なので、わざわざ出向いた次第で」
先程からうつ向いて震える山田は、俺の目も見ずに「すいません。もう少し待ってください」
と、そう呟いた。
「アハハハ!その台詞はもう何度目でしょうか?今日が最後だと言ったじゃないですかぁ!せっかく金利も上げずに待ってあげてるのにぃ」
「本当に無いんです。せめて、二万円で、二万円なら払えますので、それで許していただけませんか」
すがるように俺を見上げた山田の顔を、俺は容赦なく蹴り飛ばした。
もちろん、手加減してるが、それでも嫌な感触。
もっとも山田はそれどころじゃない。
突然の暴行に身をくねらせる。
俺はしゃくとり虫のような様子の山田に、さっきまでと変わらない調子で語りかけた。
「山田さん。ジョークの使いどころには細心の注意を払ったほうがいいですよ。若造からの警告です。あのねぇ、山田さん。30万円の借金を金利も上げずに、一ヶ月も返済されるのを待ってたんですよ、こちらはね。それがどれだけ不利益だろうと、あなたの為に、あなたを信じて待ってたんですよ。俺があなたの為にどれだけ苦労したか。わかってねぇでしょ、山田さん。自分の為に行われた親切は曲解しちゃあならねぇよ。二万円?はぁぁ?そんなんじゃあ金利分も払えやしねぇんですよぉ。挙げ句には許してくれだなんてほざきやがってよぉ!何だ、俺は悪者か?」
いまだに痛みで悶える山田さんは、腹を見せる姿勢で「すいません。ヒッ、金は本当に無いんです。いずれ必ず返済しますので今日は許してください」と情けなく述べる。
どうやら泣いてるっぽい。
「じゃあ、今日は帰って明日また来るってことで良いですか?」
「それは・・・」
「でもね、今日が最終期限だからね。明日になれば今まで忘れてた金利分も払ってもらうことになりますけど。となると、返済金額は60万円ってとこですかね」
「60万なんて、そんなん無理です!」
必死な山田さん。
ものすごい俊敏な動きで起き上がった。
ははーん、やっぱりさっき悶えてたのは、情に訴える演技ですかい。
「でしょぉー、俺もそう思ってねぇ。ちょっとした案を考えてきました。みんなハッピー大団円って感じのね」
俺ハンドバッグからあるものを取り出した。
「そ、それは?」
「これね、牛のレバー。肝臓です。いや、俺ね。レバ刺しが大好きでして。店で禁止になった今も、よく自己責任で食べてるんですよ」
嘘。ってか、何言い出してやがるみたいな顔されてる。
「山田さんさぁ、タバコとか酒とか嗜まないでしょ?」
「は、はぁ」
「単純な疑問なんですけど、この高級レバーと、山田さんのレバー。どっちが光沢輝く美しい肝臓なんでしょうね?」
猟奇的な笑みもトッピングで、山田さんを見据える。
山田、びびってる。
「肝臓って一つ取っても、死なないんですって。それに加えて状態の良いものなら、ある筋では2000万円ほどで売れるみたいでして。そんな宝を持ってるだけなんて、正しく宝の持ち腐れって言葉を体現してると思いませんか?」
「・・・」
「あなた、どうせ、500万くらいの借金は抱えてますよね。担保も組めないほどだから。だから、徳政令ってことで、肝臓売って、借金解消しちゃいましょーよ。イエーイ!」
俺は山田にハイタッチを求めたが、山田は突然絶叫し、逃げ出そうとした。
俺を押し退け、窓を開けるわ、。
開けきったところで、俺の回し蹴りが山田の後頭部に炸裂する。
今度は少し強めに蹴ったので、山田は当然気を失った。
「ごめんなさいね。仕事なので。ただ安心してくれて良い。借金返済分の取り分はちゃんと差し上げますから。それだけでも、良心的ですよ。まぁ、そこられんの詳しい話は手術台の上で聞いてくださいね」
俺は携帯を取り出す。
「終わった。ああ。回収は任せた。早く来い」
後始末もつけて、俺は山田の家から出た。
タバコを一本取り出して、火をつける。
それを、くわえて。
ふかしもせずに、アパートの壁でジリジリと火を消した。
焦げ跡が少しついた。
うむ。
さてさて、もう七時半か。
腹の虫がなり始める。
麺類が食べたいな。
頭の中をそんな願望がよぎった。
山田さん。良かったね