ソードアート・オンライン-君と共に在るために-   作:ちぇりぶろ(休載中)

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という事で27話目になります。
タイトル見て察しはつくんじゃないかと思います。


では、どうぞ!


【27】夢にまで見た最愛の人

 side木綿季_

 

 

 2025年01月21日 ALO内23時10分 央都アルン

 

 あれからボク達はアルンへと到着し、タクヤを探して街中を走り回った。

 それでも手掛かりは何1つ見つからず、定期メンテナンスの為、宿にチェックインしてその場を後にした。

 現実世界に戻ってきて無性に拓哉に会いたくなったボクは森先生に頼んで拓哉が入院している横浜市立大学附属病院へと足を運んだ。

 

 木綿季「…拓哉」

 

 拓哉は目覚める事なく、静かに病室で寝ている。

 だが、今の拓哉はALOのアルンのどこかに必ずいるハズだ。

 早く会いたいと心が今でもざわついている。

 早く会って抱きしめたい。もう2度とどこにも行かないように強く抱きしめたい。

 そんな事を考えていると拓哉の病室に1人の男が入ってきた。

 

「すみません。この方の家族の方でしょうか?」

 

 木綿季「い、いえ…」

 

「そうでしたか…。

 すみませんがご家族様にお伝えしておいて欲しい事があるんですが…生憎、私も時間が無いものでお願いしてもよろしいですか?」

 

 その男は淡々と言葉を並べながらボクに言った。

 本当は直人に伝えた方がいいのだろうが、直人の自宅まで最低でも1時間かかってしまう。

 時間が無いと言っている男はその時間待ってはくれないだろうとボクは直感した。

 

 木綿季「わかりました。それで伝えて欲しい事って?」

 

「あ、申し遅れました。

 私、レクトでVR部門で働いております古田俊之と申します」

 

 名刺を渡され、ふとキリトの言っていた事を思い出した。

 

 

 キリト『ALOを運営しているレクトに須卿伸之って人がいる。

 そいつはアスナの昏睡状態を利用してレクトを乗っ取ろうと企てている』

 

 

 木綿季(「もし、それが本当だとしたら…この人は須卿伸之の部下って事になる…!!」)

 

 古田「それでお願いと言うのはですね…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そちらの彼の脳をこちらに提供して頂きたい」

 

 木綿季「…は?」

 

 古田「ん?まぁ、正確に言えば彼を被験者として私どもにお譲りくださいという意味ですが…」

 

 木綿季「な、何を言ってるの…?」

 

 意味を理解しようとも、この男を信用しようとも思えなかったが、知ってしまった。

 この男の本性を垣間見た気がした。

 背中から冷や汗が止まらないボクに続けて古田は言った。

 

 古田「こういう事は御両親に直接言うのが筋ですが…どうも調べたかぎり、彼には両親はおらず、高校1年生の弟さんがいますが…その子に言ってもご了承されないと思います」

 

 木綿季「…ふざけないで。

 …直人じゃなくても誰だって拒否するに決まってるじゃないか!!!!」

 

 この古田という男は危険すぎる。

 拓哉を…人をただの実験体としか思っていないのだ。

 そんな奴に拓哉を渡してなるものか。

 

 古田「…彼の兄はあの"SAO事件”を引き起こした茅場晶彦。

 その兄を弟の彼が殺したと聞いています…。

 その時の感情は一朝一夕で経験できるものではないんです。

 だから、私達は彼の脳を隅々まで調べ尽くし、人の感情がどういう原理で脳に分泌されているか知りたい…!!

 その為に彼が必要なのですよ!!御理解頂けましたか?」

 

 木綿季「理解出来る訳ないじゃないか!!拓哉は実験体なんかじゃない!!

 何の権利があってお前達が拓哉を連れていけるんだ!!」

 

 古田「ここは病院ですよ?少し落ち着きましょう…。

 それに、これさえ解析出来ればあるゆる方面で役に立つのですよ?

 あなたはまだ子供ですが、彼によって世界で起きている様々な問題も解決に導けるというのですよ?」

 

 木綿季「だからって拓哉が死んでいい理由になる訳ないじゃないか!!

 お前が言っているのはただの傲慢だ!!

 拓哉は絶対に渡さないぞ!!!!」

 

 古田「…まぁいいでしょう。()()()()()()()()…」

 

 古田は最後に不気味な捨て台詞を吐いて、病室を後にした。

 ボクはあまりの事に膝から崩れ落ちた。

 

 木綿季「拓哉は絶対に渡さない…!!今度はボクが拓哉を助けるんだ!!」

 

 ボクは足腰に力が入らず、地を這いながら拓哉の側へと寄った。

 あんなに騒いでも顔色1つ変えない拓哉の頬を擦りながら気持ちを落ち着かせる。

 

 木綿季「安心して…絶対に拓哉には指1本触れさせたりしないから…」

 

 拓哉の唇にキスをしてボクも病室を後にした。

 帰る前に倉橋先生に先程の一部始終を話して警備を強化して貰う事になった。

 だが、奴のあの顔を見る限り何かしらの方法で拓哉を攫いに来るハズだ。

 念の為、キリトに連絡して菊岡と言う役人さんにも掛け合うように頼み、今日の所は病室を後にした。

 病院を出た頃にはすっかり日も暮れていて、森先生と合流して陽だまり園へと帰った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2025年01月21日 22時10分 紺野姉妹自室

 

 直人『そうですか。…そんな事が』

 

 木綿季「うん…。だから、もう一刻の猶予もないんだ。

 明日は朝から病院に行って拓哉の近くでALOに行こうと思ってるんだ。

 またアイツが来るとも限らないし…」

 

 夜、病院での出来事を直人にも伝えた。

 拓哉のたった1人の家族だし、この事を知る権利だってボク以上にあるからだ。

 

 直人『なら、僕も一緒に行った方がいいんじゃ…』

 

 木綿季「ううん、大丈夫だよ?

 直人まで来ちゃうと逆に何するか分からないから…」

 

 少しでも拓哉の危険を削らなければもしもの時に取り返しのつかない事になるかもしれない。

 直人まで失ってしまったら拓哉に会わせる顔が無いのも理由の1つである。

 

 直人『…わかりました。

 でも、僕も何かあるかもしれないのでなるべく近くの満喫とかホテルに待機しておきます』

 

 木綿季「ありがとう。

 キリトの話じゃ政府の役人さんも協力してくれるみたいだし大丈夫だよ。じゃあ、また明日ね!おやすみ…」

 

 直人との電話を切り、ボクは自室へと戻っていった。

 

 藍子「あら、木綿季。ナオさんと電話?」

 

 木綿季「う、うん。明日の予定とか聞いておきたかったから…。

 携帯があると便利だけどね…」

 

 藍子「まだ、私達には必要無いわよ…。

 まぁ、欲しいと言えば欲しいけどね!」

 

 姉ちゃんとの他愛もない会話をしていると、森先生が自室にやって来た。

 

 森「ほら!もう夜も遅いんだから早く寝ろよー」

 

 木綿季「はーい。あ、森先生!

 お願いがあるんだけど…明日は朝から病院に行こうかなって思ってるから送って行って欲しいんだけど…いい?」

 

 森「あぁ。かまわないよ。なら、早く寝るこったな。

 起きれなくても知らないぞ?」

 

 森先生はそう言い残して自分の部屋へと戻っていった。

 

 藍子「…木綿季」

 

 木綿季「何?姉ちゃん」

 

 藍子「…危ない事はやめてね?」

 

 その言葉にどれだけの感情が込められているか、ボクには痛いほど分かる。もう、姉ちゃんや園のみんなに心配をかけたくない。

 それはこの世界に戻った時から心に誓っている。

 

 木綿季「…大丈夫だよ!ボクの事は心配しないで!

 早く拓哉を助けてボクと姉ちゃんと拓哉と直人でダブルデートしよっ!!」

 

 藍子「なっ!?何言ってるの!!第一ナオさんとはそういう関係じゃ…!!」

 

 木綿季「あれれ〜…姉ちゃん顔が赤くなってるよ〜」

 

 藍子「っ!!?もう知らないっ!!!おやすみ!!!」

 

 姉ちゃんは恥ずかしさのあまり布団にくるまってしまった。

 少しやりすぎたかなと思いながら電気を消してボクもベッドの中に入った。

 明日は必ず拓哉を見つけ出してみせると誓いながら…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2025年01月22日 08時00分 横浜市立大学附属病院

 

 木綿季「おはようございます!!」

 

 倉橋「よく来たね木綿季君。さっ、こっちだよ」

 

 倉橋先生には昨日のうちに病室からダイブする事は伝えてあったので拓哉の病室の隣の部屋を使わせてもらえる事になっている。

 ALOにダイブする前に拓哉の顔を見て、元気を分けて貰ってから用意してもらった部屋に入った。

 

 倉橋「拓哉君と木綿季君の部屋には常に誰かがいるようにするから。

 警備員さんにも事情は話してあるから安心してください」

 

 木綿季「ありがとう倉橋先生!!」

 

 倉橋「決して無茶だけはしないでくださいね!

 それと…拓哉君と一緒に帰ってきて下さい!」

 

 木綿季「…うん。そうするつもりだよ!!じゃあ、行ってくるね!!」

 

 ボクは持参したアミュスフィアを装着して、音声コマンドを入力する。

 

 木綿季「リンクスタート!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2025年01月22日 ALO内13時00分 央都アルン

 

 ボクが目覚めた時、他のみんなはまだ来ておらず、ストレアだけが宿屋の酒場にいた。

 

 ストレア「おはよ〜ユウキ〜」

 

 ユウキ「おはよう!ストレア」

 

 ストレア「早いね〜。現実じゃまだ朝でしょ?」

 

 ユウキ「うん…。ちょっと色々あってね…」

 

 ストレアにも昨日の事を話すべきか悩んだがやっぱりストレアにも知っておいてほしいという気持ちが勝った。

 

 

 

 

 

 ストレア「…なるほどね〜。じゃあ、早くしなきゃだね!」

 

 ユウキ「うん。だから、みんなが来る前にボク達だけでもタクヤを…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「水臭いな…!ユウキ」

 

 ユウキ「!!…みんな!!」

 

 そこにはキリトとリーファ、カヤトにホークが揃っていた。

 

 キリト「あんな事聞かされちゃいてもたってもいられないからな…。

 それに、オレもアスナに会いたいし…」

 

 リーファ「さっきからそればっかりだもんね!」

 

 ホーク「ワシ達の英雄を訳もわからん奴らなんかにやってたまるかっ!!」

 

 カヤト「みんな、兄とユウキさんの事を考えてるんですよ」

 

 涙が出そうになるが、必死に止めて笑顔で礼を言った。

 ボクには…ボクとタクヤにはこんなに思ってくれる仲間がいる。

 もう恐いものなんてありはしない。

 みんなの力でタクヤとアスナを助けてやるんだ。

 

 ユウキ「じゃあ…行こう!!」

 

「「「おぉっ!!!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 sideタクヤ_

 

 

 2025年01月22日 ALO内11時30分 央都アルン周辺フィールド

 

 オレはルクスが来るまでの間、自身の技術向上とクエストの為に、アルンの近くのフィールドにやって来ていた。

 

 タクヤ(「あの守護者(ガーディアン)は1体1体は大して強くねぇけど、今の装備じゃ正直太刀打ち出来ない…!

 このクエストの報酬で手に入る片手剣と剣と拳を使った戦い方を1から鍛え直すしかねぇ!!」)

 

 クエスト条件としてこの周辺にいるゴーレムを100匹倒さなければ報酬は受け取れない。

 スローター系のクエストは苦手だが、今はそんな悠長な事を言っている場合ではなかった。

 そんな事を考えていると、3体のゴーレムがポップした。

 

 タクヤ「これで83体目…だなっ!!」

 

 オレは左手の剣を握りしめ、ゴーレムに攻撃を仕掛ける。

 1番良いのは一撃必殺。

 それがダメなら拳を交えた複合戦略。

 オレの剣撃は深々とゴーレムの胴体を斬り裂くが、それでは倒れない事は前の戦闘で知っていた。

 ゴーレムの攻撃をいなして剣を突き刺したまま、それを足場にゴーレムの頭上をとる。

 ゴーレムの頭蓋を割る勢いで繰り出された拳がゴーレムを屠る1撃となった。

 

 タクヤ(「まだ…!!もっとスムーズに…!!」)

 

 剣の性能云々はこの際関係ない。

 急所を的確に狙い、一瞬で決めなければあの無数の守護者(ガーディアン)を突破するのは不可能だ。

 2体目、3体目のゴーレムが一気に仕掛けてくる。

 多数相手の時は1体と思いながら行動パターンを読んで確実に息の根を止める。

 

 タクヤ「ここっ!!」

 

 1列になった所を剣で斬り裂く。

 1体だけ体制を崩して、まとまった所に剣を突き立てる。

 2体のゴーレムも屠り、オレは剣を背中の鞘に納めた。

 

 タクヤ「…まだまだだな」

 

 確かに、ステータスは普通のプレイヤーよりも高いがそれ以外は何ら変わらない。

 ソードスキルが存在しない以上、地力の差で勝負が決まるのだ。

 

 タクヤ「強く…ならねぇとな…!!」

 

 まだオレにはやる事が残っていた。

 みんなが無事に現実世界に帰れたならオレはここで永遠に出られなくてもいいと思っていた。

 でも、まだアスナを含め300人以上のプレイヤーが閉じ込められている。

 あの世界の恐怖をまだ味わっているのかと思うと気が気ではない。

 なら今オレが何をすべきかなんて分かりきっている事だ。

 ゴーレムは次々とポップし、見つけた瞬間に斬りかかった。

 急所を突いていたらしく、1撃で仕留める事が出来た。

 この感覚を常に体に…脳に刻み込まなければ到底助け出す事は出来ない。

 

 タクヤ「残り…16体!!」

 

 オレは剣と拳を使って次々とゴーレムを駆逐していく。

 今は戦闘にのみ集中して、雑念は全てかき捨てた。

 

 タクヤ「うぉぉぉぉぉっ!!!!」

 

 オレは待ち合わせの時間ギリギリまでゴーレムとの戦闘に明け暮れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 sideユウキ_

 

 

 キリト「どうだった?」

 

 ストレア「それらしい情報はないね〜」

 

 リーファ「こっちもなかったよ!」

 

 ユウキ「ボクとカヤトもなかった…」

 

 ホーク「くそぉ!どこにおるんじゃ!!」

 

 ボク達はあれから3時間アルンの街をひたすら聞き回っていたが、それらしい手がかりは1つもなかった。

 

 カヤト「…世界樹」

 

 ユウキ「え?」

 

 カヤト「まだみなさん、世界樹は探してませんよね?」

 

 カヤトの言う通り世界樹はまだ探していない。

 だが、世界樹の付近は見晴らしが良く、1目見ればすぐにわかってしまう場所だ。

 

 キリト「世界樹か…。もしかしたら、"グランド・クエスト”に挑戦してるのかも!!」

 

 リーファ「無茶だよ!!

 タクヤさんって人がどれだけ強くても1人で挑戦するなんて自殺行為だよ!!」

 

 カヤト「兄は無茶だろうが何だろうが突っ込んでいきます…。

 ユウキさん達はそれを1番知っているハズです」

 

 キリト&ユウキ&ストレア「「「…」」」

 

 カヤトの言う通りだ。

 タクヤならどんな壁があろうが歩む事を止めない。

 壁にぶち当たってはことごとくそれを突破してきたのだ。

 今も必ず壁を壊しているに違いない。

 

 ユウキ「…行ってみよう!!世界樹に!!」

 

 ボク達は翅を出現させ、最短距離で世界樹まで飛んでいった。

 世界樹に到着したが、周りには誰1人としていない。

 

 キリト「やっぱりいないか…」

 

 リーファ「みたいだね…」

 

 ユウキ「…」

 

 すると、そこに1人の女性プレイヤーがやって来た。

 ボクはその人にタクヤの事を聞く為、歩み寄った。

 

 ユウキ「あのーすみません…」

 

「!!…あ、あなたは」

 

 ユウキ「え?」

 

 その女性プレイヤーは慌てながらボクの顔を眺めていた。

 白い髪に優しそうな瞳で見た所リーファと同じ風妖精族(シルフ)だがボクにはどうしても他人のように思えなかった。

 

「あの…もしかして…ユウキ…さんかい?」

 

 ユウキ「ボクを知ってるの?会った事あったっけ?」

 

「あぁ…いつも聞かされてるからね…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私の名前はルクス。タクヤと一緒にここまで来たんだ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 sideタクヤ_

 

 

 2025年01月22日 ALO内13時20分 央都アルン

 

 タクヤ「報酬は手に入ったけど、ルクス怒ってるかなぁ…」

 

 オレはクエスト報酬を受け取って時間を確認してみると約束の時間は有に超えていた。

 最後の1体がいわゆるネームドモンスターに指定されていて予想以上に苦戦させられた。

 だが、そのおかげで片手剣スキルは最大値に達した訳だが、何も連絡も入れなかった為、ルクスにも心配をかけているに違いない。

 どう謝ろうかと考えている時、ルクスからのメッセージが来た。

 

 タクヤ「うわぁ…早く来いってメッセージだろうなぁ…。

 アイツ…怒らせると怖いんだよなぁ…」

 

 この際怒られるのは仕方ないとしてルクスからのメッセージを開くとそこには世界樹に来てくれというだけで他には何も書かれていなかった。

 

 タクヤ「この短文が逆に怖いんだよ…」

 

 オレは急いで世界樹へと向かった。

 長い階段を1段飛ばしで駆け上がり、頂上へとたどり着いた。

 

 タクヤ「悪いルクス!!ちょっとクエストやってたら遅くなっ…ち…」

 

 オレの目の前にはルクスの他に数人の姿があった。

 幻でも何でもない。正真正銘そこにいた。

 いつだって、どんな時だって忘れた事なんてなかった。

 忘れられない思い出としてオレの中に在り続けていた。

 紫色の長髪にトレードマークのバンダナをした女の子。

 かつて、愛し合って共に困難を乗り越えてきたオレの相棒(パートナー)にして、最愛の人がそこに立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タクヤ「ユウキ…?」

 

 その名を口に出した瞬間、オレの目から涙が流れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ユウキ「…タクヤ…来ちゃった…」

 

 ユウキはオレに向かって走り出した。そして、オレの胸へと飛び込む。

 この感触は夢ではない。確かにここに在る。

 

 タクヤ「本当に…ユウキ…なのか?」

 

 ユウキ「…久しぶりすぎて…忘れちゃった…?」

 

 オレの手が小刻みに震える。涙が止まらない。

 それはユウキも同じだった。

 

 タクヤ「忘れる訳…ねぇじゃねぇか…!!

 いつだって…お前の事…思ってた…!!」

 

 ユウキ「ボクも…毎日、毎日…タクヤの事を思ってたよ…!!

 タクヤ…タクヤ…タクヤ…タクヤぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

 

 遂に、ユウキは号泣した。

 オレも強くユウキを抱きしめながら声を上げて泣いた。

 こんなに泣いたのは何時ぶりだろうか。

 今は何もかも忘れてユウキだけの為に泣いていた。

 

 ユウキ「会いたかった…会いだがっだよぉぉっ!!!!」

 

 タクヤ「俺もだよ…!!ごめんな…1人にしちまって…!!ごめんな…!!!!」

 

 オレ達は周りを気にする事もなく、子供のように涙が枯れるまで泣き続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タクヤ「…みんなも無事だったんだな。よかった…」

 

 キリト「今、こうして生きていられるのはお前のおかげだよ…。

 ありがとう」

 

 ホーク「そうじゃそうじゃ!!お主のおかげで今のワシらがあるんじゃ!!

 もっと胸を張ってくれや!!」

 

 タクヤ「お前は相変わらずだな…ホーク…!!」

 

 かつての仲間との再開に枯れたと思っていた涙が溢れ出す。

 

 ストレア「え〜ん!!タクヤ〜!!会いたかったよ〜!!!!」

 

 急に横から泣きながら抱きついてきたのはストレアであった。

 

 タクヤ「す、ストレア!!?お前…どうして…!!」

 

 ストレア「タクヤのナーヴギアに保存されてALOで実体化出来たんだよ〜!!!!」

 

 タクヤ「そっか…そうだったのか!!オレも会えて嬉しいよストレア…」

 

 しばらく、ストレアは泣き続けていたが泣き止むとオレから離れてユウキの隣に立つ。

 

 タクヤ「それに…見ない顔もあるな。ユウキ達の知り合いか?」

 

 キリト「あぁ。ここまで案内してくれたリーファだ…」

 

 リーファ「初めましてリーファです!!」

 

 タクヤ「そっか、ありがとな…。で、そっちは…」

 

 すると、その男はゆっくりとオレに歩み寄ってくる。

 とてもじゃないが、表情はオレの事をよく思っていない感じだ。

 

 タクヤ「えっと…」

 

 カヤト「…いつまで心配させれば気が済むんだよ。バカ兄貴!!」

 

 タクヤ「兄貴って…!!お、お前…ナオ…直人か!!?」

 

 カヤト「ふん!!なんだよ…僕の顔は忘れちまったのかよ」

 

 確かに、言われてみれば直人に似ているのだが、普通そんな事誰が予想するんだよ。

 

 タクヤ「お前…なんでここに…?」

 

 カヤト「はぁっ?お前の為に決まってるだろ!!バカ兄貴!!」

 

 タクヤ「ば…!!テメェ!!

 一体いつからそんな口聞くようになったんだよコラ!!」

 

 カヤト「バカにバカって言って何が悪いんだよっ!!バカ兄貴!!」

 

 タクヤ「っ!!じょ、上等だ!!!!ぶっ飛ばしてやる!!!!」

 

 キリト「お、おい!!落ち着けって!!久しぶりの再開だろ!!」

 

 ユウキ「タクヤも落ち着いて!!ね?」

 

 キリトとユウキに止められて何とかその場は留まったが、まさか、直人までユウキ達と一緒に来るとは思わなかった。

 

 タクヤ「ナオ…その…なんだ…」

 

 カヤト「…」

 

 タクヤ「…し、心配かけたな…悪かった…ありがとう…」

 

 カヤト「…分かればいいんだよ…それと!

 こっちじゃ僕はカヤトで通してるから!!」

 

 な…カヤトにそっぽ向いているオレをニコニコと微笑みながらユウキがジッと見てくる。

 改まって弟に礼をいう機会なんてないから恥ずかしい事この上ない。

 

 タクヤ「あ、そうだ。こっちも紹介するよ…。

 オレをここまで連れてきてくれたルクスだ!」

 

 ルクス「よろしくみんな!」

 

 互いに挨拶も終わり、落ち着ける場所を探して、一先ず近くの酒場へと向かった。

 その途中でルクスからみんなには聞こえないように耳打ちされた。

 

 ルクス「タクヤ、ユウキさんとしばらく2人きりで話した方がいいんじゃないのかい?」

 

 タクヤ「え?あ…おう…そうだな…。ユウキ!」

 

 ユウキ「ひゃ、ひゃいっ!!」

 

 何とも気の抜けた返事だが気にしてもしょうがないのでオレは続ける。

 

 タクヤ「その…ちょっと…いいか?」

 

 ユウキ「…うん」

 

 ユウキは顔を赤くしながらもオレと一緒に高台のベンチへと腰をかけた。

 みんなには後で合流するように伝えて、ストレアも来ようとしたがキリトとカヤトが止めてくれた。

 後で1人1人話をしようかと考えているとユウキがオレに言った。

 

 ユウキ「…本当にタクヤ…なんだよね?」

 

 タクヤ「あぁ。タクヤじゃないように見えるか?」

 

 ユウキ「ううん!

 そうじゃないけど…やっぱり現実より顔色とかいいから…」

 

 タクヤ「そっか。ユウキ達は現実世界に帰れてるからオレの事知ってんのか…。てか、病院一緒だったのか!!?」

 

 ユウキ「うん…。

 初めはタクヤはあの戦いで死んじゃったとばかり思ってた…。

 でも、病院でタクヤを見つけてボクったら思わず大泣きしちゃった!

 タクヤが…生きててくれて…よかったって…」

 

 タクヤ「…ごめんな。辛い思いさせちまって…」

 

 ユウキ「そんな事ないよ!

 2度と会えないって思ってたから嬉しかった!

 また、タクヤと一緒にいられるって!

 SAOでした約束も叶うって!!」

 

 オレ達はSAOでいろんな約束を交わしていた。

 一緒にいろんな所に行って、いろんな事を経験して、一緒に暮らそうと。

 まだ、その約束は生きている。オレ達が生きてる限りずっと…。

 

 タクヤ「でも…オレはまだ現実世界に帰れてない…。

 どうすれば帰られるのかも分からない。

 いや、帰る前にやる事があるんだ…」

 

 ユウキ「うん…。アスナを助けなくちゃだね!!」

 

 タクヤ「その為には世界樹の中に入ってあの鳥籠まで行かなきゃいけねぇんだけど…途中に守護者(ガーディアン)が厄介なんだよなぁ…」

 

 ユウキ「え!?もう"グランド・クエスト”したの!!?」

 

 タクヤ「あぁ。でも負けたよ…。

 ルクスが助けに来なかったら今頃どうなってたか分からない…」

 

 ふと、懐かしくも恐ろしい殺気がユウキから発せられていた。

 

 タクヤ「ゆ、ユウキさん?」

 

 ユウキ「…何で、いつもいつも無茶ばっかりするんだよ!!」

 

 タクヤ「はいっ!!ごもっともです!!」

 

 条件反射で地べたに正座をしてしまったオレに次々とユウキからの雷が降り注ぐ。

 

 ユウキ「大体、何でも1人で出来ると思ったら大間違いだよっ!!

 それでタクヤの身に何かあったらどうするの!!

 先走った行動はこれからしないでっ!!いい?返事は?」

 

 タクヤ「はいっ!!もう2度としませんです!!はい!!」

 

 ユウキ「よろしい!…でも、罰として…ボクにキス…して?」

 

 それは罰と言うよりご褒美なのではと思ったが今のユウキに口出しすると何を言われるか分かったもんじゃない。

 

 タクヤ「でも…ここでか…?」

 

 ユウキ「ダメ…?ボク…ずっと我慢してたんだよ…?」

 

 タクヤ「っ!!…分かった」

 

 ユウキは目を閉じ、唇をオレに差し出す。

 ユウキも今までずっと我慢してきたんだ。それはオレも同じだ。

 オレはユウキに熱いキスを交わした。

 久しぶりのユウキの唇の感触を感じながらも、名残惜しいが人の往来も激しい場所でこれ以上すると流石にやばいのでユウキから少し離れた。

 

 ユウキ「…これだけ?」

 

 タクヤ「い、今はそれで我慢しろっ!!ここじゃ流石に…!!

 お、オレだって出来ればもっとしたい…じゃなくて!!

 と、とにかく!!みんなの所に戻ろう!!作戦会議だ!!」

 

 オレはそう言ってユウキの手を引っ張りながら待ち合わせの酒場へと向かった。

 その道中、オレとユウキの顔がリンゴのように赤くなっていたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 sideout_

 

 空はどこまでも広く澄んでいて彼女の心とは真逆の色をしている。

 空を自由に飛び回れる小鳥を眺めながら彼女は待っていた。

 来るかどうかも、ましてや、この世界にいるのかもわからない彼の存在を彼女はただ信じていた。

 そんな時、扉が開く音がし、同時に彼女の1番会いたくない者が背筋を舐め回されるような声を上げた。

 

「やぁ…元気にしていたかい?妖精姫(ティターニア)

 

 アスナ「その名で呼ばないでと言ってるハズよ…。

 私はアスナよ!!須卿さん!!」

 

 オベイロン「…興醒めだなぁ。僕はこの世界じゃ"妖精王オベイロン”!!

 アルヴヘイムの頂点にして神!!

 ここにいるプレイヤー全員が僕を讃え、崇拝しているのさ」

 

 アスナ「…」

 

 アスナはこれ以上オベイロンと話す事はない。

 話しているだけで気分が悪くなり、嫌悪感が立ち込めてくるからだ。

 

 オベイロン「なぁに…君も直に従順になるさ」

 

 アスナ「…私の心はあなたなんかには汚させはしない!

 あなたの()()()()()()()()もすぐに破綻するわ!!」

 

 オベイロン「んー?君も立場をもう1度考え直すといいよ。

 君の命も心も今やこの僕が握ってると言ってもいいんだよ?

 それに…誰がこの研究を見つけられるんだい?

 研究は僕と少数のチームで行っているからバレる恐れはない…。

 もしや、()()()()を待ってるのかい?」

 

 アスナ「!!」

 

 アスナの頬に脂汗が滲み出る。

 その名前はあの世界で彼の最愛の人から授かった彼の本当の名前だったからだ。

 何故、この男が知っているのと思いながらも同時に不安と怒りがアスナを支配した。

 

 オベイロン「来やしないさ。あんなガキに何が出来るって言うんだい?

 それに僕の部下も"SAOの英雄”様の脳を手に入れる算段はついている。

 全て順調さ!!はーはっはっはっ!!」

 

 アスナ「…SAOの…英雄?…まさか、タクヤ君は生きているの!!?」

 

 オベイロン「ん?めずらしい反応を見せてくれたね…。

 あぁ、彼は生きているよ?僕達の実験体としてね…!」

 

 アスナ「な、なんですって…!!それはどういう…」

 

 すると、オベイロンの方で通信が入った。

 オベイロンは通信を切り、その場を後にしようとした。

 

 オベイロン「じゃあ妖精姫(ティターニア)。次来る時はもっと素直になっている事を期待しているよ…」

 

 アスナ「…っ!!」

 

 固く閉ざされた扉には認証番号を読み取る端末があるが、以前に脱走を試みた時から常に番号は書き換えられて今じゃオベイロン以外認証番号を知っている者はいない。

 

 アスナ「…SAOの…英雄」

 

 SAOがタクヤのおかげでクリアされた後、キリトと互いに自らの本名を明かし、現実世界でまた会う約束を交わしてログアウトする時を待っていた。

 瞬間、キリトの温もりは消え、真っ暗な空間を彷徨いながら気づけばこの鳥籠の中にいた。

 

 アスナ「…キリト君」

 

 最愛の人の名を口ずさみながらアスナはただ信じて待つ事しか出来ない自分の非力さを恨んだ。

 

 

 

 




いかがだったでしょうか?
新キャラで須卿の右腕登場させちゃいました。
どちらもゲスっぷりを見せていきますよー。


では。また次回!
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