キャラバンに戻り、中心に置く。
「アーティファクトセット完了・・・」
ワンダバが準備をしている。私と天馬は、緊張気味だ。時を超えるなんて、予想もしていなかった。
「・・・タイムジャンプ5秒前、4、3、2、1、タイムジャーンプッ!」
そういった瞬間、周りは辺り一面虹色になった。なるほど、これがワームホールか。
キャラバンを下りると、きれいな桜が咲き乱れていた。
―――ここが、11年前の雷門のようだ。お兄さんたちの卒業アルバムに乗っているのと、まったく同じ雷門の校舎がある。雷門は、この10年の間に大きく改築されたり、制服が変わったりしたらしい。
・・・と、遠くの方から、見覚えのある影が見えた。それが誰なのか、頭に巻かれたオレンジ色のバンダナで、すぐに分かった。
「円堂さん・・・」
「えっ!?円堂監督!」
天馬が目をまん丸くする。フェイが、「いや、」と付け足す。
「監督どころか、まだキャプテンにもなってないよ」
チカちゃんも付け足す。
「それどころか、まだサッカー部にも入ってないんですよっ!円堂さんって、200年後でも有名ですけど、サッカー部じゃない円堂さんなんて、珍しいですっ!」
円堂さんは、興奮気味で学校へ入っていく。円堂さんが、サッカー部を作るんだと思うと、私までわくわくしてくる。
―――プロトコル・オメガが、邪魔をしてこなければ、の話だが。
冬海校長―――この時代は、冬海先生に、円堂さんは入部届けを提出する。しかし、サッカー部はないはずなので・・・
「えぇぇぇぇぇぇ!?」
円堂さんの悲鳴が、職員室に響いた。それとほぼ同時に・・・
「えぇぇぇぇぇぇ!?」
横にいる天馬も、同じように悲鳴を上げた。フェイが、人差し指を立てて、口の前に差し出す。
「だからいちいち驚かない!」
「ごめんごめん・・・」
そのあと、さっきまでいた部室へと行く。
そこでは、円堂さん、秋さん、芽さんがサッカー部を作るため、部室の掃除をしていた。
「ここから始まるんだ・・・雷門の歴史が・・・」
「うん」
天馬とフェイは、釘づけになっている。私はその後ろから見ていたけど、さらに後ろにいたワンダバが気になって、チカちゃんと苦笑するばかりだった。
そして、さっきの天馬同様、笑顔を浮かべて円堂さんは、サッカー部の看板を発見した。
その看板を部室に飾り、円堂さん、秋さん、芽さんは3人で声を合わせて、ハイタッチしながら言った。
『雷門中サッカー部、始動ッ!』
その日の帰り道、3人は一緒に家に帰っていた。
そういえば、このころは天馬は沖縄に住んでいたけれど、芽さんは秋さんの家に住んでいたらしい。
親戚なのだから、あり得ない話ではないだろう。
「サッカー部、出来るといいなぁ・・・」
「円堂君が、サッカー部を作るのね」
「円堂君はさ、作りそうだもんね。なんか、意気込みが伝わってくるっていうか」
「そうか~?」
楽しそうに話しながら帰る3人。―――つい3か月前は、こんな光景がどこにでもあった。サッカーをして、その帰り道を一緒に帰って・・・。
「楽しそうね」
「うん・・・秋姉も円堂監督も姉ちゃんも、みんな若いんだ・・・」
天馬は、そっちに驚いているらしい。私としては、何度か写真を見ているもんだから、気になりはしない。にしても、芽さんは本当に有美ちゃんそっくりだと思う。
ワンダバは、まるでおじいちゃんのような顔をしている。
「円堂守とあの2人のどちらかは、付き合っているのか?」
天馬は顔を真っ赤にする。フェイとチカちゃんは、ワンダバを叱っている。私は、笑いながら少し訂正。
「芽さんの旦那さんは、別の人よ」
「そうなのか?」
「楓!」
私たちが話していると、円堂さんたちが立ち止まった。―――プロトコル・オメガだ。
「雷門にサッカー部は出来ない、確実に」
アルファが告げる。円堂さんは、ちょっと腹立たしげに反論する。
「本当にサッカーが好きな奴などいない」
得るファが冷徹に告げると、円堂さんは、まじめな顔になって、胸を張って言いきった。
「サッカーが好きな奴ならいるぜ、ここにな!」
そう言いながら、自分を指差している。秋さんと芽さんは、顔を見合せて笑っている。
「間もなく嫌いになる」
「俺はサッカーを嫌いになんかならないぞ」
そういったと思ったら、アルファの持つボールが光った。
『ムーブモード』
「やばい・・・!」
フェイがそう言って、私たち皆を引き連れて、その光の中へと飛び込む。
たどり着いたのは、見覚えのあるスタジアム。何度か来たことがある。
「フットボールフロンティアスタジアムね」
歴史では、ここでFFの決勝が行われるところとなっている。もっとも、アフロディたちと戦った時には、例外だったのだが。
アルファは、ここで円堂さんたちと試合する予定らしい。でも、メンバーが足りない。ならば、私たちが参戦すればいい。
「円堂監督!・・・じゃなかった、円堂さん!」
天馬が言いながら、円堂さんのもとへ駆けていく。いきなり呼ばれて、円堂さんは動揺気味だ。
「そいつらは、サッカーを消そうとしているんです!」
「えーっと・・・お前・・・?」
私が後ろから現われて、自己紹介をする。
「私は山吹楓、それでこっちが松風天馬です。諸事情があって・・・でもとにかく、大好きなサッカーを守るために、ここに来たんです」
芽さんと秋さんは、いよいよ怪訝な顔だ。
「松風天馬・・・弟と同じじゃん。なんか似てるし」
「えっと・・・それはまたあとで!」
あ、天馬、話をそらした。
でも、この場合はそれでもいい。円堂さんたちは、私たちのことを信じてくれて、アルファたちと試合することになった。
デュプリもだして、準備万端。
さっきいたおじさんもやってきた。解説者らしいが、1日にそんなにいなくなって大丈夫なものなのだろうか?
アルファたちのサッカーは相変わらずひどかった。それでも、私たちは勝たなければいけない。
円堂さんの前向きな姿勢は、本当に変わらない。
「サッカーが悲しんでいる!」
ここに、天馬と円堂さん、2人のサッカーバカが集結した。
そして、さっきのチカちゃんの話してくれたこと。―――パラレルワールドが、大きく関係する試合となった。
円堂さんが、中2で習得するはずのゴットハンドを、中1の現時点で習得してしまった。
チカちゃんによると、異なったパラレルワード上に、何人もの円堂守がいて、共鳴したものだということだ。共鳴すれば、大きな力が得られる。時間がゆがんでいるからこそ、出来ることだ。
天馬も私も、そのことは身をもって感じた。身が軽く、走るスピードも速くなっていた。
天馬の打った“真マッハウィンド”の威力も、上がっているように感じた。そして、とりあえず1点だ。
さらに、円堂さんにもさらに共鳴現象が起こってしまった。―――魔神グレイト。
普通なら出ない化身が、円堂さんから出たのだ。共鳴現象の力だ。すごい、すごすごすぎる。
また、ワンダバはエキサイティングゲージというものがあって、興奮するとピンク色になるらしい。
フェイの消耗も激しくなってきたころだった。
「おーい、この試合、俺も入れてくれないかな?」
「私も入れて頂戴?」
似た容姿の2人が、ベンチの上から手を振っていた。1人は瑠奈だとわかった。なぜいるのかは置いておいて。
もう1人は、京介?否、あれは・・・。
近くに来たら、すぐに分かった。見慣れた顔だった。
「瑠奈!どうしたの?それに・・・」
「剣城!来てくれたんだね!・・・剣城?」
「俺は、君の知っている京介じゃない。―――京介の兄、剣城優一だ」
―――やっぱり。あの容姿は、優一さんだった。
でも、瑠奈といい、優一さんといい、一体どうしてここに・・・?