「瑠奈も優一さんも、なんでここに・・・?」
「その話は後だ。とりあえず今は、こいつらを倒そう」
ちょっとはぐらかされたように感じたけれど、今は確かにその通りだ。強力な助っ人が来たんだから、戦うのが妥当だろう。
話は、戦いが終わってからでも遅くはない。
「それじゃあ、早く倒しちゃいましょうよ。私だって、瑠奈や優一さんが来た理由―――今京介はどうしているのか、それが気になります」
私の横で、ワンダバがトコトコやってきて、右手を挙げた。
「選手交代!」
優一さんと私と瑠奈が3トップのFW。フェイ、天馬を含めた3人がMF。マントたち4人がDF。そして円堂さんがGKだ。
キックオフ早々、優一さんはあれよあれよとボールを奪い去る。
そして、瑠奈にパスが渡る。瑠奈も、さすが優一さんと京介の妹、ハイレベルなテクニックで、ボールをキープし続ける。
そして、瑠奈のボールは再び優一さんへ。
「お兄ちゃん!」
「あぁ!はぁぁぁぁぁぁぁ!魔戦士ペンドラゴン!」
優一さんの背中からは、何と化身が。まぁ、これほどのテクニックの高さなら、化身を持っていない方が逆におかしい。
さらにアームド。そんな優一さんを見て、私と瑠奈もうなずきあう。
「瑠奈、私たちも」
「しないわけにはいかないわね」
いったん目をつぶり、息を大きく吸うと、私も叫ぶ。
「出てきて!大天使ミカファールッ!アームドッ!」
「はぁぁぁぁぁぁ!女神セレネー!アームド!」
私たちの化身も変形し、やがて見事な衣となり、私たちの体にまとわりついた。
フェイが天馬を見て、呼びかける。
「天馬!君にもできるよ!」
「・・・やってみる!」
天馬は一気に真剣な瞳になり、そしてさっきの私たち同様叫ぶ。
「はぁぁぁぁぁぁぁ!魔神ペガサスアーク!アームドッ!」
するとペガサスアークも変形して、見事な衣となった。―――天馬のアームドも、大成功のようだ。
私と瑠奈がボールをつなぎ、天馬と優一さんがゴールを決めた。
「なんて強力な助っ人なんだ!」
フェイの言うとおり。優一さんと瑠奈―――2人がいれば、こちらは百人力だ。
しかし、試合の真っ最中だというのに、急にアルファたちは例のUFOのようなものに乗って、どこかへと立ち去って行ってしまった。
「守ったんですよ・・・!円堂さんのサッカーを!」
チカちゃんが言いながら、私に抱きついてきた。私はチカちゃんと目を合わせて、そして微笑んで見せた。
「えぇ、そうね。瑠奈、優一さん、ありがとう」
「そうだね、ありがとう」
フェイもそう言いながら、優一さんと握手を交わす。優一さんが、フェイに言う。
「この戦い、俺も手伝わせてほしい。京介のためにもね」
天馬は嬉しそうな顔になる。―――私は、それが不思議でならなかった。なんで、2人はいるのに、京介はこの場にいないのだろうか・・・。
TMキャラバンの前に、チカちゃん、私、瑠奈、優一さん、天馬、円堂さん、秋さん、芽さん、ワンダバ、フェイの順で座って、円になった。
「天馬君、楓ちゃん、君たちの知る俺の歴史は、俺が12歳、京介と瑠奈が7歳の時の事故が原因で、サッカーができなくなってしまった、ということだよね?」
「はい」
「えぇ」
瑠奈が、優一さんの後に続くように、ゆっくり冷静に告げた。
「あの事故は起こらなかったのよ。だから、京介もお兄ちゃんも、サッカーを続けていたの。そして、もちろん私もよ。正しい歴史では、私はモデルのようだけれど、この世界の私はサッカー一筋の、サッカー少女。モデルなんてしていないの。雷門中学校で、普通にサッカー部に所属していたわ。楓と出会ったのは、本来の歴史通り小学校時代だけれどね」
「そうなんだ・・・。でも、それじゃあ京介は?優一さんはよくわからないけど、瑠奈と京介は同い年。だったら、京介だってサッカー部に所属しているんじゃないの?そして、一緒にここに来るんじゃないの?」
私の問いかけに、天馬とフェイ、チカちゃんがうなずく。ちなみに円堂さん、秋さん、芽さんにいたっては、もはや何がなんやらといった感じだ。
優一さんが、瑠奈に続くように私の質問に答えてくれる。
「確かにそうだね。・・・ずっと続けていた結果、俺たちはかなりのレベルに成長したんだ。そして、サッカー留学の話が持ち上がった」
「サッカー留学!?すごい・・・!」
天馬の瞳が輝く。その反面、優一さんと瑠奈の瞳は、悲しげなものになる。
「私は、留学してまで極めたいとは思わなかったわ。楓たちと、楽しくサッカーをするのが楽しかったの。だから、お兄ちゃんと京介の問題だったわ。
―――お父さんとお母さんの話によれば、留学できるのは1人だけだったそうよ。当時、その話をしていた場に私はいなかったけど、後々お兄ちゃんに聞いたの。・・・京介は、兄妹のなかでは最も兄妹思いの優しい人よ。だから、留学の話もお兄ちゃんに譲ったの。―――自分は、サッカーに飽きたからといって」
私たちは、思わず言葉を失った。確かに京介は、人のことを思いやれる人だ。だけど、それが理由でサッカーから遠ざかってしまうのは、おかしいと思う。留学はできなくても、サッカーは続けているのではないかと思う。
優一さんが、つらそうな顔で続きを語る。
「本心だとは到底思えない。でも、京介は自分のサッカーにかかわる道具をすべて処分して、二度とボールを蹴らなかった」
「それが、京介なりの優しさ、ということですね?そして、京介のインタラプト修正」
優一さんはうなずく。
「それは成功したんだろうけど、今度は俺の前に現れた」
ワンダバが、私たちに説明するように言う。
「新たな時空の中で、優一君は沢山のサッカー少年に影響を与えたからな」
「京介から奪っても、結局サッカーの存在を消し去れなかったから、お兄ちゃんに接触した。そして、私にも・・・」
「瑠奈にも?」
瑠奈は静かにうなずいて、話し始めた。
「―――私は、交通事故にあいかけたの。危うく、足をけがするところだったわ。もし怪我をしていたら、私はサッカーはできなくなっていたわ」
「そんな・・・ひどいよ!」
「そんな私やお兄ちゃんがここにいるのは、ある人の存在があったからよ。名前はなのらなかったけど、サッカーを愛する者を支援していると言っていたわね」
「そして、このタイムブレスレットをくれた」
優一さんと瑠奈の見せる、その手についたブレスレット―――これが、タイムブレスレットだろう。これがあると、時空を移動できるらしい。話を聞く限りでは、その人も未来の人の可能性が高そうだ。
円堂さんたちも、1つの結論にたどりついたらしい。―――サッカー部を何としても作る。
そして、私たちは元の時代へと戻る。
この時代の出来事は、一体どのように現代へと影響したのだろうか。でも、それ以前に円堂さんと天馬―――2人のサッカーバカには、新たなできるはずのなかった“絆”が生まれた。
キャラバンの中、サッカー部の看板が急に消えた。フェイの話によれば、この時代にあると都合の悪いものは、必要とされる時代に行くようだ。つまり、きっと、円堂さんたちがサッカー部を作れたということだろう。
現代に着いて、さっそく向かうのはサッカー塔。・・・ではなく、なんと木枯らし荘。ワンダバが疲れたから、らしい。でも、確かにここなら住むところがあるだろう。
でも、私の家も結構広いのだから、住むところはある。・・・ということで、天馬、フェイ、優一さんは木枯らし荘、私、チカちゃん、瑠奈は私の家となった。キャラバンは、木枯らし荘に置いておくらしい。
そして翌日。
やっとのことでサッカー塔へ。
天馬は緊張気味。・・・そんなところへ、葵がやってきた。
「あれ、天馬、楓?練習始まっちゃうよ?」
「練習って、書道部・・・?」
「なーに言ってんの、サッカー部に決まってるでしょ」
呆れ気味で言う葵の横で、私と天馬は手を取り合って喜ぶ。横では瑠奈が葵と話している。瑠奈も、普通にサッカー部のメンバーらしい。そして、モデルの仕事もしているらしい。
完全に元に戻った・・・ように見えた。優一さんは、なんと雷門サッカー部のOBらしい。切野先輩のお兄さんである健丸さんと、よく来ていたらしい。だから、元に戻った神童先輩たちも、優一さんのことは知っていた。
でも・・・
「待ってください!なら、剣城は!?」
「呼び捨てなんて失礼だぞ」
「じゃなくて、剣城京介!優一さんの弟の・・・!」
―――なるほど、京介のことはまだ元通りではないようだ。