私―――楓と天馬がやってきたのは、とある海辺。マリンブルーの海が、キラキラ輝いている。
「ここはどこ?」
私が天馬に尋ねると、天馬は下を見て唖然としている。
「母さん!?それに、俺・・・?サスケ・・・!」
「えっ・・・じゃあつまり、ここは10年前の、沖縄・・・?」
確かに、こんなにきれいなところは、沖縄くらいしかないだろう。周りには、ハイビスカスが咲いている。
「どういうことだ?夢・・・?俺、夢を見ているのか?」
「ううん、違う。私も昨日、同じことが起こったの。夢じゃないわ」
「だが、理解する必要はない」
後ろから、アルファの声。聞いていて、本当につまらない声だと思う。
「受け止めるんだ、現実を・・・」
その瞬間、天馬のお母さんの悲鳴が聞こえた。―――木材が、天馬の上に倒れてくる。
天馬に聞いたことがある。
“豪炎寺さんが、サッカーボールをけって、それで俺を助けてくれた。だから俺は、サッカーを好きになったんだ。そして、雷門に入ろうと思ったんだ”
遠くを見れば、豪炎寺さんがボールをけっている。歴史通りなら、ここで豪炎寺さんが助けてくれる。しかし、昨日の私のことからすれば・・・。
気付いた時には、時すでに遅し。
アルファが後ろからボールをけって、豪炎寺さんのボールの方向を変えた。
当然、天馬は木材にのまれてしまった。―――死んでしまったのだろうか?否、そんなことはないはずだ。
その瞬間、時間が止まった。動かないものはすべて、モノクロとなっていた。
「天馬は死んでない・・・ようね。ここに存在しているから」
「Yes、全治3カ月といったところだ」
そして、天馬の頭が痛くなる。昨日の私と、全く一緒だ。
「あれ・・・俺って、サッカーって・・・うわぁぁぁ!」
「天馬ッ!」
アルファが、音もなく近づいてくる。私は、アルファをにらみつける。
「山吹楓、お前のインタラプト修正も、そのうち行う」
「何度だってしなさい!私は、屈したりしないわ!1人になっても、絶対に屈しない!だって、サッカーが大好きだから!忘れることなんて、絶対にできないから!」
天馬が、息を切らしながら立ち上がる。
「楓の言うとおりだ・・・俺はサッカーが好きだ・・・大好きだ・・・大好きで大切なものは、絶対に守らなきゃ!」
アルファの表情が、少し驚いたものになる。まぁ、本人からしてみれば昨日の私だって、成功したものだと思い込んでいたわけだから、驚くのも無理はない。
アルファは、誰かと連絡を取り合ったのち、私たちに告げた。
「この状況を変える新しい提案が出た。場所を変える」
そして、持っていたボールが光った。
『ムーブモード』
ボールがそう言ったと思ったら、私たちが次にいたのは、浜辺のサッカーグラウンドだった。
そして、アルファの後ろに、同じ格好をした数人の人が現れる。人数は、アルファも含め11人。この場所のことも考えると、サッカーをするということだ。
「なるほど・・・サッカー好きが、サッカーによって傷ついたら、サッカーが嫌いになるって考えね?」
「Yes、その通りだ」
何とも卑劣な考え。でも、ここでひるむわけにはいかない。
「お前たちは、サッカープレイヤーなのか?」
「そんな次元の低いものじゃない。私たちは、時間に介入することをゆるされたルートエージェント・・・サッカーがこの世から消えるルートを作ることが使命」
「サッカーが消えるルートだって!?」
アルファはボールをける。必殺シュートでもないのに、かなりの威力だ。天馬は、化身を出して対抗するも失敗。そして、どんどんボールで痛めつけられていく。
「天馬っ!何するの!?」
「・・・サッカーは怖い・・・いたい・・・苦しい・・・辛い・・・邪悪・・・不必要・・・」
アルファが、呪文のように唱える。
そして、再びボールを蹴ろうとした瞬間だった。―――アルファの足もとのボールは、1人の少年が奪い去っていた。
「サッカーは必要だ。これは君の言葉だよ、天馬」
皆が動揺するなか、彼は自己紹介をする。
「僕の名前はフェイ・ルーン。天馬や楓と同じ、サッカーを必要とするものさ。楓、昨日はよく耐えられたね」
「え、まぁ・・・」
動揺を隠しきれない。敵?見方?現時点では、味方のような気がするけど・・・。
「1人をいじめて楽しい?なら勝負しようよ」
指を鳴らしたフェイの後ろから出てきたのは、人だった。これは、おそらく・・・。
「フェイ、これってデュプリ?」
「大正解!さすが、山吹財閥のご令嬢!彼らを見つけたのも、山吹財閥だよね?」
「デュプリ?」
天馬が首をかしげていたが、そのうちわかるだろう。
「これでどう?」
「・・・わかった」
アルファの承認も得て、なぜかサッカーに必要だと思いこまれている解説者も用意して、試合が始まった。
彼らのチーム名は、プロトコル・オメガ。
でも、天馬がキャプテンのこのチームは、チーム名がない。・・・ということで、フェイ命名の狩屋波のネーミングセンスのチーム―――テンマーズで、試合をすることになった。
私は、最近知った新しい化身の使い方を試してみたくなった。まだ、研究段階らしく、私の家の研究員が、必死に調べている。しかし、成功する気がする。
試合が始まった。―――プロトコル・オメガは、早いパスで私たちを翻弄する。でも、フェイが突っ込んでいけば、簡単にボールは奪えた。そして、必殺シュート“バウンサーラビット”でシュート。
止められてしまったが、さすがといった感じだ。彼らは、いったい何者?
「天馬、私たちも行くよ!」
「あ、あぁ!」
おどおどする天馬に声をかけて、私たちも突っ込んでいく。大分目が慣れた。ボールの動きも、つかめるようになった。
激しい攻防戦。アルファのシュートも、見方GKが見事にキャッチ。
しかし、試合の動きは途中で変わる。
アルファが化身を出してきた。しかも、それだけじゃない。
「アームド!」
―――化身を、まるで鎧のようにまとった。これが、私の家で研究している化身の新たな使い方・・・。彼らは、もう使えるようだ。だったら、私にだってできるはず。
しかし、とっさのこと過ぎて、頭がついていかない。DFを突破したアルファは、そのままシュート。そしてゴールだ。
「あれは何なんだ!?」
「化身を自らの体に融合させる―――化身アームドさ。楓は、知っているんじゃないのかな?」
「・・・えぇ。我が財閥で化身研究班が研究していることの1つよ。デュプリも化身アームドもその1つ」
「化身を鎧に?」
天馬は驚いている。フェイが、そのまま説明を続ける。
「使える時間は短いけど、離れて使用するよりはるかに強いんだ」
そのあとの試合は、得点を入れることより、痛めつける方が目的のような試合だった。見ていられない。
フェイのあれがデュプリなら、消耗も激しいはず。8人も操れるなんて、フェイも一体何者だろうか。
間もなく前半が終わろうとしていた時だった。フェイが、腕時計らしきものを見てカウントダウンを始めた。
―――カウントダウンが終わってやってきたのは、虹色に輝く穴から出てきたイナズマキャラバンだった。そして、中から顔を出したのは・・・
「おぉ!天馬君!楓くん!ごきげんよう!」
「はじめましてですっ!」
水色のクマと、長い黒髪のきれいな少女だった。
―――彼女たちは、一体・・・?