魔法少女育成計画 己の大切な人を生かしたい   作:紀野感無

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「久しぶり」

「……」

「ごめんね喋れないよね。ちょっと待って……」

がんじがらめにされて、目隠し、口枷をされているレプリカの前に紙を一枚置く。するとたちまち文字が浮かび上がってくる。

『久しぶりだね。スノーホワイト。で、何のよう?』

「貴女とお話ししたかったってのもあるんだけど、それ以上に貴女に聞きたいことがあってきたの」

『私が話せることなんて大半話したと思うが?今度は何を聞きたいの』

「単刀直入にいうね。『淡雪家』……要は貴女のお母さん達について教えて欲しいの。どんな些細なことでもいい。今すぐに知りたいの」

『……んなこと言われてもねぇ。私にとって一番覚えているところは母親を焼き殺すところくらいだ。あとは姉妹がいたらしいけど、顔どころかあった記憶すら、もうない。母親の顔も、もう思い出せないからね』

「本当に。どんなことでもいいの。お願い」

『……まぁ、互いに命を預けあった仲だ。覚えている限りを、書き記すよ。紙はまだあるかい?』

「え?う、うん。あるけど……」

『教えるのが意外だったかい?別にあの家族はどうなろうが私には興味はない。私は、奴等への家族としての情はとっくの昔に捨てたんだ。でなきゃ母親を焼き殺そうなんて発想、できないだろ?
さて、時間が惜しい。さっさと書き記すよ』


10話

 

 

 

 

 

 

☆ラ・ピュセル

 

森の音楽家クラムベリーからの申し出を受け、クラムベリーから逃げ切り且つ山から降りるという課題をこなそうとした。

 

が、想像以上にクラムベリーは化け物なのだと、実感していた。

 

「はぁ……はぁ……こ、ここまで……」

「甘い」

「っ⁉︎」

 

引き離したと思って木の影に隠れた直後、声が聞こえたと思ったら僕の真上が爆発した。

何度も見た音の爆発だ。

 

声が聞こえた瞬間にしゃがんだから肉体的なダメージはなかったけど、至近距離だったから耳がものすごく痛い。

 

「隠れるなら心音を止めないと無意味ですよ。貴女の煩すぎるその心臓が逐一私へ居場所を報告してくれますから。それに加えて未熟な貴女では狩るのは容易い。今もかなり手加減しているんですよ?」

 

「なら、その間に逃げ切ってやるだけだ」

 

「そうしていただけると幸いです」

 

ニコッと笑うクラムベリーは他の魔法少女同様、容姿端麗でドキッとしそうな程だったが、今は全く別の意味で心臓が鳴る。

 

 

笑顔の中から、これでもかと殺気が溢れ出てるから。

 

 

「第二ラウンド、行きましょうか」

「望むところだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

☆???

 

「ご主人様」

「その呼び方やめろって言ってんでしょ」

「失礼しました。まあそれは置いときまして、御報告が」

「くだらない報告なら壊すわよ」

「わたくしめがくだらない報告をした事がございましょうか」

「アンタの報告の8割はくだらないわ」

「それは心外です。私はいつもお淑やかなお嬢様(笑)の欲しい情報を、言われた通り集めておりますのに」

「よーしそこ動くなよお前。ぶっ壊してあげるわ。私の魔法が通じないからって調子乗るんじゃないわよ」

「きゃー痴漢ですぅータスケテー。自分で清楚なお嬢様って言ってたのになんで怒るんですかぁー」

 

言動は知ってる中では限りなくふざけている癖に、実力だけは確かだから余計に腹が立つ。

 

殺す気でかかってるというのに、のらりくらりと躱される。

顔に掴みかかりに行った瞬間に顎に膝蹴りカウンターされ少しよろけてしまう。 

 

「さすがは現代最強魔法少女を模した魔法人形(ガラクタ)だこと」

「お褒めに預かり光栄ですマイマスター」

「……チッ」

 

いつか本当にぶっ壊してやるこいつ。人形だから魔法も通じないし、監視用にしては現代最強を模した人形は当てつけにも程がある。

 

「そろそろお嬢様、報告宜しいですか?」

「記録撮ってんだろ?早く水晶出せ」

「イェスマイロード」

 

人形が懐から一つの水晶を取り出して机の上に置き、手に力を込め始める。

 

「先にお伝えしておきますね。ラ・ピュセルと森の音楽家クラムベリーのみ記録できておりません。流石にあの殺気の中に飛び込む勇気はございませんでした」

「いざとなれば私にタイマンで勝てるお前が?ただ面倒だっただけでしょうに」

「まあまあ。では、こちらをどうぞ」

 

人形が水晶をグシャッと押しつぶし、そこから立体映像が見える。

始まりは、我が子がたかだか複数人に殺されかけてるところ。

 

「ではでは、ごゆるりとお楽しみください」

 

 

 

 

 

 

☆レプリカ

 

「はぁ……はぁ……」

 

あれから、何分耐えれた。

何人殺せた。

 

たった数分耐えれただけだろうが。

誰一人として道連れにできていないだろうが。

 

ただ結局自分の命惜しさになんとか逃げ出しただけだ。

 

何が珠を危険に晒す奴を殺すだ。

何が影から珠を守るだ。

 

僕の覚悟はその程度かと自分自身に嫌悪する。

 

「レプリカ」

 

「……誰だ、お前」

 

目もほとんど見えないけど、耳はまだ健在。だから、本当に私の元へ来た魔法少女が誰か、全くわからなかった。

 

「ああ、目が潰れてますか。その状態でよく逃げれたものですね」

 

「本当に誰だお前。しかも二人でわざわざ私を殺しにくるって用意周到だね。私を殺すにはいいタイミングだ」

 

「殺す?私が貴方を?いやいや、ご冗談を。それにやるにしても()()()()()1()()()()()()()。たかだか5人ちょっとの魔法少女見習いに負けるような貴方では、ね。それとコレに関してはマイマスターから貴方へのプレゼントです」

 

目の前にどさっと何かを投げられた音がする。

大きさといい、蠢いているといい、生きた人間なのはわかる。が、今更何を。

 

「ファヴから聞いていませんでしたか。コレは新たに加わった16人目の魔法少女です。名前を……確か、なんとかアリス……なんでしたっけ」

 

「私に聞かれてもわかるかよ」

 

「ですよね。えーと確かカンペカンペ……あった。名前はハードゴア・アリス。魔法は……まあ実際にみてもらったほうが早いでしょう」

 

「待てよ、お前は何者だ。お前も魔法少女だろ。でもお前の声は聞いた事がない」

 

「まあまあそう慌てずに。貴方もこの方の魔法は喉から手が出るほど欲しいはずです。はい、ぎりぎり見えますか?」

 

「……?」

 

本当にぎりぎり見えるところで、黒いゴスロリのような魔法少女が頭を掴まれている。

何をするのかと思った瞬間、その魔法少女を地面に強く叩きつけた。

 

「……」

「ね?この通り」

 

顔が傷だらけになったかと思うと、数十秒で傷が綺麗に完治していった。

 

「まさか」

 

「ええ、そのまさか、です。この方の魔法は『どんな怪我をしてもすぐに治る』というもの。しかしながら、怪我の範疇を明らかに超えていましてね。何はともあれ、ひとまずその重傷は直したほうが良いですよ」

 

そういわれ、大人しくついさっきコピーできたこいつの魔法を使う。

さっきまで死ぬかどうかの瀬戸際だったのに、一気に全回復ができた。視界だけは未だハッキリとしないが

 

確かにコレは便利だ。けど、解せない。腑に落ちない事が大量にある。

 

「目は見た目だけ治って視力は完全に戻っていないようですね。ですがそれも時間の問題でしょう。

 

話を本題に戻しますが、この魔法の『怪我』が何処までを示すのか少し興味が湧きましてね。すこーし試させてもらったんですが、いやはやすごい魔法でした。

 

なんせ爆弾で木っ端微塵にした挙句にセメント詰めにして深海に放り込んでも生還しましたから」

 

 

こいつ今とんでもないこと言わなかったか?

 

 

「なんて?木っ端微塵に?セメント?」

 

「そのままの意味です。で、そろそろ視界も戻ったようなので、お話の続きと参りまShowTime!Are you Ready?」

 

「……」

 

「笑ってくれてもいいんですよ?渾身のギャグだったんですけど。真顔でスルーは心のない私なのに心に傷ができちゃいます。貴方と言いマイマスターといい、笑ってくれない人多すぎです」

 

「いや、何処かでみたことある雰囲気だったと、思ってただけだ。それで……何の為に来た。こんな事をしたってことは、私の魔法知ってるんだろ……」

 

視界がはっきりとして改めて姿を見ると、どこからどうみてもメイド。でも、どこかでみたことある……気がする。すごい昔だとは思う、けど。

 

「そうですね。端的に言うと私が仕えているお淑やかなお嬢様からのご命令としか言えませんね。私にはコレが今後どういったことに結びつくかはさっぱりわかりません。てか正直に言うとさっさと帰りたい。スイーツが待ってるんですから」

 

「はぁ?」

 

本当にこいつ、なんなんだ。何がしたいのかさっぱりわからない。

 

 

けれど、刃向かっても勝てない事は直感とはいえ理解はできていた。

 

 

隙だらけに見えても、殺すどころか傷を与えることすらできない。むしろ誘われているとすら思う。

 

「あら意外とお利口さんですね。あの方が戦闘狂にだとか色々言ってたから粗相をしてくれないかとすこーし期待していたんですけど」

 

「……勝ち目のない、無駄な戦いはしない主義なんで」

 

「森の音楽家とは戦うのに?さみしいなぁ」

 

「あれは殺し合いの師匠だから……。で、そのお淑やかなお嬢様はなんのために?」

 

「だから言ったじゃないですか。わからないって。同じ事を2度も言わせるなんてマナー違反ですよ?んじゃ、それではこれにて。特製スイーツがそろそろできるんですよ」

 

そう言って本当に帰り支度らしきことを始めた。

この適当さといい、見た目と強さといい、本当にどこかでみたことがある気がする。

 

「おっと」

「っ⁉︎」

 

メイドが顔だけ傾けたかと思うと銃弾が飛んできた。

唐突すぎて避けることができず当たった肩が抉れた。

 

「いってえなぁ……」

「これくらい避けれないんですか貴方。それでも本当にあの方の1人()でクラムベリーの弟子ですか」

 

弾が飛んできた方向にはカラミティ・メアリを始めとした、私を狩らんと集まった奴らがゾロゾロと。

 

「やあメイドさん。そいつの味方かい?大人しく引き渡してくれたらこっちとしては無駄に殺さなくて済むんだが」

「味方?んなわけ。助けに来たわけではなくて御命令を実行しに来ただけなんですけど。ていうか、そんな殺気ダダ漏れで私を逃してくれるとは思いませんが。で、どうすれば見逃してもらえるでしょう?」

「無理だね。あたしはね、アンタみたいな見下してる奴はこの手でぐちゃぐちゃにしてやらなきゃ気が済まないのサッ!」

 

散弾銃を滅多撃ちにされるも、微動だにしていなかった。

 

「いったぁいなぁ!もう!アンタらガキの子守は命令じゃないんですけどぉ!あーもう!この服お気に入りだったのにぃ!」

 

さっきまでの冷静な言葉遣いはどこへ行ったのか、急に地団駄を踏み始めて口調もめちゃくちゃ砕けた喋り方になった。

涙目でキッとカラミティ・メアリを睨みながらさらに続けて言う。

 

「もういいです命令とか知ったことじゃないです全員相手してやりますよ隠れてるやつ全員出てこいオラ。ひーふーみーよー……6人?7人?隠れてんだろ」

 

そう告げるも誰1人として出てくる気配がないことに焦ったくなったのかメイドは懐から銀ナイフを取り出して投げ出した。

投げた先から魔法少女が続々と出てきて、僕とメイドを取り囲むように立つ。

 

「ふふーん。何度見てもひよっこどもの集まりですねぇ。弱っちぃ弱っちぃ。ああそうそう。もう貴方達には怒ったので、こうさせてもらいます」

「……?っ⁉︎」

 

メイドはカラミティ・メアリ達にではなく私に近づいたかと思うと、何かに吸い込まれた。外の景色は見えるのに、体も動かせない。声も出せない。何も、できなくなった。

 

「というわけで、レプリカは私が預からせていただきました。

お前らの目的はこいつの抹殺なんですよねぇ?

 

これで私を殺さなきゃレプリカは殺せないです。

 

さぁ、死ぬまで殺し合い、行きましょうか」

 

 

 

 

 

 

「……」

「おやどうかされました?」

「今すぐそこに直れガラクタ。今すぐお前のコアぶち壊してやる」

「何をそんなに怒ってるんですか」

「お前のいうスイーツだよ!あれ私が作ったんだからな!しかも材料とか全部私もち!更に言えば魔法で特殊に作ったから下手な高級品よりも高えやつ!お前ふざけんなよ!お前からやたらどっかで嗅いだことある甘い匂いすると思ったらそういうことか!」

「いやぁてっきり私へのご褒美かと」

「んなわけあるか!」

「まあまあ、3割は取っておいてあるので。続き見ましょうよ」

「……」

 

 

 

 

 

 

 

「あの方の試験は質がいいと聞いて期待していたんですが、見習いだとやはりこの程度、ですか。期待した私が愚かでした」

 

「が……ぁ!」

 

「いだっ。もぅ、これ直すの簡単じゃないんですけどっ!」

 

「……っ!」

 

右手で顔面を掴んでいた忍者風の魔法少女に右肘に向かってクナイを刺される。痛いです痛覚はあるんですから一応。

 

ちょっとイラッとしたので地面に叩きつけ転がっている魔法少女に向かって投げつける。

殺してはない。多分。

 

一応手加減はしたけれど、手加減難しい。器用なことあんまりできない。

ワタシウソツカナイ。

 

「さてさて、たしか出すには……ほいっと」

 

レプリカをお持ち帰り……じゃなくて保護する用の何でも入るカプセルをぶっ壊してレプリカを外に出す。

確かちゃんとした出し方……なんだっけ。何かあったけど忘れたからいいや。

 

「ゲホッゲホッ……あのなぁ、お前……」

 

「レプリカ、ではここの後始末は任せました。そろそろファヴのやつに目をつけられそうなので。クラムベリーにはこの事は事前通告してありますからその点は大丈夫だと思いますけど。我がマスターはほんと、臆病というか何というか」

 

まあ面白いからお嬢様に仕えていて何も支障はない。むしろもっと刺激的な出来事起きないものですかねぇ。

 

「ああそうだ忘れてた。これやったの貴方ってことでお願いしますね。あとこれは助けた報酬ってことで頂きます」

「は?……っ⁉︎何を……」

 

白銀のナイフでレプリカの右肩を切り落とし、切断した右腕を魔法の包帯でぐるぐる巻きにする。これで腐らないから腐臭対策もバッチリ。

 

「てめぇ……」

「ではこれにて失礼します。レプリカ……いえ、淡雪ミヤビ、でしたか?ご主人共々、成長した貴方をお待ちしておりますよ。せいぜい美味しく熟れておいてください」

 

わざと本名の方を告げると、先程切り取られた右腕のことはもう忘れたのか、驚愕の顔をしていた。

 

「まて、何でその名前を…」

「では〜さようならぁ〜」

 

別の魔法少女が3人くらいきてるのがわかったので、姿隠しの魔道具でこの場をさっさと離脱するに限る。

見つかると困りますのでね。

 

一瞬だけレプリカが仕掛けようとしてきたが、その前に隠れることには成功しましたぜぃ。

 

あとはちょびっと個人的な用事を済ませて清楚なお嬢様(笑)のところへ帰るとしましょう。

 

「次は期待してますよ。レプリカ」







「で、肝心の物は?」
「こちらに」

包帯でぐるぐる巻きにしておいた右腕を机の上にドン!とのせる。

「すこーし味見しましたがやはり貴女の娘……息子?さん。美味しかったですぅ」

「……私、細胞を少しとってこいと言っただけなんだが?」

「少しじゃないですか。全体の5分の1以下!多分!あと普通に血とかを取るためのガラス瓶とかは全部砕けたので急遽!」

「はぁ……あの子というか、その周りに色々感づかれたくないからコイツ使いたくなかったんだよ……。まあいい。で、あの子はどうだったのよ」

「まあ、ギリギリ及第点、ですかねぇ。『魔王塾』にでも放り込んだらいい味になるんじゃないですかぁ?」

「それは良いわね。んじゃもういいわ。さっさとスリープモードに入っとけゴミ」

「ゴミとはひどい。今から品種改良して孕もうとしとるマスターも大概ですよぉ?」

「最強の魔法少女を作るためだもの。何と言われようと構わないわ」

「それなら試験管の中だけで培養・育成すればいいものを。わざわざ自分の体を使って孕んで産んで作るなんて気が知れません」

「私からすれば貴女のその感性が理解できないわ。己の身で産めば、私の力も入る可能性があるでしょう?それにね、出産の痛みって、結構いいものよ。死闘をしているときの痛みに引けを取らないもの」

レプリカについて(本編には全く影響しません)

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