特に意味はありません。
沢山のアンケートと感想ありがとうございます。
誤字訂正もしていただき本当に感謝しています。
では、本編へどうぞ!
『あれが僕に指導してほしいと言っていた奴か?』
「そ、初見での印象は?」
僕は木の陰に隠れ、塔城さんから見えない位置で待機。その際に可士太郎の感想を聞いてみる。
『お前は僕を軽んじているようだな。何だあのへんてこな動きは?あれは遊びか何かをやっているのか?それともあれか?お前が僕を笑わせるために仕込んでおいたのか?』
物凄い酷評を頂きました!
だよね~、流石にそうなるよね~。塔城さんも木場と同じで僕に一撃たりとも有効打を当てれてないし、逆に寸止めされまくってるからね。天覚ノ眼って言うチートアイテムを持っているだけの素人に攻撃を当てられない、それは武術を嗜んでいる者からしたらあり得ないことなんだよね。
「ま、駄目もとで一度戦っているところ見てみてよ」
塔城さんはうちのバイト先の常連さんだし、多少の手助けぐらいはしても罰は当たらないだろう。
「……どこに行ってたんですか?」
「内緒ってことで」
流石にマガジンの事を話すわけにはいかないしね。第一、そう言う力を持ってると知られたら絶対面倒事に巻きまれる。
「ま、一度模擬戦でもしよっか」
「……釈然としませんが、わかりました」
僕と塔城さんはある程度間合いを開け、互いに臨戦状態に入る。
『正中線にブレが見られる。体幹の軸がしっかりしていない証拠だな』
構えただけでそこまでわかるとか流石と言うべきか、恐ろしいと言うべきか迷うな。やっぱり観察眼においては可士太郎は群を抜いているな。
先手は塔城、木場ほどの速度は無いが正面から白銀に襲い掛かる。まずは左腕のジャブが数発、白銀は軽やかなステップで余裕をもって躱す。塔城は容易く躱されたことにムッとした表情になるが、冷静にジャブを続ける。塔城はこの短い期間に白銀から受けた数々の罵倒、腹を立てながらそれを聞き、そのおかげか自身の短所を理解していた。自分の全力の一撃には僅かな溜めが必要で、その後は反動で隙が生まれることを。だからこそ、塔城はジャブに徹し、白銀から隙が生まれるのを虎視眈々と待っていた。身体能力では塔城の圧勝、だがそれを嘲笑うかの如く精密な動きで塔城の攻撃を躱していく。まるで当たらなければどうという事は無いと言うように。そんな緊張の走る中、白銀に隙ができる。
「やばっ」
白銀は塔城のジャブを躱し続けている最中、地面に足を取られ態勢を崩す。勿論、今まで隙ができるのを待っていた塔城がそんな隙を見逃すはずがない。塔城は右腕に力を籠め、自身の最高の一撃を白銀に繰り出す。小柄な塔城の体重の乗った一撃が唸りを上げながら白銀に迫る。
「(ここっ)」
この時塔上は自身の勝利を確信した。白銀の耐久値は当然高くない。塔城の拳を耐えるようなことはできないだろう。
勿論、それは当たればの話だが
「えっ…?」
塔城の拳が空を切る。先程まで居たであろう場所に白銀はおらず、塔城の一撃は空しくも空を切り、致命的なまでに隙を晒す。そして、それを待っていたと言わんばかりに地面に伏し、指先に力を籠める白銀。
「(マズイッ!?)」
塔城の一撃によって晒された致命的な隙、そして勝利を確信したが故に晒してしまった油断、この二つが重なり塔城を襲う。そして、白銀が放とうとしている技を塔城はよく知っていた。あれは尖牙神勁、当たれば致命傷を負うのは確実だ。
「(間に合って!)」
塔城は反動で動かないはずの身体に鞭打ち無理やり身体を捻る。幸か不幸か、その成果もあり、寸でのところで脇腹の肉が抉られる程度でやり過ごすことに成功する。もしも躱すことが出来なければ今頃塔城のお腹に大きな風穴が空いていただろう。
「ッ……!?」
今まで感じたことが無い強烈な痛みが塔城を襲う。だが痛みに呻いている時間は無い。今までの白銀は模擬戦では怪我をしないように寸止めをしていたが、今回はそれが無い。気を抜けばすぐにやられる。塔城は痛みを堪えながらジャブを放ち距離を取ろうとするが、そこで手を緩める白銀ではなかった。白銀はジャブを捌きながら前進し、塔城に肉迫する。塔城は最後の手段と言わんばかりに未だ未完成な尖牙神勁を放つ。しかし、それは精細の欠いたお粗末な一撃だ。白銀に通用するはずが無かった。白銀は自身の力では防ぐことが無理とわかるや否、塔城の一撃を側面から手刀を叩きつけることによって軌道を逸らす。塔城はその事に驚愕し、次の瞬間に頭部に軽い衝撃が襲う。
「はい、今日も僕の勝ち」
先程白銀がやったことは唯のデコピンだ。終了と言う意味合いを込めた一撃だったが、塔城は非難がましい表情で白銀を睨め付けている。
「……酷いです」
塔城の酷いと言う言葉は何を指しているかはわからない。もしかしたら脇腹の傷の事を言っているかもしれないし、今までと違い殺す殺されるような戦いについて行っているかもしれない。もしかしたらそれらすべての事を言っているかもしれない。
そんな塔城の表情に困った表情を浮かべる白銀。
「僕もここまでする気はなかったんだけど、ごめんね。痛かったよね?」
「……いえ、戦いに傷はつきもですから」
白銀の申し訳なさそうな表情に不愛想な返事を返す塔城。
こうして、四日目の合宿も無事ではないが、終わった。
「で、なんであそこまでやる必要があったの?」
僕は若干怒りを込めながら可士太郎に問いかける。先程の僕と塔城さんの戦いは僕がやっていたわけではない。僕に乗り移った可士太郎が勝手にやったことだ。
『そう怒るな、端から殺す気はなかった。ああでもしなければ本当の地力と言うのが分からなかったのでな』
可士太郎曰く、塔城さんはどこかでリミットみたいなものをかけているらしい。それは何でかかっているかは僕が知る由もないが、可士太郎はそのリミットが解けた状態を見て見たかったから今回のような強行手段をとったらしい。
「で、結果はどうなの?」
『才能の片鱗があることは認めよう。最後に放った一撃、本家には遥かに劣る劣化品だが、確かに尖牙神勁だ。僕も見様見真似でやってみたがあれは中々高難度な技だ。一見、凄まじい突きの様に見えるがその実、指先に力を収束させ続けることは非常に困難だ。そして的確な角度から打ち込まなければ骨が邪魔し相手に致命傷を与えることは難しい。実際、先程僕が打ち込んだ角度はあまり効果的な角度ではなく、行動不能にすることすらできなかった。それでも劣化品とはいえ、尖牙神勁を撃てることは称賛することができる。それに一瞬見せた獣のような俊敏性と危機察知能力、善丸を超える馬鹿力。ギリギリ及第点を上げてもいいだろう』
おぉ…!あの可士太郎から及第点をもらうなってすごいじゃん塔城さん!
「ならこれから少しの時間、力を貸してもらっていいかな?」
『愚問だな。それよりお前も覚悟しておけこの短期間の間にお前の力も伸ばせるだけ伸ばしてやる。出血大サービスだ、ありがたく思えよ』」
僕の質問に眼鏡の縁を上げながら答える可士太郎。何やかんやで面倒見がいいよね!でもそこまで面倒見良くなくていいよ!?
「勘弁してくれよ!僕には闘う力なんてものは必要ないんだ!僕はマガジンを読むだけで十分なんだ!」
『ふざけるな、お前ほどの原石をこのまま朽ち果てさせるなど俺のプライドが許さん。我間程は無理だとしても最低おしゃれ坊ちゃんぐらいのレベルになってもらわなければな』
「当主直属兵団レベルとかマジふざけんな!」
こうして可士太郎による僕の魔改造計画みたいなものが始まった。