Pipe dream ~とりあえず逃げ出してもいいですか~ 作:無農薬“Loser”無謀
キャラの心情とかも・・・
「ほう?俺の敵かいな 」
血管を浮かび上がらせたまま笑みを浮かべるという、器用な山南。
俺は山南に答えることもなく一気に間合いを詰めにかかる。
地力では負けている。
ならばスピードとコンビネーションで責めにかかるのみ。
だが、直線的な軌道に沿って肉薄する俺は、少々単調だった。
山南の電柱を揺らした前蹴りが、今度は砲弾のような速度で俺の顔面めがけて放たれる。
「チッ!」
舌打ちするのがやっとだった。
咄嗟に腕を交差して顔を守ろうとするものの、圧倒的なリーチと絶妙な角度から成される必殺の前蹴りは、俺の腕ごと、顔面を撃ち抜いた。
ガード越しにも関わらずすごい威力だった。衝撃はしっかりと脳に届いている。
だが、俺は無敵だった。
普段の俺ならこれでkoだが、今の俺は負けやしない。
俺は交差した両腕をほどいて、山南の蹴り足をしっかりと固定する。
重量級の奴を支えているのは、今や片足一本である。
「いつまでつかんでんねや!」
山南が固まった俺に左フックを撃ち込んできたのを機に、俺は深く上体を落としてそれをかわし、そのまま軸足に足払いをかける。
山南はバランスを崩し、そのまま重力に従って倒れ伏せた。
もしかしたら、さっきのジャーマンスープレックスで平衡感覚がおかしくなっていたのかもしれなかった。
が、まぁそんなことはどうでもいい。
俺は山南の上に馬乗りになり、喉仏に突きを入れた。
打たれ強い山南でも人体急所を損傷したらダメージにならないはずがなかった。
俺は陸に上げられた、釣り針の刺さったアジのようにヒクヒクと痙攣し始める山南の顔面を、右から左から、時には肘も加えて徹底的にいたぶり始めた。
無抵抗だから殴り放題なのだが、流血で拳が汚れるのがネックだった。
それでも、流石凄腕の極道である。
いくら殴り続けても、決して俺への殺意を称える鋭利な眼光は衰えることはなかった。
むしろ、ダメージを蓄積すればするほど、凄まじくなっていくのだ。
(これが、極道っていう生き方なのか)
残虐な追撃の裏で、俺はそんなことを考えながら、少しだけ山南に感心する。
もちろん情状酌量の情の字の一角目程も、余地はないので、中途半端にはしない。
徹底的に痛め付け、己の間違いを体で分からせてやるつもりだ。
半殺しじゃあ済まさねぇ。
中途半端は自分の首も絞めるしな。
時間にしては1分やそこら。
その間殴られ続けた山南は、流石に意識を手放した。
俺は山南からどけて、立ち上がる。
立ち上がり様にあばら骨を一本だけ蹴り折っておいた。
おまけだ。
「しゃおらー!」
勝利の雄叫びをあげてみるものの、一方的な戦闘だったので、そこまで高揚感は無かった。
当然だ。無敵時の俺なら当然の結果だ。通常モードに戻った俺は他人事のようにそんな事を考えて、腕をさする。山南の蹴りを受け止めたせいだろう。涙が出るほど痛かった。
まぁ、俺の無事如何はどうでもよくて。
「おい、大丈夫か! 」
俺は少女の方に近づいていく。
間近に近づいた俺を見て、しかし少女は腕をかかえて震えていた。
俺は、安堵の顔を向けられると思っていたので少し予想外の反応だ。
「もう大丈夫だ」
俺が少女の肩に触れると、少女はビクッと反応してから、意識を失ってしまった。
どうしてこんなに怖がられているのだろうか。
いや、馬鹿か、俺は。
あんな極限状態に追い込まれて、やっと助かると思ったら、そいつが残虐に人を痛め付ける様を見せつけられて。
挙げ句に、地濡れた拳で触れられたりしたら。
そりゃあ、この反応をされるのもわからんでもない。
俺は結局、また、自分の力を過信したってわけだ。
少女のためと言いつつ、少女に地獄を見せつける結果となってしまった。
もっとスマートに切り抜けられるはずだった。
どこのベジタリアンな戦闘民族だよ、まったく。
「くだらねぇ。相変わらずくだらねぇ人間だよ、俺は」
やっぱりそういう結果に落ち着くのだった。
ーーー
区切りよくここまで。
展開遅いし面白くなくてごめんなさい。ペコリ