魔法少女育成計画 己の大切な人を生かしたい   作:紀野感無

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22話

☆魔王の騎士ラ・ピュセル

 

「レ…レプ、リカ…?君は…なにを…」

 

何を、何をしてるんだ。なんで、急に攻撃を止めた。

その隙を使って思わず反撃をしてしまったが、考えてみればおかしい。

あれだけ殺すことを躊躇わなかったレプリカが攻撃を止めるなんて。

 

「クッソ…結局、これだ。僕は…結局何もできない。何も…。僕は、僕のすべては、贋物だ。自分の気持ちすら、偽ってしまう。…ゲホッ、ほら、何をしてるんだ、魔王の騎士。はやく、斬り上げて、殺せよ。魔法なんか、もう使わ…」

 

 

「そんなことするかっ!大切な友達をなんで殺さなきゃならない!」

 

 

「何を……言って…」

 

どうする、どうすればいい。剣を引き抜くのはダメだ。それだと大量出血で死んでしまう。このまま他の魔法少女に回復薬を使わせるのはどうだ?

いやダメだ。剣が刺さった状態な以上、治ってすぐにまた致命傷を負う。その無限ループだ。

なら、抜いた瞬間に使ってもらう?

しかし、こっちの提案を向こうが受け入れるか?仮にも僕は敵だ。

 

どうすれば、どうすればいい…!

どうすれば二度と友達を悲しませずに済む…!

 

 

 

「互いに葛藤している中悪いが、一旦戦闘は中断だ。互いに引け」

 

 

いつのまにかパムが横に来ていた。

何故だろうか、ものすごく怒っている雰囲気だ。

 

「レプリカ、くだらん真似はやめてさっさと治せ。少しばかり話し合うことがある」

 

「…わかった」

 

「ラ・ピュセル、お前もだ。とっとと剣をしまえ。心配するな、レプリカ(コイツ)は腹を貫かれた程度では死なん」

 

「あ、ああ…」

 

しかし、そう言われたからと言って勢いよく引き抜くのは気が引けた。

が、レプリカ自身が剣を鷲掴みにして引き抜いた。

大量の血が出たことで焦ったが、1分と経たない内にレプリカの怪我は治っていった。

 

「その腕もとっととひっ付けろ。そしたら話し合いだ。()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

レプリカと魔王パムと珠。この場にそれだけ集まった。が、戦う気がある魔法少女は、僕を含めて誰もいなかった。

「さて、ファル。でてこい」

 

『はいはい、なんですぼん?というか、ラスボスと主人公が一緒にいるってなかなかシュールじゃないかぽん?』

 

「どうでもいい。それより、ゲームマスターを出せ」

 

『…わかったぽん。ちょっと待ってくれぽん』

 

意外にもファルは素直にいうことを聞いた。会話を聞いていたからかこちらの様子を見ていたからなのか。

 

「さて、ファルが戻ってくるまでに一つ確認だ。ラ・ピュセル。お前の目的はなんだ?」

 

パムが突然こっちを向いてそう言ってきた。

 

「目的…は、レプリカと一騎打ちをして、勝つこと…だ」

 

「今まではそれで気にしてはいなかったさ。レプリカに恨みを持つ輩、力試しで挑む輩なんて腐る程いるだろうからな。だが、なぜその目的を持った?明確な理由を言ってみてくれ」

 

「理由…理由は…」

 

そうだ、なんでレプリカと殺し合いを望んでたんだ?

 

「答えれないのか?まあいい。次だ。レプリカ」

 

「何…」

 

()()()()()()()()()()?」

 

は?パムは何を聞いているんだ?レプリカは僕と同じ元は男なはず。

 

「さあ…。普通に考えたら、()()()()()()?」

「「え?」」

 

「それは知っているさ。今現在の性別の話だ」

 

 

「…ああ。なる、ほど。言いたいことは、分かった。つまりは…ああ、そういう事か。おかしいと、思ったんだ。感情を殺されてるのに珠以外のことで感情的になったり、痛覚なんてほとんどないはずなのに、痛みを感じたり…」

 

 

パムの言葉で何かを理解したレプリカはその後独り言を呟いていた。

所々で殺すとか言ってたように聞こえた

 

 

『はいはい。何の用かな魔王パム。にしても、ちゃんと役割を果たしてくれないと困るよ』

 

「黙れキーク。お前が約束を守っているならば私も役割を守っていたさ。私はお前に約束させたはずだ。私達のすることに手出しをしないと」

 

端末からマスコットのように立体映像で出てきたのはキークだった。

 

『一体なんのことやら』

 

「とぼけるなよ。私は聞いたはずだ。本来のラ・ピュセルをコピーしたものとはいえ、このラ・ピュセルはこれが正常なのかと。だが実際のところどうだ?肌の色、戦闘に対する姿勢、レプリカへの思い、今わかっているだけでもこれだけ違う。まあ、だがぶっちゃけその辺は私はどうでもいい。私は言ったよな?戦闘が起こったら手出しをするなって」

 

『んー、言ったね。それで?私、あなたの邪魔はしてないでしょ?』

 

「いつ()()()()()()()()()()()()っていったんだ?それに揚げ足をとるが、お前の目的は記憶が確かなら『クラムベリーによって審査され合格となった魔法少女の再審査』だ。その上でお前は私へ言い切ったはずだ。お前からは手は出さないとな」

 

『…』

 

「おや?これはどういうことだろうな?手を出さないといったはずのお前は、たった今レプリカとラ・ピュセルとの戦闘に手を出した。これはお前のいう『魔法少女の再審査』に反するのではないのか?お前が考える『正しい魔法少女』が絶対だと信じるのは勝手さ。何よりだな……

 

 

覚悟を決めた戦いを横から侮辱する行為は私が最も忌み嫌うものの一つだ。今回は見逃すが、次はないぞ?」

 

 

初めて、魔王パムの怒りを見た。

それは正に『魔王』の名に相応しく、体の底から恐怖が溢れ出てくるような、そんな気がした。

 

『次は無い、ねぇ。現実の体と死がリンクしてないからってまあ好き勝手に言ってくれて。お前はゲームの中のモンスターだ。そうなっている以上私には手出しできない癖に。よくもまあ偉そうに』

 

「まあ、その時は私の愛弟子がやってくれるさ。なぁ?レプリカ」

 

「……」

 

パムに突然言われたレプリカは、心底めんどくさそうな、そんな珍しい表情をした。

 

「…何、魔王の騎士」

 

「い、いや。レプリカが表情を面に表すのが珍しい…って、おもっちゃって…」

 

「……それが…何」

 

「い、いや、僕はフラットな話し方は知ってるけど、それ以上に君の表情が動いているのが珍しすぎて、なんというか…得した気分?って言うのかな?そんな気分だ」

 

「ああもう、()()()に戻されてるせいか色々と狂うな…」

 

そんなことを思っていたらレプリカは何かを言った後髪をくしゃくしゃと引っ掻いた。

 

 

「…話が逸れたな。キーク、結局お前は再審査だとか言っているが『レプリカ』という魔法少女の存在が許せないだけなんだよ。まあ確かにレプリカがスノーホワイト殿のような魔法少女か、と聞かれたら100人中100人がノーと答えるだろうな。だが、それはお前の感性だ。それを私達に押し付けるんじゃ無い。それで勝手に審査され命を賭ける側はたまったもんじゃ無い」

 

 

『そっちの事情なんか関係ないね。私は、私が正しいと思う魔法少女を選別するだけだ。昔の、スノーホワイトと一緒だった頃、珠と一緒だったころはまだしも、()()レプリカは特に私の魔法少女としての理想像から遠い。だからこそ今のレプリカは排除する。今のレプリカは、一番この世でいらない魔法少女だ。昔はスノーホワイトの盟友だった?共闘していた?関係ないね。今は私利私欲のために、他人を進んで殺すような奴に成り下がっている。そんな奴は魔法少女ではない。…まあ、審査の場に放り込んでおいて贔屓するのは確かにダメだね。今回のは悪かったよ。これ以上私はもう突っ込まない。あくまでも、ゲームの成り行きに全て任せる。これでいいかい?」

 

 

「ああ、構わない。今回のは水に流すさ。ああ、物はついでだ。レプリカの体を元に戻せ」

 

 

『元に戻せってのはどこまでのこと?クラムベリーによる試験を受けていた時の?それとも貴女と殺し合いをしてた頃の?それともこのゲームが始まる直前の?』

 

 

「ゲームが始まる直前だ」

 

 

『はいはい。……はい。全部戻したよ。…後悔ないんだね?魔王パム。お前は、レプリカがアイツラに連れてかれたのを一番と言っていいほど危惧していた魔法少女の1人じゃなかった?』

 

 

「構わん。()()はレプリカが選んだ道だ。私が口を挟む気は無い」

 

 

『ふーん…。あっそ。まあいいや、これもついでだ。ラ・ピュセルの肌の色を……』

 

 

パムとゲームマスターが息つく暇もなく話している最中、急に僕の名前を言ったかと思うと、何かを操作した音がした。

 

が、僕自身は何が起こったか分からなかった。

 

「…まあ、それくらいは構わんだろう。それで今のレプリカが躊躇うようならそれまでだ」

 

『はい。そんじゃーね。はー疲れた』

 

パムがこっちを見て少し迷ったそぶりを見せた後、キークは端末の中へ戻って行った。

 

……一体何をされたんだ?

 

「はぁ…とことん、キークは、私の心をへし折り、たい、らしいね……」

 

「ミヤビちゃん…ねえ。大丈夫…なの?」

 

「うん…多分、ね。感覚的に、前の体に戻ったし、思考回路も冴えてきた。今度は…しくじらない」

 

「違うよ!ラ・ピュセルを、友達を殺しちゃうってことだよ⁉︎」

 

「わかってる、でも、殺さなきゃ殺される。ここはそういう場所なの。だからこそ私は、君を生かすために、他人を殺す。例え友達でも、ね。だから…そんな悲しい顔をしないで。君が悲しい顔をすると、私まで悲しくなっちゃう」

 

「でも…!」

 

珠が、泣き顔でレプリカに何かを言っている。レプリカはそれを見て優しく微笑んで頭を撫でていた。

 

そしてまた何かを話していた。

詳細までは聞き取れなかった。

 

「ラ・ピュセル、今一度、自分の姿を確認してみるといい」

 

そう言ってパムは僕の前にどこからか取り出したのか大きな鏡を立てた。

 

「え…肌の色が、戻ってる…?」

 

そこには、かつての僕の姿があった。

今までのように、薄い黒ではなく、肌色をした、魔法少女・スノーホワイトの騎士ラ・ピュセルの姿が。

 

「そうだ、つまりキークはレプリカと魔王の騎士としてではなく魔法少女としてのお前との殺し合いをすることを望んでいる。現に、今は姿は戻ったといえど心の底にはレプリカとの一騎打ちを強く望む心があるだろ?」

 

「あ、ああ…」

 

「それに結局のところ、ゲームのシナリオとしては何も変わっちゃいない。魔王の側近であるお前が先に魔法少女達と戦い、お前が倒されたら、お前の仇を取るために私が戦う。結局変わらないのさ。やることはな。まあキークの邪な考えがないというわけではないがな。とことん奴はレプリカを殺したいようだからな」

 

 

パム達の話を聞いていて、いやでもわかる。キークはレプリカを何が何でも殺すつもりだ。

でも、僕はレプリカと戦いたいという気持ちはあったが、それ以上に友達を殺したくない、そう思ってしまっている。

 

さっきのレプリカとの戦闘で、腹に剣を突き刺した後で、その思いははっきりとわかった。

 

レプリカと戦いたいと思っているのに、殺したくない。そんな矛盾した考えを持っている。

 

それに既に死人となっている僕が、レプリカを狂わせるのが、とても嫌な気分になってしまう。レプリカだけじゃない、珠や、他のみんなだってそうだ。

 

死人であるはずの僕が、レプリカの、みんなの生死を、人生を分けてしまうというのならば…いっそ……

 

 

「まさかとは思うが自ら死ぬ、なんてそんな馬鹿な真似をするなよ?正義感だがなんだか知らないが、自らの死で他人を救おうなんて考えは傲慢だ。まずは自分が生きる前提で物事を考えろ。自分を犠牲にするなんて考えはやめろ。でなければ、一生レプリカに、もちろん私にも勝てんぞ」

 

「…なら、どうすればいい。僕は、既に死んでるんだ。そんな僕が、今を生きている人達の人生を狂わせるなんて、そんなことは絶対に間違っている。なら…」

 

パムに何を考えているかを当てられて、それでも僕はその考えを変えることができなかった。

 

「それに関してなんだがな、私に一つ考えがある」

 

「考え?」

 

「まあ今は気にするな。後々話してやる。さて…レプリカ、そっちはもういいか?」

 

パムが珠とレプリカの方を向くと、目が真っ赤に腫れている珠とどこか哀しそうな目をしているレプリカがいた。

 

「…ああ。もう、大丈夫。…で、始める?始めるなら、私は改めて、魔王の騎士ラ・ピュセルに挑む。…それでいいだろ?私は、僕は、もう迷わない。珠を生かすためにラ・ピュセルを、師匠を、殺す」

 

「まあ待て、戦うのは一向に構わん。その前にレプリカ、私の考えを読め」

 

「…?……。………っ!なるほど…。確かに、これは…。ああ、わかった。師匠が考えてることは理解した」

 

レプリカは言われた通りパムの考えを読んだのか、急に何かを悟ったかのような表情と声を出した。

 

「でも、それとこれは話が別だ。ラ・ピュセルは私との殺し合いを望んでる。これはどうする?」

 

「なに、1つだけ条件をつけるだけだ」

 

「条件…?」

 

「レプリカ、ラ・ピュセルを殺さずに無力化することが条件だ。でないと私の策が全て消えるからな。まあその程度余裕だろ?まさか出来ないというわけはないよな?ああ、ラ・ピュセルは殺す気で行って構わん。どうせアイツはお前じゃ殺せないし、そもそも倒せやしない。私とやるときは…まあ、その時はその時だ。ひとまずイベント戦の一つ目を消化しようじゃないか」

 

ここでうまくパムに乗せられていたんだろう。

僕は殺してしまうという不安感より、レプリカに何が何でも勝ってやるという気持ちが湧いていた。

そして示し合わせたわけでもないのにレプリカと向かい合った。

 

 

「…珠、離れてて。私は今から、魔王達に挑むから。大丈夫、死なないし殺さないから。向こうは知らないけど。だから…そんな心配そうな顔しないで。大丈夫大丈夫」

 

「ふーっ……よし、切り替えた。さっきまでのは忘れろ。これから全身全霊で、レプリカを倒す。殺すんじゃない、倒すんだ」

 

 

珠が十分離れたのを確認して、僕はレプリカへ剣を向けた。

 

「我が名はラ・ピュセル。魔王の騎士として、魔法少女の騎士として、全力全霊でレプリカ、貴女を倒す」

 

「どこからでもかかってこい、ラ・ピュセル。私の全力で君を完膚なきまでに叩き潰す。覚悟しなよ?」




〜時は少し戻りキークが端末の中へ引っ込んだ後〜

☆レプリカ

「違うよ!ラ・ピュセルを、友達を殺しちゃうってことだよ⁉︎」

「わかってる、でも、殺さなきゃ殺される。ここはそういう場所なの。だからこそ私は、君を生かすために、他人を殺す。例え友達でも、ね。だから…そんな悲しい顔をしないで。君が悲しい顔をすると、私まで悲しくなっちゃう」

「でも…!」

目の前には、泣きそうになっている珠が。
それはそうだ、友達同士の殺し合いなんて、珠が見たいと思うはずがない。

「珠、辛いことを言うけどね、これは殺さなきゃ殺されるんだ。だから…僕の敵として友達が立ちはだかったとしても、僕は君を守るために殺す。互いに殺さず終われる、なんてそんな都合のいい作戦も思い浮かばないし。それにね、向こうは僕を殺す気で来るのに、手加減したら、僕が殺されてしまう。わかるでしょ?」

「それでも…私は、レプリカちゃんの、辛い姿は…もう、見たくないよ…」

「…優しいね、珠。ありがとう、こんな私を、心配してくれて。でも、僕は珠を守ることに全てを賭けてる。友達か君かなら、僕はためらいなく君を選べるほど、僕は君を愛してる。たとえ、君が何になろうとも、僕が何になろうとも、その気持ちは未来永劫変わらないと、断言できる。それほど、僕は君を、愛している。愛しているからこそ、守る。たとえそれが修羅の道だろうとも、ね」

もう、僕自身は『淡雪ミヤビ』ではないけれど、人間であるかどうかすら怪しいけど、その気持ちは変わらない。

「あ…ミヤビちゃん、一つ…だけ、最後に聞いてもいいかな…」

「どうしたの?」

「その…あの、パムさんやゲームマスターのキーク?さんが言っていた…アイツラに連れてかれたって…なんのこと?ミヤビちゃん、一体何をされたの…?」

珠に知られてなかったことが色々と露見して、隠し通そうかどうか、迷った。でも、いずれわかることだし…まぁ、アイツらには間違っても珠に手を出すなって言ってるし『約束』を取り付けてるから…大丈夫かな?

「珠、落ち着いて聞いてね。僕は…ある所の派閥のお偉いさんにね、一回呼び出されたことがあるの。そこで僕は色々と理不尽なことを言われてね。まあ、簡単に言うと僕自身の魔法は類を見ないほどの珍しさだから研究させろってことだった。僕は断ったけどそしたら今度は珠を人質にするとか言ってきた。だから…力の限り、そいつらに抵抗をした。そして休戦を結んだ。向こうは被害を被るだけなのにそれに対する成果は僕だけだったから割に合わなかったんだろうね。向こうから休戦を提案してきたよ。ただ、それだけ…。だから、心配しないで。僕は何があろうと淡雪ミヤビだよ。珠が大好きで大好きで仕方がない人」

「う、うん…あり、がとう…」

ああ、赤面している珠は可愛いな。もっといじりたくなっちゃう。

でもこれから悲しませなきゃならないことを思うと、とても悲しくなる。
珠はとても優しいから、傷つけたくないけど、生き残るためにしなきゃならない。


「ごめんね、珠。悲しませる僕を、許してね」

レプリカについて(本編には全く影響しません)

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