魔法少女育成計画 己の大切な人を生かしたい   作:紀野感無

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記憶に出てくるのは

いつも泣いている珠の顔。

よく笑っている珠の顔。

頑張っている真面目な珠の顔。




周りの人間が、魔法少女が、私を異常者だと恐怖した顔で見てくる。

当たり前だ。私が普通じゃないことなんてとっくのとうに理解している。
人間というのは理性がなければただの醜い獣も同然。自己の欲のために何でもする。故に理性という枷が必要なのだと考える。


その私から『理性/枷』を奪ったのはどこの誰だ?


珠をいじめ、利用しようとしていたお前らだろう。


故に私は悪くない。


好きな人を守る行為がどうして悪だといえる?


好きで、大切な人を守るために他人を傷つけることは悪いことなのだろうか?


私はそう思わない。


自分の心に嘘をつき、周りに合わせることのどこに正当性がある?

なぜ周りがそうだからと、周りから見放されている子を私も見放さなければならない?

私にとってあの子の価値を決めるのは私だ。お前らに私の価値を決める権利なんて持っていない。

お前らは、いつから他人の価値を決めつけれるほど偉くなった?

よく私に襲われた、返り討ちにあったお前らは、助けてくれと懇願するが、あの子の個性を認めなかったお前らをなぜ助ける必要がある?

利用しようとしてきたお前らを利用して何が悪い?

殺そうとしてきたお前らを殺して何が悪い?




故に、私は、悪くない。





2話

 

〜学校 昼休憩〜

 

☆岸辺颯太

 

僕は悩んでいた。

 

レプリカ…淡雪ミヤビと、その場の勢いで、守れる保証もないのに----無論、絶対に破らないが----約束をしてしまったから。

 

「…とりあえず、小雪には危険なことになるかもしれないし…今は内緒にしておこう…」

 

危険なことに小雪を巻き込みたくなかった。

 

これは僕が蒔いた種だから、何かの被害にあうのは僕だけでいい。

 

「えーと、確か犬吠埼珠さんだったかな…?何組なんだろう」

 

昨日殴り合いが起こったのは2組だったから、とりあえず2組に行ってみよう。

 

 

 

 

「え?」

 

「え?って言われても、いないものはいないわ。なんか…どこかに連れていかれたのは見たけど……」

 

2組という予想は当たってはいたが、昼休憩になって、できる限り早く昼ご飯を食べてきたというのに、犬吠埼さんはいなかった。

 

「どこに⁉︎」

 

「さ、さぁ…。でも、私たちは悪くないよ?だって、犬吠埼さんと関わると私たちが危ないし…」

 

「……っ!」

 

これだ。二組のクラスの人や犬吠埼さんや淡雪ミヤビと小学校の頃に同じクラスになったことのある人は、みんなこの反応をする。唯一しなかったのは殴られていた男子だけだったが。それ以外の人は皆

 

関わるのを、避けようとする。

 

まるで恐れているかのように。

 

「…っ、とにかく探さないと…」

 

 

 

 

 

☆犬吠埼珠

 

「うぅ…」

 

ミヤビちゃんがいないのをいいことに、このあいだの続き-----とは言っても何をするのかはわからない、わかりたくもないが----手を出そうとしてきていたクラスメイトに、どこかに連れていかれそうになり、思わず手を振り払って逃げてしまった。

 

そして、屋上(ここ)に来た。

 

ミヤビちゃんが、見つけてくれた秘密の場所。

 

いや、秘密の場所というにはあまりにも目立つ場所だった。

でもこの学校は少し厳しくて、屋上に上がるなんて以ての外とのことで、ものすごい厳重に鍵をかけられていた上にここに来るまでにも中々骨が折れるらしい。

 

けど、ミヤビちゃんがいつのまにか、ものすごい簡単に入れるようにしてくれていた。普通に見るだけでは、いつもと変わらない、ものすごい厳重な場所だったけど、少し弄れば簡単に入れるようになっていた。

 

噂によると監視カメラがあるらしいがミヤビちゃん曰く、映らないルートを作ったらしい。

 

で、時々辛いことがあるとここに来るようになっていた。

 

 

昔……今でこそ、ほとんどの人には言われなくなっていたけど

 

みんな、私のことを

 

 

いつもヘラヘラしていると言った。

 

鈍臭いと言った。

 

頭悪いと言った。

 

運動音痴だと言った。

 

 

 

表情では笑えてるかもしれない。

 

でも、心の底から笑ったことなんか、ほとんどない。ただ笑っていないと、より辛くなるだけだったから。

 

 

鈍臭いと言われたって、私は私なりに、精一杯やってる。

 

でも、上手くいかないことの方が多い。

 

 

頭悪いと言ったって、これでも必死に勉強している。

 

でも、要領が悪いのか、なかなか伸びない。

 

 

運動音痴と言われたって、こんなの私にはどうしようもない。

 

物心ついた時から運動は苦手で克服しようと頑張ったけど、まだ出来てない。

 

 

気づくと、昔のことを思い出していた。

同時に果てし無く気分が悪くなってしまった。

思わず吐きそうになってしまった。

 

「ケホッケホッ…。久しぶりに1人でご飯を食べるけど…こんなにも美味しくなかったんだ…。本当に、ミヤビちゃんどうしたんだろう…」

 

朝、先に行っててと言われ、学校に来たものの、ミヤビちゃんは学校を休んでいた。

 

今までは、こんなことなかったのに。

 

 

ガタン!

 

 

「っ⁉︎」

 

ドアの方から大きな音がして、体が反応してしまい、ビクッとなった。

 

「いった…。頭ぶつけた…」

 

どこかで聞いたことある声が聞こえて来た。

でも、どこで聞いたか思い出せない。

 

すると、ドアが開いたので、急いで隠れた。

先生が来ていたら、きっと怒られると思ったから。

 

「あ、あれ…ここにもいない。こっちに行ったって聞いたんだけど…」

 

けど、多分同級生、だと思う人が入って来た。

 

「しょうがない…別のとこを探そう。早くしないと…本当に淡雪ミヤビに…」

 

「……?ミヤビちゃん…?」

 

聞き間違いだろうか。あの男子生徒の口からミヤビちゃんの名前が聞こえた気がする。

 

ガタッ

 

「あ…」

「ん?」

 

ミヤビちゃんの名前が出たことに少し動揺してしまい、物音を立ててしまい、男子生徒に気づかれてしまった。

 

「え、えっと…あの」

 

「っ…」

 

「あ、待って!犬吠埼さんだよね⁉︎犬吠埼珠さん!」

 

なぜか名前を呼ばれていたが、私は一目散に逃げてしまった。

教室に戻る頃には、もう次の授業が始まるところだった。

 

「はっ…はっ…はっ…」

 

運動ができないのに、ガムシャラに走ったせいか、授業が始まってしばらく経っても息切れは治らなかった。

 

 

 

 

 

 

☆岸辺颯太

 

昼休憩の後、どうすべきか考えたが、何をするのが正解か、よくわからなかった。

 

別に、犬吠埼さんを庇うことにより、自分がイジメの対象になることが怖い、とかそういうことはなかった。

 

ただ、よくよく考えると、リアルの、さらに魔法少女の活動の一環で会ったことがあるかもしれないが、初対面の、しかも男子にいきなり『守ってやる』なんて言われて誰が信じるだろうか?

 

少なくとも僕なら信用しない。

 

なら、淡雪ミヤビに頼まれたから、と嘘をつく?

いやダメだ。(そんなこと)をすると何をされるかわかったものじゃない。

 

「…うちゃん」

 

じゃあどうやって犬吠埼さんに信用してもらう?

事の詳細を話すにしても、僕と淡雪ミヤビが魔法少女(男ではあるが)な以上、話すわけにはいかない。

 

「そうちゃん」

 

じゃあ、無理やりにでも、お願いして信用してもらう?

 

「そうちゃん!」

 

「へ?あ、小雪。どうしたの?」

 

突然耳元で叫ばれたかと思うとそこには小雪がいた。

 

「どうしたの、じゃないよ。もう放課後だよ?部活は行かなくていいの?」

 

「え?あっ!本当だ…。あ、いや部活は今日は用事あるから休むって言ってあるけど…」

 

「?そうなの?ああ、それとは別なんだけどね、なんかそうちゃんに用事がある人がいるって」

 

「え?」

 

小雪が教室の入り口を指差すと、そこには犬吠埼さんがいた。

 

「犬吠埼さん⁉︎」

 

「え…と、その……」

 

けど、この場の状況に少し違和感を感じた。

 

僕の机は、ど真ん中と言っていいほど中心にある。

そして今は放課後とは言っても、時間を見る限り放課後になって十分とかそこらへんだ。

 

なのに、僕と彼女の間、そして周りに()()1()()()()()()()()

教室内にいる人は窓際の方などに移動しているし、隅でこちらをみながらヒソヒソと話している。

後はあからさまに避けるように教室を出て行った。

 

廊下にいる人は彼女を見ると怪訝な目を向けていた。

 

「…っ、そ、その…昼、休憩の、とき……きゃっ」

 

と、何かを言おうとしていて、聞き取るために近づこうとすると、犬吠埼さんが急に後ろによろけた。

 

「おい、犬吠埼。テメェあれだけのことをしといて何逃げようとしてんだ?」

「い、痛い…や、やめて……」

「あぁ?聞こえねーよ。おら、こいよ」

 

後ろによろけた先には、例の淡雪ミヤビに殴られていた男子生徒が。鼻のガーゼが目立っていた。

そして犬吠埼さんの髪を引っ張ってどこかへ連れて行こうとしていた、

 

…って、そんな流暢に観察してる場合じゃない!

 

「ちょっと!何してるの!痛がってるじゃない!」

 

「あぁ?なんだよ、文句あるのか?」

 

「…っ、あ、あるよ!」

「小雪、下がってて…。おい」

 

「あぁ?こんどはお前かよ。文句があるなら言ってみろよ」

 

僕は、心臓がバクバクしていた。

 

多分、恐怖していた。

でも、()()()()()()()()()()()()()()

 

その、もう少し後ろ。

 

 

そこから、感じてしまった。凄まじいほどの殺気と憎悪を。

少し目を凝らすと、レプリカがいた。

もう、臨戦態勢に入っていていつでも殺しにこれるのではないか?

 

 

「……(そのこ)を離せ」

 

「あ?」

 

「その子を離せって言ってるんだよ」

 

そういうと、更に男子生徒は不機嫌になった。

掴んでいた犬吠埼さんの髪を離してこっちに来た。

 

「なんだよ、お前が代わりにやられてくれるのか?そういうことだよな?」

 

「何に怒っているのかは知らないけど、僕の知る限りだと犬吠埼さん(そのこ)は関係ないはずだ。いや、むしろ被害者なはずだ」

 

「被害者なんかじゃねえよ。むしろ犬吠埼は加害者側だろうが」

 

「……は?」

 

「アイツのせいで俺は鼻と肋骨を折られて、何箇所もシャーペンで刺されてんだよ。なぁ!犬吠埼。お前、自分は弱いアピールして、ボーイフレンドに助けてもらって、俺がボコボコにされてる姿みて楽しんでただけだろうが!俺だけならまだいいさ。アイツに俺の彼女まで手を出させた罪は償ってもらうぞ!どんなことをしてでもな…」

 

……なんだ、こいつは。こいつのあまりにも酷い自意識過剰はなんなんだ。なぜ自分が悪いとわかっていない。

 

「…お前のいうことは間違ってる」

 

「あ?何がだよ」

 

「昨日のことがあってから、君のクラスの人や、淡雪ミヤビにも、何が起こってああなったのか聞いてみた。みんなお前がやりすぎた、って言っている。淡雪ミヤビは、君が犬吠埼さんを虐めて、それを止めるよう言ったにも関わらず続けたからあんな行動に出たって言っていた」

 

「はっ、虐めてるだ?虐めてなんかねえよ。ちょーっと遊んだだけだろうが」

 

「ふ…ざけるな!」

「そうちゃん、ダメ!」

「っ!」

 

もう聞いていられなくなり、思わず殴りかかりそうになった。

が、小雪が目の前に出て来てくれたおかげで、踏みとどまれた。

 

「そうちゃん、暴力は…ダメだよ」

「あ、ああ……。ありがとう、小雪」

 

「こらっ!何をしてるんだ、お前たちは!」

 

「ちっ…まあ、今日はやめといてやる。だけど必ずアイツらには報復を受けてもらう」

 

「そんなことは、僕がさせない」

 

先生が来て、流石に堂々とやる気はなかったのか、この場から去って言った。

去り際に睨まれてそんなことを言われたので、同じように睨んで強気に言い返した。

 

その後は、先生からのありがたいお言葉と言う名の説教を受けた後、結構意外だったけど犬吠埼さんとも一緒に帰ることになった。小雪は用事があるとかで何処かに行ってしまった。すぐ終わらせて追いつくと言っていたが。

 

淡雪ミヤビはというと、気付いた時には、もうどこかに消えていた。

 

 

 

 

☆淡雪ミヤビ

 

「僕に、報復ねぇ…。ま、そんなことでクズが大人しくなるなら大人しく受け入れてやるけど……まあやめなかったときは、そのときはその時で人生終了(ゲームオーバー)にしてやればいいか」

 

少し遠くから珠と岸辺颯太を見ていて、所々抑えきれずに殺しに行きかけたけど、なんとか我慢した。

 

別に、珠以外の人間の生死なんざどうでもいいし、人を殺すことにもなんの躊躇もないけど、珠にはそんな光景を見て欲しくないから、やるとしたら夜中かな?

 

別に殺すのではなく、家族ごと崩壊させてやってもいいし、社会的に殺してもいい。それか、文字通り細切りにしてやるか。

 

「…別にそんなことを考える必要もないか。さてと、学校では幼馴染もいたから、いい格好ができたかもしれないけど、これからどうなるか。珠の家族(ゴミ)達に会ったときも、そんな態度を貫けるかな?ラ・ピュセル?」

 

 

 

 

 

〜帰り道〜

 

☆岸辺颯太

 

「えっ、犬吠埼さんも『魔法少女育成計画』やってるの?」

「は、はい…。み、ミヤビちゃんと、一緒に……」

「へー。あ、僕もやってるんだけど、良かったらフレンドになってもらえないかな?」

「あ、はい…。もちろん!」

「ありがとう」

 

犬吠埼さんと一緒に帰っている途中、話す内容があまりないことに気づき、互いにほぼ無言だったけどなんとなく無料ゲームの『魔法少女育成計画』について話すと、犬吠埼さんもやっていたようだった。

 

そして、お互いにIDを伝え合い、フレンド登録をし……

 

「ん?このアバター、どこかで……」

「え?『ラ・ピュセル』…?でも、これって……」

 

「「……」」

 

しようとしたときに、なんとなく……いや、ちがう。確実に見たことある姿が犬吠埼さんのゲーム内でのアバターにも映し出されていた。

名前は『たま』。

 

 

記憶違いでもなければ、小雪と一緒に手伝った魔法少女二人組のうちの一人は、こんな姿と名前だったはずだ。

 

 

「ね、ねえ。もしかしてだけど、君って…まほ「そうちゃーん!」…っ、ごめん、また後で」

「は、はい…」

 

「…?二人ともどうしたの?」

 

「いや、なんでも……」

 

そこに小雪が小走りでこちらに来た。

ああ、そういえば後から来るっていってたな。

 

 

……いや、待てよ。もし仮に、だ。

 

犬吠埼さんが魔法少女だった場合、べつに淡雪ミヤビとの関係を隠す必要もないんじゃないのか?

 

 

「あれ?犬吠埼さんも『魔法少女育成計画』やってるんだ」

「え?は、はい」

「私もなんだ!もしかして、犬吠埼さんって魔法少女好き?」

 

「えっと……その、ごめんなさい。ま、魔法少女が好きだから、じゃなくて…みんな、やってるから…やってて」

 

「あ、全然気にしなくていいよ!あ、私ともフレンド登録してもらってもいいかな?」

 

「は、はい!よ、よろこんで!」

 

と、こんどは小雪とフレンド登録をし始め、二人とも、さっきの僕みたいになって驚いていた。

 

「え、えーと…その」

 

「……あ、あのっ!」

 

小雪が困惑していると、突然、犬吠埼さんが突然大声をだして、僕も小雪も思わず驚いてしまった。

 

犬吠埼さんを見ると少し顔が赤くうつむいていた。

 

「そ、その……わたしの、家。ここからすぐなんです。も、もしよかったら、きません…か?そ、その、二人と、もっと話したくて…。そ、それに、紹介したい人もいて…」

 

「もちろん!喜んでいかせてもらうよ!ね、そうちゃん!」

「っ、あ、ああ!こちらこそよろこんでいかせてもらうよ!」

 

そう答えると、犬吠埼さんは、今までにないくらいに笑顔になった。

 

それを見てなんとなくだけど、僕も嬉しい気持ちになった。

 







封印というのは、個人的には面白い部屋に閉じ込められた、そんな感じだ。

至る方向から重力を感じ、不快感の強いナニカが体を襲う。

封印されたモノは、皆口を揃えて『二度と入りたくない』と言ったという。


だが、いつも死にかけていた私からすれば、いわば休み場所も同然。
1対多をやっていると、コレの比じゃないくらいのクソみたいな環境が襲ってくる。

それに、だ。


魔王と対峙した時よりも数倍マシだ。


これなら、安眠程度ならできるだろう。


三賢人に珠のことは約束()()()し、しばらくは体を万全に治そう。



珠を守るために。

レプリカについて(本編には全く影響しません)

  • 好き(受け入れられる)
  • 嫌い(受け入れられない
  • どちらでもない
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