魔法少女育成計画 己の大切な人を生かしたい   作:紀野感無

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両親の顔?そんなものとっくのとうに忘れた。

いたと言うことは覚えている。けれど、記憶に留める必要もないものを留めれるほど、僕の頭はよくできてない。

ただ、一つだけ覚えているのは………




私の母親も大概狂っていた、それだけだ。






6話

☆淡雪ミヤビ

 

目が覚めると、そこは白い部屋だった。

体には数本の管が腕に繋がれていた。

背中が少し痛む。

 

記憶が朧げだ。何があった。

 

傍らには珠が。それと、岸辺颯太。あと……スノーホワイト?

皆、眠っているようだった。

 

だんだんと記憶がハッキリとしてくる。

 

「ああ、そうか。殺されかけたのか。私は」

 

屋上での出来事を思い出し、あのクソ野郎を始末しきれなかったことが悔やまれる。

 

これからどうすべきか、おそらく今回の騒動で珠に余計な心配をかけてしまったからまた別の方法を考えないと。

 

「おや、目を覚ましましたか。ソレは上々。医者の話では内臓にも傷が入っていた、とのことですが」

 

すると突如聞き慣れた声が。毎夜組手の相手をさせられている相手だ。

 

「……クラムベリー。何のようだ」

 

「いえいえ。人間の状態で重傷を負うと大体は死に至るはずなので。その前にこの回復薬を、と思いまして」

 

そうしてクラムベリーが置いたのは前に飲んだことのある回復薬だった。

 

……また飲めと?

 

「……」

 

「そう邪険にしないでください。前回は貴方が死にかけでしたから回復の反動があれだけ大きかったわけです。今回は刺し傷一つですからおそらく反動も小さいでしょう。時間も極小で済むと思われますよ。

 

では、私はこの辺でお(いとま)しましょう。

 

その方達への弁明はご自分で」

 

回復薬を飲むことを躊躇い、唸っているともうクラムベリーは姿を消していた。

 

……背に腹は変えられない、か。

 

意を決して蓋を開け中の液体を飲み干す。

その瞬間に予想通り激痛が走った。

 

あのクソ野郎、次あったら殺す。

何て思考も激痛によりすぐさま吹き飛ぶ。

 

思わず叫びそうになるが隣で寝ている珠を起こさないために何とか耐える。

これ以上心配をかけるわけには、いかない。

 

「レプ……リカ?」

 

「あ゛あ゛?スノー、ホワイト。何、今……珠が」

 

「大丈夫⁉︎どうしたの⁉︎」

 

僕の言葉を遮りそこそこ大きな声と共に体を揺さぶられる。

やめろ、わりとマジでやめてくれ。マジで今は体に響くどころじゃない。

 

「ぼ、くの、心配、するなら、今は、静、か、にして、くれ。他に、気、やると、声を、おさえ、られない」

 

何かを言いたげだったが、ようやく首を縦に振った。

 

 

 

 

 

クッソなにが、短時間で終わると思う、だ。

もう三十分はたったぞ。未だに終わらない。

 

寝かせておきたかったはずの珠もラ・ピュセル…岸辺颯太も起きていた。今は全員が心配そうな顔をして私を見ている。が、構っていられないのもまた事実だ。

 

前は文字通り死にかけた状態で飲んで余計に死にかけた。

……今回はただの刺し傷だ。

それでこれなのだから恐らく、傷の重傷度は関係ない。

 

「(……こんだけ考える余裕ができたってことは、慣れた、と言うことか。これもクラムベリーの考えなら、腹立たしい」

 

 

それから更に30分経った。ようやく痛みがなくなってきた。

耐えれたのは一重に、珠がずっと見守ってくれたからだろう。

 

「ミヤビちゃん、大丈夫?」

「うん、もう、治った。……釈だけど、効力だけは本物なんだよな、これ」

 

もう背中の痛みは既に消えてる。

体の中の異物感も既にない。

 

激しく体を動かしてみるも、特にこれといった違和感もない。

 

「……で、何の用だっけ。2人は」

 

それをスノーホワイトとラ・ピュセルに言うと途端に2人がコケた(ように見えた)。

 

「冗談。わかってるよ屋上のことだろ?と言うか、僕こそ聞きたい。あの後はどうなった」

 

 

 

 

 

結論から言うと、あのクズ野郎どもは生きながらえてしまった。そして、クラムベリーに騙された、と言うことがわかった。

何が軽傷だ。内臓に傷が入って死にかけたんじゃねえか僕は。

 

そしてあのクズ野郎共は、病院でぬくぬくと入院生活をしているらしい。

 

警察に保護、とかならこの上なく面倒臭いが、ただの病院にいるなら都合がいい。

 

 

事故に見せかけるだけだから。

 

 

「ミヤビちゃん」

 

「?どうしたの?珠」

 

考え事をしていると珠が泣きそうな顔で、俯きながらも僕の腕を引く。

 

……こう言う顔をさせたくないから、余計な心配をかけたくないから、1人で全部頑張ったのに。台無しだよ、もう。

 

「ご、ごめ、んね。ミヤ…」

 

「珠」

 

その先を言われる前に、珠の口を塞ぐ。そのまま言わせないように、僕が言葉を紡ぐ。

 

「その先を言うのはいくら珠といえど、許さないよ。君が悲しむのを僕が許容できないのは知ってるでしょ?」

 

「でも、私のせいで、ミヤビちゃんが」

 

「珠のせいじゃない。これは僕の責任だ。でも、だって、なんて事は言わせないよ。そもそも今回は、僕が納得できないから殴り込みに行っただけだ。話し合いで解決できないから、互いに意地のぶつかり合いになった、それだけだ。

 

向こうは自分の女を、僕は君を守ろうとした、それだけだ。原因はどうであれ、そこだけは認めてる。

 

だけど、それは珠に、君に手を出したことを許す理由にはなり得ないと言うのも理解して欲しい。

あいつは、君を傷つけた。僕が許さない理由は、それだけだ。

 

でも……これからはもうちょっと穏やかにしておくよ。僕のせいで君を悲しませたくないからね」

 

「……」

 

それでも珠は心配そうな目で僕を見る。

 

「はぁ……今回の問題の根本は、珠を虐めてきたアイツらにある。そこに関しては誰にも文句は言わせない。

その事で珠が何かを気負う、なんて必要はない。

 

……もっと、自分のことも考えなよ。他人(ヒト)の事ばかり考えてると、いつかもっと悪い奴に騙されちゃうよ」

 

ルーラとか、ね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆???

 

「〜♪〜♪」

 

相変わらず好きだわ。殺気に満ちた(こういう)空気。

常に(スリル)と隣り合わせ。

 

魔王塾なんて、半端な場所とは全く違う。

常に死が横にあるからこそ、人生は素晴らしい。

 

「ねえ、そう思うでしょ?森の音楽家クラムベリー」

 

「魔王塾が半端……とは思いませんが、後半には賛成です。どうも、淡雪・エレガ・ノースさん。お噂はかねがね」

 

この子も魔王と比べたら未熟ではあるけれど、それでも……(おいし)そう。味見してみたいわぁ。

 

「そう焦らずとも、すぐに味わえますよ」

 

「あら、どうしてわかったのかしら?」

 

「ふふ、顔に出てましたよ」

 

やはり同類には私の考えはわかりやすいらしい。

 

「では、立ち話も疲れる事ですし、こちらへ」

「ええ」

 

 

 

 

 

 

☆クラムベリー

 

この仕事を、試験管をし始めて一番と言っていいほど幸運なことが起こった。

 

まさかこんな大物と出会えるとは。

 

淡雪家の現当主。魔法の国でとある三竦みの貴族達並みに、悪い意味で重要視されている家系、その当主。

 

 

黒い髪を肩より少し下まであってそれでいて少しボサボサ。

手入れを怠っているというわけではなく、ただの地毛らしい。

 

虹彩の色が右が黒、左が赤という、何ともまあ奇妙な眼になっているが、彼女は彼女自身の容姿に興味がないからどうでもいいとか。

 

 

ファヴ曰く、「化物一家」らしい。

 

 

その甘美な言葉が私の鼓膜に、脳に、ゆっくりと響き渡る。

 

 

「どういうつもりぽん。急にぽっと出てきて。ここはお前の遊び場じゃないぽん。ファヴ達の遊び場ぽん。隠居ババアはとっとと帰れぽん」

 

「煩いですね。お前は口を開かないでくれる?私がマスコット嫌いなの知ってるでしょう?口を開けば私に説教しかしないお前達は私にとってイライラを募らせる原因でしかない」

 

「お前こそ口を開くなぽん。クラムベリーを操ろうたってそうはいかないぽん」

 

少し話をしてすぐに至高の時間が、と思っていたがファヴがでしゃばってきた。

そのおかげで多少はイライラしている。

 

そして、ファヴは一つ思い違いをしている。

 

私を操ろうものならもうとっくのとうに操っているだろうに。

 

エレガ・ノースの魔法は「みんなから尊敬されるよ」という魔法らしいが、私は一切そう言った感情を抱いていない。

 

「私に対して思い違いしているわよマスコット。お前はメインディッシュという完成されたモノに何か細工を施すわけ?

 

せっかくの魔王塾の中でも指折りの実力者だというのに、その実力を体感する前に操ったらもったいないにも程があるわ。

ねえ、貴女もそう思うでしょう?」

 

「ええ、同意します」

 

ファヴは、それでも唸っていたがそれも諦め、「勝手にするといいぽん」と言い残し端末の中に入っていった。

 

「それでは何からお話ししましょうか?」

 

「聞きたいことがあるならどうぞ」

 

「では……」

 

 

 

 

 

「ならばこの時はどうでしょう」

 

「私ならこうね」

 

「ほう。ならばこれに対しこういう手段は?」

 

「二流三流にはしばらく通じるでしょうね。一流、それこそ魔王みたいな相手だと初回が限界」

 

「でしょうね。ふふ、やはり素晴らしい。こうも語り合える機会はなかなかないですからね」

 

「語るだけで満足かしら?」

 

「いえいえ、まさか」

 

ノースは私が差し出した紅茶を飲み、談笑をしながらもこちらはの警戒は一度たりとも怠っていない。

 

一度小手調べに、音の振動を出鱈目にぶつけてみる。

が、特に効いている様子はなく、また紅茶を啜っている。

 

「慌てない慌てない。時間はたっぷりあるのだから。そうねぇ、今外で待たせてる子も一緒に、2対1、と言うのはどうかしら?」

 

「気付いていましたか」

 

「外の子が隠れる気がないもの」

 

「ならば話はお早い。私がここでとった弟子です。私の好敵手とするために」

 

「へぇ」

 

どうやらノースにとっては私一人では物足りない、と感じたらしい。

だからこその2対1の申し出なのだろう。

 

「それは気になるわね。貴女が自分の好敵手に成り得ると判断した卵、どんな味なのか……とっっても気になるわ」

 

「おっと、食べきるのは無しですよ。私のですので」

 

「あら、強欲ね」

 

誰が何と言おうと、レプリカ(あれ)は私のものだ。

 

「というわけですので、どうぞ入ってください」

「……」

 

そうして入ってきたのは、やたらとゲッソリしているレプリカ。どうやらあの回復薬の代償に耐え切ったようですね。

 

それでいて、耐久値もそれに伴い増加した、といったところ。

ですが体調がさほど良くないようで。

 

まあ関係ありませんが。

 

「レプリカ、今宵は特別コースです。今から私と貴女の二人でこの魔法少女に挑みます。ふふ……できれば私一人で楽しみたかったですが、これもまた一興」

 

レプリカは何が何だか分からない、と言った顔だ。まあすぐにわかる。

 

それに、レプリカと全く縁がない、というわけでもありませんしね。

 

 

 

☆レプリカ

 

クラムベリーに、いつも通りにこいと呼び出された。体がだるいことこの上なかったがここでサボると余計悪いことが起きる気がしてならなかった。

 

だけどそれは、来ても来なくても一緒だったと思う。

 

まさかこの顔を見ることになるとは思いもしなかった。

 

 

 

僕が殺したはずの、母親の顔を。

 

 

 

「あらあら、ミヤビじゃないの。久しぶりねぇ。三年ぶりかしら?」

 

「年老いた?時間の流れすらまともに感じれなくなった?僕がお前たちを焼き払ったのは5年前だ」

 

「ふふ、そうね。懐かしいわ。何をコソコソしてるのかと思ったら昏睡させるための薬を用意して、燃やすための用意もして、私の蓄えを勝手に持ち出して。ふふふ、健気で可愛かったわよ?ミヤビ」

 

「……」

 

これだ。何もかもを見透かしているかのような言動がいちいちうざったい。癪に触る。

それに珠をも侮辱してきた。

 

 

だからこそ焼き払ってやったのに。

 

 

「まさか驚きましたよ。私の子が貴女の弟子とは。運命とは奇妙なものね」

 

「まさか男で魔法少女の適性を持つとは思いもしませんでしたが。それに、貴女の子だというのを知ったのもつい最近ですので」

 

「魔法少女の適性を持ってて当たり前よ。私の子だもの」

 

「そうですね。それが男とはいえ自然の摂理かもしれません」

 

「男……?ああ。そういえば……私の大事な作品を盗られたくないからと、あの人にお願いして……ふふ、そう。()()れっきとした男なのよね」

 

もう母親の立ち振る舞いと僕を見る目が死ぬほど気に食わなくて、先手を仕掛けた。

 

しかしコイツは僕の方を見ることなく避け、逆に顔を殴り吹っ飛ばしてきた。

 

「そうそう。あの小娘はまだ生きているのミヤビ?あの出来損ないの小娘……確か、犬吠埼珠、だったかしら?私の予想だとそろそろ死ぬのかなと思ってるのだけど」

「ああ、それでしたら……」

 

 

 

 

 

会話を聞き取る前に、私の意識は途絶えた。

 

私の本能が、母親(コイツ)を殺せと、叫んだのは、覚えている。

 

しかし、それ以降は何も覚えてない。

 

 

 

 

 

☆淡雪・エレガ・ノース

 

「うーん、薄味。味も雑。でも今後に期待、ね」

 

「それはよかった」

 

クラムベリー(あなた)は、大味で単調。だけれどもとても美味しい。魔王以来だわ」

 

「貴女も、とても良い音を奏でる。……魔王塾を半端な場所と称するだけのことはある」

 

「ま、私は魔法のせいで肉弾戦(そういうもの)に頼らざるを得なかったからね。皆、魔法を使えばいいと言うけれど、血肉湧き立つ殺し合いをせずに相手を制して、何が楽しいのやら。……だからこそ、道具にも頼らざるを得ないんだけどね。まさかレプリカ(このこ)の魔法がこんなチート性能だとは思わなかったわよ」

 

「ふふ。それは私も思いました。ですがそれ故に、育った時はとても良い音を奏でる、良い味になる、そう思いませんか?」

 

「そうね。成熟するのを私は、ゆっくりと待つとするわ。それじゃあ、また呼んでくださいな。いつでも暇つぶしには付き合うわよ」

 

「ええ、それではまた」

 

傍らにギリギリ死なない程度に串刺しにされ魔法も使えない我が子を横目で眺め、私は帰路についた。




三賢人の中で一番出逢いたくないのは、と聞かれることがたまにある。

私としては「仲良くなる」魔法と「一切の干渉を遮断する」魔法を持っている二人だ。正確には、三賢人の依代だが。

珠を守る上ではあいつらの依代は相手にする必要など基本ない。


向こうも私たちには興味などないのだから。




だが、珠を害すると言うのなら、全力で、本気で、殺す



私は、ただそう在るだけだ。

レプリカについて(本編には全く影響しません)

  • 好き(受け入れられる)
  • 嫌い(受け入れられない
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