ソードアート・オンライン-君と共に在るために-   作:ちぇりぶろ(休載中)

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という事で31話です。
しばらくはこんな感じで日常編を数話書いて、物語を進めようと考えています。


では、どうぞ!


【31】新たな門出

 2025年04月10日 07時30分 茅場邸

 

 2年半振りの自分のベッドで寝息を立てながら寝ている男がいた。

 窓の外では小鳥達が囀り、家の中では目覚まし時計のアラームが鳴り響いている。

 近所迷惑になりがちの騒音を寝ぼけながらも止める事に成功し、またもや布団の中に潜り込む。

 すると、自室に誰かが入ってきたのが分かった。

 とは言っても入ってくる人物など1人しかいない。

 

 直人「兄さん!起きないと入学式早々遅刻するぞ!!」

 

 直人は既に自身が通っている学校の制服に身を包み、既に学校へ行く準備が出来ていた。

 かたや、兄の拓哉はまだ制服にすら着替えておらず、布団に包まりながらもぞもぞと動いている。

 

 拓哉「あと5分…」

 

 直人「そんな時間は…ないって!!!」

 

 拓哉「うわっ!!?」

 

 拓哉は無理矢理直人に布団を引き剥がされ、その勢いでベッドから転がり落ちた。

 

 拓哉「いてて…もうちょっと優しく起こせや…」

 

 直人「起きない兄さんが悪いんだろ?

 早くご飯食べて準備しないと本当に遅刻するよ!」

 

 拓哉「へいへい…」

 

 直人がリビングに戻り、拓哉は着ていたスウェットをベッドに放り投げ、昨日の内に届いた制服に身を包む。

 拓哉は洗面所で顔と歯を洗い、リビングに向かった。

 既に直人は朝食を済ませており、テーブルの上には拓哉の朝食が用意されていた。

 

 拓哉「いただきます」

 

 既に時刻は8時に差し掛かろうとしている。

 だが、拓哉は焦っているようには見えなかった。

 自分のペースを保っている。

 

 直人「今日って午前中まで?」

 

 拓哉「あぁ。入学式終わってクラスで諸連絡済ませたら終わりなハズ…」

 

 直人「じゃあ、今日の夜は勝手に食べてていいからね。

 僕は学校終わってからそのままバイトだから…」

 

 拓哉「ナオのバイト先って…ガソリンスタンドだっけ?」

 

 直人「うん。今乗ってるバイクもそこの社長から譲ってもらったんだ」

 

 直人のバイクは所々傷がついていたりしているが、乗る分には何も問題は無い。

 寧ろ、社長が乗っていた頃にいろいろ弄っている為、市販のバイクよりスピードも馬力も桁が違うのだ。

 

 直人「じゃあ、僕は先に行くけど…戸締りはちゃんとしててよね。

 行ってきます」

 

 拓哉「いってらっしゃい…」

 

 拓哉もそろそろ本気で焦る時間になった。

 食器を素早く洗い、戸締りを確認して家を出た。

 

 拓哉「さて…行くか!」

 

 拓哉は地図を頼りに学校へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2025年04月10日 08時55分 SAO帰還者学校

 

 この学校は元々廃校になる予定の所を国がSAO帰還者の小中高生を対象にした臨時学校として使われる事になった。

 敷地は私立の高校より少し広く設計されており、カフェテリアやラウンジといった中々どうして学校には勿体ないと言われかねない程に設備が充実していた。

 今日はそのお洒落な帰還者学校の入学式である。

 桜の並木道を続々と新入生が新たな門出を祈って歩いていた。

 そして、ここにも1人の少女が笑顔を周囲に撒き散らしながら元気よく歩いている。

 

 木綿季「ふっふんふーん」

 

 制服に身を包んだ紺野木綿季は鼻歌交じりに校門をくぐった。

 木綿季は今年で15歳だが、SAOに囚われた時はまだ12歳だった為、本来は義務教育から受けなければならないが、この学校は単位制の為、単位さえ取れれば卒業の時期も自分で調整できるのだ。

 もっとも、木綿季は最低でも3年は通わなくては卒業見込み単位が取れないのだが、そんな事は関係なかった。

 

 木綿季「あー!今からすっごく楽しみだよー!!

 拓哉と一緒に放課後デートしたり!

 アスナ達とショッピングしたり!」

 

「おはよう!木綿季!」

 

 木綿季「あ!明日奈!おはよー!」

 

 木綿季に声を掛けたのはキリトこと桐ヶ谷和人の恋人の結城明日奈だった。

 明日奈も拓哉達同様今年の1月に目覚めたSAO帰還者だ。

 まだ、激しい運動は制限されているが、こうして入学式に出られるぐらいに体を回復させていた。

 

 明日奈「久しぶりだね!元気にしてた?」

 

 木綿季「うん!ボクはすっごく元気だよっ!」

 

 和人「おはよう!2人とも…」

 

 そこに和人も加わり、3人は昇降口へと向かった。

 昇降口の隣にある掲示板には各学年事にクラスが掲示されており、3人共学年が違う為、別々になってしまった。

 

 和人「こればっかりは流石に難しいよな…」

 

 木綿季「いいじゃん!2人は高等部だから同じ館だよ!

 ボクは中等部だから別館だし…これじゃあ気楽に遊びに行けないよ!」

 

 明日奈「まぁまぁ…落ち着いて木綿季。昼休みとかに来れるでしょ?」

 

 高等部と中等部の館は中庭を挟んで少し離れている。

 その為、気楽には互いの館を行き来するのは難しい。

 

 和人「それも来年までの辛抱だろ?

 木綿季も来年には高校生なんだから…」

 

 木綿季「ぶーぶー!」

 

「なーに朝から騒いでんのよ?」

 

「おはようございます!みなさん!」

 

 木綿季が文句を垂れていると、そばかすの少女とツインテールの少女が話しかけてきた。

 

 明日奈「もしかして…リズ!!?」

 

 木綿季「そっちは…シリカ?」

 

 里香「何よ?ちょっと会わない内に私の事忘れちゃってた訳?

 それと、こっちじゃ私は篠崎里香だよ!」

 

 珪子「私は綾野珪子と言います!こっちでもよろしくお願いします!」

 

 里香と珪子も加わり、入学式の時間まで少し時間がある為、近くのテーブルに集まっていた。

 

 里香「えーと…木綿季と珪子が中等部の同じクラスで、私と明日奈が高等部の2年クラス、和人が高校1年のクラスね…」

 

 和人「なんか、オレだけはぶられてないか?」

 

 明日奈「き、気のせいだよ…!」

 

 木綿季「ちょっと待って!…拓哉は?」

 

 珪子「そう言えば…見ませんでしたね」

 

 木綿季は先程の掲示板の前まで戻り、改めてクラス表を眺めた。

 拓哉の年齢は明日奈や里香と同じ17歳…つまり、高校2年のクラスにいるハズだ。

 だが、どこを探しても拓哉の名前はない。

 念の為、高等部と中等部のクラス表も見てみたが拓哉の名前はどこにもなかった…。

 

 明日奈「木綿季!拓哉君の名前はあった?」

 

 木綿季「…どこにも…なかった」

 

 和人「な、なんで!?」

 

 木綿季「そんなのボクに言われても分からないよ!!」

 

 周りにいた新入生が木綿季の一言に驚いている。

 だが、木綿季は今はそれどころではなかった。

 菊岡の計らいにより殺人歴のある拓哉も学校に通えるように話をつけると言っていたが、それが受理されなかったんじゃないだろうか。

 木綿季は途端に不安になり膝から落ちた。

 

 明日奈「木綿季!!」

 

 木綿季「なんで…なんで…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 拓哉「そんな所で何してんだよ?」

 

「「「!!」」」

 

 木綿季達の前には同じ制服に身を包んだ拓哉の姿があった。

 

 木綿季「拓哉…拓哉ぁぁっ!!!!」

 

 拓哉「おわっ!!?え?なに?オレ何かした!!?」

 

 拓哉もいきなりのこの状況で話が全く理解出来ていなかった。

 木綿季を慰め、和人に事情を聞くと拓哉の名前がない事を知った。

 

 木綿季「あの事もあるから…もしかしたら拓哉は入学出来ないんじゃないかって…」

 

 拓哉「なんだ?そんな事かよ…。

 木綿季が泣いてるもんだからもっと危ない事だと思ったよ…」

 

 和人「だが、拓哉の名前はどこにも…!!」

 

 拓哉「それならさっき菊岡から連絡が来たよ。

 オレの名前が手違いで消えてしまってるってな」

 

 里香「て、手違い?」

 

 菊岡が言うには拓哉の入学に少なからず反対の者がいたらしく、それを説得するのに時間がかかったそうだ。

 そのせいで、クラス表に拓哉の名前がなかったのだ。

 

 珪子「そうだったんですか…!よかったです!」

 

 木綿季「ふぁぁ…心配して損したぁぁ…」

 

 拓哉「ちなみにオレは明日奈と里香と同じクラスだな!よろしく!」

 

 明日奈&里香「「よろしく!」」

 

 そんな話をしているとチャイムが校内に鳴り響き、拓哉達は入学式が行われる体育館に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2025年04月10日 10時10分 高等部2年クラス

 

 入学式も終わり、拓哉と明日奈、里香は自分達の教室へと向かった。

 黒板は最新の電子モニターになっており、机の上にはタブレットが1台ずつ配られていた。

 偶然にも3人の席は窓際の1番後ろの集まっていた。

 

 里香「どう拓哉?美女2人と近い席で良かったわねぇ」

 

 拓哉「へいへい…ホントーにようござんした…」

 

 明日奈「あははは…」

 

 そんな実のない話をしていると教室に1人の女性が現れた。

 このクラスの担任らしき女性は教団の前に立ち、第一声を発した。

 

「みなさん!こんにちひゃ…!!」

 

 言葉を発した瞬間に噛んでしまい、教室中に笑いが込み上げていた。

 

「す、すみません…。

 教壇に立つのは久し振りで…緊張しちゃって…」

 

 眼鏡を掛け直しながら再び挨拶を始める。

 

 施恩「私の名前は安施恩と言います。

 実を言うと私もみなさんと同様SAOの中に囚われていました。

 目覚めた時にこの学校で教鞭を取らないかと誘われたので私はここに来ました。

 みなさんとは分かり合えるような気がします。

 よろしくお願いします!」

 

 施恩の挨拶を聞き終わり、次第に握手が鳴らされる。

 

 里香「なんかどっかで見た事あるのよねー…あの先生…」

 

 明日奈「SAOの中でって事?…そう言われたら私も…」

 

 拓哉「…」

 

 施恩が出欠を取っていると、何やら顔色がおかしい。

 すると、突然涙を流し始めた。

 クラスの全員が慌てふためくが、施恩は涙を堪えながら名前を呼んだ。

 

 施恩「…茅場…拓哉…さん」

 

 拓哉「はい…って先生大丈夫か?」

 

 拓哉は施恩の事を心配して近くまで寄るが、拓哉が近づいた途端ダムが決壊したかのように号泣し始めた。

 

 拓哉「え、ちょ!?ど、どうしたんだよ!!てか、今日こればっかだな!!」

 

 里香「あーあ…入学初日に先生泣かすなんて不良ねぇ…」

 

 拓哉「そ、そんなんじゃねぇよ!!?

 ちょ、マジで何かあったんすか?」

 

 拓哉はハンカチを施恩に渡し、涙を吹くように言った。

 すると、ようやく施恩の口が開いた。

 

 施恩「私…てっきり、あの戦いで…死んだのかと…」

 

 拓哉「あの戦い?死んだ?…もしかして、先生…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 施恩「…お久しぶりです。拓哉さん…シウネーです!」

 

 拓哉&明日奈&里香「「「えぇぇっ!!?」」」

 

 今目の前に安施恩はSAOで共に戦ったシウネーであった。

 じっくり観察してみれば確かにシウネーと言われたら納得してしまう。

 

 拓哉「いや、でも…まさか担任だって誰も思わねぇだろ!!」

 

 施恩「えへへ…立場が逆転しちゃいましたね!

 私はもう大丈夫ですから席に戻ってください…」

 

 施恩に言われるがまま拓哉達は自分の席についた。

 すると、教室中が妙に慌ただしい。

 全員拓哉を見ているようだ。

 

「茅場…って…」

 

「まさか…本当に…?」

 

 拓哉「…」

 

 拓哉は少なからずこの状況を予想はしていた。

 SAOに閉じ込めた茅場晶彦と同じ姓を名乗っていたら気づかない方がおかしい。

 

 里香「そう言えばアンタの苗字って…」

 

 拓哉「…あぁ。茅場晶彦はオレの兄貴だ」

 

 里香「えぇぇぇぇぇっ!!?そうだったのぉっ!!!!」

 

 拓哉に至っては別に隠す事ではなかった。

 茅場晶彦と兄弟である事実は変わるわけでもなく、ましてや、茅場晶彦と茅場拓哉は別の人間で関係ない。

 拓哉や拓哉の知り合いはそう思うだろう。

 だが、世間一般では拓哉と直人は犯罪者の兄弟と言うだけで風当たりが強い。

 直人も実際今まで、そのせいで周囲から距離を置かれているのだから。

 

 拓哉「…あー、この際だからみんなに言っとくけど、オレは別に誰がオレの事を罵ろうが陰口を叩かれようがかまわねぇ…。

 ぶつけたい気持ちだって少なからずあるだろうしな…。

 でも、オレにはともかくオレの友達に手を出してみろ?

 その時は絶対ェ許さねぇから…!そのつもりで。以上!」

 

 拓哉はふてぶてしい態度を取りながらも全員を黙らせた。

 施恩も心配そうにしているが、教師の立場を思い出し教室の空気を変える。

 

 施恩「えー…とりあえず!!

 これからみなさんの新しい門出です!!

 私もみなさんのサポートが出来るように努力しますのでこれからもよろしくお願いします!!」

 

「「よろしくお願いします!!」」

 

 その後も簡単な自己紹介や、明日からのスケジュールなどを伝えられ

 HRが終了した。

 施恩が教室を去ると、一部のクラスメイトが拓哉の席の前に押し寄せてきた。

 

 拓哉「うわっ!!?な、なんだぁっ!!?」

 

「さっきのアレ凄くかっこよかったよ!」

 

「茅場君ってすごいクールだね!」

 

「これから仲良くしようね!」

 

 拓哉の周りに集まっているのはほとんど女子ばっかりでそれを眺めていた明日奈と里香はすぐさま木綿季に伝えなくては心の中で誓った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2025年04月10日 11時50分 SAO帰還者学校 カフェテリア

 

 放課後、拓哉達は昼食を摂るべくカフェテリアへとやって来ていた。

 カフェテリアは入学式の日にも関わらず営業していて、多くの生徒で賑わっていた。

 

 拓哉「…」

 

 和人「…」

 

 木綿季「…どういう事?」

 

 明日奈「…なにか反論は?」

 

 カフェテリアの一角で拓哉と和人は何故か正座をさせられ、木綿季と明日奈が傍から見てもかなりご立腹だと分かる。

 それはカフェテリアに来る途中で起きた事件がきっかけだ。

 拓哉と明日奈、里香はあらかじめカフェテリアで合流するように木綿季と和人、珪子に伝えていた。

 いざカフェテリアに向かおうと拓哉が席を立つと数名の女子が拓哉に言い寄ってきたのだ。

 

「茅場君!一緒にご飯食べない?」

 

 拓哉「あ、いや…オレこの後用事が…」

 

「えー!いいでしょー?」

 

 そのやり取りはカフェテリアへ向かう途中でも行われ、断ろうにも人の話を聞いていない彼女らに拓哉が何を言っても意味がない。

 ずるずると女子を引きずっているとカフェテリアで木綿季と鉢合わせしてしまい、今に至る。

 和人の件も拓哉と似たり寄ったりで明日奈もそれに鉢合わせして2人はとても絶望的な状況に陥っているのだ。

 

 拓哉「…おい。いつまでこれ続ければいいんだ?」

 

 和人「オレに言われても分かる訳ないだろ…」

 

 木綿季「何2人でコソコソ話してるの?」

 

 拓哉&和人「「はい!すみません!」」

 

 SAOでも屈指の実力を持った拓哉と和人だが今はその影すら見えなくなっている。

 対して、木綿季と明日奈はSAOでの姿が鮮明に思い出させる程、怒りを燃やしていた。

 これを見て双方の女子達は一目散に逃げていったのは言うまでもない。

 

 拓哉「あの…さっきも言ったけどマジで何もないからオレ達!!

 なっ?和人?」

 

 和人「うんうん!!神に誓って…いや、カーディナルに誓って何もない!!」

 

 明日奈「ふーん…。

 その割には鼻の下が伸びてたみたいだけど?」

 

 拓哉「まぁ、健全な男子高生ならそれぐらいは…」

 

 和人「っ!バカっ!!」

 

 木綿季「へぇ…なら、彼女がいたとしても鼻の下伸びるんだ?」

 

 拓哉は思わず地雷を踏んでしまった。

 これ以上何を言っても木綿季と明日奈の怒りを煽るだけとなってしまった。

 

 里香「はぁ…SAOの英雄様が現実じゃ嫁の尻に敷かれてるなんてねぇ。まぁ、和人もそうだけど…!」

 

 珪子「で、でも!2人共悪気があっての事じゃないみたいですし…」

 

 和人「ど、どうする?」

 

 拓哉「とにかく、誠心誠意謝るしか…ない!!」

 

 もう拓哉達には打つ手は1つしかない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 拓哉&和人「「本当にすみませんでしたぁぁぁぁっ!!!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2025年04月10日 14時20分

 

 あれから2人は木綿季と明日奈に土下座をしてその場を沈めた。

 だが、流石にあんな見事な土下座を見た木綿季と明日奈は若干引いていたが、それぐらいで済むなら安いものだ。

 そのお詫びとして拓哉と和人は木綿季と明日奈に好きなだけ奢ってもらう事になり、駅前のショッピングモールへとやって来ていた。

 ちなみに、木綿季がみんなに姉の藍子を紹介したいと言い出し、今ここにいるのは拓哉と木綿季、和人、明日奈、里香、珪子、そして藍子の7人だ。

 シウネーこと安施恩も誘ったが流石に教師の仕事が残っており、同行は出来なかった。

 

 木綿季「わぁ!ボクこんな所来た事ないよー!

 あ!見てよ姉ちゃん!あれ凄く可愛いよ!」

 

 藍子「ゆ、木綿季!恥ずかしいからそんなにはしゃがないで!」

 

 拓哉「あんまし遠くに行くなよー?」

 

 木綿季「分かったー!行こっ!姉ちゃん!!」

 

 ショッピングモール内の噴水広場で拓哉達は休憩していたが、木綿季と藍子は見た事のない…まるで、夢の世界に来たかのようなはしゃぎっぷりだ。

 まぁ、年相応と言われれば納得出来なくもないがどちらかと言うと木綿季の精神年齢が小学生並みだとあらかじめ伝えておこう。

 

 明日奈「木綿季は元気だねー。昔とちっとも変わんないよー」

 

 里香「元気ありすぎて逆にこっちが疲れちゃうわねー」

 

 珪子「やっぱり姉妹って良いですね。

 私もお姉さんか妹が欲しかったです」

 

 そんな話をしていると和人の携帯から着信音が流れた。

 

 和人「もしもし」

 

 直葉『あっ、お兄ちゃん?今どこにいるの?

 家に帰ってきてなかったから心配したよ…』

 

 和人「あ…メッセージ入れるの忘れてたよ…。

 今、明日奈達とショッピングモールにいるんだけど、スグも来るか?」

 

 直葉『え?行く行く!!すぐに行くから待っててね!!』

 

 和人は通話を切ってテーブルの上にあったジュースを口に含んだ。

 

 明日奈「直葉ちゃんから?」

 

 和人「あぁ。今みんなとここにいるって言ったらすぐに来るってさ」

 

 里香「誰?直葉って?もしかして、和人の愛人?」

 

 和人「な訳ないだろっ!!オレの妹だよ!!」

 

 珪子「そう言えば前に少しだけ言ってましたね?

 何でも、私に似てるとか…」

 

 珪子の言葉を聞いて若干焦った和人だったが、みんなに悟られないようにポーカーフェイスを貫いた。

 

 拓哉「へぇ…。和人も妹いたんだな?」

 

 和人「あぁ。オレには勿体ないくらいの出来た妹だよ…。

 拓哉でいう所の直人みたいなポジションだ」

 

 拓哉「直人のどこがいいんだよ?外面がいいだけなんだよあいつは!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 直人「誰が外面がいいって?」

 

 瞬間、拓哉の頭を鷲掴みにしながら直人が手に力を入れる。

 

 痛みに耐えきれず、拓哉は無理矢理離れた。

 

 拓哉「な、ナオ!!?お前何でここにいるんだよ!!

 バイトだって言ってたろーがっ!!」

 

 直人「社長がシフト間違ってたみたいで、バイトは休みになったんだ。

 んで、ここのスポーツ用品店で買い物してたらどっかのバカが見えたもんだからさ…」

 

 拓哉「誰がバカだとコラァっ!!」

 

 直人「バカにバカって言って何が悪いんだよ?」

 

 和人「だから!なんで会って早々喧嘩になるんだよっ!!」

 

 和人が2人の中を割って入って喧嘩を止めた。

 

 珪子「あの…この方は…?」

 

 直人「あ、すみません。

 いきなり現れて…みなさんに失礼しちゃったみたいで…。

 僕はそこのバカの弟の茅場直人です。

 よろしくお願いします」

 

 里香「…拓哉とは性格が真逆な好青年ね」

 

 明日奈「本当…。拓哉君の方が弟に見えるぐらい大人びてるわ」

 

 拓哉「誰が子供っぽいだゴラァっ!!」

 

 瞬間、拓哉の頭に何かボールのようなものが当たった。

 頭を抑えながら振り向くとそこには木綿季と藍子の姿があった。

 

 木綿季「明日奈をいじめちゃダメだよ拓哉!!」

 

 拓哉「…どこをどう見ればそんな風に見えんだよ!!」

 

 藍子「あ、な、ナオさん!!?」

 

 直人「藍子さん!こんにちは…!」

 

 藍子「は、はいっ!!こ、ここ、こんにちは…!!」

 

 藍子は直人の前では緊張が一気に最高潮にまで達してしまう為、上手く滑舌が回らない。

 木綿季は常日頃から姉に早く直人と付き合っちゃえばいいのにと真剣に考えていた。

 直人は誠実で拓哉と同じくらい優しいからきっと藍子の事も幸せにしてくれるであろう自信もあるくらいだ。

 

 直人「じゃあ、兄さん。

 僕は先に帰るけど、夕飯までには帰りなよ」

 

 直人はそう言い残して家へと帰っていった。

 

 拓哉「分かってるよ!お前はオレの女房かっ!!」

 

 木綿季「女房になるのはボクだよっ!!」

 

 拓哉「それも分かってるわっ!!!」

 

「「「あ…」」」

 

 一瞬、その場の雑音が完璧に遮断された感覚に陥った。

 拓哉も何が起きたか分からなかったが、木綿季の頬を赤くした顔を見て改めて自分の発言にどんな意味があったのか理解する事になる。

 

 木綿季「ぼ、ボクも分かってるけど…面と向かって言われると…さすがに恥ずかしいよ…///」

 

「「「…あまっ」」」

 

 拓哉「うっせっ!!!!」

 

 そんな事をしている内に直葉が到着した。

 明日奈とは面識はあったが他のみんなは知らなかった為、自己紹介をしてもらう事にした。

 

 直葉「和人の妹の桐ヶ谷直葉です!みなさんよろしくお願いします!」

 

 珪子「…」

 

 里香「どうしたのよ?」

 

 珪子は直葉と自分を見比べて似ている所を探してみたが、そんな所どこにもなかった。

 髪型も違えば、身長も違う…そして、何より違うのが直葉は巨乳で自分は貧乳であるという衝撃的な事実。

 

 珪子「…はぁ…」

 

 木綿季「珪子…。分かるよ?その気持ち…」

 

 同じ貧乳同士で妙な絆が生まれた瞬間だった。

 大分、大所帯になってきたのでショッピングモールから出てアーケード街へと赴いた。

 すると、前からガラの悪い輩が拓哉達を囲むようにして立ち塞がった。

 

「おっ!?めちゃくちゃ美人じゃんっ!!」

 

「なぁ?オレらとどこかいかない?」

 

 明日奈「行きません。そこを通してください」

 

「そんな堅い事言わねぇでよぉ…!!友達も一緒にどう?」

 

 この男達は何が何でも明日奈達を連れていきたいようだ。

 

 木綿季「もう!しつこいよ君達!」

 

「あ?ガキ?」

 

「いやでも、こっちもレベル高いぞ…!!」

 

 今度は木綿季に男達の魔の手が伸びた。

 だか、その手を拓哉が掴み、木綿季に近づかせない。

 

「んだよテメェ…」

 

 拓哉「それはこっちのセリフだ。

 人の連れにちょっかいかけてんじゃねぇよタコ」

 

「テメェ調子に乗ってんじゃねぇぞゴラァっ!!」

 

「痛い目合いたくないならさっさと女残して消えろ」

 

 拓哉は掴んでいた腕を離し、木綿季達の前には立った。

 

 拓哉「消えんのはそっちだろーが!この三下風情がっ!!」

 

 

「あっそ…オーケーオーケー。なら、死んどけやぁっ!!!」

 

 男達が一斉に拓哉に攻めてきた。

 拓哉はそれを身のこなしだけで全て躱していく。

 

 拓哉「外面ばっか気にしてっからトロイんだよ。

 あ、外面も大した事なかったね。ごめーん」

 

「クソがぁっ!!」

 

 さらに攻めてきても結果は変わらない。

 男達は頭に血が上り、隠し持っていたナイフをちらつかせる。

 

「ズタズタにしてやる!!」

 

 木綿季「拓哉!!」

 

 拓哉「大丈夫。心配すんなって…!」

 

 拓哉が木綿季を見た瞬間を狙って男がナイフを拓哉に突きつけた。

 拓哉が向き直った時には既にナイフとの差は数cmまで迫っていた。

 

 木綿季「っ!!?」

 

 木綿季は声にならない悲鳴を上げた。

 目の前には鈍い音が鳴り、地面には血が1滴、2滴と零れている。

 

「…ぐ」

 

 拓哉「…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐあぁぁぁぁっ!!」

 

「「「えっ!!?」」」

 

 血を流していたのはナイフを持っていた男の方だった。

 拓哉は瞬間ナイフを鞄で防ぎ、刃を折ってその破片が男に刺さっていたのだ。

 

 拓哉「使い慣れねぇもん使うからそんな事になるんだよ…」

 

「このっ!!?」

 

 拓哉「あ?まだやんのか?

 次はこれの比じゃない程めちゃくちゃにしてやるかよ…。

 覚悟がある奴からかかってこいや!」

 

 男達は拓哉の威勢に恐怖して、その場に経たり込んだ。

 しばらくして、連絡した警察が来てその男達は連行されていった。

 すると、その場に拓哉のよく知る人物が居合わせた。

 

「あ?なんでまたテメェがここにいるんだよ?」

 

 拓哉「げっ!銭形…!!」

 

 銭形「さんをつけろと言うとろぉがっ!!この糞ガキ!!」

 

 拓哉は銭形という警察官にゲンコツをくらった。

 木綿季達はその光景を見て呆然としていた。

 

 拓哉「いってぇぇ!!警官が善良な一般市民殴っていいのかよ!?」

 

 銭形「お前のどこが善良な一般市民だ!!

 …まぁいい。今回はアイツらが悪いみたいだしな!!」

 

 木綿季「あ、あの…」

 

 銭形「ん?おぉすまんな。この鼻タレ坊主とは昔からの中でな!

 私は銭形平八巡査部長であります!」

 

 銭形は敬礼をしながら木綿季達に挨拶をする。

 つい釣られて木綿季達も敬礼をしてしまう。

 

 和人「あの、拓哉とはどういう…」

 

 銭形「三年前の9月ぐらいか。

 コイツはあちこちで暴力沙汰を引き起こしては相手を半殺しにしてたんだよ。その時に私が補導したのが始まりだな」

 

 里香「…本当に不良だったのね」

 

 拓哉「そんなんじゃねぇよ。

 …ただあの頃はイライラを何処にぶつけていいか分かんなかっただけだ」

 

 木綿季「…」

 

 銭形「…では、本官はこれにて失礼します!

 お前ももうこんな危ねぇ事すんじゃねぇぞ…。

 大事なモン無くしちまうぞ?」

 

 銭形は拓哉に一言告げ、パトカーで警察署へと向かって行った。

 

 拓哉「…いやー怒られた怒られた」

 

 和人「お前はどこでも無茶するな…」

 

 珪子「本当ですよ!物凄く恐かったんですから!」

 

 拓哉「まぁまぁ、詫びと言っちゃなんだけど今日はオレの奢りで好きなモン食わせてやっから!それで勘弁してくれ」

 

 拓哉がそう言った瞬間、全員一致で焼肉に行く事になった。

 流石に制服じゃ匂いなど付くので、一旦帰ってから現地集合にする事になった。

 全員が帰り道を歩いていると最後尾で木綿季が拓哉の袖を握った。

 

 拓哉「どうした?」

 

 木綿季「…拓哉も血…出てるよ…?」

 

 拓哉が左手を見ると確かにナイフで切られたのであろう切り傷から血が流れていた。

 

 拓哉「ありゃ。完璧に避けたつもりだったんだけどな…。

 まぁ、こんなの唾つけときゃ…」

 

 木綿季「ダメだよ!ちゃんと治療しないと…う…」

 

 拓哉「木綿季?」

 

 木綿季「もう…こんな事しちゃ嫌だよ…。

 恐かった…恐かったよぉ…」

 

 木綿季は我慢しきれず涙を流した。

 拓哉も今になってその涙の意味を理解した。

 ここはSAOではない。どんな些細な怪我も死に繋がっている。

 

 拓哉「悪かったよ…。もうこんな真似はしねぇ。約束だ…」

 

 拓哉は木綿季に小指を差し出し、木綿季の小指を結び約束を交わした。

 

 里香「ほらー2人共ー!早く来ないと置いて行っちゃうわよー!!」

 

 拓哉「…行こうぜ。みんなに置いていかれちまうよ!」

 

 木綿季「…うん!」

 

 拓哉と木綿季は前を歩いていた友達の元へ走っていった。

 これからの日常は誰にも邪魔させないと拓哉は心の中で誓いを立てた。




いかがだったでしょうか?
警官出す時、ふと頭によぎった銭形警部をモデルに出してみました。
ちょくちょく別作品のキャラや、モデルにしたキャラを出していこうかなと考えています。


では、また次回!
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