ソードアート・オンライン-君と共に在るために- 作:ちぇりぶろ(休載中)
ようやくここまで来たという感じですかね。
もう少し話数を重ねられたらなと考えています。
今回はあのキャラ達が登場です。
では、どうぞ!
sideout_
2024年03月25日 09時00分 第47層 フローリア マイホーム
今日のフローリアの気象設定は雨時々曇。
今の彼女の心を写したような気象設定だ。
ユウキ「…」
あの日からユウキは部屋の隅に縮こまっていた。
キリトとアスナがユウキをマイホームに連れて帰ってから誰の声も聞かず自室に籠り今に至る。
『次会った時は…殺す…』
あの日、彼から聞いた最後の言葉が嫌でも頭から離れない。
ユウキはそれを思い出しては涙を流し後悔する。
『来ないでっ!!』
あの一言で全てが終わってしまった。
あの一言で全てを投げ出してしまった。
もうあの輝かしい日々は戻って来ないのだ。
ユウキ「…」
外の雨は次第に強くなり、雷が鳴り響いている。
あの夜も雷が鳴り響いていた。
初めて彼と共に過ごした夜だった。
彼はぶっきらぼうで鈍感だが、優しく、常に相手を思いやれる男だった。
あの日の夜はユウキにとって初めての事だらけだった。
ユウキの家族は姉が1人だけ。
両親は不治の病でユウキが小学校低学年の時に息を引き取った。
身寄りのないユウキ達は孤児院へと預けられた。
孤児院では明るく振る舞うユウキだったが、姉と2人っきりの時はいつも泣いていた。
そんなユウキをいつも優しく見守ってくれたのが双子の姉だった。
だが、今はその姉もいない。
この世界に囚われてしまった時、ユウキが真っ先に思ったのは孤児院にいる姉の事だった。
今頃心配しているだろうか…泣いているだろうか…自分のせいで悲しみに明け暮れているんじゃないだろうかとユウキは心の底から思った。
だが、そんな不安も彼と一緒にいる時は和らいだのだ。
どことなく姉に似ているその人に付いて行こうと決めた。
ユウキは次第に彼の事が気になり始めた。
背が自分より高いから年上なのかなとか面倒見がよかったから弟か妹がいるのかなとか…色々想像してしりたくなったが、この世界でリアルの事は話してはいけない。それを知ってしまいユウキは残念だった。
でも、今自分の目の前にいる人がその人の全てだ…自分が感じた彼が本当の彼なんだと…そう思っていた。
『お前がどれだけオレの事を知っているんだ?』
ユウキは知ったつもりでいた。
感じたままそれが彼の全てだと勝手に思い込んでしまった。
誰だって嘘はつくし、知られたくない事もある。
それを見ようとしないで知った口を開いてしまった。
ユウキ「…タ…ク…ヤ…」
ユウキはまだ涙が止まらずいなくなってしまった彼の名を呼んだ。
同日同時刻
シウネー「…」
ジュン「…」
テッチ「…」
タルケン「…」
ノリ「…」
5人はマイホームのリビングで沈黙を守っていた。
誰かが声を発する訳でもなく、ただ一刻と時間を捨てていた。
彼らもキリトとアスナから事の詳細は聞かされている。
聞いた時彼らも冗談と勘違いする程に信じられない事だった。
ジュン「…んだよ」
シウネー「ジュン…?」
ジュン「何でこんな事になっちまうんだよっ!!」
沈黙をジュンが破り、場の空気が変わる。
だが、誰もその問に答えられる者はいなかった。
実際にその場にいなかった者が何を口に出せようか。
でも、言わずにはいられなかった。信じたくなかった。
昨日までいつもみたいに楽しくやって来ただけに…この現実を受け止めきれずにいる。
それだけ存在感が大きかったのだ。
そんな空気の中玄関からノック音が聞こえてくる。
シウネーが扉を開けると黒ずくめの男性と白と赤の凛々しい女性がいた。
シウネー「キリトさん…アスナさん…」
アスナ「こんにちはシウネー。…ユウキは?」
シウネー「ユウキは…まだ部屋に…」
キリト「…そうか」
2人はあの時ユウキと一緒にいた。
ここにいる者の中で1番現実を受け止められずにいる。
彼らは第1層の頃からの仲間だ。
互いに助け合ってここまで戦い続けている。
アスナ「…もうどれくらい?」
シウネー「…4日になります。
あの日以来部屋から出てこず、食事も摂ってないんです…」
アスナ「そんな…」
キリト「…」
この世界では食事を摂らなくても生きてはいけるが、
常に空腹感が付きまとってしまう為、この世界の住人は食事を摂っている。
アスナ「…私達、今日はユウキに話があって来たの」
キリト「すまないけど、ちょっといいかな?」
シウネー「は、はい!…私達が呼びかけても全然ダメだったので2人からよろしくお願いします…。正直、これ以上…見ていられません…」
シウネーが2人をユウキの部屋の前まで案内する。
アスナは意を決してドアを数回ノックした。
返事はない。
だが、確かにそこにいると感じ、アスナはドア越しに話しかけた。
アスナ「ユウキ…。私よ、アスナよ…。急に来ちゃってごめんね。
…ユウキみんな心配してるよ?お願いだから部屋から出てきて?」
それでも返事は返ってこなかった。
本当にいるのか疑いたくなってしまう程だ。
それでも話しかけずにはいられなかった。自分の親友が暗く深い心の奥に閉じこもっているのを見ていられなかったのだ。
アスナ「…お願いユウキ!ここを開けて!
ここに閉じこもっていても意味なんかないわ!
タクヤ君ならそう言うはずだよ!」
ユウキ「…タ…クヤ…?」
アスナ「!!…そうだよ!!ユウキのそんな姿タクヤ君だってきっと…」
ユウキ「どこにいるのさ…」
アスナ&キリト&シウネー「「「!!」」」
ユウキ「タクヤはもうここにはいない…。ボクの隣にいない…。
もう…放っておいてよ…。
これ以上…タクヤの事…思いださせないでよ…。
それに…ボクはタクヤを拒絶した…。
来ないでって…タクヤが怖く感じた…。もう…ボクは…」
ユウキから返ってきた言葉は掠れていて今にでも壊れそうな程の酷い声だった。あれから一体どれだけ涙を流したらこうなるのだろうか。
アスナもそんなユウキに涙が滲んだ。
あれ程明るくみんなを笑顔にしてきたユウキは今や見る影もない。
キリト「…ユウキ…オレだ、キリトだ」
ユウキ「…」
キリト「お前に伝えなきゃいけない事があるんだ…。タクヤの事だ…」
ユウキ「…もうやめてよ」
キリト「…お前にとってこれは残酷な事かもしれないが知ってなくちゃいけない事だ。…昨日アルゴから聞いた情報によると…
タクヤは…プレイヤーを1人…殺した…」
ユウキ「!!?」
キリト「殺されたのは攻略組の1人だった。
聞いた限りほぼ一撃で殺ったそうだ…」
ユウキ「そ、そんな…タクヤが…タクヤが…人を…」
キリト「受け止めれないか?」
ユウキ「!!」
キリト「その気持ちはわかる…オレもアスナも…この現実は受け止めれない…受け止めたくない…。でもな、ユウキ…
受け止めれないのとタクヤを救う事は別だ」
ユウキ「…っ!!」
キリト「タクヤみたいな奴が進んで人を殺す訳ないし、ましてや殺人ギルドなんかにも絶対に入らない…。
何かオレ達には言えないような事があるとオレは思ってる…。
わざわざ嫌われ役までしてオレ達を遠ざけたんだ…。
きっと何かあるんだよ、ユウキ…」
キリトの言っている事は間違いないのかもしれない。
だが、それはあくまで可能性の域を出ない。
タクヤが本当に狂人だとしたらと考えてただけでユウキの手足は硬直し、心は崩れていくだろう。
キリト「…オレはこの世界で1つの心理を見つけた…。
この世界が今のオレ達にとっての現実だ。
なら、そこで触れ合い…知り合った人達の人柄や態度…その本質こそが真実なんだって…。偽りの世界だったとしてもそれだけが絶対の真実なんだって…オレはそう思っている…」
ユウキ「…その人の本質こそが…真実…」
キリト「だから、タクヤが狂人でもその本質を誰よりも知っているユウキが救い出さないでどうするんだ?」
ユウキ「…」
アスナ「ユウキ…」
キリト「…オレが伝えたかった事は伝えた。今日はこれで帰るよ…。
行こうアスナ…」
アスナ「うん…。ユウキ…次は会って話そうね?」
キリトとアスナはユウキに別れを済ませ、マイホームを後にした。
ユウキはまだ部屋の隅に縮こまっている。
ユウキ(「タクヤの…本質…」)
ユウキはこれまでのタクヤとの思い出を脳内で再生した。
どれも楽しく、心が穏やかになるものばかりだ。
辛い事や悲しい事もあったがタクヤとそれを取り囲む仲間の支えがあって今まで進んで来れた。
誰1人欠けてもいけない大切な仲間…その大切さをユウキに教えたのはタクヤだった。
ユウキ「…」
ユウキは首に下げられたペンダントを手に取る。
その中にはタクヤとスリーピング・ナイツの仲間と撮った写真が何枚もスライドショーされていく。
今では感じられないタクヤの温もりをその写真から伝わってくる。
ユウキ(「…そうだよ。
ボクがここで諦めたら誰がタクヤを救ってあげるんだ…!
あの一言でタクヤとの関係が壊れてしまった…。
もうあの時みたいに後悔したくない…!
壊れたんなら直すんだ…。タクヤ…もうボクには君のいない日々なんてやだよ…だから、ボクが救い出してみせる!!」)
ユウキはドアを勢いよく開けて1階のリビングへと向かった。
シウネー「!!…ユウキ!!」
ユウキ「みんな!!ごめん!!心配かけて…でも、もう大丈夫だよっ!!
もう諦めたりふさぎ込んだりしない…。
ボクは…ボク達は絶対にタクヤを…仲間を救い出すよっ!!!!」
ジュン「…へっ、やっとユウキらしくなってきたな!
あたりめぇだ!!オレ達の仲間に手ぇ出してタダで済むと思うなってんだっ!!」
テッチ「うん!!」
ノリ「そうこなくっちゃね!」
タルケン「はいっ!!」
シウネー「ユウキ…」
ユウキ「ごめんねシウネー…。心配かけちゃって…」
シウネー「もういいのよユウキ…あなたが元気になってくれただけで…。でも、まだ私達にはやる事がある…」
ユウキ「うん!!スリーピング・ナイツの今後の目標は…タクヤを連れ戻してみんなに謝らせるって事で…みんな!!頑張ろうっ!!!!」
スリーピング・ナイツ「「「おぉぉっ!!」」」
一方その頃…
「ひっ…お、オレが悪かった…!もうしねぇから勘弁してくれ…!!」
ある男が深い森の中で目の前のポンチョ姿の男に命乞いをする。
Poh「No!テメェらはオレの言いつけも守れないんで処刑だァ…。
ほらよ…お前の獲物だぜ?」
数人の仲間をかき分けやって来たのはローブに身を隠した男だ。
「…」
男は静かに剣を抜き、男に向ける。
その動作には迷いの欠片もなく、無機質に見下ろしている。
「お、お前は…攻略組の…」
男が最後まで喋りきる前に剣を脳天に突き刺し、HPを全損させポリゴンへと四散させた。
この世界の死は実に呆気ないものであった。
HPが全損すればポリゴンの残骸に変わるだけでモンスターなどと同じである。
だが、それでも現実ではベットの上で確実にこの世から消えてしまっているのだろう。
この世界の殺しは罪悪感など感じられない。
それでもその人間は今、ここで、死んだのだ。
Poh「相変わらずCoolだねぇ…」
「…」
男は剣を納め1人、森の中へと消えていった。
「
「オレも…
Poh「いいんだよ…
殺しにおいても…中のドス黒いモンもな…」
ジョニーとザザと呼ばれた男達は顔を見合わせPohの思惑が理解出来ていなかった。
Poh「さぁて…いつ本性が出てくるのかねェ…
"
月明かりに照らされたタクヤの顔は覇気も何もなく、ただ手足を動かしているだけの人形のような無機質な顔だった。
sideタクヤ_
2024年04月01日 15時00分 第46層 森林フィールド
あれから10日程が経った。オレは草原に寝っ転がっていた。
もうずっと眠りにつけてない。
オレはPohに脅されるがまま
それ以来、眠りにつこうとするとあの日の夢を見てしまう。
『来ないでっ!!』
タクヤ「…」
オレがここにいる限りアイツらも下手に動けないハズだ。
ユウキたちには悪いがこれがオレの運命って事だな。
あれだけの事やったんだ…助けようなんて考えねぇだろ…。
それに、オレはもう…あそこへは戻れない。
タクヤ「…」
オレの心とは裏腹に空は快晴で野鳥が飛び交っている。
気づくと手を伸ばしている自分に驚いた。
オレもあの野鳥のように自由になりたい…。
この命からも…。
そんな中近くで女性の声が聞こえた。
「うん…ノルマは達成してるみたいだね…」
「達成してるみたいじゃないわよ!
アイツらすぐ人の足元見るんだから…。アンタもそう思うでしょ?
「滅多な事言うもんじゃないよ、
ルクスとグヴェンという少女達がこんな所でしかも2人で何をしているのか気になった。
装備を見る限り攻略組ではなさそうだが…。
ルクス&グヴェン「「!?」」
タクヤ「…!!」
気づかれてしまった。
身を隠そうにも1人は既に抜剣しこちらを警戒する。
グヴェン「誰!!?」
タクヤ「…ふぅ、別に…お前らに用がある訳じゃねぇ…。
とっとと失せろ…」
ルクス「グヴェン!!あの人のカーソル…」
グヴェン「ん?…オレンジって事は…アタシらと一緒ね!」
タクヤ「あ?一緒だぁ?」
2人のカーソルを確認してみるとグヴェンという少女はオレンジ、ルクスという少女はグリーンになっている。
タクヤ「…お前ら…何でそんな事を…!!」
グヴェン「何でって…変な事言うのね!アンタも私らと一緒じゃない」
タクヤ「!!」
そうだ…オレもカーソルの色がオレンジだった。
オレはもう2人も殺した。何の罪のないプレイヤーから命を奪ったのだ。
グヴェン「変な人ね…」
ルクス「…」
気が付くと2人の少女はもう姿はなく、オレは草原に1人取り残されていた。
sideout_
グヴェン「じゃあまたね!ルクス」
ルクス「あぁ…また頼むよ」
2人はそう言って別れ、ルクスはもと来た道を歩き、森へと戻っていく。
ルクス(「あの人…悪い人には見えなかったが…」)
ルクスはタクヤの事を思い出していた。
今日初めて会ったしかもオレンジプレイヤーにここまで思い入れがあるのか、本人ですら分からない。
ルクス(「でも…あの人も
ルクスは自分の立場も忘れてこのまま消えようとも思った。
だが、逃げた所で私に付けられたこの
森に辿り着いたルクスは目の前のローブ姿の男に声をかけられた。
「ルクス。遅かったな…物資は受け取ったんだろうな?」
ルクス「はい…。今お渡しします…」
ルクスはアイテムを全て男に渡す。男もアイテムを確認すると森の中へと入っていった。ルクスも男の後を追う。
森の奥で焚き火が起こっている所まで歩いたルクスは自分のスペースへと戻る。この生活を始め、もう長くなる。
この頃、自分の存在意義を見失ってしまったルクスは何も考えず、ただ与えられた仕事を黙々とこなしていくしかなかった。
ルクス(「私は…なんでこんな事をしているのだろう…?
もうどうでもいい…。私は…ここにいたくない…。
死にたい…」)
「おい…アンタ…」
ルクス「え?」
ルクスが顔を上げるとそこには先程出会ったタクヤの姿があった。
タクヤ「…お前…さっきの…」
ルクス「あなた…どうしてここに…?」
タクヤ「…いたくているんじゃない。
お前こそ何でこんなゴミ溜めにいる?
…グリーンなんだから街には入れるだろう?」
ルクス「…私にはあそこへ戻る価値なんてない。だから、ここにいる」
タクヤ「…」
何も言えなかったタクヤはしばらく考えた末、ルクスの隣に座った。
タクヤ「…お前、飯は?」
ルクス「大丈夫です…。お腹すいてないんで…」
グゥゥ…
ルクス「あ…」
例え、ゲームの中だったとしても食欲を抑える事は出来ない。
ゲームのくせにここまで再現されると脱帽したくなる。
タクヤ「ほらっ」
タクヤはメニューウィンドウを開けてアイテム欄から黒パンを取り出し、それをルクスに放った。
ルクス「あ、あの…」
タクヤ「食っとけよ…腹減ってんだろ?」
ルクス「あ、ありがとう…ございます…」
ルクスは少し躊躇いながらも意を決して黒パンを1口かじった。
特に変わった味でもなければ美味しくもない。
だが、ルクスにはそれ以上に優しさを感じた。
ここに来てこんな感情を抱くなんて初めてだ。
タクヤ「じゃあ…オレは行く…」
ルクス「あ、あの!…お名前は?」
タクヤ「…タクヤだ」
名前を言い残してタクヤは森の中へと消えていった。
2024年04月02日 23時10分 第52層 荒野フィールド
52層には岩場などの障害物が多く、地形が入り組んでいて迷うとなかなか抜け出す事が出来ない。
ザザ「来たぞ…今日の…獲物だ…」
ジョニー「おーおー!ガッチリした装備つけてんじゃねぇか…
あれ売ってカジノでも繰り出そうぞ!」
Poh「そうしたきゃ装備盗る前に殺しちまうんじゃねぇぞ?」
ジョニー「それ言っちゃダメっすよー」
タクヤ「…」
Poh「あ?
タクヤ「…オレは人殺しの為にここにいるんじゃねぇ」
Poh「まだそんなくだんねぇ事言ってたのかよ…?
もっとさらけ出しちまえよ!テメェの薄汚ぇもんをよぉ…!」
ジョニー「
Poh「まぁ、お前も殺したくなったら来な…。
あと、邪魔だけはしてくれるなよ?そん時は…分かってんだろ?」
タクヤ「…」
そう言い残し、3人は下のプレイヤーを襲いに行った。
下から叫び声や悲鳴がこだましている。
オレは悲鳴が届かない所まで走った。
タクヤ(「オレは…オレは…」)
もう何もかも放り出したら楽になれる…毎日思っている事だ。
一体オレはここで何をしているのか…。
悲鳴を聞く度その事で頭が割れそうだ。
悲鳴を聞く度頭の中で声が聞こえてくる。
オレの修羅が殺しを悲痛な叫びを欲しているのだ。
それを無理矢理押さえ込みながら今日まで来れた。
だが、それももう限界に近づいている。
タクヤ「うがぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁっ!!!!」
闇夜の中、オレのうめき声が辺りに撒き散らされた。
2024年04月09日 14時20分 第46層 森林フィールド
この場所で寝ている時が今のオレの唯一の癒しだった。
毎日毎日…来る日も来る日も…人を殺している…。
もうオレの心は完全に壊れてしまった。
もう何も考えられなくなった。
もう人が目の前で死んでも平気になった。
もう人を殺すのを躊躇わなくなった。
タクヤ「…」
誰か…オレを…殺してくれ…。
誰でもいい…
タクヤ「…」
このままいっそ外周で飛び降りでもしようか…。
「あの…」
タクヤ「…誰だ?」
ルクス「あの…ルクスって言います。よかったら…これ…」
そう言って渡してきたのは、サンドウィッチだった。
だが、今は食欲が湧かない。もう何日も食べていないハズなのに…。
ルクス「あ…もしかして…嫌いかい?」
折角の好意を無駄にしたら悪いと思い、1つだけ貰う事にした。
タクヤ「…1つ…貰うよ」
手に取ったサンドウィッチは不格好だが、どこか懐かしいものを感じた。
タクヤ「…これは君の手作りか?」
ルクス「似合わないだろうけど…たまに…作ってるんだ…」
タクヤ「…」
サンドウィッチを1口かじる。
何も無かった腹の中に少しずつ満たされていく。
すると、いつの間にかもう食べ終えてしまっていた。
ルクス「まだたくさんあるから気にしないで食べてくれ…」
ルクスに甘えてもう1つ手に取る。
そして、また1つ…また1つ…今まで食べなかった分を食べているかのように頬張る。
ルクス「あっ…」
タクヤ「え?」
ルクス「なんで…泣いてるんだい?」
タクヤ「!!」
オレはいつの間にか涙が溢れ出していた。
止めようとしても止まらない…。
これを食べていると昔の思い出が蘇ってくる。
『タクヤ!!』
『頑張ろう!!タクヤ!!』
『タクヤぁ!待ってよ〜!』
『ボクは…タクヤの事が…大好き…!!』
思い出してしまう。もうここにはないもの。壊したくなかったもの。
思い出してしまう。あの心から楽しかった時間を…。
タクヤ「なんで…!オレ…!!泣いて…!!!」
ルクス「やっぱり…あなたはアイツらとは違うんだね…」
タクヤ「…違わねぇよ。もう…全部壊れちまった…」
ルクス「いや…まだ壊れきっていないよ。その涙が証拠さ…。
本当に壊れてしまっているならそんなもの流さないからね…」
もう何もかも捨ててきたつもりだ…。
仲間も…恋人も…帰る場所も…全てを捨ててここに来たはずだった。
タクヤ「…お前…オレが怖くないのか?」
ルクス「最初会った時…正直関わりたくないと思った…。
でも、その日の夜…私に何の変哲もないただの黒パンをくれた…。
美味しくなかったけどそれとは違う…優しさを感じたんだよ…」
タクヤ「!!」
ルクス「私…無理矢理こんな事させられて…死にたいと思った。
でも、こんな地獄にでもまだ希望を持っていいんだって…そう思えるようになった…あなたのおかげで…」
タクヤ「オレの…?」
ルクス「あなたの事はいろいろ調べたんだ。元攻略組のタクヤ…。
ギルドにも入っていてみんなにも慕われていて…仲間がいて…
ここにいる事がおかしいくらい対極の人だった…。
でも、ある日を境に今レッドプレイヤーとして動いている…。
なんで…なんでそんな事になったんだい?」
タクヤ「…」
それを言った所で何かが変わるなんてただの幻想だ。
何も変わらないし何も戻らない。
いくら頑張っても二度と掴む事は出来ない。
でも、何故か…無性に誰かに聞いて欲しかった。
報われたかった。オレは仲間の為にやってるんだって…。
それがどんなに醜い理由だとしても口から出てきてしまった。
止められない…。抑えられない…。
オレの話を聞いていたルクスも心なしか瞳が潤んでいた。
ルクス「君は…そこまでして仲間を…」
タクヤ「だからって…人を殺していい理由にはならない…。
オレはもう…戻れない所まで来ちまってるんだよ…」
ルクス「…諦めたらダメだよ」
タクヤ「…」
ルクス「こんな所で…死ぬなんてダメだよ…!!
死んでしまったら何も取り戻せないし、何も終わらない…。
君が死んだら君の仲間が悲しむ…。そうやって負の連鎖が続く…」
タクヤ「…」
ルクス「だから、諦めないで…!私も諦めない…!
もう死のうなんて思わない。まだ。死にたくない!!」
タクヤ「…オレも…まだ…死にたくない…!
また、あそこに…帰りたいんだ…!」
ルクス「頑張ろう…私達にはまだ明日がある…!
まだ先があるんだよ…。まだ…生きていられるんだよ…」
風は暖かくオレとルクスを包み込み、明日への希望を見つけた。
それはほんの小さな光だが、まだ消えていない…。
オレにはまだ自由になれる自由が残されているのだから…。
どうだったでしょうか?
ガールズオプスからルクスとグヴェンを出してきたんですけど、
これどんどん大きくなってきてるような気もしないことはないです。
まぁ、バランスよくまとめられるように頑張っていきます。
では、また次回!