magic color   作:御沢

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総理との対談

アルファたち―――プロトコル・オメガと京介をめぐる試合は、私たちの勝利で終わった。

ワンダバの持ってきていた京介のオーラは、優一さんと相性が抜群で、200%の力を出し切って、試合に勝利することが出来た。

 

 

―――でも、瑠奈はともかく、優一さんはここにいてはいけない存在。

この試合により、俗に言う“正しい歴史”となってしまったため、優一さんは―――・・・。

「お兄ちゃんっ!」

瑠奈が叫ぶほうを見ると、優一さんの体はすけはじめ、やがて足から消えてきている。これはわかっていたこと。だけど、それでも・・・。

皆と優一さんが話している間、私は顔をそむけたまま、グラウンドを見つめていた。

「楓ちゃん」

優一さんにそう呼ばれて、思わずはっとする。

「優一さん・・・」

「楓ちゃん・・・京介のことを頼むよ。天馬君たちとは違う存在、それが楓ちゃんだ。瑠奈にとっても、京介にとっても、俺にとっても、楓ちゃんは大切だ。だから、どうか・・・」

「わかってます!私、頑張ります!本当のサッカー、取り返してみせます。京介と一緒に!」

すると優一さんは、今度は私たちに対して笑いかける。

「ありがとう―――」

 

 

―――そういうと、優一さんは消えてしまった。

死んだわけではない。それでも、瑠奈にとってはダメージは大きい。自分の兄が、目の前で消えてしまったのだから。

「うっ・・・うぐっ・・・おにーちゃん・・・っ」

「瑠奈さん・・・」

チカちゃんが、瑠奈の背中をさする。瑠奈は、ただ涙を流していたけれど、すぐに涙をふいて、立ち上がった。その顔は・・・

「ルナ・・・」

「私・・・ちゃんとモデルもやってる瑠奈よ。モデルは、皆のあこがれなんでしょ?だったら、カッコよくいないとでしょ?」

「・・・かっこいいじゃない、瑠奈。それでこそ」

私の手を取って瑠奈は立ち上がり、そして一緒にキャラバンに乗り込む。

 

 

翌日、サッカー塔へと向かう。

天馬たちもドキドキする中、私たちが部屋に入ると・・・

「いないわね・・・」

「そんな・・・」

ショックを受けるそんな中、後ろのドアが開いて―――

「京介!」

「うわ!?・・・る、瑠奈!?どうしたんだ!?」

―――京介がやってきた。瑠奈が京介から離れて、今度は天馬と信助が抱きつこうとする―――も、失敗。それでも、こういう雰囲気、懐かしい・・・。

「楓?どうしたんだ?」

「・・・ううん、何でもない。京介がサッカー部にいるんだと思うと、なんだか・・・」

「どうしたんだ?4人ともおかしいんじゃないのか?」

こういうやり取りも、また嬉しいと思えてくる。

 

 

その日の練習が終わって、私が家に帰ろうとすると、校門の前に1台のリムジン。

黒塗りの豪華なリムジン。おまけに長くて、そこらへんのリムジンとは違う。神童家のものでも、鬼道家のものでもない。

「どうして・・・山吹家のリムジンが・・・?」

私のお願いで、よっぽどのことがない限り、リムジンで迎えに来ないことになっている。つまり、よっぽどのことなのだろう。

窓をたたくと、運転手の古坂が反応する。

「楓お譲さま、総帥の指示です」

「お母さんの・・・?どうしたのですか?」

「今から、全国の中学生代表で、総理大臣と対談していただきます」

その言葉は、急に言われる言葉にしては、重すぎる。本当に、急すぎる。総理大臣と対談なんて・・・。そもそも、何を話すのかもわからない。

「わからないけど・・・了解です。向かいましょう」

リムジンに乗り込んで、車の中で着替えをする。

 

 

白と紺色の切り替えのワンピースに着替え、髪もとりあえずポニーテールにして、シュシュでまとめる。一見すれば、清楚なイメージの少女だろう。

「ねぇ、古坂さん。なんで私なんですか?」

「それは、山吹財閥のご令嬢だからでしょう。総帥が、そうおっしゃっておりました」

「そうですね・・・話しあう内容は、一体何です?」

「お譲さまもご存じでしょう?サッカーの日本代表と、アメリカ代表の親善試合の悲劇を」

内容はさっぱり分からない。きっと、優一さんとともに試合をしていた時のことなのだろう。

「そうですね。でも、あれはショックすぎて・・・もう一度、話していただけますか?あの悲劇を・・・」

 

 

古坂さんは、全く疑うこともなく、その“悲劇”を話してくれた。―――日本代表は、アメリカ代表に対して、暴力的なサッカーをしたらしい。

「ひどい・・・」

「ですよね。財前総理は、サッカー禁止令を可決するかどうかで悩んでいらっしゃるのです。その事について、お譲さまは助言してあげてほしい、と総帥から」

―――所詮は、私はお母さんの人形なのだろうか。家の人は、お母さんの頼みなら、すべてを受け入れる。

 

 

リムジンが国会議事堂に着き、ヒールを鳴らしながら総理のいる部屋にはいる。

財前総理は、塔子さんのお父様。私も実は、何度かあったことがある。それでも、そのころの私はまだ幼稚園で、覚えていらっしゃるとは思えない。

少し緊張しつつ、部屋の前に立ち、深呼吸。そして―――

「失礼いたします」

「どうぞ」

 

 

部屋の中には、頭を抱えて椅子に座り込む財前総理。数日間、頭を悩ませているらしい。

「君は・・・」

「中学生代表の、山吹楓です」

頭を深々と下げると、財前総理は微妙な反応。不安になって、尋ねてみる。

「えっと・・・何か・・・?」

「いや、山吹さん、どこかであったことないかな?」

あ・・・。覚えていてくださったのだろうか。頭の片隅にでも、残っていたことは結構うれしかった。

「はい、実は1度だけ。ご令嬢の塔子様と、私は知り合いなんです。イナズマジャパン関係の」

すると、総理は手をたたいた。

「そうか、光山楓・・・さんだったかな?しかし、いまは確か・・・」

「はい。養子に貰っていただけたので、“山吹楓”です」

「そうだったか」

そういいつつ、総理はため息をついた。

 

 

「それで、私はなんで呼ばれたのでしょう?詳しいことは、母から全く聞いていなくて・・・」

椅子に座りながら、財前総理は私のほうを向く。その瞳には、焦りの色が浮かんでいた。

「そうだったのか。正直に、ここまで着た経緯を教えてほしい」

「・・・はい。雷門中学校の正門の前に、山吹家のリムジンが止まっていて、運転手の古坂より、ここに参るよう仰せつかったのです」

「それは・・・急な話だったな」

「いえ・・・それより、私はどうすれば、総理のお役に立てますでしょうか?」

すると、総理は頭を抱えて込んでしまった。

「サッカー禁止令・・・か」

「総理・・・あの・・・」

「私もわかっているんだ。娘がサッカーが好きで、大人になった今でも続けるくらい好きで、それは楓君も含め、雷門の皆、ほかの皆・・・日本中、いや、世界中にサッカーが好きな人はいる・・・そんなサッカーを、日本だけで禁止するなんて、私はどうかと思うんだ・・・しかし、日本代表のラフプレーの事実は、変えようがないし・・・」

 

 

私は、秘書の人に出された紅茶を飲みながら、必死に言葉を選びつつ、助言をする。

「私の意見を言わせていただくと、サッカー禁止令は反対です。確かにラフプレーの事実は変えようがありません。でも、やり直す方法もあると思うのです」

「楓君・・・」

「・・・ですが、これはもう、日本だけの問題ではありません。アメリカ代表が、黙っていないと思われます。だったら・・・」

「もういい、君の意見は十分わかった。ありがたいよ」

うつろな目をあげて、私のほうを見て、ほほ笑んでくれる総理。

そして、前を見据えた。

 

 

「―――サッカー禁止令、可決だ」

 

 

やっぱり・・・。

総理の考えは、大方わかっていた。世間の反応を車の中で見て、それはしょうがないことだと―――私ごときでは、変えようがないことくらいわかっていた。

「・・・すいません」

「いや、君のせいではない。むしろ、君は責任を感じることは、全くないんだ」

「ありがとう、ございます」

総理は席から立ち上がって、ドアを開けた。

「失礼いたします」

頭をきちっと下げて、ドアを閉めて、国会議事堂を出て、リムジンに乗り込んで―――

 

 

―――涙が出てきた。

 

 

「なんでなんだろ・・・」

リムジン内に置いてあったカバンに顔をうずめ、ソファに倒れ込む。

「お譲さま・・・」

「わかってたんです・・・私にはどうしようもないって・・・それでも、好きな―――ママとの絆を感じられる、大好きなサッカーを禁止されちゃうと、私はもう・・・っ」

「お譲さまは、頑張られました。全国のサッカー少年少女の意思を、堂々と財前総理に伝えられました」

「古坂さん・・・」

すると古坂さんは、とある一軒家の前で車を止めた。

こじんまりとしたかわいらしい家で、私には見覚えのない家だった。

「ここって・・・」

「ここからは、お1人でお入りください」

古坂さんに言われるがままに、私はその家の中に入った。

 

 

家の中には、女性物の高級そうなヒールがあった。

「失礼いたします」

ローファーを脱いで、家の中に入ると・・・

「久々ね」

「お・・・お母さん・・・っ!どうして・・・いつから、日本に・・・?」

そこにいたのは、外国にいるはずのお母さん―――世界一の財閥、山吹財閥のやり手女性総帥・山吹桜子だった。

お母さんは私の元に歩み寄ってきて、そして抱きしめてくれた。抑え込んでいた寂しさ、愛おしさ、悲しさ、悔しさがこみあげてきて、涙があふれた。

「楓は、よく頑張ったわ。全国の中学生として、山吹家の娘として、貴方は誇りよ。精一杯、できることをしてきたもの」

「でも、変えられなかったのは事実です・・・」

「大丈夫。楓なら、いつか必ず変えられるわ」

その言葉に、私は精一杯うなずいた。

 

 

帰りの車の中。

「古坂さん、どうして・・・?」

何故お母さんが日本にいることを知っていたのか、古坂さんに尋ねる。

「失礼ながら、お譲さまの気持ちを、総帥が知らないと思っていらっしゃるのですか?」

「ふふっ、そうですね」

―――私は、私のできることをやるだけ・・・!

 

 

 

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