ソードアート・オンライン-君と共に在るために- 作:ちぇりぶろ(休載中)
今回からオリジナルストーリーとなっていますので私も面白く出来るように頑張っていきます。
ちなみに今回はバトルメインです。
では、どうぞ!
【33】特訓
2025年04月30日 12時30分 SAO帰還者学校
桜も散り、若々しい青葉が芽吹き始めた。
地球温暖化の影響もあってか妙に日照りが強い今日、拓哉は自分の机で寝ていた。
明日奈「拓哉君。もう昼休みになっちゃったよ?」
里香「てかコイツ…朝からずっと寝てんじゃない。
どうなってんのかしらねぇ…」
明日奈と里香はため息混じりに会話している。
学校が始まって3週間。
拓哉はそのほとんどを寝てすごしていた。
度々、施恩や他の先生から注意を受けてはまた寝るの繰り返しだ。
このまま誰も拓哉を起こさなければ放課後までずっと寝ているだろう。
まるで、SAOで寝る暇も惜しんでレベリングをしていたツケを今消費しているかのようだ。
明日奈「和人君もよく寝てるけど、拓哉君程じゃないし…」
里香「へっへっへ…顔に落書きしちゃお〜」
明日奈「そ、それはさすがにちょっと…」
明日奈が里香を止める頃には既に水性ペンで里香が拓哉の顔に落書きしている最中だった。
明日奈もどうなっても知らないよと里香に言い残し、和人と昼食を共にすべく中庭へと向かっていった。
入れ違いざまに廊下から木綿季が勢いよく教室に入ってきた。
木綿季「あ!やっぱりまた寝てる!拓哉!起きてよ!!」
拓哉「…ん?…あれ?もう昼休み?」
拓哉は欠伸をして重たい瞼を擦る。
木綿季「もう!いっつも来るの遅いからボクが迎えに来て…」
拓哉「悪い悪い。どうも眠たくて仕方ねぇや…。
って、木綿季?どうしたんだ?オレの顔に何かついてんのか?」
木綿季は拓哉の顔から視線を逸らし、口元を手で覆う。
里香も我ながら上出来と言った表情をしている。
拓哉には全く理解できないが、里香から渡された手鏡で自分の顔を覗き込んだ。
拓哉「…」
木綿季「ぷっ…ふふ…」
里香「ふふ…どう?ご感想は?」
拓哉はプルプルと身体を震わせながら里香を鬼の形相で睨む。
拓哉「里香…テメェの仕業か!!」
里香「ふ…あはははははっ!!!!」
木綿季「あはははははっ!!!!拓哉!!何その顔…ははははっ!!!!」
里香と木綿季は堪えきらず、腹を抱えて笑い転げた。
木綿季に至っては笑いすぎて過呼吸になっているくらいだ。
拓哉「笑い事じゃねぇぇぇぇっ!!!!」
里香「だって…めちゃくちゃ面白くて…ふふ…ははははっ!!」
拓哉「お前がこれやったんだろっ!!!あーくそっ!!!顔洗ってくる!!!」
拓哉は急いで手洗場へと向かい、顔の落書きを消した。
木綿季もそれに笑いを必死に堪えながら付いてきている。
拓哉「ったく…里香の野郎!!ろくな事しやがらねぇな…!!」
まだ水性ペンでよかったものの、油性ペンで書かれた日にはもう外を歩く事すら出来なかったハズだ。
そこに里香の優しさが感じ取られる。
最も、落書きなんかしなければこんな事にもなってないのだが。
木綿季「あー笑った笑った!!今度またしてもらおうよ!!」
拓哉「2度とやるかそんなもん!!」
顔を洗い終わり鏡で自分の顔を確認する。
拓哉「よし…もうついてねぇな。んじゃ、もう一眠り…」
木綿季「その前にご飯でしょ!!」
拓哉「あ、昼休みだったっけ?
じゃあ、どこか空いてる場所に行くか?」
木綿季「拓哉が顔を洗ってたせいで後20分もないから拓哉の教室で食べよ?」
時計を見れば12時50分。5限が始まるのが13時10分からなので空いている場所を探している時間などない。
仕方なく、拓哉と木綿季は教室に戻った。
教室に戻ると里香と珪子が昼食を共にしている。
正確にはもう食べ終わり2人で他愛もない会話をしていた。
珪子「あ!拓哉さん!こんにちは!」
拓哉「よぉ!珪子。
珍しいな…
珪子「私も里香さんとカフェテリアで食べようと思ったんですけど、人が多すぎて席が空いてなかったんですよ」
里香「だから、カフェテリアから近いここで食べてたって訳!
…顔の落書き消しちゃったのね。珪子にも見せてやりたかったわ。
あの時の拓哉の顔ったらそりゃもう…ふふ…」
拓哉「里香…後で覚えてろよコラ…」
とりあえず時間がもったいないので席に座って木綿季の手作り弁当を頂く。
木綿季は学校の日には決まって拓哉の為に弁当を作ってきていた。
中身も手の込んだ物ばかりで、朝早くから作ってきてくれている事に拓哉は感謝している。
拓哉「今日も美味しそうだな!いただきます!」
木綿季「色々作ったからいっぱい食べてね!はい、あーん…」
拓哉「ば、バカっ!?ここ教室なんだから周りの目が…!!」
木綿季「えー!別に気にしないよ?いつもやってる事だし」
フォークで指したミートボールを拓哉の口に運ぼうとするが、拓哉は頑なにに断り続けた。
すると、木綿季が涙目になってしまい顔を赤くしながらも仕方なくそれを受け入れた。
木綿季「どう?美味しい?」
拓哉「…恥ずかしすぎて分からねぇ」
里香「あーあ…見せつけちゃってくれるわねぇ…
あーブラックコーヒー飲みたい!」
珪子「いいなぁ…」
さすがに木綿季も顔を赤くして2人は急いで弁当の中身を胃の中へと追いやった。
予鈴5分前になると明日奈が教室に戻ってきた。
明日奈「あ!木綿季!珪子ちゃん!来てたんだね!」
木綿季「あ、明日奈!!」
珪子「お邪魔してます!」
明日奈「2人共、時間は大丈夫?」
木綿季&珪子「「あ…」」
木綿季と珪子は弁当を持って自分のクラスへと全速力で走っていってしまった。
ここ高等部と木綿季と珪子のいる中等部まで歩いても10分もかかってしまう為、走らなければ5限に間に合わない。
明日奈もそれを考えた上でスケジュールを組んでいるのだ。
明日奈「あ、そうだ…2人共。
今度ALOで始まるイベントの話って聞いた?」
里香「イベント?どんなの?」
明日奈「なんでも、運営がユーミルに移った記念のイベントなんだけど…9つの種族が入り混じって戦うバトルロワイヤルだって」
拓哉「バトルロイヤルねぇ…。で、それがどうしたんだよ?
和人の事だ…どうせ参加するんだろ?」
あの廃ゲーマーの和人が見逃す訳もなく、拓哉は明日奈に問うた。
明日奈「うん。優勝賞品も豪華だから和人君も参加するって…。
でも、そのイベントの条件が2人1組のパーティらしいの」
里香「うわぁ…なら、参加者も増えるんじゃない?」
人数が増える事には否定はしないが、参加者の数が多すぎてもその人数が戦闘を行える場所がなければ成り立たない。
明日奈「だから、予選を行って上位12組が本戦に進出出来るの」
拓哉「随分大掛かりだな…」
今現在ALOプレイヤーがどれだけいるか分からないが、相当数の参加者が募る事だろう。
明日奈「その予選が5月10日にアルンの浮島で行われるって和人君が言ってた」
里香「へぇ…面白そうね。明日奈も和人と一緒に出るんでしょ?」
明日奈は頬を赤くしながらもコクリと頷く。
明日奈「そのつもりだよ。
せっかくだし、みんなにも聞いておこうと思って…」
拓哉「オレも出るぜ!」
里香「私も!珪子を誘って出るわ!」
明日奈「じゃあ決まりだね。予選までみんなで特訓しようよ!
和人君と拓哉君はSAOのキャラデータ消しちゃったから大変かもしれないけど…」
明日奈の言う通り、拓哉と和人はALOをプレイし始める際にSAOのキャラデータを消去していた。
理由は些細なもので、ALOを最初からプレイするに当たってまた1から鍛え直したいと言うのもあったし、SAOのタクヤとキリトはALO事件が解決して本当の意味で役割を終えたのだ。
あれは文字通り自分の命を守る為、2年間も鍛えに鍛えたキャラだ。
そのデータをALOで使うのは少し違う気がしてならない。
木綿季や明日奈達は今もSAOのキャラデータをALOにコンバートして使用している為、初期からステータスは高い。
そこに追いつくとなれば、結構な重労働が2人を待っているに違いない。
拓哉「そうだな…。今日から早速特訓だな…」
そんな話をしている間に本鈴が鳴り、5限の現代文担当の施恩が教室に入ってきて、授業が始まった。
2025年04月30日 17時30分 茅場邸 拓哉自室
ユーミルにALOの運営が移動した事により、ALOの時間も現実世界と同期された。
拓哉は早速、アミュスフィアを被り、ALOにダイブする。
拓哉「リンクスタート!!」
タクヤが目覚めたのはイグシティにあるタクヤのプレイヤーホームだ。
本当は新生アインクラッドの40層にあるログハウスを購入したい所だが、まだ20層までしか解放されていない。
仕方が無いのでそれまでの間はイグシティにあるここを拠点にする事にした。
タクヤ「集合まで後30分か…。散歩にでも行くか…」
タクヤはホームを後にして翅を羽ばたかせた。
イグシティを降りてアルンの上空を飛行していると、前方に戦闘を行っているプレイヤーがいた。
どうやら押しているのは
タクヤ(「
リーファと引けを取ってないぞ…」)
タクヤが知る限り、
だが、リーファは長年の経験から来る強さだが、今戦闘を行っている男性プレイヤーは見る限り
まるで、野生の動物のような本能で戦っているようだった。
「く、くそっ!!いきなり襲ってきやがって!!
俺が一体何したって言うんだ!!?」
「…お前が俺の前を横切ったからだ」
「!!…たった、それだけの理由で…」
ダメージを受けているプレイヤーが言い終わる前に両手剣で体を真っ二つにしてしまう。
タクヤ「アンタ…すげぇな」
「…誰だ?」
タクヤ「タクヤって言うんだ。あんな剣撃見た事なかったよ」
「…失せろ。貴様には関係の無い事だ」
男性はその場を去ろうとするが、タクヤが前に先回りにしてそれを阻む。
タクヤ「待てって!…アンタの腕を見込んで頼みがあるんだけどよ。
ちょっと特訓に付き合ってくれねぇ?」
「…」
すると、男は剣を抜き、タクヤに斬りかかった。
タクヤは自分も剣を抜いて何とか持ち堪える。
タクヤ「協力的でありがてぇよ…!!」
「俺の邪魔をするヤツは生かしておかん」
距離を置いて先に攻めたのはタクヤ。
ステータスが初期化しても戦闘技術が落ちる事などない。
一撃目を受け止めた所をタクヤはホバリングさせ男の上を取った。
右手の"スターナイトウォークス”を強く握りしめ、男の首を躊躇なく斬り掛かる。
「…!!」
タクヤ「…まさか、今のを防ぐのかよ」
男は瞬時に翅を消滅させ、紙一重の所でタクヤの攻撃を躱してみせた。
男の顔は先程よりも眉間にシワが寄っている。
瞬間、タクヤの目の前から男の姿が消えた。
タクヤ「っ!?」
目で追いきれない程のスピードでタクヤを撹乱する。
そして、ヒットアンドアウェイでタクヤに剣撃を叩きつける。
「ふんっ!!」
タクヤ「そらぁっ!!」
最後の一撃をなんとか受け止めたが、タクヤの
「…お前…本当に初心者か?」
タクヤ「ALOじゃあ…なっ!!」
タクヤは剣を男の剣の刀身を滑らせ、なんとか間合いを取る。
タクヤ(「技術面はオレと大して変わんねぇ…。
だが、ステータスが如何せん足りねぇ…!!」)
初期化した事で、タクヤの十八番の体術も相手にダメージを与える事は出来ない。
片手用直剣スキルも"スターナイトウォークス”の要求する数値に辛うじて届いているといった所だ。
SAOのような芸当はもう二度と出来ないが、今はそれに近い戦闘も出来ない。
誰が見ても勝敗はタクヤが圧倒的なまでに完敗であろう。
タクヤ「だからって…諦めたらカッコ悪ぃよなぁっ!!」
「…」
タクヤが斬りかかろうとした瞬間、男は剣を鞘に収めた。
それを見てタクヤも動きを急停止させる。
タクヤ「…どういうつもりだ?」
「これ以上お前と戦っても意味は無い…。万全の状態で挑んでくるんだな」
タクヤ「…名前は?」
キング「…キング」
キングと名乗った男はそのまま翅を羽ばたかせ、ノーム領の方角へと飛んでいった。
タクヤ「キング…か…」
タクヤは夕日が沈みきったアルンの上空でキングの後ろ姿を見えなくなるまでその場を動こうとはしなかった。
2025年04月30日 18時25分 イグシティ プレイヤーホーム
リズベット「おっそーい!!一体どこで何してたのよ!!?」
プレイヤーホームの扉を開いた瞬間、耳の奥までリズベットの声が響いた。
タクヤ「ちょっと…散歩に…」
リズ「信じらんない!!アンタは待つって事知らないの?
自分が集合時間まで決めたくせに!!」
イグシティ中に響き渡るような大音量でリズは叫んだ。
それを見かねたアスナとキリトが仲裁に入る。
アスナ「まぁまぁ、リズ。それぐらいにしてやろうよ…」
キリト「タクヤも別に悪気があったんじゃないんだよな?」
タクヤ「悪気はなかった…。ただちょっと忘れてただけだ」
リズベット「なお質が悪ぅぅぅぅぅいっ!!!!」
リズが軽く錯乱しているのをシリカとリーファが介抱にあたる。
ユウキ「タクヤ!!ちゃんと謝んないとダメだよ!!
今回は約束を破ったタクヤが悪いんだから!!」
タクヤもそこについては自分が悪いと思っていた為、リズの所へ行き素直に謝る。
リズベット「…なら、今度ALOで最上級の鉱石を山のように採ってきてくれたら許してあげる」
タクヤ「わかったよ…。すまなかったな」
ユウキ「よし!仲直りした所で早速大会に向けて特訓だー!!」
「「「おぉぉぉっ!!!!」」」
ストレア「特訓って具体的にどうするの?」
確かに、計画も何も立てていないタクヤ達はストレアの一言で我に返った。
タクヤ達はソファーに腰を下ろし、特訓の計画を立てる事にした。
キリト「まずは編成だな。オレとアスナ…、タクヤとユウキ…、リズとシリカ…、ストレアとリーファって所か」
アスナ「後、クラインさんとエギルさんも出るって言ってたよ?」
シリカ「私達だけでもう5組ですね…。
本戦に出場出来るのは12組…。勝てるでしょうかリズさん?」
リズベット「そんなの当たって砕けろ精神でガンガン行くわよ!!
シリカもちゃんと付いてきなさい!!」
リズベットいつもに比べて妙にテンションが上がっている。
おそらく、優勝賞品のレア鉱石が欲しいだけだろうが。
リーファ「私達も出場できますかねストレアさん?」
ストレア「大丈夫だよ〜。
なんて言ったって私達はこんなに大きいんだから〜」
ストレアはリーファの後ろに回り込み、両手で覆いきれない程の胸を揉んだ。
キリトとタクヤには刺激が強いのでアスナとユウキがすかさず2人の目を手で隠す。
リーファ「ちょ、どこ触ってるんですかぁっ!!?」
シリカ「す、ストレアさん!?何やってるんですか!!」
ユウキ「巨乳なんかに負けないぞぉ!!!!」
アスナ「ユウキも何言ってるの!!?」
何とも締まらない話をしている間にも、他の参加者は努力していると言うのに…と視界が真っ暗になりながらも先の事が心配になってくるタクヤとキリトであった。
いい加減話を戻さなければ特訓も出来ないのでキリトが咳払いをして空気を入れ替える。
キリト「と、とにかく…今回のイベントはPvPだ。
ALO勢やSAOの攻略組は慣れているがリズとシリカ…後ストレアも対人戦に慣れておいたほうがいい。
そこで3人には今日からオレ達全員と
リズベット&シリカ&ストレア「「「えぇぇぇっ!!!」」」
アスナ「大丈夫だよ。
半減決着モードでも充分経験値として自分に返ってくるから。
私達も手加減するし…」
タクヤ「注意するとしたら大会は
地形物を利用した戦い方も身に付けねぇとな!」
言葉にして並べてみると10日間でどれだけ自分を高められるかの難しさを改めて思い知らされた。
タクヤ(「願わくば…キングとの再戦だな…」)
タクヤがALOで初めてPvPを行った相手。
その実力はSAOでの攻略組と引けを取らない。
タクヤは悔しい反面嬉しいという気持ちで満たされていた。
タクヤ(「今のままじゃアイツには勝てねぇ…!
もっと強くならねぇと…!!」)
ユウキ「どうしたの?」
タクヤ「いや、何でもない…。よっしゃ!早速特訓だ!!」
タクヤ達はイグシティを後にしてアルン付近の草原フィールドへとやって来た。
見晴らしがよく、他のプレイヤーが近づいてきてもすぐに分かる。
タクヤ「組み合わせはクジで決めるからな。
って言っても、全員1回ずつ当たるんだけどな」
リズベット「それじゃあクジの意味無いじゃない!!」
タクヤ「まぁ、こういうのは順番も戦略の内だ。
他の奴の戦い方を学んで自分のスタイルに昇華するんだ」
ストレア「なるほど〜」
タクヤは数字の書いた棒を人数分取り出し、みんなに一斉に引かせた。
キリト「オレは1番だな」
タクヤ「ほほー1番ですかー?」
キリト「…なんだよその喋り方は?」
すると、タクヤはキリトと距離を置き、鞘から剣を抜き出す。
タクヤ「御手柔らかに頼むぜ…黒の剣士!!」
キリト「!!…なるほど。そういう事か!!」
キリトも鞘から剣を抜く。
黒い見た目と黒い刀身の片手用直剣を装備しているキリトは無理矢理にでもSAOでトッププレイヤーだった"黒の剣士”を思い出させる。
ユウキ達も2人から距離を置いて観戦に回った。
リーファ「いきなりお兄ちゃんとタクヤ君!!?」
リズベット「これだけでお金取れるわよ…」
タクヤ「随分と久し振りだな…こうして戦うのは…」
キリト「二刀流の熟練度上げの時以来だからな。
もう1年以上も前だ…」
互いに
カウントが始まり、剣を構えた。
3…2…1……0
0と同時に2人が地を蹴る。
そして、互いの剣が激しくぶつかった。
火花を散らしながらも互いに一歩も引かない。
タクヤ「…こんな事してたら埒があかないな!!」
タクヤはキリトと距離を置きに出た。
キリト「逃がすか!!」
タクヤ「逃げねぇよ!!」
キリトが距離を詰めようと地を蹴った瞬間、タクヤもキリトに突撃する。
思わず面食らったキリトは攻撃のタイミングが僅かにズレた。
だが、タクヤからしてみればこの僅かなズレに勝機を見出す。
タクヤの刀身がキリトの体を右斜めに深く斬り刻んだ。
キリト「ぐっ!!」
なんとか態勢を整えたキリトだったが、タクヤは息付く暇も与えず攻撃の手を休めない。
キリト「な、なんて奴だ!!」
タクヤ「どうした?こんなもんかよぉっ!!」
アスナ「頑張れーキリト君!!」
ユウキ「そのままいけータクヤ!!」
キリトは防戦一方でタクヤの攻撃を防ぎ続ける。
タクヤも痺れを切らしたのか最後の一撃が大振りになってしまった。
キリト「!!」
瞬間、タクヤに隙が生じた。
タクヤも気づくがキリトの黒刀がタクヤの脇腹を斬った。
そこで
キリト「ハァ…ハァ…」
タクヤ「ハァ…ハァ…参った」
キリト「これでオレの52勝目だな…」
タクヤ「まだ覚えてたのかよ…」
タクヤはキリトの手を借り、立ち上がるとユウキとアスナが2人の元へ駆けつけた。
アスナ「お疲れ様キリト君!」
キリト「あぁ。ありがとうアスナ」
ユウキ「もう!油断してるからだよ!!」
タクヤ「…そこは労いの言葉をかけるべきなんじゃ」
ともあれ、2人の接戦にはリーファ達も驚きを隠せなかった。
SAOでトッププレイヤーとして名を馳せていた2人の本気の姿を見るのはなかなか貴重な経験だ。
今回はキリトに軍配が上がったが、次戦えばどうなるかなんて予想出来る者はいないだろう。
リズベット「私達の時も本気でやるつもり?」
シリカ「怖すぎます…」
タクヤ「大丈夫だよ。ちゃんとそれなりに手加減するって…多分」
リズベット「あー!!今多分って言った!!
手加減してくんないと特訓にならないんだけど!!」
キリト「冗談なんだから気にするなって…。
じゃあ、次の組み合わせは?」
キリトが次の
対戦カードはユウキとリーファだ。
シリカ「2人共頑張ってください!!」
ストレア「頑張れ〜!!」
ユウキ「リーファとやるのなんて初めてだね。よろしく!」
リーファ「よろしくお願いします!」
互いに剣を構え、カウントが刻一刻と迫っていた。
3…2…1…0
ユウキ「っ!!」
先に前に出たのはユウキ。
リーファは剣を上段に構え、ユウキを迎え撃つ。
ユウキの剣閃がリーファの胴を捉えた。
リーファ「やぁぁぁっ!!」
リーファもユウキの攻撃を左へステップインして回避する。
そして、不安定な状態のユウキにリーファの剣が真っ直ぐに振り降ろされた。
ユウキ「!!」
リーファ「え?」
リーファは何が起きたのか数秒理解出来なかった。
気づけば真っ直ぐに振り降ろされたハズの剣は自身の頭の上まで押し戻されている。
リーファは考えるよりもまず距離を置く。
だが、ユウキはリーファとの間合いを一足飛びで詰めてきた。
リーファ「!!?」
ユウキのスピードは速いという次元の話ではない。
端から端までワープでもして来たかのように目で追いきれない。
ユウキは推進力を付けて剣の一撃を重くする。
ユウキ「やぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
リーファも防御しようと魔法の詠唱を唱えたが、それが発動する前にユウキの連続突きがリーファを捉えた。
一撃のみでは大して威力はないが、それを複数撃纏められればそれは必殺技と言われるが如くの破壊力を秘める。
タクヤにはその攻撃…いや、技を見た事がある。
ユウキがかつてSAOの世界で誰かを守る時のみ使用していたユニークスキル…。
絶剣スキル"マザーズ・ロザリオ”
それを食らったリーファのHPは一瞬でレッドゾーンにまで落ち、
ユウキ「ボクの勝ちだね!」
リーファ「…え?もう終わり?」
どうやら一瞬の出来事だったようで、何が起きたのかリーファには分からなかったようだ。
タクヤ「ユウキ…あれって…」
ユウキ「うん。
マザーズ・ロザリオを再現したつもりだったんだけど…システムアシストなしじゃあの速さが限界だったよ」
アスナ「それにしては完成度が高かった…。
すごいよユウキ!!」
ユウキ「え?そ、そうかな?えへへ…」
ユウキは笑っているがいざ敵に回すとこれ程怖いものはごく僅かだ。
タクヤは改めてユウキには逆らえない事を思い知らされた。
キリト「じゃあ、次は3戦目だな」
ストレア「私だよ〜!!」
アスナ「よろしくストレアさん!」
ストレアとアスナが前に出て
パワーでは
アスナはALOに来てまだ日が浅い。
魔法をどれだけ自在に操れるかが勝負の鍵となるだろう。
ストレア「準備OKだよ〜」
アスナ「じゃあ、申請するね」
3…2…1…0
ストレア「いっくよ〜!!」
ストレアは両手剣を握り締め、アスナに突撃をかけた。
アスナは初級魔法で迎え撃つが、ストレアにはあたらず徐々に間合いを詰められてしまう。
アスナ(「やっぱりまだ魔法スキルが低い…!!だったら…」)
アスナは細剣を鞘から抜き、ストレアとの距離を大幅に取った。
ストレア「魔法はもう撃たないの?」
アスナ「ストレアさんには効かないみたいだから。
でも…代わりにこれを撃つわ!!」
アスナは十分に取った距離を助走路として使い、ストレアに突撃をかけた。
アスナのスピードが加速していく。
SAOではその剣技から"閃光”の異名を持っていたが、このALOの世界でもそれは健在のようだ。
ストレアも敢えて自分から近づこうとはせず、アスナを迎え撃つ。
アスナ(「私は…もう…守られるだけなんて嫌…!!
私もみんなを…キリト君を守れるだけの力が欲しい!!」)
アスナがALOで初めて見た光景は鳥籠の中からだった。
籠の外には自由に飛び回る小鳥や雲があるのに、自分はここから出られないという不安がアスナを蝕んでいた。
だが、キリトの助けでアスナは鳥籠から解放された。
一方でアスナは自分がキリトに頼りっきりで守らないといけない弱き者として見られているのでないかという別の不安を抱いた。
だから、その不安を払拭する為にもこの大会でキリトと共に勝ち進み、互いが互いの背中を守れるだけの存在にならなければいけない。
それが、アスナの…結城明日奈の矜持でもあるからだ。
アスナ「やぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
アスナはまるで、巨大で鋭い鋼の矢のように速く、強く、貫く。
ストレアも両手剣で受け止めるが、最高速から生まれた貫通力を止めきれる程のパワーはストレアにはない。
両手剣は宙を舞い、ストレアの胴を射抜かんばかりに細剣がストレアに襲う。
キリト「アスナ…!!」
土煙と共に2人の姿が消える。
ストレア「…参ったよ。
アスナはストレアを射抜く寸前で細剣を止めていた。
もし、あの攻撃を直撃していたならストレアは今頃
ストレアが降参した事で
シリカ「お疲れ様でした!」
リズベット「すごいわね!
なんかこう強い気持ち?…みたいなの感じたわよ!!」
ストレア「あ〜!!くやし〜い〜!!」
ユウキ「2人共お疲れ様!!すごいワクワクしちゃったよ!!」
アスナ「ありがとうみんな…!」
アスナは横目でキリトに視線を送った。
キリトはタクヤと特訓のスケジュールを組んでいたが、それでも構わない。
今の最高の自分を見せれたという達成感がアスナの中にはある。
この気持ちを本戦でも出せるようにしなければキリトの背中を守る事など到底出来ない。
アスナ「…頑張らなきゃ!!」
キリト「じゃあ、最後は…リズとシリカだな」
リズベット「うぅ…」
シリカ「…」
最後の組み合わせにも関わらずリズベットとシリカは項垂れていた。
タクヤ「どうした?」
シリカ「だって…みなさんのすごい
リズベット「なんか…妙なプレッシャーがあるのよねぇ…」
タクヤ「気にしたら負けだぞ2人共?
リズにはリズの…シリカにはシリカの戦い方があるんだ。
それをこの特訓で見つけていけばいい。
1つでも自分の強みを見つけられたらオレ達なんて大した事ないやって思っちまうからよ!!頑張ってこい!!」
タクヤは2人の背中を押して前へ出させる。
2人もタクヤの一言で決心したのか、先程よりも表情が柔らかくなった。
ユウキ「…タクヤは女たらしだね」
タクヤ「なんでっ!!?」
2人は
シリカ(「私の戦い方…」)
ピナ「きゅるるっ」
シリカ「…ピナ。…そうか私だけの戦い方…!!」
リズベット「…」
リズベットは目を閉じ、今までの経験を総動員させる。
リズベット(「…私は鍛冶師。さらに武器の特性を知り尽くしたマスターメイサー…。なら…!!」)
3…2…1…0
シリカ「ピナ!バブルブレス!!」
先攻を捕ったのはシリカ。
間髪入れずピナにバブルブレスの指示を出した。
シリカは
これは
リズベットは泡を消しながらシリカに近づこうとするが泡は凄まじい早さでリズベットの接近を阻む。
リズベット「あー!鬱陶しいわね!」
シリカ「リズさん!今日の私は一味違いますよ!!」
リズベット「お子様が言ってくれるじゃない…!!」
シリカはピナで牽制しつつリズベットに近づいてくる。
リズベット(「泡が消せないなら…」)
リズベットは後ろへ回避してシリカが接近するのを待った。
シリカもこれに気づき、リズベットへの接近を躊躇った。
ピナのバブルブレスは一定時間しか効果を発揮しない為、泡が徐々に無くなっていく。
シリカ「ピナ!ウォーターブレス!!」
ピナ「きゅるっ」
ピナは頬を膨らませ、リズベットに水鉄砲を発射した。
その威力は凄まじく、リズベットの足場を狙って撃った水鉄砲は地面に小さな穴を作り出していた。
リズベット「おっかないわね!」
リズベットの足場を中心にピナは水鉄砲を連射する。
躱し続けるにも限界があるが、リズベットもその事は充分に理解している事だ。
瞬間、ピナに気をとらわれていたせいでシリカの姿を見失ってしまった。
リズベット「しまっ…」
シリカ「遅いですよ!リズさん!!」
シリカはピナを囮にリズベットに急接近していた。
シリカの短剣がリズベットへと目掛けて振り抜かれる。
かぁぁんと鈍い音が反響した。
シリカ「!!」
シリカの短剣は胴を斬り裂く事が出来なかった。
代わりにリズベットが装備していた盾が目の前に立ち塞がっている。
リズベット「読み通りね!!
短剣はリーチが短い分接近しないと攻撃できないけど、0距離からでも連続攻撃出来る…。
けど、攻撃力は片手用直剣以下。
盾で十分に防御出来るわ!!」
リズベットはシリカが唖然としている隙に片手長柄を振り下ろした。
まともに食らってしまったシリカは吹き飛ばされる。
ピナがすぐ様ヒーリングブレスをかけようとしたが、ここで
リズベット「私の勝ちねシリカ!」
シリカ「うー…悔しいです」
シリカを起こしたリズベットは2人でタクヤ達の元へ戻った。
キリト「お疲れ2人共。なかなか様になってたじゃないか」
アスナ「リズもシリカちゃんもすごかったよ!」
リズベット「いやぁ…なんか無我夢中になっちゃったわ…」
シリカ「私もです…。
でも、私なりの戦い方は分かってきました!」
タクヤ「あぁ。2人共…自分のスタイルが見つかったみたいだし後は特訓あるのみだな」
気がつけば時刻は20時を過ぎていた。
今日はこの辺りで引き上げる事にした。
みんながイグシティに戻ろうとしていた時、タクヤはキリトを呼び出した。
キリト「なんだよタクヤ?」
タクヤ「キリト…。
キリト「アイツ?」
タクヤとキリトはユウキ達に遅れないように急かされながらもある事について話していた。
キリト「分かった。連絡してみる」
タクヤ「サンキュー」
「さっさとアイテムと金落としていけば助けてやってもいいぜ?」
「装備も忘れずに置いていけよ?」
「…」
薄気味悪い笑い声を上げながらも男は表情1つ変えず、静かに背中の両手剣を抜いた。
「おいおい。この人数を相手にしようってのか?」
「まぁ、コイツを殺っちまってもアイテムは落とすんだ。
それに…その方が面白いからなぁっ!!」
「…」
男達は四方から一斉に斬りかかってきた。
瞬間、彼らは飛びかかった方とは反対に吹き飛ばされた。
そして、そのまま
叫び声1つ上げられずに野盗は消え去ったのだ。
「…」
王者の風格を感じさせる佇まい。
誰にも媚びず、誰にも負けないという強い意志が感じ取れる。
「…」
「…退屈だ」
月明かりの下、キングは一言呟きそして、消えた。
いかがだったでしょうか?
新キャラにキングが登場しましたね。
めちゃくちゃ強くせっていしていますので戦闘の幅が一気に増えます。
では、また次回!