重大な欠陥が見つかった為です
「ほら、起きろ」
「……」
「そらよ。お前の要望に対するお上の答えだ」
『存外、早かったね。……」
監視員の一人から渡された紙に目を通す。
『……オーケー。交渉成立だ。そう伝えといてくれ。出所時期は任せる』
「お上に伝えてくる。……アタシは認めねえけどな」
『君の意志はどうだっていいんだけど。文句ならこれを通した上に言えよ』
「ハァハァ……」
クラムベリーとの鬼ごっこが始まり、もう何分経っただろうか。
体の節々が痛む。
それでも僕は彼の元へ行かなければならないと、自分自身を鼓舞する。
「光だ……」
街灯が照らす公道が見えて、山から降りられそうだと安堵した。
「甘いですね」
「っ⁉︎」
クラムベリーの声が響き、剣を構え辺りを見渡す。
だがいくら目を凝らそうと姿を捉えることができない。
ここで闇雲に外に行こうとするとそれこそ奴の思惑にハマる。
「……っ、そこだっ!」
足音と風を切る音を聞き取り、音の方向へ剣を振り抜く。
「⁉︎」
「狙いは良い。ですが、やはりまだまだ」
音の聞こえた方とは真逆の方向から頭を掴まれ地面に叩き付けられる。
「ぐっ……」
「ほう!防ぎますか!これはいい成長です。先程までの貴方には無理だったでしょう」
確かに防御はできた。けれど致命傷を防げただけで血が溢れ出て視界がぼやけてくる。
「……ふむ、そうですか。ラ・ピュセル、ここまでにしておきましょう。本来なら死ぬまでやりたいところですが、今宵は気分が良い。特別に見逃してあげましょう」
「なんの……つもりだ」
「いえいえ、少々急な予定ができましてね。私はこれにて失礼させていただきます。レプリカへよろしくお伝えくださいね」
クラムベリーはそれだけを言うとどこかへ消えた。
僅かな気配すら残さず。
「一体…‥」ピロリン♪
マジカルフォンが現状に似つかわしい軽快な音楽を鳴らし震える。メールが届いていて、開いてみるとそこにはリアルタイムのミヤビの居場所が表示されているという文章と地図が映っていた。
『次はレプリカを連れて私の元へ帰ってみせなさい。出来たならば次のステップへ行きましょう』
クラムベリーからのメッセージも含まれていた。けど今はそれについて深く考える余裕がない。
「案外、近い……これなら、10分もあれば……」
未だ激痛走る体に鞭を打ち、僕は駆けた。
☆レプリカ
メイドの格好をしたよくわからん奴にいきなり腕を捥がれたりと、もう何が何だかわからなかった。
さっきコピーしたばかりの傷を治す魔法を使うと、無くした腕すら生えてきた。
「コマ切れにしてもだから、これぐらいは、普通なのか。にしてもアイツ、次あったら絶対殺してやる」
ようやく視力も万全になってきた。
色々な箇所がまだまだ痛むが、これくらいは許容範囲だ。
「……ああそうだ。インパクトがデカすぎて目的を忘れてた。コイツラを、全員、殺すんだった」
目前にはカラミティ・メアリを始め、10人程度の魔法少女がいた。
幸いにもさっきのやつが全員を戦闘不能に追い込んでくれていたから、殺すのは簡単だ。
でも誰から殺すかは決めていた。
共に転がっている一対の天使に向かって進む。
途中に転がっている奴らは、後回しだ。
この2人は、珠を、バカにしたから、真っ先に、グチャグチャにしてやると、決めていた。
ただの死だけでは生温い。
地獄を
生き地獄を体験させてやる。
クソ天使2人の頭を掴む。
まずは、地面に叩きつけて無理やり起きてもらおうか。
それとも2人の体をひたすらぶつけ合うか。
私の魔法を使えば、傷は一生回復させられる。
死ぬまで死より辛い苦しみを。
「その手を離せ」
首筋に冷たい感触がした。
声も聞き覚えがある。
間違えようもない、ラ・ピュセルだろう。
「……何故来たんだ。それに師匠にも止めておいてくれって、伝えていたはずなんだけどな」
「クラムベリーのことなら、振り切ったよ。最後は見逃されたに近いけどね」
「ふーん……どうでもいいや。で、何の用?聞かなくてもわかるけど」
「なら話が早いよ。……あえてミヤビって呼ぶよ。ミヤビ、なんでこんな事をしたんだ?」
「こんな事?ああコイツラの事?それなら襲われたから返り討ちにした。それだけさ」
天使2人を少し遠くへ投げつけ、わざとらしく手を上げながら後ろに振り返る。
「違うよ。それに関しては僕にもメールが来てたからミヤビが狙われる理由はわかる。僕が聞きたいのは珠の家族のこと、学校の事についてだ」
「ああ……ソレね。珠の家族に関しては先に伝えていたろ?」
「それでも納得できない」
「簡単さ。あのゴミ達は、珠も死んでくれればいいと、吐き捨てた。目の前から消えてほしいと。
だから二度と珠を見なくて済むように、してやったんだよ。
お前達が言いたい綺麗事はわかるさ。
いつか改心したかもしれない。それでも珠にとっては唯一の肉親などなど。まるで未来に僅かでも可能性があるかのように語る。
でも私は、そんなのは無理だと、判断した。だからさ。
君も、スノーホワイトと共にみたろ?家での珠の扱いを。私の扱いを。
アイツらが改心して珠を家族として受け入れる?
断言してやる。そんなものは一生来ない。
仮に珠が受け入れられる未来が来たとしても、その時には珠は壊れていただろうね」
「じゃあ、学校はどういう事だ?なんで……」
ラ・ピュセルは険しい顔つきで言う。
「ははっ。今更何を。私は元々壊れてたんだぜ?」
笑いながら言葉を紡ぐ。
ラ・ピュセルは動揺したのか一歩後ろに下がった。
「私にはストッパーがあった。
ああそうさ。珠のためならばと思い耐えていたさ。
たとえゴミのような存在であっても
たとえ珠を陥れた存在であっても
たとえ珠を直接傷つけた存在であっても
私は手を下さずに耐えていた。
過去に一度、手を下したゴミのことすら、居なくなってしまったことを珠は悲しんでしまったから
ならば直接手は下さず、間に私が入り守ることで、珠が悲しまないならば、それで構わないと思っていた。
だけど、無理だった。
君も見たろ?学校でどうなったか。
だが誰もが目を瞑る。
間違ってると誰もが感じていても、己が標的になることを恐れ行動をしない。
そんな輩に珠の未来を潰させてたまるか。
そんなことは僕が許さない。
だから、珠の未来を潰し得る可能性のある害は全て取り除く。
これが私/僕の出した結論だ」
「それでも僕は……一度でいいから、相談して欲しかった。
ミヤビの背負っているものを、僕にも打ち明けて欲しかった。
それでも、初めて君の本音が聞けたするよ。
最後に一つだけ聞きたい。
止まる気は、止まってくれる気は、ないだろうか」
「ない。僕を止めたいのならば、力づくでやってみろ。正義の魔法少女。
「そうさせてもらう。だけど僕は君を殺さない。殺さずに君を止めて見せる」
ラ・ピュセルの目は、希望を捨てていない。純粋に私を止めようとしているのだろう。
きっと私すら救おうとしているのだろう。
ならば、私のような悪は救えないと、教えてあげなければいけないだろう。
全力を以って、叩き潰そう。
☆たま
スノーホワイトと一緒にミヤビちゃんの場所まで全速力で走った。
色んなことが頭を
学校のことを知って、ミヤビちゃんじゃないと信じたかった。
でも映像を見てミヤビちゃんだと確信をしてしまったのも事実で。
「たま、大丈夫?」
「うん。……大丈夫。迷ってないよ。私はミヤビちゃんを止める。…‥その前に、少しだけお話をさせてくれると、嬉しいかな」
「わかった。けど危ないと思ったらすぐに止めるからね」
スノーホワイトの言葉に私は返すことができず、苦笑いで返すしか出来なかった。
実際は、何を聞くべきか、何を言うべきか、何も考えれなかった。
どうすればミヤビちゃんが止まってくれるのか、全く思い浮かばない。
「……(私、ミヤビちゃんのこと、全然知らないんだなぁ)」
何でこんなことをしたのか全然思い当たることがない。
いつも私に笑いかけてくれるミヤビちゃんは、とても優しくて、カッコよくて、守ってくれていて……
「っ!いた!たま!」
「……っ、はい!」
ガキン!とずっと音が鳴り響く方向へ向かっていると一気に開けたところへ出た。けど不自然な開け方だった。
まるで誰かが巨大な剣で薙ぎ払ったのかとでも錯覚しそうなほど。
周りに見たことある魔法少女たちがたくさん倒れてた。中にはスイムちゃんやユナミナちゃん達もいた。
「ぐっ……」
次にドゴンと鈍い音がしたと同時に1人のよく見慣れた魔法少女が地面に叩きつけられていた。
地面が陥没してどれほど強い力で叩きつけられたのか嫌でもよくわかる。
「ミヤビちゃん!」
「ラ・ピュセル⁉︎」
叩きつけられたのはラ・ピュセルで、私のスノーホワイトの声で2人が同時に私たちを見る。
その間も2人は剣を互いに向け合っていた。
「ああ、そう。珠も、来てしまったんだ。でも、来るのはわかってた。うん、君は優しいから」
「ミヤビちゃん。私……」
「ごめんね珠。私はもう自分では止まれない所まで来たんだ。私を止めたいなら……無理矢理止めるしかないよ。スノーホワイトも、ラ・ピュセルと一緒に来るといい。三人纏めて、相手をしてあげるよ」
ガキン!という音とともにラ・ピュセルとミヤビちゃんは距離を取った。
「珠、簡単だよ。僕を止めたいなら……三人がかりでいい。無理矢理止めるしかない。そうすればきっと、珠の知りたいことも、知れる」
淡々と告げるミヤビちゃんからは、もう感情というものが感じ取れなかった。
嫌でもミヤビちゃんを止めるには、力づくじゃないといけないと悟った。
そう考えた瞬間、呼吸が辛くなる。
「(ダメ、できない。私が……落ちこぼれの私が、ミヤビちゃんを止めるなんて、そんな……)」
確かに強くなりたいと、ミヤビちゃんの役に立ちたいと、そう願いラ・ピュセルやスノーホワイトに手伝ってもらっていた。
でもその力でミヤビちゃんを傷つけることになるなんて、思ってもいなかった。
そんなのは嫌だ。
ミヤビちゃんのために強く在ろうと思ったのに。
ミヤビちゃんの横に並ぶため……そう考えていたのに。
この力で、ミヤビちゃんを傷つけなければならないことが何よりも、苦しくて、痛くて、眩暈で倒れそうだった。
「大丈夫だよ珠」
肩をポンと叩かれる。
声の主はラ・ピュセルだった。
その後も大丈夫と笑いながら言って、私の前に立つ。
「おいおいレプリカ。女の子に、しかも自分の好きな子に随分と酷い扱いをするじゃないか」
「好きだからこそだ。何度も言ったろ?珠の側にいるべきは僕じゃないって。
……僕のような人間が珠の側にいることこそが、僕が手にかけたゴミども以上に、珠にとっては悪影響なんだよ」
「だから僕との戦いに手を抜いていたって?ハッ!大きなお世話だバーカ!好きな人の前で良い格好の一つすらできない臆病者の君がそんな無駄な心配をするなんて、ガッカリだよ」
ラ・ピュセルはミヤビちゃんを煽るような軽快な口調で話す。
「それにだ、例えどんな理由があろうと戦いに手を抜かれるのは、どうやら僕にとっちゃ耐え難いことだったらしい。
覚悟しろよレプリカ。お前をボッコボコにして珠に、みんなに土下座させてやる」
「黙れよ愚者が。その減らず口、今すぐ潰してやろうか。綺麗事しか知らない、できない子供が」
「子供で結構。それでも僕は夢見てるんだから。清く正しい魔法少女を。
友達一人救えなくて何が正しい魔法少女だ。そんなものになるくらいなら、魔法少女で在る理由もないのだから。だから……君のこともキッパリと助けてやる。淡雪ミヤビ」
まるで蚊帳の外にいる感覚が抜けず、大事な部分ですら誰かに助けられているしか出来ないと感じてしまった。
「(私は……弱いままだ)」
それを痛感してしまった。
何もできないのは嫌だ。
私も……自分の意志を貫けるように強く、なりたい。
☆???
「おーい人形」
「ナンデショウオジョウサマ。ゲンザイ、キュウケイチュウ、デス」
「次それしたらぶっ壊すぞ」
「はいはい何ですかもう」
「あの二人の実戦投入行くわよ」
「あの二人、とは?オジョウサマの手篭め多すぎて把握できないんですけど」
「藍と喪音の二人」
「ああ承知しやした。では起きた後覚えてたら」
「その顔潰してあげましょうか?」
「遠慮しまーす」
レプリカについて(本編には全く影響しません)
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好き(受け入れられる)
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嫌い(受け入れられない
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どちらでもない