魔法少女育成計画 己の大切な人を生かしたい   作:紀野感無

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12話

???が出発する約一時間前

 

 

☆レプリカ

 

「……まだ諦めないかい?」

 

「まだまだぁ!」

 

ラ・ピュセルは何度蹴り飛ばし、殴り飛ばそうとも歯向かってくる。

 

 

 

……私にこんなにも固執するのか。わからない。

 

意味がわからない。

 

 

私なんか存在しなかったと割り切って、三人でこれから先過ごしていけば良かったはずだろ。

 

 

 

なんで(クズ)をこんなにも気にかける。

 

 

 

「はは、何でこんなにも諦めが悪いのか、みたいにでも思ってるのか?」

 

「ああそうだよ。……ボクなんかに何故そうも拘る。ボクの首を心臓を、頭を、何故狙ってこない。そこを潰せば君の勝ちだ。言ったろ。ボクを止めるには殺すしかない」

 

「友達だからに決まってるだろ馬鹿。殺して止める?それしか方法がない?そんなものクソ喰らえだ。それに……今の君はたとえ頭を潰そうが心臓を刺そうが首を切り離そうが関係ないだろ?」

 

「……ご名答」

 

「大方、新しくコピーした魔法がどんな傷でも治る、とかなんだろうけど。僕の思ってた程のチート能力じゃないね」

 

「……何が言いたい」

 

「どうせ自分でも気づいてるんだろ?魔法の同時使用はできない。いや、リスクが高すぎる、が正しいかな?でなけりゃ、僕が今立っていられるわけがない。百発百中の投擲や無数の魔法の壁、己の体を自在に変化させたり、地面がまるで水になったかのように潜ったり。

 

はは、羨ましいよ。でも……

 

それだけだ。今の君は何も怖くない」

 

「へぇ、言ってくれるね。そんな私に何一つ太刀打ちできてない癖に」

 

「それを言われると耳が痛いなぁ。だけれど、なんで君は僕を殺せてないのかな?」

 

「そんなもの決まってるだろ?君と言う存在は、今やもう、珠の…」

 

「ほら出た。まーた珠に責任を押し付けて。少しでも自分の意思で動いたことある?」

 

「今更何を聞いてくるかと思えば。全て僕の意志で動いてるに決まってるだろ。

 

彼女が、珠が笑顔になるためならば、どんなことだってする。それが僕の意志、想い、行動理念だ。

 

 

たとえそれが、彼女の望まないことだとしても。

 

 

彼女以外の全てがどうなろうと構わない。例え僕の命だろうと。

僕にとって『淡雪ミヤビ(ボク)』も、彼女を守るための駒の一つにすぎないのだから」

 

「あーあー。聞いた僕が馬鹿でした。やっぱり止めるにしてもまずは思い切りぶん殴ったほうが良さそうだね」

 

「それじゃ弱いね。止めたいなら殺すしかない」

 

「だーかーらー!殺さないっての!いい加減学べ!頭ん中何入ってんだ!」

 

「……?何って、珠の……」

 

「いやいい。答えなくていいから」

 

じゃあ聞くなよ、と思いつつ構え直し諦める気がないことを姿勢で示す。

 

ラ・ピュセルもそれを見て呆れつつも剣を構え直した。

 

「でも……そうだね、埒が、明かない……か。ラ・ピュセル」

 

「なに?」

 

「一つ、たった1つだけ、条件を、つけようと思う」

 

「どんな?」

 

「簡単だよ。君は僕を斬り伏せたら勝ち。僕は君に、君たちに負けを認めさせることができれば勝ち。……もし仮に君が勝てたとしたら、僕は君の、スノーホワイトの、……珠の、君達の言葉を聞き入れよう」

 

「へぇ。急にどうしたのさ」

 

「別に……こうでもしないと、諦めて、くれなさそうだかるね。君は、明確な勝ち負けを決めなければ、きっと諦めない」

 

「そういう訳じゃないんだけどな。まあいいよ。乗った。僕は君に一撃、斬り伏せて見せよう。スノーホワイト、たまの盟友、騎士『ラ・ピュセル』の名にかけて」

 

「感謝するよ。それと……もう一つだけ、いいかな?」

 

「ああ」

 

「……珠!スノーホワイト!」

 

 

ずっと傍観しているだけだった珠とスノーホワイトを、大声で呼ぶ。

2人とも呼ばれると思っていなかったのかビクッと体が縮んでいた。

 

「珠、何で君は動かない。君は誰かを助けたくて、その為には強くならなくちゃいけないと、自分から思って、ラ・ピュセルに特訓をしてもらったんでしょう?今がその特訓の成果を見せる時だ。なのに……珠、君はまだ、他人任せに、人に頼り切りで行くの?」

 

「うぅ……」

 

「言いたいことはわかる。珠は、誰よりも優しいから。

 

大切なモノを守るための力を欲した結果、大切なモノを傷つけてしまうのが恐ろしいのはわかる。

 

 

でも、今は僕にその力を使うべきだ。……その意味が、わかるだろう?

 

 

……スノーホワイト。君も、コレでわかったはずだ。

 

 

自分の正義を貫くには力が必要不可欠。

 

 

魔法少女は清く正しく美しくあるべきと謳う君の理念を否定する気はない。

 

私にとって魔法少女がどのように在ろうと興味無い。

 

 

だけど……その理念を押し通すためにはいずれにしろ力がいる。

 

 

今のボクを見てわかったろ?

 

悪を止めるためには、悪を上回るだけの力が要る。覚悟がいる。

理念を貫き通すためにはそれ相応の力が要る。

 

 

……今のラ・ピュセルのように、ね。

 

 

 

それでも、君達は、ラ・ピュセルを独りで戦わせるのかい?」

 

「おいレプリカ。それは……」

 

「僕を殺せと言っている訳じゃない。僕に一撃を入れれば君達の勝ちだ。それでも……動かないと言うなら、そこでずっと、座ってるといい。

 

 

君の、君たちの大切な人が傷つくのを、ね」

 

 

……すまないねラ・ピュセル。さあ、続きだ」

 

 

返答を待たず、僕はラ・ピュセルに向かっていった。

 

 

 

 

 

☆珠

 

ミヤビちゃんから、ダメだと、初めて言われた。

 

 

大切な人を、ミヤビちゃんを私も守れるようになりたくて、力になりたくて、だから強くなろうと決めたのに。そのために特訓をしていたのに。

 

 

 

大切な人を守るための力を、大切な人を傷つけるために使うことになるなんて、思ってもいなかった。

 

 

 

でも、止めなきゃいけないって、分かってる。

 

分かってるのに

 

 

 

私の体は全く動いてくれなかった。

 

 

 

「ぐっ⁉︎」

「よそ見、しすぎ」

「がはっ……」

 

その間にも、ラ・ピュセルとミヤビちゃんは、ずっと戦い続けていて

 

どんどんラ・ピュセルが傷ついていった。

 

 

「……四肢を、へし折れば、斬り飛ばせば、負けを認めてくれる?」

 

「はっ、たとえそれでも、死ぬまで負けを認めるもんか」

 

「……そう」

 

ミヤビちゃんが片腕を剣に変えて、馬乗りされているラ・ピュセルに向かって、振り上げる。

 

 

 

ラ・ピュセルが、死ぬ

 

 

 

 

そう頭の中で思った瞬間に、私は走り出していた。

 

 

 

「「ダメっ!」」

 

私は無我夢中で、ミヤビちゃんに体当たりしていた。ラ・ピュセルは、と思い見てみるとそっちはスノーホワイトがラ・ピュセルを引き離していた。

 

「…‥そうだ、二人とも、それで、いい」

 

ミヤビちゃんがそう呟いた瞬間、掴んでいたはずの感触がなくなった。

 

 

「さあ、第二ラウンド、始めようか。3人とも」

 

 

「も、もうやめようよ!ミヤビちゃん!」

 

 

今までで一番と言って良いほど大きな声で訴える。

これ以上、大切な人を傷つけてしまうミヤビちゃんを見たくなくて。

 

 

……いや、ちがう。

 

 

私はまだ、怖がってるだけなんだ。

 

 

咄嗟に体が動いたけれど、まだ覚悟ができていない。

 

 

 

 

大切な人を守るために、大好きなみんなを守るためには、力を使わなきゃいけないのに。

 

 

 

 

「……何度も言ってるでしょ。珠。僕はもう、止められない所まで来てる。

 

何より、今辞めてしまったら、諦めてしまったら、今までの自分を全て否定することになる。それだけは……嫌だから。だから、珠。

 

 

私は、全身全霊を以て、君を、ラ・ピュセルを、スノーホワイトを、倒そう。

 

 

(ワタシ)の信念を、貫き通させてもらう。

 

ワタシを止めたいのなら、死ぬ気でかかってくるんだ。正義の魔法少女」

 

 

 

 

 

 

☆ラ・ピュセル

 

最初に動いたのは僕だった。二人を庇うように前へ出て剣を振り下ろす。バックステップで避けられはしたが、それは想定内。

 

なによりレプリカをまずは引かせたかった。

 

「二人とも!覚悟を決めて!今やらなくちゃいけないことは、レプリカを止めることだ!そうだろう⁉︎

 

それに、レプリカと戦うことになることも覚悟して来たんだろう?今その覚悟を示す時だ!

 

だから……!」

 

「で、でも……私は……みんなを、守れるように……なりたかったのに、こ、こんなの……」

 

「なら尚更だ!みんなを守るためには時には大切な人とぶつかる時もある!それが今だ!いいか?僕たちはレプリカを倒すんじゃない。レプリカを止めるんだ!でなければもっと沢山の被害が出る!だから、覚悟を決めるんだ!珠!」

 

「……〜〜っ!」

 

この状況で、気の利いた言い回しは思いつかない。

強い語気になってしまったが、思っていることを全て伝えた。

 

珠はまだ受け入れられないのか、怖いのか、嫌なのか、涙目になっていた。

 

 

彼女はレプリカの言う通り、あまりにも優しすぎる。

自分のことを勘定に入れず、周りの人たちのことばかり考えてしまっている。

 

特に一番大切な人を止めるためとは言え傷つけるのは嫌だろう。

 

胸が張り裂けそうになるだろう。

 

 

でも、覚悟をしなきゃならない。

 

命を賭ける覚悟を。

 

だから、あえて突き放す。

 

僕からじゃない。レプリカからじゃない。

 

 

珠自身から、変わらなきゃならないから。

 

 

「スノーホワイト、約束を破ることになってしまってすまない。本当なら君には、こんな血生臭いことはさせたくなかった。君の障害と成るモノは全てを退けると、君の騎士であると約束したのに、君に戦うことを強要させてしまう。そんな僕自身が、情けなく感じるよ」

 

「違う、違うの。そうちゃん。私は……命のやりとりをしてるというのに、目の前の現実から、今の今まで目を逸らしていただけなの。そうちゃんと、レプリカさんが、……私の友達が命の奪い合いをしてるのをみて、足が竦んじゃってただけなの。でも……レプリカさんに言われてから、覚悟はしたわ。私は、レプリカさんを止めるために、そうちゃんと一緒に戦う。

 

……もう、守られるだけは、嫌だから」

 

「ありがとう。スノーホワイト。今だからこそ恥を偲んでお願いしたい。

 

 

僕1人だとレプリカに一撃は入れれない。だから……2人とも、力を貸してくれ。僕のために、レプリカを止めるために、皆を守るために」

 

「勿論だよ。レプリカさんを、止めよう」

「ありがとうスノーホワイト。……珠、まだ、決心はつかないかい?」

 

俯いている珠に声をかけると、少しだけ体がビクッと動いた。

 

 

もとより酷なことを言っている自覚はある。

唐突に命を賭けろと、大切な人を傷つけてしまう覚悟をしろと言っているのだから。

 

 

だから……強要はしない。

 

誰も珠を責めることなんてできないのだから。

 

 

「……行こう、スノーホワイト。レプリカを、止めよう。珠。……待ってるから」

 

僕は、敢えてずっと待ってくれているレプリカに、スノーホワイトと共に向き合った。

 

 

 

 

 

 

☆たま

 

頭の中がぐちゃぐちゃになっているような感覚だった。

 

大切な人を守るために大切な人を傷つける。

 

そんな酷い矛盾を、目の前の現実をあらためて突きつけられた。

 

 

でも、分かってはいる。

 

今のミヤビちゃんは止めないと、もっともっと沢山の人が傷つく。

 

だから、止めなきゃいけない。

 

 

 

今までミヤビちゃんに頼りっきりだったツケが回って来た。

 

ただそれだけなのだろう。

 

 

 

(珠、君はまだ、他人任せに、人に頼り切りで行くの?)

(僕たちはレプリカを倒すんじゃない。レプリカを止めるんだ!)

 

 

2人の言葉が何度も頭の中で繰り返される。

 

 

「(…いやだ。

このまま変われないなんて、嫌だ。

弱虫なままの私なんて、嫌だ。

ミヤビちゃんに辛く苦しいことを押し付けちゃうなんて、嫌だ。

大切な人たちが傷つけ合うのを見てるだけなんて、嫌だ)」

 

 

ならどうすべきなのか。

 

もう答えは出ている。

 

 

あとは一歩、踏み出すだけ。

 

 

「ミヤビちゃんを、止めなきゃ」

 

 

 

おぼつかない足で、私は戦っている3人へ向かった。




☆???

「およよ?お姉様、この人たちは?」
「み、みんな倒れてる……」
「そいや忘れてました。私がコイツらやったんでした。で、清楚(笑)お嬢様、どうします?」

「お前から見て見込みのあったやつ3人程度の素材剥ぎ取ったらあと処分でいいわよ。クラムベリーからも許可はとってあるし」

「なるほど」
「どれにしますか?」
「ふぇ?わ、私もやるんですか?」
「んー、そうですなぁ。そこのスクール水着のと、マフラー巻いてるやつと、あとは……そこのジャパニーズニンジャ、みたいなやつで。どこ剥ぎ取ればいいっすか?」

「そうねぇ。片腕とかでいいんじゃないの?材料は多ければ多いほどいいし。かといって、お前から見て見込みがある相手をここでむざむざ死なせても楽しみが減りそうだし。あ、喪音は他の用済みな魔法少女の処理ね。できれば眼は綺麗にくり抜いてこの保管容器に入れてちょうだい」

「わかりましたわお姉様!」
「わ、わかりました……」
「清楚様。私は?」

「テメェは何もすんな」

「あーんいけずぅ。暇すぎると私お嬢様を襲っちゃいそうです」

「いつでも来なよ。返り討ちにしたげるわ」

「またまたぁ。ご冗談を」

その瞬間にドゴォンと何かがぶつかり合う音が辺りに響いた。

レプリカについて(本編には全く影響しません)

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