ソードアート・オンライン-君と共に在るために-   作:ちぇりぶろ(休載中)

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という事で29話です。
次回からはオリジナルの展開になっていきます。
これからもよろしくお願いします。


では、どうぞ!


【29】英雄

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 2025年01月22日 ALO内18時10分 世界樹内部

 

 タクヤ達はユイの助力もあって、ゲートの中へと入る事が出来た。

 転移した場所は二手に別れた道がどこまでも続いている。

 

 タクヤ「二手に別れた方がよさそうだな」

 

 キリト「オレとユイはこっちを探す。

 タクヤとユウキは向こうを頼んだ!!」

 

 タクヤ達は一旦別れてアスナの捜索に向かった。

 どこまでも続く道をひたすら走っていたタクヤとユウキはついに外に通じているであろう扉までやって来た。

 扉を開けると眩しい光に襲われ、目を開けるとそこには世界樹の枝が迷路のように入り組んでいた。

 

 タクヤ「ここが世界樹の上…?」

 

 ユウキ「でも、おかしいよ。

 世界樹の上には空中都市があるってリーファが言ってたもん!」

 

 タクヤ「どう見ても街って感じじゃないよな…。

 運営が嘘を吐くなんて許される事じゃないぞ…!!」

 

 これが一般プレイヤーの耳にでも入れば、ALOのユーザーは減り、最悪の場合運営中止なんて事にもなりかねない。

 それはまた後日考えるとして、今はアスナを捜索するのを優先してタクヤとユウキは世界樹の枝を進みながらアスナを探した。

 だが、鳥籠らしきものはどこにもなく、時間だけが過ぎ去っていく。

 

 タクヤ「くそ…どこにいるんだよ…!!」

 

 ユウキ「アスナー!!いたら返事してー!!」

 

 ユウキの呼び声も虚しく、アスナからの返事が返ってくる事はなかった。

 さらに奥に進むと、枝が姿を潜め、広い空間へと着いた。

 

 ユウキ「行き止まりみたいだね」

 

 タクヤ「あぁ。

 これだけ探しても見つからねぇって事は、キリト達の方かもしれねぇ…。よし!戻るぞユウキ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まぁ待ちたまえよ…タクヤ君」

 

 

 タクヤ&ユウキ「「!!?」」

 

 どこからともなく声が聞こえてきた。

 瞬間、周りの景色は消え去り、全くと言っていい程の別の空間へと飛ばされた。

 

 タクヤ「どこだ…ここ…!!」

 

「そう身構えなくてもいいじゃないか…タクヤ君」

 

 タクヤ「誰だ!!」

 

 タクヤとユウキは鞘から剣を抜き、警戒態勢へと入った。

 すると、自身の体に多大な負荷が襲いかかる。

 

 ユウキ「な、何…これ…!!」

 

 タクヤ「ユウキ…ぐっ…」

 

 立つ事が困難になった2人は堪らず地面に突っ伏す。

 そして、目の前に悠然としてやって来たのは宝石類がコーティングされた鎧を着た金髪の男だった。

 

「私が作った次のアップデートで導入する予定の魔法なんですけど…少々強すぎましたかね…」

 

 ユウキ「この…声…は…!!」

 

「またお会いしましたね…紺野さん。

 いや、ここではユウキさんと呼ぶんでしたよね?

 それに…会えて嬉しいですよ。"英雄”タクヤ君…」

 

 ユウキ「古田…!!」

 

 タクヤ「お前が…古田…かっ…!!」

 

 古田と呼ばれた男はやれやれと言った感じでタクヤの横腹を思い切り蹴り飛ばした。

 

 タクヤ「がっ…!!?」

 

 ユウキ「タクヤ!!」

 

 蹴り飛ばされたタクヤはその痛みで上手く呼吸が出来ない。

 そんな事、この男は関係ないとごく自然に話をし始めた。

 

 アルベリヒ「ムードが台無しですよ。

 私はこの世界じゃ"アルベリヒ”と言う名前で通っているんです。

 妖精王の右腕としてね…」

 

 ユウキ「じゃあ、やっぱり…タクヤやアスナ達を…こんな所に閉じ込めたのは…!!」

 

 アルベリヒ「えぇ。私達ですよ?

 SAOのサーバーにちょっと細工をしましてね…。

 クリアしたのと同時に何人か実験体として提供してもらったんですよ」

 

 ユウキ「実験体…!?自分達が何をしてるのか…分かってるの?」

 

 アルベリヒは悪びれる事もなく、笑顔で淡々と話を進めた。

 

 アルベリヒ「いいじゃないですか。

 プレイヤーの1人や2人…それに協力してくれているプレイヤー達も痛い思いはさせていません。

 少しだけ脳を弄らせて貰っているだけなんですよ」

 

 タクヤ「ふざ、けんなよ…!!

 実験体…になった…奴らにも…待ってる奴がいるんだぞ…!!」

 

 タクヤは重力が何倍にもなった空間で立ち上がり、徐々にアルベリヒに近づく。

 

 アルベリヒ「うーん…。

 君達には所詮何を言っても無駄でしょうけどね…」

 

 タクヤ「今すぐ…アスナ達を解放…しろ!!古田ぁっ!!」

 

 アルベリヒ「…だから、アルベリヒだと…そう言ってるだろぉがぁっ!!」

 

 この空間でも自由に動けるアルベリヒの攻撃をモロに食らってしまい、タクヤは崖っぷちに飛ばされた。

 

 ユウキ「た、タクヤ…!!くそぉ…コイツ…!!」

 

 アルベリヒ「私とした事が…!!

 大事な実験材料を危うく手放す所でしたよ!!」

 

 そう言って、タクヤの首を持ち抱え、空間の中心へと投げ捨てた。

 

 アルベリヒ「やれやれ…。

 まったく茅場先輩の弟と言う割には大した事ないですねぇ」

 

 タクヤ「ぐほっ!!?」

 

 アルベリヒ「痛いでしょう?

 今、ペインアブソーバ機能を遮断していますからね。

 と言っても、0にまで落とすと現実の体に影響しますが…君の場合は脳だけ頂ければ充分です…」

 

 そう言いながらタクヤの腹を執拗に蹴り続け、痛みを与える。

 もう嗚咽すら吐かなくなったタクヤを転がした。

 

 ユウキ「タクヤ!!しっかりして…タクヤ!!タクヤ!!」

 

 アルベリヒ「あなたもうるさいですね。少し黙ってて貰いましょうか?」

 

 アルベリヒが標的をユウキに移し替え、ユウキへと近づく。

 その時、アルベリヒの足が何かに絡まった。

 

 タクヤ「…やらせる…かよ…」

 

 アルベリヒ「…」

 

 アルベリヒの足に絡まっていたのは今にも気を失いそうなタクヤの腕であった。

 力を入れて引き剥がそうもタクヤはしぶとくも手を離さない。

 

 ユウキ「タクヤ…」

 

 アルベリヒ「流石はSAOをクリアした"英雄”様だ。

 そこらのプレイヤーとはやはり一味違いますね…。

 なら、こんな余興はどうでしょう?」

 

 アルベリヒが指を鳴らした瞬間、天から2本の鎖が降りてきた。

 降りてきた鎖を動けないユウキの両腕に取り付け、ユウキの体を引き上げる。

 

 タクヤ「テメェ…!!何…するつもりだ…!!」

 

 アルベリヒ「だから、余興だと言ってるじゃないですか?

 私はこの世界で2番目に高いIDを有していましてね…。

 出来る事はたくさんあるんですよ。例えば…」

 

 瞬間、ユウキの装備をアルベリヒの卑劣な手が破り捨てた。

 

 ユウキ「!!…イヤァァァァァァッ!!!!」

 

 タクヤ「ユウキ!!!!」

 

 アルベリヒ「プレイヤーの装備を強制解除だったり、

 あらゆる阻害(デバフ)を付与出来たりもします。

 こんな風にね」

 

 ユウキ「ぐっ…!!麻痺…!!」

 

 ユウキはこれで正真正銘手足が動かなくなってしまった。

 それはアルベリヒがユウキに何をしても邪魔されないと言っているようなもので、アルベリヒの表情は同じ人間とはとても思えない悪魔のようだった。

 

 アルベリヒ「さぁ"英雄”様。

 麗しの姫君がじっくり弄ばれるのを眺めながら自分の非力さを呪いなさい…!!」

 

 タクヤ「クソがぁぁぁぁぁぁっ!!!!指1本でもユウキに触れてみろっ!!!!

 オレがテメェをぶっ殺す!!!!絶対にぶっ殺してやる!!!!」

 

 瞬間、アルベリヒの指はユウキの肌を撫でるように滑らせ、その光惚とした表情をタクヤに見せつけた。

 

 ユウキ「…や…触らないで…!!」

 

 この時、タクヤの中で何かが切れたような音がした。

 絶対に切れてはいけない糸が切れた。

 タクヤは重力を無視して立ち上がる。

 その様子をアルベリヒも見ていたが、焦る素振りなど全く見せない。

 

 タクヤ「殺す…殺す…殺す…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す!!!!」

 

 アルベリヒ「うるさい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アルベリヒはどこからか取り出した黄金の剣をタクヤの心臓に突き刺した。

 タクヤは抵抗する事もなく、ゆっくりと倒れていった。

 

 ユウキ「タク…ヤ…?」

 

 ピクリとも動かないタクヤの名前を呼ぶユウキは目の前の光景に呆然としていた。

 タクヤのHPは止まる事なく減り続けている。

 心臓はこのALOの世界であっても即死効果を与えてしまう弱点(ウィークポイント)だ。

 そこをシステムで呼び出した剣で突き刺せば、誰にも死を止める事は出来ない。

 

 アルベリヒ「大丈夫大丈夫。

 君の脳が焼き切れても私達にとっては宝の山だから…安心して死んでくれ…」

 

 ユウキはアルベリヒの言葉を聞いてさらに目の前が真っ暗になった。

 タクヤはこの世界でもデスゲームからは逃れられないというのか?

 せっかく再会出来たのに、こんなに呆気なく永遠の別れを迎えてしまうのか?

 

 ユウキ「いや…いや…いやぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

 

 アルベリヒ「大丈夫ですよ?

 私は優しいですから…。

 貴方の脳も実験体としてタクヤ君と一緒に迎えましょう」

 

 もうユウキにはアルベリヒの言葉などこれっぽっちも入っていない。

 悲しさと苦しさと…怒りと憎しみがユウキの中で渦巻いているからだ。

 

 ユウキ(「なんで…どうしてボクは…タクヤを助けられないの?

 やっと…やっと…ずっと一緒にいられるって…ちゃんと付き合って、ちゃんと結婚して…みんなで楽しく生きていこうって…。

 まだ、何も始まってないのに…こんな所で…こんな奴に…壊されちゃうの…?」)

 

 ユウキは次第に涙を流していた。

 許せないのはアルベリヒより、非力で弱いユウキ自身だった。

 自分のせいでタクヤが死んでしまう。

 ユウキの世界が暗転した。

 

 アルベリヒ「おや?嬉し涙ですかぁ?

 いやぁ、私が優しいからって泣く事はないでしょう?」

 

 何もかもが終わってしまった。

 ユウキはただただ、死にゆくタクヤを見つめる事しか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タクヤは薄れゆく意識の中で自分の死を待っていた。

 

 タクヤ(「ごめん…ユウキ…お前やみんなを…救えなかった…。

 いつも、肝心な時に…オレは…何も出来ない…。

 何も救えない…。何が"英雄”だ…。

 オレは醜い正義感を振りかざしていただけに過ぎなかった…。

 周りにちゃんとオレはやってるんだよってアピールして…結果、何も出来ない…ただの迷子だ…」)

 

 タクヤのHPはレッドゾーンにさしかかり、いよいよ自身の死を直感した。

 

 タクヤ(「…キリトは上手くやっただろうか?

 キリトやみんなにも…悪い事しちまった…。

 ルクスにも…ここまで一緒に戦ってくれたって言うのに…何も恩返ししねぇまま死んじまった…ごめんな…」)

 

 タクヤの世界は何も無い純白の色に包み込まれていく。

 すると、タクヤの中で今までの思い出が蘇ってくる。

 前にも似た感覚に襲われた事があった。

 あれは、ヒースクリフ…茅場晶彦との最後の戦いの時だった。

 あの時も、思い出がスライドショーのように映し出されていた。

 だが、あの時のようにまた奇跡が起こる訳でもない。

 これが現実なのだ。

 これが茅場拓哉の実力なのだ。

 ただのどこにでもいる普通の人間なのだ。

 

 

『拓哉…』

 

 

 脳内に直接語りかけてくる声にタクヤは聞き覚えがあった。

 

 

『拓哉…ここがお前の目指した場所なのか…?』

 

 

 タクヤ(「…違う…けど、もうオレには何も出来ない…」)

 

 

『拓哉…ここで諦めてしまうのか…?』

 

 

 タクヤ(「諦めるも何も…もう死んじまうんだ…。

 何も出来ない…」)

 

 タクヤはそっと瞼を閉じて、この人生を終わらせようとする。

 すると、最後にこんな言葉が投げられた。

 

 

『その考えは()()()()を侮辱した事になる。

 あの時のお前は何を欲し、何を成し遂げようと私に挑んできたのだ?』

 

 

 タクヤ(「あの時は…ただ…守りたかっただけだ…」)

 

 

 タクヤはあの戦いでSAOで生きていたプレイヤー全員を死の淵から救い出したのだ。

 それはタクヤ自身が何と言おうとも覆せない真実であり、抗いようのない結果を覆した事実。

 

 

 タクヤ(「…そうだ。…オレはあの時も、今も…自分1人で戦ってる理由じゃない…。仲間と…愛する者と一緒に戦ってたんだ…!!」)

 

 

『お前はあの戦いで時としてシステムよりも人間の意志の力の方が強い事を証明した…。

 ならば、今もまさにその時ではないのか?』

 

 

 タクヤ(「でも…もうオレには…」)

 

 

『何もせず諦めたまま死んでいくのか?

 お前はそんな事はしない男だろう?』

 

 

 タクヤ(「…お前は!!」)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『立て…タクヤ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アルベリヒは卑猥な言葉を魂の抜け殻と化したユウキに浴びせ続けた。

 もう完全にユウキの心は折れてしまっている。

 アルベリヒはこれ以上のことは無意味だと悟ったのか、タクヤに突き刺していた黄金の剣を握り、ユウキの首元に剣先を突きつけた。

 

 アルベリヒ「やはり、まだ子供ですね。

 君達のような無力でちっぽけな子供には所詮大義を成す事など出来ないのですよ。

 もう終わらせてあげましょう…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ガタッとアルベリヒの背後で物音が聞こえた。

 アルベリヒは一瞬、背筋が凍るような感覚に襲われ咄嗟に後ろを振り向いた。

 すると、そこにはHPを数ドットだけ残して立っているタクヤの姿があった。

 

 アルベリヒ「…なんで…立っていられる…!?」

 

 タクヤ「…」

 

 アルベリヒの問にタクヤが答える事は無い。

 自分のすべき事がまだ残っていた。

 だから、立ち上がった。

 それは時としてどんな力をも凌駕する。

 

 タクヤ「…システムコマンド、ID"ヒースクリフ”…」

 

 すると、タクヤの周りに様々なモニターが映し出された。

 それは一般プレイヤーが見る事の出来ない()()()()()()()()()()だ。

 

 アルベリヒ「な、なんだ…?そのIDは…!!」

 

 タクヤ「管理者権限を変更…。

 "アルベリヒ”、"オベイロン”のレベル1に設定…」

 

 アルベリヒ「なっ!?私や須卿先輩よりも高度なIDだとっ…!!?」

 

 アルベリヒの言った通り、今、管理者権限はタクヤに移っている。

 タクヤは重力魔法を解除し、オレとユウキ、アルベリヒの3人をある場所へ転移させた。

 転移した先にはキリトとアスナ、そして。タクヤ達の登場に驚きの表情をしたオベイロンがいた。

 

 オベイロン「なっ…何故、お前達がここに…!!

 それに私のIDが使えなくなったぞ!!どういう事だ古田!!」

 

 キリト「タ…クヤ…!!」

 

 アスナ「タクヤ君…ユウキ…」

 

 タクヤ「…ペインアブソーバーをレベル0に変更」

 

 これに伴い、この世界で受けた極度のダメージは現実世界の肉体にもフィードバックされる事になる。

 

 タクヤ「システムコマンド。管理者権限をID"キリト”に移行」

 

 キリト「!!こ、これは…!!」

 

 タクヤ「アスナを救うのはお前の役目だ…。

 オレは…目の前のゴミを掃除する…。後は頼んだ…」

 

 オベイロン「貴様らのような餓鬼に何が出来る!!

 僕はこの世界を創造した神だぞ!!

 お前達のように何の力も持っていないプレイヤーとは違うんだ!!」

 

 タクヤ「僕が創造した…ね。

 違うだろ?お前達は盗んだんだ!!この世界を…そこの住人を!!

 盗んだ玉座の上で踊っていた泥棒の王と側近だ!!」

 

 この世界はSAOサーバーを完全にコピーし、設定などの上辺だけを全く違うゲームに仕立てあげたものにすぎない。

 その証拠に、基幹プログラムは全く同様のものでストレアとユイがこの世界に顕現出来ている。

 

 タクヤ「オベイロン。お前はキリトが必ず罰を与える…。

 アルベリヒ…貴様はオレが与える」

 

 アルベリヒ「ふ、ふざけるな!!

 お前にやられる程私はヤワじゃない!!」

 

 タクヤ「だったら試してみろよ?

 その剣で…だが、覚悟しろよ?

 剣を振り下ろした瞬間に、お前に罰を与えてやるからな…!!」

 

 キリト「…システムコマンド!!

 オブジェクトID…"エクスキャリバー”をジェネレート!!」

 

 すると、天からキリトの元へもう1本の黄金の剣が現れた。

 キリトはそれを自分が使う事なくオベイロンに投げやった。

 

 キリト「さぁ、始めようか…。

 "泥棒の王”と"鍍金に勇者”の戦いを!!!!」

 

 瞬間、アルベリヒとオベイロンは気が動転していたのか、闇雲に突っ込んできては剣をただ振り回していた。

 それを避ける事など数多の闘いを退けて来たタクヤとキリトには造作もない。

 タクヤは自分の片手剣を拾い上げ、アルベリヒの左手を切断した。

 

 アルベリヒ「うわぁぁぁぁぁぁっ!!!!私の腕がぁぁぁぁぁっ!!!!」

 

 ペインアブソーバ機能を完全に停止させている為、アルベリヒに激痛が走る。おそらく、現実世界に帰ってもその痛みは残り続けるだろう。

 

 オベイロン「古田!!」

 

 キリト「よそ見するなよ…」

 

 キリトもオベイロンの横腹を抉るようにして斬り刻んだ。

 

 オベイロン「がぁぁぁっ!!?」

 

 キリト「アスナが受けた苦しみはこんなもんじゃないぞ!!」

 

 オベイロン「あ…あが…!!」

 

 体に走る激痛のせいでオベイロンにはキリトの言葉は入ってこない。

 それはアルベリヒも一緒で地面に膝をつけながら痛みを堪えている。

 そこへタクヤは追い打ちをかけるかのように左足を切断した。

 

 アルベリヒ「ぎゃあぁぁぁぁぁっ!!!!」

 

 タクヤ「これで逃げれないだろう?

 お前にはこれから…死ぬより辛い地獄を見せてやるよ…」

 

 アルベリヒ「ひぃっ!!」

 

 タクヤはアルベリヒの右足に剣を突き刺し、どこへも行けないようにその場に固定した。

 アルベリヒの悲鳴が響いているが誰もそれを気にしなかった。

 タクヤはユウキの元に行き、鎖を解き、ユウキを解放した。

 既に麻痺は消えている。

 

 ユウキ「…タクヤ」

 

 タクヤ「ごめんな…怖かったな。でも、もう大丈夫だ…。

 これが終わったら…今度こそ現実世界に帰るから…。

 もう少しだけ待っててくれ…」

 

 ユウキ「…よかった。…タクヤ。死ななくて…本当によかった…」

 

 最後にユウキに笑顔を見せて、再びアルベリヒの前まで赴いた。

 

 アルベリヒ「あ…た、助けて…!!」

 

 先程までの余裕の表情は見る影もなく消え去り、今は餓鬼と罵った子供に助けを仰ぐ哀れな姿となっていた。

 

 タクヤ「…お前らがしてきた事は許されるものじゃねぇ。

 だから、オレ達がお前らにみんなが受けた痛みを味わせてやる…!!」

 

 剣を抜き、右足も切断する。

 もうアルベリヒは感覚が麻痺して痛みすらろくに感じる事が出来なくなっていた。

 同様にオベイロンもキリトからの制裁を加えられ、まともに思考が機能していない。

 

 キリト「…哀れだな。妖精王が聞いて呆れる」

 

 痛みに支配された体はキリトの言葉を遮断してしまう。

 もう会話すら出来ない状況でキリトは胴体だけとなったオベイロンを空中に放り投げた。

 何も出来ず、ただ落ちてくるオベイロンをキリトの剣が脳天を貫いた。

 その瞬間に、オベイロンのHPは全損し、現実世界へとログアウトしていった。

 

 タクヤ「…そっちは終わったか」

 

 アルベリヒ「き、貴様…!!こんな事して…ただで済むと…!!」

 

 アルベリヒが喋っている途中でアルベリヒの口に剣を突き刺す。

 

 タクヤ「どうだ?味わった事のない痛みだろ?」

 

 口を塞がれたアルベリヒ嗚咽を漏らしながら涙を流していた。

 これ以上の会話を不可能にしてしまったが、タクヤはさらに残っていた右腕をも斬り飛ばした。

 

 タクヤ「お前らの罪は現実世界で警察やらが裁いてくれるが、この世界はそんな生易しいもんじゃない。

 ここも1つの現実なんだ。この世界ではお前はオレが裁く…!!」

 

 そう言って、タクヤは五体不満足になったアルベリヒを空中へ放り、居合の構えを取った。

 タクヤの目の前を通過する瞬間、アルベリヒの首が綺麗に真っ二つに別れ、HPが全損してアルベリヒもログアウトしていった。

 

 タクヤ「…」

 

 キリト「終わったな…」

 

 タクヤ「あぁ…終わったよ…」

 

 キリトが急いでアスナを助け出し、管理者権限を使ってアスナとユウキを先にログアウトした。

 次にタクヤをログアウトさせようとすると、ふとキリトとタクヤの耳にある声が聞こえてきた。

 

 タクヤ「…生きてたのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 兄貴…」

 

 キリト「こ、コイツが茅場晶彦…!!」

 

 茅場「相変わらずの言い草だな…。だが、茅場晶彦は既に死んだよ。

 私は茅場晶彦が残したエコー…残像さ」

 

 タクヤ「相変わらずなのはどっちだ…。

 でも…今回は助かった。…ありがとう」

 

 あの時、死の淵にいたタクヤに助言をしたのは茅場晶彦だった。

 前に1度アインクラッドが崩壊していた時の最後の邂逅でタクヤは茅場晶彦からあるデータを受け取っていたのだ。

 その中の1つがヒースクリフの管理者データだった。

 

 茅場「礼には及ばない。

 そもそもあのデータは保険として君に持たせただけだからな…。

 だが、感謝しているのならそれ相応の代価が必要だ」

 

 キリト「代価?」

 

 茅場「キリト君。君にもこれを預けよう…」

 

 すると、茅場晶彦は卵のような形をした金色に輝くデータをキリトに渡した。

 それはタクヤがSAOで渡された時と同様の物だ。

 

 キリト「これは…?」

 

 茅場「それは世界の種子(ザ・シード)

 芽吹けばどんな物かわかる。

 だが、君が…君達があの世界に憎しみ以外の感情を持ち合わせているのなら…」

 

 茅場晶彦は最後まで語る事なく、姿を消していった。

 

 キリト「…とりあえず、これで全部おしまいだな。

 このALOはどうなるんだろうな…」

 

 タクヤ「さぁな。

 そんな事より、現実に帰ってからの事考えると憂鬱になるぜ…」

 

 そう、タクヤが現実世界に帰ってこれたのならタクヤに待ち構えているのは長期のリハビリだ。

 ただでさえ、2年もの間体が衰弱している上、さらにALOに閉じ込められたせいもあってさらに衰弱しているに違いない。

 

 キリト「頑張れよ。オレも今度見舞いに行ってやるからさ」

 

 タクヤ「どーせ、オレのとこよりアスナのとこに行くんだろ?

 へいへい、お熱いこって…焼けるね〜」

 

 キリト「お前とユウキも似たようなもんだろっ!!?」

 

 何も無い空間で2人の笑い声が響き渡った。

 

 タクヤ「…じゃあ、オレは行くわ。またな、キリト」

 

 キリト「あぁ、またな。今度みんなでオフ会でもしよう」

 

 タクヤ「体が動くようになったらな…!」

 

 こうしてタクヤの2年と2ヶ月も続いた戦いの日々はようやく終わりを迎える事が出来たのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2025年01月22日 18時45分 横浜市立大学附属病院

 

 木綿季「…」

 

 目を開けると外はすっかり暗くなっており、厚い雲からは雪が降っている。

 木綿季は途端に寒さを感じた。

 使わせてもらった病室のエアコンが消え、病室にもユウキ以外誰もいなかった。

 テーブルの上にあるコーヒーは多少湯気が昇っているので、トイレにでも行ったのだろうと木綿季は推測した。

 木綿季は病院に来てきた上着を羽織り、病室を出た。

 もちろん拓哉の病室に向かう為だ。

 やっと、帰ってこれたのだ。最初に会うのは自分がいいというちょっとした女心が木綿季の中で行動に移させた。

 だが、そんな楽しげな気分とは裏腹に病室を出て目の当たりにしたのは、拓哉の病室の前で警備員が2人、血を流しながら嗚咽を漏らしている光景だった。

 

 木綿季「大丈夫ですか!?一体何が…」

 

「突然、男にナイフで斬られたんだ…!!多分、君が言っていた…」

 

 警備員は痛みのあまり意識を失ってしまった。

 だが、木綿季の頭の中には拓哉の病室に意識を持って行かれていた。

 

 木綿季(「もしかして…アイツが…!!」)

 

 アイツが…古田がこの中にいて、拓哉を殺そうとしているのではないかとユウキの中で1つの考えが生まれる。

 今、拓哉の体は衰弱している。

 もし、木綿季の考えが正しいとしたら、本当に取り返しのつかない事になる。

 木綿季は考えるより先に病室へと入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 男は血にまみれたナイフを片手にベッドで寝ている少年を見下ろしている。

 

「タクヤ君…。酷い事しますね…。

 体中の痛覚が刺激されてここまで来るのに苦労しましたよ…」

 

 ナイフを持った男…古田はからALOで拓哉に斬られた箇所が麻痺して思うように体を動かせていないがこの距離なら幾ら何でもナイフを拓哉の心臓に刺す事など造作でもない。

 

 古田「君の脳は確かに宝の山だが、研究は君がいなくても時間はかかるが完成する。

 だから、君が私にしたように私も君を滅茶苦茶にしてあげるよ…」

 

 もう古田には拓哉を殺す事しか頭にない。

 それも拓哉とすら認識出来ない程滅茶苦茶にしてやりたいという捻じ曲がった怒りと憎しみしかないのだ。

 ナイフを振り翳し、心臓めがけて振り下ろした。

 

 木綿季「やめてぇぇぇぇっ!!!!」

 

 木綿季の声が背後から聞こえてきたが、古田は迷わず振り下ろす。

 この後、例え捕まっても拓哉を殺せればそれでいいという顔をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 古田「は?」

 

 ナイフを心臓目掛けて振り下ろしたハズが、あと1歩な所でそれは静止した。

 古田も目の前で起きている状況を咄嗟に理解する事が出来なかった。

 落ち着いて今の状況を確認すると、ナイフを持った腕は何かで止められていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 拓哉「やらせる…訳…ねぇ…だろ…!!」

 

 古田の腕を掴んでいたのは、筋肉が削り落ちた拓哉の腕だった。

 ナイフが振り下ろされた瞬間に、拓哉は覚醒し、咄嗟に古田の腕を掴んだのだ。

 

 古田「この…死に損ないがぁぁっ!!!!」

 

 拓哉「テメェ…に…殺されて…やる程…オレも…甘く…ないん…だよ…」

 

 だが、拓哉の腕は衰弱している為、そう長くは古田を止めている事は出来ない。

 徐々にナイフは着実と心臓に近づいている。

 衰弱し切った拓哉の力ではこれが精一杯の抵抗だった。

 

 拓哉「死んで…たまるかぁぁっ!!!!」

 

 古田「死ねぇぇぇぇぇっ!!!!」

 

 瞬間、古田の顔は一気に歪み、機材へと吹き飛ばされた。

 

 拓哉「!!?」

 

 そこには汗を流し、息を切らした直人がいた。

 

 直人「なんとか…間に合った…!!」

 

 木綿季「拓哉!!大丈夫?どこも怪我してないっ!!?」

 

 拓哉「なんで…お前ら…ここに…」

 

 直人「こんな事あろうかと近くで兄さんを監視してたんだ…。

 まぁ、案の定コイツはやって来たけど…」

 

 古田は蹌踉めきながら立ち上がり、その場を逃げようとする。

 だが、直人を前に普通の大人がナイフを持とうが太刀打ち出来る訳もなく、空手の一本背負投を繰り出した。

 古田は床に打ち付けられ、泡を拭きながら気を失った。

 しばらくして、先生や警備員が駆けつけ、古田は警察のお縄についた。

 

 木綿季「よかった…拓哉が無事で…」

 

 拓哉「悪い…まだ…起きたばっかで…あんまし…耳が…聞こえないんだ…。

 でもよ…木綿季が…言ってる事…ぐらい…分かるぜ…」

 

 木綿季は涙を流しながら拓哉を抱き締めた。

 拓哉の体を気遣って優しく丁寧に抱き締めた。

 

 木綿季「おかえり…拓哉」

 

 拓哉「ただいま…木綿季…。こっちじゃ…初めまして…だな…」

 

 木綿季「そうだね…。初めまして…紺野木綿季です…!!」

 

 拓哉「…茅場…拓哉…。初めまして…木綿季…」

 

 病室の中は直人が気を遣って拓哉と木綿季だけとなっていた。

 外には直人と倉橋が待機していたが今の2人にはどうだっていい事だ。

 

 木綿季「ねぇ…拓哉。…キス…しよ?」

 

 拓哉「え?でも…オレ…2年以上…も風呂…入って…ないから…汚…」

 

 拓哉が言い終わる前に木綿季は拓哉の唇を奪っていた。

 木綿季の暖かい唇の感触を感じながら、拓哉は木綿季の後ろの窓に目をやった。

 すると、幻影なのかどうかは分からないが、タクヤとユウキが手を繋いでいる姿があった。

 2人は拓哉と木綿季を見て、微笑みながらどこかへと歩き始めた。

 

 拓哉(「…あの世界のタクヤとユウキはもう…役目を終えたんだな」)

 

 タクヤとユウキを見送りながら拓哉は木綿季の唇をずっと離さなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




いかがだったでしょうか?
須卿と古田はミンチ状態でしちゃいました。
書いててなんだかスカっとしました。


では、また次回!
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