我が騎士団に新しい倉庫が実装されました 作:くりおね/八千草
そして、エロかったら多分、いやきっと私のせいです。
一応、シリーズということで団長の性格設定など 一作目を踏襲した要素の入れ方をしました。
どうかお楽しみいただけると幸いです。
あと、うちの騎士団にアプリコットは残念ながらいないので、キャラ把握におかしなところがあったら申し訳ありません。
追記;アプリコットの一人称を私→わたしに変更しました
こういう所大事ですよね
「宴会を抜け出してまで、わたしこんなところにいていいのかな……」
ブロッサムヒルのある晩のこと、任務を終えた花騎士や待機を命じられた団員の集う砦。
多くの者は寝静まり 起きている者は一日の疲れを癒そうとあるものは一人、宿部屋で読書や晩酌を嗜み、
またあるものは気の合う仲間を呼んで語り合い、涼し気な夜の時間を思い思いに過ごしていた。
その中で、一人の花騎士が仲間の集まる部屋から抜け出し、人気のない暗い通路を手に提げた燭灯の明かりを頼りに進む者がいた。
ここ、ブロッサムヒルの騎士団に所属する花騎士の一人 アプリコットである。
「ううん、でも……確かめなくちゃ。 "疑い"がわたしの花言葉、だけど……ううん、だからこそ わたしは信じるために一歩踏み出さなきゃいけないんです」
そう、彼女はある疑念をもって、それを晴らすべく密かに今行動しているのだった
「団長さんのことは信じています。だけどもし……もしも、わたしの"疑い"が正しかったとしたら……それは絶対に止めなくちゃ」
不安げなアプリコットの表情。しかしそれでも何かを決したように唇はキッと結び、目には力が宿る。
それは見るものによっては悲壮ささえ感じる決意の表情―
「怖い……怖いよ、だけど」
「もし、団長さんが」
肌寒さと使命感に震える脚で、アプリコットはさらに踏み出す。
「もし団長さんが、バターに手を出してしまったのだとしたら……!」
ことの始まりは3日ほど前、団長執務室でのやり取りであった―
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「それでは団長さん、以上、報告のとおりです」
「ああ、いつもご苦労様だ アプリコット」ポンッ
「!!」
「そ、それじゃあわたしは失礼しますね!」
ギィィ、バタン!
(あ、頭撫でられちゃった……団長さんに……えへへ)
(あ、扉がしっかり閉まってない。 いけない、わたしったら浮かれちゃって)
「……それで団長様、例のものは手はず通りに新設倉庫に……?」
(あ、あれ? あれは、ナズナさん? いつの間に団長さんのお部屋に?)
「ああ、できるだけ秘密裏に貯蔵しておいてくれ、特に……アプリコットには知られないように」
「アレは常温ではすぐに溶けてしまいますからね……その点、あそこならある程度調節ができます!……でも団長様?なぜ今アレを……?」
「……ナズナ。わたしたちは可能性から目を背けてはならない。あの、くじらが空を飛んだ日……わたしも気づいたんだ。新しく作り出すものの可能性、それに蓋をして怖がってはいけないと」
「……そうですね!わかりました 後のことはナズナにおまかせください!」
「あぁ。 忍びないな」
「かまいませんよ。 ……ああ、それと団長様、今度新しく売り出すドキッ!花騎士だらけの……」
それ以上はアプリコットの耳には入らず、今の会話の内容を頭のなかでグルグルと繰り返していた
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(常温で溶けてしまう、わたしには知られたくないもので、団長さんにとって新たな可能性となるもの……)
辺りに当直の見回りの騎士団員が来ていないことを確かめつつ、新設の素材倉庫の扉に手をかける。
(そう、団長さんは前から探していました。"可能性"……それは非常食にあう、栄養補給用の組み合わせ!)
ギィィと扉が軋む音。 それを最小限に抑えつつ、開いた隙間に体を潜り込ませる。
(こうなる前に、もっと団長さんにも身を持って知ってもらうべきでした……パンに塗る以外にも、ジャムはあらゆる物に応用され栄養も申し分ない……素晴らしいものだということ!そして、決してバターなどに負けてはいけないと!)
この倉庫にしまわれるものは魔力を帯びた品物……魔法物質や魔法生物のサンプルだと聞いている。
そのうち、魔法物質はクジラ艇の補修・改造に、
魔法生物は契約をすることによりその魔力を特定物に及ぼせることから花騎士の武器強化や花騎士自身の才能の開花の助けになるとのことだ。
(ブルムさんやマニュちゃんを起こさないようにしないと)
倉庫内を照らす燭灯に手をかざして加減しつつ、奥に進んでいく、と
「ふるる?ふるー」
(しっ静かに、みんな起きてしまいますよ?)
魔法鳥のフルルが一羽、目を覚ましていた。唇に人差し指を当て、しーっと音を出しながらそちらに近づいていく
「ふるーふるー」
「ほら、もうあなたも寝る時間ですよー」
そう言ってその黄色い羽の付け根を少しくすぐってやると、そのアプリコットの指にすりすりと体を押し付けて甘えて来たが、少し経つと、満足したのか動かなくなり しばらく待って眠ったのを確認してから
「ふふ……わたしがここに来たのは内緒にしてくださいねー……なんて」
そう言ってアプリコットはその場を離れた。
(はいって右の三番目の棚の奥……さて……この辺、かな)
この倉庫内には室温を操作できる一角があることは聞いていた。 なんでも微量の魔力に反応して周囲の温度を少しだけ上げたり、下げたりできる。
仕組みはよくわからないけれどそういう物質が置かれて管理されているらしい。
(なんでもまだ貯蔵する品はあまり決まっていないそうですけど、この前のナズナさんの話のとおりならここに…あった!)
それはなかなかに大きな器だった。 アプリコットの顔程もありそうな瓶に、黄色がかった乳白色の固体が口に迫るところまで詰まっているのがわかった。
「やっぱり団長さんは……ううん、ちゃんと中身を確かめてみないと」
燭灯を、蹴飛ばしてしまわないように瓶を見つけた棚の反対側の地面に置き、上蓋を開けて辺りを照らしてくれるようにした。
そして改めて瓶を持ち上げると、慎重に床におろしてその蓋を開けにかかった
「開いた…これの正体を確かめるにはやっぱり……」
指の先に少し取って匂いを嗅いで見る。あまり香りはしないが、微かに脂のにおいがするようなきもする
指の感触も、固いクリーム状だということが分かるだけだ。
「やっぱり……舐めてみないと、いけませんよね……」
ゴクリ。と喉を鳴らし、眉根を顰めてしばらく指を眺めていたが、やがて決心するとギュっと目をと固く閉じ、
ぱくり!と指ごと口に含んだ。 そのこめかみを、一筋の冷や汗が滑り落ちていき、ゆかに小さなシミを作った。
「こ……これは!! これ……は?」
(バターじゃ……ない?)
「でもこれは……まさか……!団長さん、あなたはまさかここまで!」
(これは……マーガリンだ!)
アプリコットは絶望した。
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「まさか、団長さん……あなたはここまで手を出してしまったんですね……でも、どうしよう。
自体は思ったよりずっと深刻でした……いったいどうして……はうぅ」
一体なぜこんなことになってしまったのか、これからどうすればよいのか。苦悩がアプリコットを襲った。
「団長さんを説得…そう、説得しないといけません。マーガリンはダイエットと、健康の……何より、ジャムの敵です!説得する方法をなんとしてでも……うん?わたし、なにを、やって……?」
そこでアプリコットをは自身に起きていたに異変に気がついた。
「わ、わたしはどうして、マーガリンなんかを顔に塗って…あれ、それにこれ、なんだかさっきより柔らかくなっているような……」
アプリコットは、気が付かないうちに両手で瓶からマーガリンを拭い取り、ペタペタと自分の顔や首筋に塗りたくっていた。
「い……嫌、いやぁ!そんなもの、塗っちゃダメです……それに、あっ……どんどん溶けて……!」
周囲の気温が上がっている。 溶けだしたマーガリンを見てアプリコットがその事実に気づく。
それにつられてか、アプリコット自身の体も熱を帯びていくのを感じた。
「あ……ダメ。わ、わたしの体どんどん熱くなって……ああ、垂れちゃう、ぬるぬるしてきもちわるい……マーガリンが、服にしみちゃうぅ」
とっさに服を守ろうと肩口を引くが、その分肩から胸元をはだけてしまう。
それに、こんなところで脱ぐ訳にはいかないと気づき手を止める。それに、余計なことをして肩にもマーガリンが付いてしまった!
あわてて手で拭おうとするが、両手は既にマーガリンまみれで、余計にマーガリンを広げるだけだった。
そうこうしている間にマーガリンは胸の方に垂れていき服にしみていく。
次第に頭から冷静さが消えていく。
「あ、……嘘。もうだ、ダメ……」
働かなくなってきた頭の片隅で、せめて靴だけは守らなければならないと思い立ち靴をその場でさっと脱いで、
さらに立ったまま脚を外側に折り、ソックスを引っ張って素足になった。
脱いだそれらをひとまとめに床にそっと投げると、間一髪、服から伝って流れてきたマーガリンがももを伝い、ふくらはぎを舐め、くるぶしを濡らした。
「も、もういや……いやぁ……誰か、助けてください……」
半べそをかきながらその場にぺたりとへたり込むアプリコット。髪は乱れて顔のマーガリンにくっつき、その体は燭灯の光でてらてらと光り、アプリコットのきめ細かい白肌を際立たせていた。
まさに満身創痍の気分、心のほうが折れそうなアプリコット。
その耳に遠くから声が聞こえ、やがてギィと扉がなった。
「アプリコット~、アプリコットさ~ん。どこへ行ったんですか~?」
「ヘ、ヘザーさん?どうして……まだ宴会中のはずじゃ」
「あなたが席を外してあんまり遅いから探しに来たんですよーだ。多分ここだろうって……あれ?誰に聞いたんでしたっけ?……えへへ」
どうやら相当に酔っているようだった。
「それにしても……アプリコット。なんといいますか」
「うぅ……そうなんです。とってもひどい目に……」
「とっても……おいしそう」
「え……え?」
「あぁ、なるほど~」
ヘザーはアプリコットのそばにかがみ込むと
「アプリコットはわたし達のためにおつまみを作ってくれていたんですね~」
「ひあぁ!」
そう言ってアプリコットの耳の後ろをぺろりと舐めた
「うんうん、塩味が効いてとっても美味しいです」
「や、やぁ……やめて、下さい……へ、ヘザーさぁん」
「やめませんよーだ。だって、こんなに可愛らしいんですもん」
それに、とヘザーは続ける
「アプリコットはもっと自信をもって良いんですよ? 肌はこんなにきめ細かいですし、胸だってあなたが恥ずかしがらなきゃいけないほど小さくありません。 脚もこんなに綺麗で、羨ましいくらいですよ~?」
その他にも、何やらぶつぶつとつぶやきながら
アプリコットの全身、至る所を愛おしむように撫でていく。頭をよしよしとなで、腕をさすり、足の指先や指の間をくすぐるようにした。
結果全身にマーガリンが伸ばされていき、ほとんどくまなく塗り込められてしまった。
「あっ……うっ、ううん……あっ……はあっ、や、やぁぁ……ああっ、あぅぅ」
また、ヘザーの手も腕も、マーガリンでべたべたになっていくが彼女は気にしない。
アプリコットは時々ピクリと震えながらあっ、うっと小さくあえぐような、呻くような声を出していたが、徐々に反応を鈍くしていき、がっくりとうつむいたままになった。
「ほらー、アプリコット。ちゃんと聞いていますかー?」
「わたしは、マーガリンです」
「え?」
「わたしはマーガリン……もう、マーガリンなんです……ふふふ」
「あ、アプリコットさ~ん。もしも~し」
「ああ、でもそうです。ジャムです……ジャムで上塗りすれば……わたしにジャムを塗りましょう……そう、早くジャムを。うふ、うふふふ……」
「……あ~」
少し冷静になってみようと首を振るヘザー。
「ちょっと、いじめ過ぎちゃいましたかね?」
そしてそのまま、光のない目をしたアプリコットをひょいと抱き上げる。
「軽いですねぇ、アプリコットは。わたしが鍛えてるのもありますけど 簡単に抱っこできちゃいます。ほ~らお姫様抱っこですよ~」
「うふ、うふふ……あはは」
「……帰ったらゆっくりお風呂に浸かって、体を流しましょうね」
そう言って、今や全身マーガリン塗れで鈍く光を返す彼女の柔肌、その肩口にそっと口づけをした。
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「……というわけで、本当に。大変な目にあったんですからね!」
「あそこにしまってあったことで、マーガリンも何かの魔力を持ってしまったのかもしれないな」
ヘザーからすっかり元気になったと聞いたアプリコットは、普段の彼女らしからぬ強い口調で説教をする。
「看病してくださったヘザーさんとヨモギちゃんには、本当にもう感謝です……
医者を目指すわたしが、皆さんに逆に看病していただくことになるなんて……はぁ、不覚です……」
「病に伏せるほどのショックだったのか……」
「それに、さっきも言ったようにですね……マーガリンは健康によくありません!敵、敵なんです!」
「は、はい……すみませんでした」
「これに懲りたら、もう軽々しくマーガリンに手を出したりしちゃ……ダメなんですからね?」
「はい……もう二度としません」
「それに」
そこで一度言葉を切って
「団長さんが言ってくださればいつでもわたしが特製ジャムを用意しますから……浮気なんかゆ、許しませんから……ね?」
こちらの顔を伺うようにしながら言う。
「……アプリコットのジャムは絶品だからな、食べられなくなるのは困る」
ぱあっ。と花が咲くようにアプリコットが笑顔に包まれる。
「絶対、絶対にですからね……?」
「ああ」
「それじゃあ団長さん、失礼します」
バタン、と控えめに扉を閉じる……間際、恥ずかしげにうつむいたまま、その隙間からこちらを一瞬うかがうようにすると、アプリコットは去っていった。
「……ふむ」
彼女が去り、しん、と静けさを取り戻した団長執務室の机―その一番下の引き出しから、調理用の注射器を取り出す。
用途を言ってヤドリギにひとつ、都合してもらったものだ。
「あそこに保存していたものは全部溶けてしまったが……あの子のジャムと、マーガリンの可能性……」
昼食用に用意していたコッペパンに注射器の中身、マーガリンとジャムを半々に入れたものを注入し、
一口、ばくりと噛みちぎって、もぐもぐと咀嚼し、飲み込むと一言つぶやいた。
「一緒に食べたら、美味しいと思うんだけどなあ」
アプリコットにバターを塗りたくって絶望させたい
そんな書き込みから構想が始まった第二弾ですが、書いていて可哀想になってきてたまらなかったのでお蔵入りさせようかとも思いました。倉庫だけに。
多分もうあんま可哀想なものは書かないです。たぶん。
当初は団長とアプリコットだけ登場のつもりでしたが団長がおにちくすぎることになりそうなのでヘザーさんに登場してもらいました。
役回り的にヘザーさんがお好きな団長さんには嫌な役回りだったかもしれず心からお詫び申し上げます。 未所持の方、ヘザーさんは別に変態さんじゃありません。
変態が居るとすれば私か、読んでくださった方の内のどなたかです。