フェイはクマを見て、にっこり笑う。
「さすがワンダバ!時間ぴったり!」
そして、キャラバンが地面に着陸。下りてきたのは、やっぱりクマ。どこからどう見ても、クマだ。
もう1人は、整端な顔立ちの少女。美人ではなく、とてもかわいい感じ。長い黒髪が、揺れている。
「もぅ!私もいるんだけど?」
「はは、ごめんごめん!」
クマ―――ワンダバというらしいについて出てきた少女が、口をとがらせながら言う。
「フェイ、どうだ?」
「ん~、ちょっと苦戦中」
苦笑いするフェイの後ろで、私と天馬は頬をつねりあう。
『・・・痛い』
「夢・・・」
「じゃ、ないよね?」
目をこすってみるけど、やっぱり夢じゃない。一体全体、どういうことだ!?
「やっぱり、この大監督・クラーク・ワンダバット様がいないとだめなようだな」
「え・・・監督!?」
「クマじゃない・・・ぬいぐるみの・・・監督なの?テンマーズの?」
私たちは声を上げる。さらに、フェイが指をこすると、デュプリは消えた。天馬は、また驚く。
「天馬、彼らは実体がないのよ。デュプリっていう、化身の一種。これも、さっき言ったように私の家で調べていること。・・・でも、なんでフェイ達は知ってるの?」
「まぁ、それは置いておいてくださいっ!」
またまた少女が、にこっと笑って言う。
「えっと・・・名前、聞いてもいいかしら?」
「あ、まだでしたっ!私、チカ・ルーンって言って、フェイの妹ですっ!」
『い、妹ぉ!?』
私たちの声が、また響いた。
「そうだワンダバ!あれ、とってきてくれた!?」
フェイが興奮気味に聞く。ワンダバが、得意そうな顔をする。
そして、拳銃のようなものを取り出して、遠くの方とフェイに向ける。本当に理解に苦しむ。
マイナスの付いた銃の先にいたのは・・・
「ティラノザウルス・・・よね?」
「すっごいじゃん!」
フェイはさらに興奮気味。そして、プラスの付いた銃も発射して、フェイの体が光る。私と天馬は、やっぱり理解に苦しむ。
光が消えたフェイの容姿は、ピンク色のどこか恐竜っぽい髪型に、赤い目になっていた。
「フェイ、大丈夫・・・?」
「あぁ・・・これが、ミキシマックスだ!ミキシマックスガンによって、僕の個性とティラノザウルスの個性が合わさったのさ。これが、この姿!」
「そうなんだ・・・」
私たちが唖然とする中、実況のおじさんが出てきた。
「そろそろ試合を、四万十川~」
・・・ここは沖縄のはずだけど、少し肌寒くなってしまった。
再びデュプリを出して、後半開始。
ミキシマックスの力は絶大で、ただでさえすごかったフェイは、さらにすごくなっていた。
天馬も目が慣れたようで、ボールの動きについていけている。しかも、それだけじゃない。
「ワンダートラップ!」
新必殺技も、試合の中で生み出した。私だって負けていられない。
天馬はその後、アグレッシブビートという技も完成させた。さすがだ。サッカーを愛しているだけある。
フェイにパスが通り、ゴール。これで、試合は振り出しに戻った。
しかし、アルファだって黙ってはいない。再び化身アームド。ものすごいスピードで、どんどん抜いていく。そして、ゴールを決められる。再び突き放されてしまった。
そのあと、再びゴールチャンス。私は、気を高める。アルファにだって出来ている。なら、私にだってできるはず・・・!
「出てきてッ!大天使ミカファールッ!アームドッ!」
出てきたミカファールは、形を変え、予想通り私の体に融合した。―――アームド成功だ。
「楓!」
「天馬は言ってたよね、何とかなるって。何とかなったね!」
ガッツポーズをしながら天馬に言う。
アルファの蹴ったボールは、私に阻まれてゴールできず。
そのあとも試合が続いていたが、アルファが立ち止まって、誰かと連絡を取る。
そして、まるで嵐のようにUFOのようなものに乗って、立ち去って行ってしまった。
「なんだったの・・・?」
試合は急に終わって、私たちは浜辺に移動した。
フェイが天馬に事情を教えているから、私はチカさんに教えてもらうことになった。
「チカさん、よろしくお願いします」
チカさんは、くすぐったそうな顔をした。
「チカでいいです。私、楓さんより年下ですから。後、ため口でいいですっ♪」
相変わらず、元気な子だと思った。感じのいい子で、一緒にいて楽しい。
「そう・・・。なら、よろしくね、チカちゃん」
「はいっ!」
嬉しそうに返事をする彼女。純粋そうだけど、何か事情を抱えているような気もした。
「さぁて!何でも質問してくださいですっ!」
胸を張って言うチカちゃんに、私はとりあえず簡単そうな質問をぶつける。
「チカちゃんたちは、どこから来たの?あのキャラバンは、雷門のものよね?」
「はい。でも、あれはタイムマシンの一種です。イナズマTMキャラバンっていうそうです。私たちは、200年後の未来から来ました」
「未来から!?そう・・・じゃあ、あいつらは何なの?プロトコル・オメガって・・・」
「きっと本人も言っていたとおもうんですけど、ルートエージェントです。今、200年後ではちょっと、セカンドステージ・チルドレンっていう子供たちと、戦争が起こってて・・・原因が、サッカーにあるって考えてるみたいです。だから、サッカーを消去しようとしてるんですよね・・・」
なるほど。これで、大方の理由は推測できた。戦争を根本から消し去る―――起こらないようにするには、サッカーが盛んだった私たちの時代にやってきて、サッカーを消すのが1番の解決策だということだろう。
チカちゃんは、今度は砂浜に絵を描きだした。簡単な絵で、1本の線が書いてある。
「お兄ちゃんに聞いた話だとですね、この線が本来の楓さんだと思ってください。でも、こんな感じで、パラレルワールドっていうのがいくつもあって・・・」
その線の横に、細い線をいくつも書いていくチカちゃん。そして、私の本来の線に、バツ印を付ける。
「ここで、歴史介入―――インタラプト修正が行われちゃったわけです。そしたら、別のルートができますよね?インタラプトっていうのは、歴史を修正できる分岐点です」
そう言って、バツ印から別の太い線を描く。そうか、つまり・・・
「ここでうまくいけば、こっちの補正された道を歩む、ってことね」
「はいっ。パラレルワールドも、重要になってくるそうですっ」
なるほど。何とも面倒くさい話だ。
「ねぇ、これを訂正するにはどうすればいいの?」
「うーん・・・天馬さんや楓さんの介入に失敗しましたからねー・・・とりあえずまずは、雷門サッカー部を取り戻さなきゃ出すっ!円堂さん、でしたっけ?その人が、サッカー部を作った所に行きましょうっ!」
「それって・・・タイムスリップってことよね?」
「はいっ!じゃあ行きましょうっ!」
そういった瞬間、ワンダバがキャラバンに乗って、やってきた。
「チカ!楓くん!行くぞ!」
「はーいっ!」
チカちゃんがキャラバンに乗り込むのに続き、少し緊張気味に乗り込む。・・・中は、普通のキャラバンと変わらないようだ。
天馬とフェイを迎えに行って、フェイに話を聞く。ある時間に行くためには、その時間に関係のある道しるべが必要なようだ。
それが、アーティファクトというらしい。つまり、11年前に行くには、サッカー部の強い意思のこもったものが必要らしい。ならば・・・
「サッカー部の看板とか?すごく関係あるでしょ?」
「そうそう!そういうのがいるんだよ!」
そして、いったん現代へと戻ってくる。
サッカー部の部室は、前来た時と違い、物置と化していた。
「招き猫・・・ダンボールの山・・・使われてないんだから、当然ね」
「でも、円堂監督は、この部室は自分たちが来るずっと前からあったって言っていた。何かあるはずなんだ」
天馬とともに必死になって探し、とうとう見つけたサッカー部の看板。
―――私と天馬は、ハイタッチをかわした。