magic color   作:御沢

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mix color の続きです<m(__)m>


冒険の始まり

―――ホーリーロードで優勝して、早3ヶ月がたった。

私―――楓は、広島県にサッカーを教えに来ていた。全国各地を飛び回って、子供たちにサッカーを教えている。豪炎寺さんの設立した、サッカー教育プログラムだ。

このプログラムには、私のほかにも天馬が参加している。

ホーリーロードが終わったのが5月中旬、現在は夏休み真っ盛りの8月中旬。日差しが照りつける中、沢山の子供たちにサッカーを教えるのは、大変だけど、とても楽しい。

天馬は今の時期、沖縄にいるはずだ。私の方が、天馬よりも1週間早く、稲妻町へ戻り、部活へ参加する予定となっている。

つまり、今日でこの小学校にいられるのは、最後というわけだ。

「早かったな、山吹さんがいたのは1週間だっけ?」

「はい。早いですね。もうちょっと居たかったです。モミジの形したお饅頭、すごくおいしかったですし、みかんやレモンも美味しかったです。あと、広島菜の苦い味、忘れられません。くわいのあの味もですね」

「広島のこと、好きになってくれたかな?」

「はい!楽しかったです。あ、それじゃあ最後のあいさつ、しますね?」

「よろしく!」

小学校で、最後のあいさつを済ませて、私は飛行機に乗り込んで、稲妻町へと向かった。

 

 

どこに行っても、夏の暑さは和らがない。

それは、広島でも稲妻町でも変わらず、めまいを起こしそうになる。

「こんにちわー」

サッカー塔に入ると、ガンガンクーラーがきいていた。中から、神童先輩、霧野先輩、錦先輩、京介、狩屋、信助、輝君が出てきた。マネージャーは、全員集合だ。

「久々だね、楓っ!」

「葵、暑い」

「そうだね、えへへ」

マネージャーと話しつつ、気になったことを神童先輩に聞いてみる。

「先輩、他の皆さんは・・・?」

すると、先輩は首を振った。

「わからない。連絡を取っても、出てくれないんだ」

「そうですか・・・謎、ですね」

その時は、まさかそれが、あの大冒険の始まりだなんて、思ってもいなかった・・・。

 

 

日に日に人は減っていき、マネージャーも来なくなっていった。

結局残ったのは、神童先輩、京介、私だけとなった。

「来ないですね・・・」

「そうだな・・・」

「あぁ・・・」

ガラ空きの椅子を見ながら、私たちは練習もせず、ただ勉強をしていた。この少人数では、部活も思うようにできない。

―――翌日、神童先輩は来なかった。

―――その次の日、京介が来なかった。

 

 

―――夏休み最終日、部室には私1人だけが残った。

「どうしたんだろう・・・気になる・・・」

結局1人でいても、何もできないため、学校へ来てすぐに家へ帰った。

その帰り道での出来事だった。変なボディスーツを着た、紫色の髪のコアラみたいな人がいた。さっきまでいなかったのに、急に表れた。

「誰よ?」

「私はアルファ。山吹楓、お前からサッカーを消去する」

「え?ちょっと、何!?」

そういった瞬間、私の体は、宙に浮いて―――私がたっていたところには、何も残っていなかった。

 

 

目が覚めたのは、とある部屋だった。要塞のような・・・帝国学園か?しかし、どこかが違う。この要塞が、揺れている・・・。

外を見て、思わずギョッとした。―――この要塞は、海の上に浮かんでいたのだった。とりあえず、情報を探るために、船内?を見て歩く。そして、船の中には普通ないものがあった。

「さ、サッカーグラウンド?それに、あそこにいるのって・・・?」

そこにいたのは、かつての雷門イレブン。でも、吹雪さんたちがいる・・・。つまり、エイリア学園と戦っていた時の出来事だろう。

反対側の廊下を見て、さらにギョッとする。―――私がいた。

いや、正確には私に似た人がいた。髪は、下の方でサイドテール。桃色のシュシュでまとめてある。

髪の色は、私が山吹色なのに対して、彼女はレモン色。私が赤い瞳のつり目なのに対して、彼女はピンク色の瞳のたれ目。

そんな彼女の腕の中には、さらにさらにギョッとする光景があった。―――前髪が切りそろえてあって、ツインテールにしている、抱いている彼女そっくりの少女―――山吹色の髪に、赤い瞳のつり目・・・私だ。正確にいえば、3歳のころの私だ。

つまり、そんな私を抱いているのは、私の実の母親―――光山灯こと影山零佳だ。

「え?なんで?どういうこと?」

「お前は、ここでサッカーの存在を知った」

後ろから、機械のようなイントネーションのない、冷淡な声が聞こえた。振り返ると、そこにいたのはあのアルファというやつだった。

「そうね・・・物心ついてきて、初めてここでサッカーを見たのね」

「・・・この世にサッカーは不必要だ」

 

 

反対側の廊下では、母と私が階段を下り、私が初めてサッカーを見ようとしていた。

その時だった。アルファが向こうに移動していた。後ろを振り返ると、そこに彼はいない。瞬間移動でもした、ということか・・・?

しかし、それよりもだ。アルファは母と私の前に立ちふさがった。恰好は、警備員の格好をしている。

何かを母と話していた。すると、母は踵を返して私とともにグラウンドから去った。

―――その瞬間、私の頭の中で、鈍い痛みが響いた。

「ッ!何よ、これ・・・!?サッカーって・・・何・・・?楽しいもの・・・そう、楽しい・・・サッカーが・・・?え・・・何を言って・・・っ!」

頭が割れるように痛い。アルファは、いつの間にか目の前に来ていた。

「サッカーは不必要・・・サッカーはいらない・・・」

アルファは、呪文のように唱える。―――なるほど、こうやって皆からサッカーを奪っていった。だから、部活にも来なくなった・・・。

サッカーは不必要・・・本当に・・・?・・・まって、何を言っているの・・・サッカー・・・そう、サッカーは必要なものっ!

その時、私の頭に妙案が浮かんだ。―――ここで、サッカーを忘れた“フリ”をすればいいのではないか?そうすれば、この問題は終わるかもしれない。

「・・・サッカーって・・・なんだったかしら?」

 

 

わざと忘れたふりをした。案の定、アルファは私を元の世界に戻してくれた。そして、目の前から消えた。

「・・・どういうこと?サッカーを消し去るの?皆から、サッカーを消し去ったの?」

頭の中で、疑問がぐるぐる渦巻いた。そして、1つ心配事があった。

「・・・天馬は?」

その疑問を確かめられるのは、明日だ。

学校が始まれば、天馬も帰ってくる。

―――内容が理解できるまで、私は“サッカーを忘れたふり”を続けよう。

 

 

家に帰る途中、神童先輩に出会った。私を見つけると、手を振った。

「やぁ、楓」

「神童先輩・・・」

すると、怪訝な顔をする。

「いつもは“拓人さん”と呼ぶのに、どうしたんだ?」

「え・・・あ、すいません。学校で、友達に話すときにそう呼んでいて」

「そうだったのか。あ、そうだ。今から聞いていくか、ピアノ?今度、音楽部の発表があるんだ。聞いてくれないか?」

「あ、はい・・・」

私はこの会話で、大方のことは理解した。

―――私と神童先輩は、許婚なのは変わらないが、サッカー部であることは違う。だから、家ではいつも“拓人さん”と呼んでいたのだろう。そして神童先輩は、音楽部に所属しているのだろう。

一体この状態、いつまで続くのだろう?どうやったら、元に戻るのだろう・・・。

 

 

―――私たちの突飛で不思議な旅は、ここから始まったのだった。

 

 

 

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