魔法少女育成計画 己の大切な人を生かしたい   作:紀野感無

56 / 64
「……」
「さっさと歩け。睨んでもどうにもならんぞ」

月に一度の、墓参り。命令にずっと忠実に従ってきて、ようやく交渉できた権利。
が、縛られ猿轡され魔法を封じられ、事あることに蹴る殴られるされたら、そりゃ睨みたくもなる。

「お前に恨みを持つ奴は腐るほどいるが、お前の力を欲しがっている奴も同じくらいいるんでな、殺されたら困るんだよ。だからお前の警護に私がついてんだよ」
『次期現身候補がわざわざ私の警護ね。よほど人材不足とみえる』
「だからこそだろうな。上はアピールしたいんだろうな。『私のところはレプリカを完全に飼い慣らしてる』ってな」
『だろうね。ボクは、君らの貴重な戦力を殺しすぎたから、ボクを飼い慣らせば、言うなれば各部署、各派閥の主戦力を得たも同然。だから君らは僕を殺すのではなく封印した』
「厳密には少し違う。お上はな、あわよくば『淡雪家』ごと取り込みたいんだよ。お前はそのための手札の一つに過ぎない。強い魔法少女を生み出す技術は、いつの時代になっても喉から手が出るほど欲しいんだよ」
『あっそ。私の家族とか、どうでもいい。好きにすれば?お前達があの怪物家族をどうこうできるとは思わないけどね』





9話

次は、誰を狙うか。思いつく限りの学校の関係者は、一日をかけてほぼ全部殺った。

思いつく限りだと、人間にはもう、いない。なら次は魔法少女だ。魔法少女の中なら……ユナエルとミナエルだ。

 

「でも……はぁ、はぁ…張り詰め、過ぎ、たな」

 

流石に連続活動できる限界だ。

 

「珠、無事だと、いいけど。岸辺颯太も、スノーホワイトもいるから、大丈…夫……」

 

少し……寝てから、あの2人を殺しに……。

 

 

 

 

 

 

 

「っ⁉︎」

 

何とも言えない、とてつもない悪い予感がして一気に目が覚めた。

その場を跳び退くと、どこからか銃弾と大小様々な岩が飛んできた。

それと同時、マジカルフォンが震えたのが分かった。

 

「……はっ、ふざけろ」

 

マジカルフォンを開き、横目で見てみるとクラムベリーからのメールだった。

 

 

『これより貴女は全員からの標的です。精々生き残ってくださいね』

 

 

マジカルフォンを閉じ、辺りを見渡すと続々と姿を現してきた。

 

カラミティ・メアリに、ヴェス・ウィンタープリズン、シスター・ナナ、スイムスイム、ユナエル、ミナエル、リップル。

 

7人……魔法も半分は知らない。さてどうしようか。

 

「で、何のようですか。揃いも揃って協力しなさそーな奴らが」

 

「御託はいい。アンタには死んでもらうだけさ」

 

カラミティ・メアリに

銃を向けられ凄まれるが、もう今の僕は怖いものはない。

 

「寝言は寝て言え。ババア。私を殺しに来るなら、気をつけろよ?死んでもお前らの首を噛み千切ってやるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(流石に、無理、か。がんばったん、だけど)」

 

左目は何か刺さったせいで視力がほとんどない。

腕も痛い。皮一枚でなんとか繋がってるんじゃないかこれ。

脚も痛い。手裏剣とかガラス片とか無数に刺さってる。

腹も、肺も痛い。土の壁で頭を潰されなかっただけマシか。

血も流しすぎた。そこそこな水溜りが出来そうな程は流した気がする。人間の失血死の基準っていくらだっけか。

 

身体中のそこかしこが痛い。

 

「はぁ…はぁ」

 

正直言って、かなり辛い。烏合の衆とタカを括っていたけど、事前に示し合わせていたのか弱点を互いにカバーしあっていた。

勝ち目はほぼないに等しい。けれど何で戦ったのか。逃げれば、良かったものを。

 

「……私1人を殺すために、一時的な徒党を組む、ね。負け犬の、発想、だな。なんだっけ、私を、討伐すれば、キャンディー争いをしなくていい、だっけ」

 

「そーそー」

「だからー、今はみんなでアンタを殺そうぜー、ってこと」

 

……だろうな。けど私1人を殺すためだけに協力とは、優しくなったものだ。

 

「カラミティの魔法が見れたのはラッキーだけど、それ以上に、アンラッキーだな」

 

武器を強化する、あたりだろうか。どこまで強化できるのかは不明だけど……考える余裕がない。

にしても、誰にも僕の行先を伝えてないのになんでバレたんだろうね。

 

「もう遺言は終わりかい?」

 

「遺言なんて言ったつもりねえよババア。殺せるもんなら殺してみろよ。その前に殺してやる」

 

「口だけはご立派なもんだ」

 

銃を構えるのを目視した瞬間顔を横に避けると、避けた先にあった岩や木々が爆ぜた。

見た目は普通の銃なのに威力が頭おかしい。

 

1人ずつ相手なら大したことのない連中でも、徒党を組まれると本当に面倒くさい。

距離を取ればカラミティが銃ブッパしてきて、近づけばリップルやウィンタープリズンに阻まれ、逃げようにも魔法の壁で逃げ場をなくされ、液体化させ逃げようとするとスイムスイムに捕まる。

 

絶体絶命、というやつだろう。せめて不意打ちされて負った傷さえ治せればどうにかなるかもしれないけど、そんな魔法も、クラムベリーが持ってた薬も無い。

 

「もう終わりかい?冥土の土産だ。最後に何か一つ言わせてやるよ」

「まて、奴を狩るのは私だ」

「いやいや、私たちだっての」

「早い者勝ち、そう決めたはず」

「……」

 

どうやら僕を殺した奴のみが利益を得るらしい。

それを事前に知れてたなら、もう少しやりようはあったかも知れないのに。

 

「珠に、岸辺颯太に、会いたい、な」

 

あの2人には、僕の中の全てを、知っておいてもらいたい。僕という存在を忘れないで欲しい。

 

「(なんて……僕もずいぶん影響されたもんだ。正義の味方気取りの、綺麗事しか知らない、子供に、魔法少女に)」

 

だが僕みたいなゴミが今更何を、死ぬ時は独りと決めていただろうに。

 

「……ふふっ」

 

「どうしたんだい?死ぬ前にして狂ったかい?」

 

「僕が狂った?はは、的外れだなカラミティ・メアリ。僕はいつでも狂ってるさ。普通の人間からしたら、ね。それに、今後のことを考えて少し、安心した……だけだ」

 

僕の言葉の意味をこの場の誰も理解できないだろう。

それでいい。僕の目的など、理解しておくのは2人だけでいい。

 

「御託は終わりだ。僕を殺すんだろ?かかってこいよ。全員刺し違えてでも殺してやる」

 

いつ出血多量で死んでもおかしくない体を無理やり立ち上がらせる。

万が一も、勝ち目はない。逃げることも無理だ。

 

 

なら少しでも、道連れを。

 

あのこの脅威を一つでも減らす。

 

あの子が笑って生きれる世界に少しでも近づける。

 

 

それが僕の存在意義だ。

 

 

「こいよ正義の味方。(ボク)は簡単に死なないよ」

 

 

 

 

☆岸辺颯太

 

〜1時間前〜

 

「ん……ここどこだ⁉︎」

 

「私の住処です。ラ・ピュセル」

 

「⁉︎」

 

後ろから聞きなれない声が聞こえ、驚きの余り寝ていたであろうベットから跳び退いてしまった。

まだ足がふらついていてバランスを崩して転けてしまったが、それ以上に身構えてしまった。

 

「起きたばかりでまだ安定していません。貴方のみ一日以上寝ていたことから、レプリカはどうしても貴方には来てほしくない様子ですから。それにスノーホワイトや珠にも伝えていますが、今はどの魔法少女にも手を出す気はない」

 

そこにいたのは森の音楽家クラムベリーだった。

情報が多すぎて訳がわからない。

 

「一日以上寝ていた?どういう事だ。それに、スノーホワイトや珠は……」

 

「ああ、スノーホワイトは無事ですよ。珠も、ね。ですが、一日以上寝ていたという事については言葉通りの意味です。詳しいことはマジカルフォンを見るといいでしょう」

 

クラムベリーが僕のポケットを指さし、そちらを見るとマジカルフォンがあった。

不穏に思いながら開いてみると一通のメールが。その前に時間を確認すると、前に学校へ行きミヤビと会った時から一日と半日過ぎていた。もう夜らしい。

 

「……?はぁっ⁉︎」

 

ファヴからのメールらしく、開いてみると余りにも信じられないことが書いてあった。

 

曰く、『レプリカは悪い魔法少女だから討伐してくれ。討伐者には褒賞がある』と書いてあった。 

 

「どういう事だ⁉︎」

 

「書いてある通りでしょう。レプリカは実は悪い魔法少女だった。ファヴの選定ミス。力を取り上げたくもファヴに今そんな権限はない。だから全員へ討伐依頼を出した」

 

「だからそれがどういうことだ⁉︎」

 

「ああ、そういえば貴方は暫く寝ていたから知りませんでしたね」

 

マジカルフォンが鳴り、みてみると一つのニュース記事が送られていた。

 

ニュース名は、N市立中学校大量殺人事件。

間違えようもない、僕や小雪、珠、ミヤビが通っている学校。

わかっているだけで50人ほどの犠牲者。生徒から先生まで殺されており、犯人は銀色の服を纏った者。

 

「銀色……まさか!」

 

「ええ、そのまさかです。その犯人はレプリカ。その直後にレプリカは私の元へ戦いにきたのですが、それはそれは甘美でした」

 

肘から手にかけて痛々しい大きな傷が走った右腕を見せつけてきながらも恍惚な表情をしていた。

 

そんなことすら気にならないほど、今の僕の頭には一つの事しかなかった。

 

「レプリカはどこにいる」

 

ミヤビを助けにいく。それだけが僕の頭にあった。このメールが本当なら今ミヤビはほぼ全員から命を狙われている。もしかしたら今戦っているかもしれない。

 

「それを貴方に教えて私に何か得がありますか?」

 

「いいから、教えろ」

 

魔法少女ラ・ピュセルに変身し、剣の切先をクラムベリーに向ける。

 

 

こんな事、清く正しく美しい魔法少女のやる事じゃないのは分かっている。

小雪が見たらきっと幻滅する。

 

けどそれ以上に。

 

 

今危険に晒されている友達を見捨てるなんてことは、死んでもできない。

 

 

「教える事自体は構いません。ですが一つ条件をつけましょう」

 

「条件?」

 

「この山から無事降りることができたら、レプリカの居場所を教えて差し上げましょう。特段、レプリカに入れ込んでいるわけではないですので。私からすれば、強者は居れば居るほどいい」

 

「どういう事だ?」

 

「ええまあ。本当は愛弟子(レプリカ)からの頼みでしたので行かせないつもりでしたが、貴方の目を見て気が変わりました。ですので……私からの攻撃を凌ぎ切り、無事降りることができればレプリカの居場所を教えて差し上げます」

 

「その言葉、本当だな?」

 

「約束は守りますよ。理由はどうであれ、強くなろうとする人材は歓迎しますよ。修羅の道(こちらがわ)へようこそラ・ピュセル」

 

 

 

 

 

 

 

☆たま

 

「……」

「では、本当にわからないのね?」

「はい……。3日位前から会っていなくて……家にも帰ってきていなくて」

「そう。ごめんね、家族を亡くして辛いのに」

「いえ……」

 

家族も、家も、ミヤビちゃんも、何もかもが私の元から無くなった。

目が覚めると病院にいて、起きた時にミヤビちゃんから届いていたメールがあって喜んだのも束の間、中身には『今後僕を探さないでくれ』と言う一言だけ。

 

その後に起こったのは、私の通っていた中学校で虐殺事件が。

 

銀色のセーラー服を着た誰か。

それだけで誰が起こしたのかわかった。

 

わかってしまった。

 

「止めなきゃ。ミヤビちゃんを」

 

これからミヤビちゃんがどうするのか、なんとなく分かる。

きっと……。

 

「もう、守られてばかりじゃ、いけないよね」

 

ミヤビちゃんが事件を起こしてからもう丸一日は経ってる。

どこにいるかなんて分からない。

 

でも、探さなきゃ。

 

探して、私が止めなきゃいけない。

 

 

他の誰でもない。私がやらなきゃいけないこと。

 

 

「珠……」

「小雪ちゃん。どうしたの?」

「……」

 

マジカルフォンで変身してミヤビちゃんを探しに行こうとしたら小雪ちゃんが病室に訪ねてきてくれた。きっと私を心配して来てくれたんだと思う。

 

「今からミヤビさんのところに行くんでしょ?私も連れて行ってもらえないかな」

 

「うん、わかった」

 

二つ返事で頷くと、とても驚いていた顔をしていた。

 

「いいの?」

 

「うん。きっと小雪ちゃんと私の考えてることは同じだから」

 

「「ミヤビさん(ちゃん)を止める」」

 

私が止めなきゃいけない。けど、1人だと絶対できないのは私が一番わかっている。

 

「小雪ちゃん。私こそお願いしたいの。私1人じゃミヤビちゃんを止める事は出来ない。私が一番よくわかってるの。だから、ミヤビちゃんを止めるのを、手伝ってくれないかな」

 

「うん。どんな理由があっても、ミヤビさんのやってる事は絶対に間違ってる。だから……」

 

「うん、私もそう思うんだ。きっとミヤビちゃんは私の為に動いてくれてる。昔からずっとそうだったから……。でもミヤビちゃんのやってる事な正しいなんて、私も思えないの。たとえ私の為だとしても。だからこそ、私が止めなきゃいけないの。

 

だからお願い。ミヤビちゃんを止めるお手伝いをしてください!」

 

勢いよく頭を下げて改めてお願いする。

少し間を置いたあと、肩に手を置かれてゆっくりと持ち上げられた。

すぐそばまで来ていた小雪ちゃんがこっちの顔を見て優しく言ってくれる。

 

「勿論だよ。その為に来たんだから」

 

「……なんで、そんなに優しいの?」

 

「え?」

 

ずっと思ってた事が、小雪ちゃんの優しさに触れたからかドッと溢れてきて、止まらない。

なんでこんなにも優しいんだろう。

 

なんでこんなにもミヤビちゃんを……。

 

「ミヤビちゃんが、憎くないの?」

 

「……」

 

「だって!ミヤビちゃんは学校のみんなを殺したかもしれないんだよ⁉︎きっと中には小雪ちゃんのお友達もいたはずだよ!

私が小雪ちゃんの立場ならきっと許さない。

ミヤビちゃんを、私を、許せないのが普通でしょ……それなのに…どうして私やミヤビちゃんを……」

 

本当は、小雪ちゃんが来た時ものすごく怖かった。友達じゃなくなってしまうと。責められると。憎まれてると。

でも小雪ちゃんはミヤビちゃんを止めたいから力を貸してと言っても嫌な顔一つせず、頷いてくれた。

それが不思議でならなかった。

なんでこんなにも……。

 

「友達だからだよ」

 

「え?」

 

「珠さんは友達だし、ミヤビさんも友達。だから、道を外れちゃったなら戻してあげたい。……それじゃダメかな?」

 

「……ううん!そんな事ない!……ごめんね、変なことを言って」

 

「大丈夫だよ。珠さんの心の声がずっと聞こえてたから、言われるとは思ってたの」

 

「へ?」

 

「この部屋に来る前からずっとね、実は変身してたんだ。この建物に入る前に解いたんだけど。ずっと聞こえてたよ。『ミヤビさんを助けたいけど私には何もできない』『小雪ちゃんたちにきっと憎まれてる、もう一緒にいられないかもしれない』って。なんでかは上手く言えないけれど、私は貴女と初めて会って、貴女と共にいて、ずっと貴女の助けになりたいと思ってた。それにミヤビさんとも約束をしてたの。絶対に貴女を裏切らない。貴女が困ってたら絶対に助ける、って」

 

「ミヤビちゃんと……」

 

「だから絶対に止めよう。きっと止めれるのは珠さんしかいない。そのお手伝いはなんでもする。絶対にミヤビちゃんを助けるって、約束して欲しいの」

 

「うん。約束する。私はミヤビちゃんを絶対に助ける」




お久しぶりです

正味、本当に執筆にとれる時間がめっちゃ少なくなりました。
一番懸念すべきは大学卒業できんのかこれ?って状態になったのと、就活、卒研、etc……大学4年が一番忙しいってどゆこっちゃ(

今は夏休みに突入したので書き進めました。早く夢物語編を完結させなきゃ……と思いつつ、書き上げることを目的にしたら本末転倒になっちゃうので、いつも通りゆるくまったりやります。

元々不定期でしたが、もっと不定期になると思いますが、ご了承を

読んでくださりありがとうございました

レプリカについて(本編には全く影響しません)

  • 好き(受け入れられる)
  • 嫌い(受け入れられない
  • どちらでもない
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。