誰か通訳を読んでくれ(錯乱)
「部長、連れてきました」
教室に入り目に入ったのはまさにオカルトと言うにふさわしい風景だった。
蝋燭によって照らされる室内
黒板に書かれている様々な文字
何より教室の中央にでかでかと書かれている魔法陣が一際異彩を放っている。
部室内にはニコニコ笑顔を浮かべている黒髪ロングの女性、何か食べてる塔城さん、それと優雅にふるまっている紅髪の女性、木場祐斗を入れたら4人か。
うん、速くこの場から立ち去りたい!
「ありがとう、祐斗。さて、貴方が白銀君で間違いないかしら?」
「さあ?僕は貴方と面識がある訳ではありませんし。ただこの学園で白銀は僕だけなので間違いじゃないんじゃないですか?」
正直、一方的に連れて来られた事に若干苛立ちがある。遠回し的に自分は貴方の事なんか知りませんと言ってみる。
ここでどういった反応を見せるかで相手がどういった人間かわかる。
さて、貴方の反応はどうなんすかね?
「そう、なら問題ないわね」
まさかのスルーですか、これは部類分けしづらい反応だ。この対応は皮肉が通じないほどおめでたい頭なのか、それとも皮肉を受け流せるほど寛容な人物なのか、はては他人の言葉など聞きもしない自己中心的な人物か。
仕方がない、判断ができないのなら次の質問でもするか。
「それで用は何ですか?生憎僕は暇じゃないので速く終わらせてほしいんですが」
年上に対してこの生意気な態度。この言葉に対してどう反応するかで大雑把な性格の分類分けができる。
「あら、急ぎの用事があったのかしら」
「ええ、急がないと仕事に遅れてしまうので」
「……そう、それは悪かったわね。でも、私は善意であなたを此処に呼んだのよ?」
一瞬返答に詰まった。それに僕の言葉を聞いたときに若干表情が強張った。大方、先輩が呼び出したのにこんな態度をとった僕に腹が立ったのだろう。言葉ではああ言っているが、内心面白くないに違いない。それに肝心の謝罪が一切ない。プライドが高く、傲慢な性格って感じかな?それはそうと、善意で呼んだって言うのはどういう事だろ?
「これ、貴方の物で間違いないかしら?」
あり、何で僕の生徒手帳がこんなところに?
僕は制服の内ポケットを探るが生徒手帳は無い。
「これが何処に落ちていたか知っているかしら?」
少し困惑している僕を他所に彼女は言葉を続けていく。
何処に落ちてたってわかるわけないじゃん。だっていつの間にか無くなってたんだから。
「これはね、公園に落ちてたの」
「はあ……?」
公園って随分アバウトな説明だな。この駒王町にどれだけ公園があると思ってるんだよ。少なくとも4,5個はあるよ?
「貴方、いったい何者?」
「……申し訳ないんですが、質問の意図を理解できないです」
何者って言われても唯の男子高校生なんだけど。転生したことを除けば。
「ふざけないでくれるかしら」
何故か怒ってる。何、僕何か悪いことした?と言うかふざけないで、と言われてもふざけてないんだからどうしようもなくね?
「変装して誤魔化していたようだけど残念ね。私には通用しないわ!」
いや、そんな自信満々にドヤ顔見せられても対応できなんだけど。何?『よくぞ見破ったな!』とでも言えばいいの?てゆっか、変装って何のこと?てゆっか、怒ったり誇らしげにしたり感情表現豊かですね!っと、まずいまずい。思わず明川学園の監督の口癖が出てしまった。
「惚けるのもいい加減になさい!貴方が昨日堕天使と戦闘をしていたことはばれているわ!」
ワッツ!?
何?堕天使?そんなのと闘った覚えなんてないんだけど!何そう言う設定か何かですか!?実はここはオカルト研究部じゃなくて、アニメ研究部か何かですか?アニメの見すぎで二次元抉らせすぎちゃったんですか?
僕は助けを求めるように塔城さんに視線を向けるが
「モグモグモグモグ」
駄目だ!食事中のようだ!
「いや、正直心当たりが全くないどころか意味不明なんですが……第一堕天使って何ですか?そう言う設定ですか?」
仕方ないので疑問を口にしてみる。
「ッ!悪魔で白を切るようね……手荒な真似はしたくなかったのだけど、祐斗!」
「はい、部長!」
おい!ちょ、ちょ、ちょっ、まっ!
「あぶなっ!?」
いつの間にかその手に剣を握っていた木場祐斗がいきなり斬りかかってきた。僕は相手の袈裟斬りを身体を横に逸らし辛うじて躱す。だがわかる。あれは本命ではない。本命は袈裟斬りからの突きだ!僕はこれを膝を弛緩させ、後方に倒れそうになりながら跳び、紙一重で回避する。
「今のは躱されるとは思っていなかったよ」
躱されると思わなかった?ははは、安心してくれ。僕も躱せると思っていなかった。
僕はドアにタックルし、廊下に転がり出る。そして全力でその場から走り去る!
「逃がさないよ」
そんな僕を超スピードで追いかけてくる木場祐斗。やばっ、逃げ切れない!
『何故逃げる?』
突如聞き慣れない声が聞こえる。
僕は反射的に向き直る。手にはいつの間にか握られていた日本刀。
敵から放たれる斬撃、僕は先程まで躱すことが精いっぱいだったが今は違う。相手の動きが手に取るようにわかる!ちょっとした重心移動、次にどう動こうとしているのか、全てがわかる!
驚く僕を他所に身体は冷静に、かつ合理的に動き出す。僕は初撃を躱すのではなく、迎え撃つ。刀や剣は根本が一番折れやすい。狙いは根本。そこに高速の斬撃を叩き込めば容易く折れる。
バキンッ!
「なっ!?」
目論み通りいとも簡単に剣は根元から斬られる。
『ノロマめ』
僕は恐ろしく自然な動きで首を斬り落としそうになるが、流石に殺されそうになったとしても刀でバッサリ首を落とすのはまずい気がしたので、と言うか普通にまずいので驚愕し、得物を失い無防備となった懐に柄での一撃を叩き込み相手の意識は刈り取る。今のうちに退散させてもらおう。
僕はいそいそとその場から立ち去り、バイト先に向かった。
「祐斗!?」
私は追撃に出た祐斗の後を追うように部室の外に出たが、そこには倒れた祐斗がいただけだった。白銀刃夜の姿はどこにも見えない。
「安心してリアス。祐斗君に傷はありません。気絶しているだけのようです」
朱乃の言葉に私は安心する。しかし、祐斗1人を追手として差し向けたのは失敗だった。昨日の事で相手の実力は十分理解していたはずだ。それでも学園内ならあの大規模な攻撃はできなことから捕縛できると踏んでいたんだけど見誤ったわ。、相手の単純な挑発に我慢が出来ず、祐斗に攻撃を命じてしまった。完全に私の失態だ。
「朱乃、急いで祐斗を教室に運ぶわ!小猫、お願いしてもいい?」
「……わかりました」
小猫に祐斗を運んでもらい、部室に戻る。
「部長、本当に彼が?」
「ええ、間違いないはずよ。祐斗を容易く無力化できる実力があるならほぼ間違いない。彼が堕天使と戦闘した人物、想像通りの使い手のようね」
あれほどの使い手が今までこの学園に潜んでいたことに気が付かないなんて、隠密も得意とみていいだろう。
「彼には今回の事で私達を警戒するでしょう。彼には監視を付けさせてもらうわ。現状、彼に手を出すのは危険なことが分かった、この事はソーナにも伝えて監視を手伝ってもらう事にするわ」
「それが良いと思いますわ」
全く、堕天使もここにいるみたいだし、問題が山積みね。でも、私の領地で好き勝手するなんて許さないわ!