ソードアート・オンライン-君と共に在るために-   作:ちぇりぶろ(休載中)

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という事で39話目になります。
つい先日UAが2万を突破しました!
開いたら突破していたからつい変な声が出てしまいましたよ。
これからもよろしくお願いしますね!


では、どうぞ!


【39】解き放たれる力

 2025年05月12日 14時40分 妖精剣舞森林フィールド

 

 颯爽とキリトの危機に現れたのは予選決勝戦でキリトアスナペアと激闘を繰り広げたカストロであった。

 

 キリト「カストロ!!」

 

 カストロ「…」

 

 キリトの動きを封じていた泡を魔法で片付け、愛用の両手長柄を大樹から引き抜く。

 

 クライン「くっそー…あとちょっとだったのによぉ!」

 

 キリト「どうしてオレを…?」

 

 カストロ「…さっきも言った通り、あなたを倒すのは私の役目です。

 ここで死なれる訳にはいかないだけですよ」

 

 あくまでカストロはキリトの味方ではない。

 カストロ本人にキリトを生かす理由があっただけの事だ。

 キリトはそうだと分かっていてもカストロに礼を言った。

 

 キリト「もう1人の…アストラはどうしたんだ?」

 

 カストロ「アストラなら今頃どこかの”鬼"の所にいますよ」

 

 キリト「鬼?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 森林フィールド奥地_

 

 

 アスナ「ハァ…ハァ…」

 

 

 森深くまで追い詰められ、ダメージもHPの半分を持っていかれてしまったアスナはまさしく絶体絶命のピンチに陥っていた。

 

 リズベット「ここまでみたいね」

 

 エギル「俺ら2人によくやったもんだアスナ」

 

 アスナ「…まだ、勝負はついていませんよ?」

 

 虚勢である事は誰が見ても明らかだ。

 アスナ本人ですらこの状況を逆転できる手段はない。

 だが、だからと言って諦めているわけでもない。

 最後の刻まで自分らしく戦う。

 それがアスナがSAOで常に持ち続けていた誇りだった。

 

 アスナ「ふっ!!」

 

 アスナの細剣が鋭く、速く、リズベットを貫かんと放たれた。

 だが、左腕の(バックラー)で防がれ、リズベットの反撃を貰ってしまう。

 

 アスナ「ぐ…」

 

 さらに、エギルからの追撃も決められてしまいアスナのHPはレッドゾーンに差し掛かった。

 レッドに入るのはこれで3度目だ。

 入る度に回復魔法でどうにか凌いできたが今はその魔法すらMP不足で唱える事が出来ない。

 

 リズベット「もう回復は無理そうね…。

 アスナ、これで終わりよ。悪く思わないでね」

 

 リズベットが最後の攻撃に差し掛かろうとした次の瞬間、上空から巨大な氷塊が降り注いできた。

 

 リズベット「な、何よあれっ!!?」

 

 エギル「リズベット!一旦逃げるぞ!!」

 

 アスナ(「これは…」)

 

 次第に氷塊は無数に砕け散り、アスナとリズベット、エギルを分断する形で地上へと落下した。

 

 リズベット「一体何なのよ…!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「その人は誰にも譲りませんよ!!」

 

 

 リズベット&エギル&アスナ「「「!!!」」」

 

 上空から優雅に氷塊の上へと降り立ち、愛しき人と同類の両手長柄を備え、アストラはリズベットとエギルを敵視する。

 

 アスナ「アストラさん?…なんで?」

 

 アストラ「カストロ様からのご命令です。

 私は別にあなたを助けたかった訳じゃありませんけど、カストロがどうしてもとおっしゃいましたので仕方なく助太刀に馳せ参じました」

 

 アストラはいろいろと理由をつけてはいるが、アスナは素直に嬉しいと感じた。

 大樹にもたれ掛かりながらもなんとか立ち上がり、アストラの近くによる。

 

 アストラ「あなたはMPとHPの回復だけに専念していて下さい。

 その間は私が時間を稼ぎますので…」

 

 アスナ「本当にいいの?」

 

 アストラ「仕方ないです。

 全てはカストロ様がお決めになられましたから。

 それに…」

 

 アスナ「?」

 

 その声はとても小さく、だが確かに心にくる言葉だった。

 

 アストラ「あなたを倒すのは私です。

 それまでは何としてでも生き残っていてくれないと…!!」

 

 瞬間、アストラの周囲に無数の魔法陣が展開されていた。

 

 リズベット「詠唱もなしに…!!」

 

 エギル「聞いた事がある。

 水妖精族(ウンディーネ)は魔法スキルが1000に達するとエキストラスキル"詠唱破棄(コードレスマジック)”っていうのを習得するらしい…!!」

 

 アストラ「貫けっ!!」

 

 光魔法"シューゲイザー”がリズベットとエギルに襲いかかってくる。

 この魔法は威力こそ低いものの発射段数はゆうに200は超えており、総威力は先程の巨大氷塊と遜色ないものになる。

 

 エギル「ちぃっ!!」

 

 リズベット「いたたたたっ!!」

 

 アスナ「すごい…」

 

 アスナはつい正直な感想が口からこぼれた。

 それを聞いたアストラは頬を赤らませながらも光の矢を放ち続けた。

 

 エギル「…ダメージ覚悟で突っ込むしかないか!!」

 

 リズベット「待って!!あの魔法もMPに限界があるハズよ。

 今は身を隠して作戦を練った方がいいわ!!」

 

 エギル「なるほど…了解だ!!」

 

 エギルとリズベットは大樹の影に隠れ、アストラの魔法を回避する。

 流石にアストラもこれ以上はMPの消費量を考えて魔法を中断する。

 

 アストラ「…隠れましたか」

 

 アスナ「あの…これからどうするの?」

 

 アストラ「"攻略の鬼”と呼ばれていたアスナさんの方が良いアイディア浮かぶんじゃないですか?」

 

 アスナ「その名前は呼ばないで…」

 

 あの頃のアスナは違う意味で荒れていた。

 いつクリアされるかも分からない状況で階層攻略を効率化して、利用できるものは全て利用してきた。

 そんな鬼気迫る姿を見て周りのプレイヤーから"攻略の鬼”と言う女性を捕まえてあるまじき不名誉な二つ名が付けられてしまった。

 

 アストラ「それはともかく、HPを回復したらここに用はないです。

 早くカストロ様と合流しましょう。」

 

 アスナ「もしかしてカストロさんはキリト君の所に?」

 

 アストラ「えぇ。偶然近くに居合わせましたので…」

 

 アスナ「そうなんだ。…早く合流しなくちゃだけど、リズ達をこのままにしておけないわ。

 合流しても乱戦になったらこちらのメリットがなくなる」

 

 リズベットとエギルをここで撃退出来れば、キリトとカストロが戦闘を続けていても数の利で攻める事も出来る。

 アスナはこの場で2人を倒す事を提案した。

 アストラもそれに対するメリットが分かっている為、これを承諾する。

 

 アストラ「ですがどうします?御二方は大樹に隠れて出てきませんよ?」

 

 確かに、アストラの攻撃は止んでいるのにリズベットとエギルは一向に姿を見せない。

 こちらの出方を伺っているのか、何か策を講じているのかは不明だが、こちらには魔法に特化した水妖精族(ウンディーネ)が2人もいる。

 それにアストラの"詠唱破棄(コードレスマジック)”があれば、2人に気づかれる事なく魔法を使える。

 

 アスナ「時間を与えるだけこちらが不利になるわ。

 アストラさん、サーチ系の魔法は使える?」

 

 アストラ「当たり前です。私は魔法スキルをカンストさせてるんですよ?

 そんなの朝飯前です!」

 

 アスナ「じゃあ、それを2人が隠れている大樹に向かって放って!」

 

 そう言われ、アストラはすぐさま水魔法の"千里魚の眼光(フィッシャーアイズ)”を放つ。

 2人が隠れているであろう大樹に向かうが"千里魚の眼光(フィッシャーズアイ)”には何も反応はなくその場を浮遊しているだけだった。

 

 アストラ「どういう事ですか?」

 

 アスナ「逃げた?…でも、それだとあちらにはデメリットしか…」

 

 瞬間、森林全体が揺れ始める。

 その揺れは地響きやそういう類のものではなく、()()()()()()()()()

 

 アスナ「こ、これは…!!」

 

 アストラ「とりあえず、空中に避難しましょう!!」

 

 翅を羽ばたかせ大樹の枝が生い茂っている所まで上昇すると、枝木の影から2つの影が2人に襲いかかってきた。

 

 アスナ&アストラ「「!!?」」

 

 とっさに防御魔法でそれを防ぐが、さらに上空から重い一撃が2人の体の芯を捕らえた。

 直撃した2人はそのまま地上に落とされ、またしても揺れ続ける大地に足をついた。

 

 リズベット「作戦成功ね!」

 

 エギル「我ながら上手くいったもんだぜ…」

 

 アスナ「甘かった…!!まさか、こんな方法で攻めてくるなんて…」

 

 さらに、地面の揺れが激しくなっていきアスナとアストラはまともに立ち上がる事も出来ない。

 空中ではリズベットが土魔法の詠唱を唱え始めている。

 

 アスナ「まずいわ!」

 

 アストラ「…だから言ってるじゃないですか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 こんなの朝飯前だって!!!!」

 

 

 すると、アストラは()()()()()()()()()、MPを全て消費して自身とアスナを水色のエフェクトに包み込んでいく。

 水魔法だというのは色を見て理解出来るが、こんな形状の魔法は見た事がない。

 だが、1つ言えるとすればプレイヤーのMPを全て消費する程の魔法が弱い訳がない。

 

 アスナ「これは…!!」

 

 アスナとアストラは水の衣を纏わせる。

 そして、驚くべき事にアスナのHPとMPが全回復していた。

 

 アストラ「これは水魔法の最上位に位置する"母なる海の衣(マザーズシャンブル)”。

 対象プレイヤーのHPとMPを全回復させ、あらゆる魔法の効果を受け付けません」

 

 アスナ「そ、そんな魔法があるのっ!!?」

 

 リズベット「そんなのチートやチーターレベルじゃない!!?」

 

 エギル「なんかどこかで聞いたセリフだな…」

 

 アストラ「ただ、この魔法にはリスクが生じます。

 魔法の持続時間は5分。

 それまでに視界に入る敵を全て倒さないと自分が死んでしまいます。」

 

 アスナ「視界に入る敵…」

 

 この状況でならリズベットとエギルという事になるのだろうが、仮にここがモンスターの巣食うフィールドであればそれは想像を絶する程の危険な賭けへと姿を変えてしまう。

 普段の戦闘ではこの魔法を1()()()使()()()()()()()事が容易に想像出来てしまう。

 詠唱破棄(コードレスマジック)は1度でも使用した魔法にのみ効果が表れるからだ。

 言わば、諸刃の剣。

 アストラの覚悟がアスナに痛い程伝わってくる。

 

 リズベット「でも、仮にも共闘関係でしょ?

 最後は戦わなくちゃいけないのになんでそこまでするの?」

 

 リズベットの疑問も誰もが思う事だろう。

 いくら共闘関係だといっても自分を犠牲に後に敵になるプレイヤーを助けたりはしない。

 タッグバトルロイヤルのルール上そんな事をしてしまえば、自分だけでなくペアの者にまで迷惑がかかってしまうからだ。

 アストラは揺れ動く地面を強制的に魔法を解除させ、静かに立ち上がる。

 

 アストラ「…私の行動原理はただ1つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この身も、心も、全てをカストロ様に捧げているからです」

 

 

 アスナ&リズベット&エギル「「「!!!」」」

 

 アストラ「カストロ様がそうしろと言われれば何だってやります。

 カストロ様は最後はアスナさん達と決着をつけたいと言っています。

 なら、私はそれを実現出来るように最大限のサポートをするだけです!!」

 

 瞬間、地を蹴り上空にいるエギルに両手長柄を突いた。

 

 エギル「ぐおっ!!」

 

 間一髪の所で致命傷は避けたようだがそれでもHPが一気に3割も削られてしまっている。

 

 アストラ「アスナさん!!あなたも戦ってください!!」

 

 アスナ「う、うん!!」

 

 遅れながらもアスナも参戦し、リズベットのHPを2割削り取る。

 リズベットも苦しい顔をしているがアスナとアストラには時間が残されていない為、後の事など考えている余裕はない。

 今、自分が為すべきことを全力でやりきるだけだ。

 

 アスナ「はぁぁぁぁぁっ!!」

 

 アスナの細剣の鋭さが母なる海の衣(マザーズシャンブル)の影響でさらに磨きがかかっており、リズベットは盾で防ぎ切れなくなっている。

 エギルも強化されたアストラになす術なくHPがレッドゾーンに突入した。

 

 エギル「やばいな…」

 

 リズベット「エギル!!大樹の影に回復アイテムがあるからそれを使いなさい!!」

 

 アストラ「そうはさせません!!」

 

 アストラが地を蹴り、回復アイテムに向かうエギルの前へと躍り出た。

 すかさず、両手長柄で連続突きを放つ。

 

 リズベット「エギル!!」

 

 アスナ「リズ!!あなたの相手は私よ!!」

 

 リズベット「っ!?」

 

 アストラはアスナと同じだ。

 大切な人の為なら、我が身を捧げても悔いはない。

 一生隣で支え、共に苦難を歩いていくと…アストラは決意している。

 アスナもその心意気に応え、ここで負けてやる訳にはいかない。

 アストラやカストロ、そして愛しきキリトの為にも…。

 

 

 アスナ「はぁぁぁぁぁっ!!!!」

 

 

 目視すら許さないアスナの細剣捌きにリズベットはなす術なくHPを全損させた。

 

 エギル「リズベット!!」

 

 リズベット「ごめんエギル…。ごめんシリカ…」

 

 残り火(リメインライト)となったリズベットは程なくして命の炎が森の中で儚く消えていった。

 

 エギル「くっ…」

 

 アストラ「次はあなたの番です」

 

 エギル「!!」

 

 エギルがリズベットに気を取られている隙に、アストラは懐へ潜り込み両手長柄を短く持ちゼロ距離からの強烈な突きを放った。

 躱す事も出来ず、両手長柄はエギルの体を一直線に貫いた。

 

 エギル「すまん…クライン…」

 

 HPが全損した所でエギルも残り火(リメインライト)となった。

 

 アスナ「やったね!アストラさん!!」

 

 アストラ「私にかかればこれぐらい朝飯前です。

 それより、早くカストロ様達の所へ行きましょう…」

 

 アストラが歩き始めると、不意に力が入らなくなりその場に倒れてしまった。

 

 アスナ「アストラさん!?大丈夫?」

 

 アストラ「大丈夫です…。ちょっと足をつまづいただけですから…」

 

 アスナ「…アストラさん。…少し休んでからキリト君達の所に行きましょ?HPもMPもガス欠じゃ今行っても足でまといになるだけだよ」

 

 アストラ「しかし…!!」

 

 それでも先へ向かおうとするアストラをアスナは前に立ち塞がって止めに入る。

 

 アスナ「アストラさん。カストロさんの事が心配なのは分かるけど今は万全な状態に戻すのが先決だよ?

 大丈夫だよ!キリト君もいるし!…ね?」

 

 アストラ「…仕方ありませんね。

 確かに、この状態で行っても何の役に立ちそうもありません…」

 

 そう言って大樹を背にもたれ掛かり、その場に腰を下ろす。

 アスナもその隣に腰を下ろしてHPとMPの回復に専念する。

 

 アスナ(「キリト君…私達が行くまで頑張って!!」)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 キリト「はぁぁぁぁぁっ!!」

 

 

 キリトの斬撃がシリカに襲いかかる。

 だが、それをクラインが防ぎシリカの反撃がキリトに迫る。

 

 シリカ「やぁぁぁぁっ!!」

 

 シリカの短剣がキリトの右肩を抉る瞬間に、カストロの両手長柄で何とかそれを防ぎ距離を取った。

 

 カストロ「あのお嬢さん…ビーストテイマーは意外に厄介ですね…」

 

 キリト「あぁ。距離を取ってもピナのブレス攻撃。

 距離を詰めてもクラインとシリカの近距離攻撃が待ってるからな…」

 

 キリトとカストロが自身のHPに目を配らせながら、クラインとシリカへの警戒を怠らない。

 カストロは両手長柄を武器にした中距離戦闘(ミドルレンジ)が主なパターンだ。

 魔法の種類も水妖精族(ウンディーネ)にしては少ないとカストロ自身が吐いている。

 

 カストロ「私もアストラみたいに魔法スキルを上げておくべきでしたね」

 

 キリト「無いものをねだっても仕方ないさ…。

 アスナ達も心配だが、オレ達もそんな余裕ないしな…」

 

 クラインが痺れを切らしてキリトとカストロに襲いかかってきた。

 キリトがそれを防ぎ、カストロが横からの突きを入れるが、クラインはキリトを押しのけカストロに剣先を向け直す。

 

 カストロ「っ!!?」

 

 クライン「甘ぇっ!!」

 

 揺るぎなき剣閃がカストロを捉えた。

 カストロの左腕が斬り飛ばされ、部位破損のアイコンがHPに追加される。

 

 キリト「カストロ!!」

 

 すぐさま態勢を立て直し、クラインを後退させた。

 

 カストロ「やられましたね…。さすがは元攻略組のクラインさんだ」

 

 HPを確認するとあと一撃でもダメージを受ければレッドゾーンに差し掛かる事は容易に理解できる。

 応急処置として初期回復魔法を唱えてHPを半分まで回復させるが、部位破損の影響でしばらくはまともに両手長柄を扱えないだろう。

 

 キリト「カストロは部位破損が治るまで後ろに退がっていてくれ」

 

 カストロ「ですが、1人であの連携を相手にするのはいくらあなたでも不可能だ…」

 

 キリト「なに…助けられた恩はしっかり返すさ…。

 治ったらまた援護頼むぜ?」

 

 キリトは片手用直剣を肩に担ぎ、凄まじい速さでクラインに突撃する。

 

 クライン「はっ…!!」

 

 速いと言葉で表す前にキリトは既にクラインの懐へと潜り込んでいた。

 瞬間、ガラ空きになっている胴に一閃、さらには左肩から斜めに一閃入れてすぐさま距離を取る。

 

 クライン「くっ!!」

 

 シリカ「ピナ!!クラインさんにヒールブレスを!!」

 

 シリカの指示によりピナがクラインを回復させる。

 たちまちHPがグリーンまで回復した。

 

 クライン「助かったぜ!!シリカ、ピナ!!」

 

 キリト「くそ…!!」

 

 クライン「さぁて…勝負はまだまだこっからだぜぇ…キリの字!!」

 

 クラインの刀が木漏れ日により鈍く、そして圧倒的な存在感を放って光る。

 

 キリト(「やはり、先にシリカとピナをどうにかしない限り攻撃の基盤が出来上がらないか…」)

 

 クラインは切り込み役として、前へと出て攻撃してくるが、シリカは後衛にいたままピナに指示を出して遠距離攻撃に徹底している。

 そして、恐ろしいのは自身の間合いに入るや否や短剣での連続攻撃が待ちかねているという所だ。

 あれを攻略する術をキリトは持っていない。

 カストロが加わればもしかしたら行けるかもと目算しているが、それも万全な状態であればこそである。

 

 キリト「やばいな…」

 

 カストロ「キリトさん…。二刀流は使わないのですか?」

 

 キリト「…」

 

 SAOでのキリトの事を知っていれば、誰だってそう言うハズだ。

 キリトの長所と言えば尋常じゃない反射速度と二刀流というチート級のスキルだ。

 だが、ALOはソードスキルや二刀流と言ったユニークスキルは実装されていない。

 装備は出来るがそれは()()2()()()()()()()()()()()()だ。

 二刀流には程遠いだろう。

 

 カストロ「噂で聞きました。あのユージーン将軍を二刀流で倒した影妖精族(スプリガン)がいる…と。

 ALO最強と噂されたユージーン将軍を倒したとなれば、二刀流を使えばあの連携も突破できるんじゃないですか?」

 

 カストロの言う通りなのかもしれない。

 二刀流を使えばあの連携も突破出来て、この窮地を脱する事も難しくはないだろう。

 だが、キリトは頑なに二刀流を使いたがらなかった。

 理由はSAOの事を想起させるなどもあるだろう。

 ただそれだけではない。

 二刀流はあの鋼鉄の城で生きた"黒の剣士”が生き残る為に手にした()()()の武器だ。

 全てを薙ぎ払い、全てを力で屈服せざるを得なかったあの世界で与えられた武器…それが二刀流なのだ。

 

 キリト「…二刀流は…使わない…」

 

 ALOはあの残酷な世界とは違う。

 生き残る為だとか、命を狩る為だとか、そんな事をする必要はこの世ちではどこにもない。

 だから使わない…使えない。

 

 カストロ「…それはただの言い訳ですよ」

 

 キリト「え?」

 

 思わぬ反応に一瞬キリトは力が抜けてしまった。

 

 カストロ「あなたがあの世界でどんな気持ちで二刀流を振るっていたか分かりませんが、ALO(ここ)はもうSAO(デスゲーム)じゃない。

 自身の全力も出さないで相手を倒すと言うのは相手に対しても、仲間に対しても失礼の一言に尽きる…」

 

 キリト「!!」

 

 カストロ「あなたのその力は何かを終わらせる為だけの力じゃなかったハズだ。その力で何かを…大切なものを守ってきたんじゃないんですか?」

 

 キリトの中で何かが解れ始めた。

 雁字搦めにされていたものがゆっくり、ゆっくりと優しく解ける感覚がキリトを包み込む。

 

 カストロ「あなたは間違っている。その考え方も…その生き方も…。

 まだあなたはあの世界に囚われている」

 

 キリト「…オレは…」

 

 カストロ「囚われる必要はない…。

 後はあなたがあの世界と決別出来るかどうかだけなんですよ!!

 あなたなら出来ます!!私が憧れた人はいつも全力だったのだから!!」

 

 キリト「…!!」

 

 確かに、キリトは心の中ではまだあの世界に囚われていたのかも知れない。

 だが、そうじゃない。もうあの世界はどこにもない。

 今自分が立っているこの世界はもう悲しみが溢れていたあの世界ではない。

 なら、解き放て。自分の持てる全力を。解き放て。本当の自分を。

 

 クライン「!!」

 

 シリカ「あれは…?」

 

 シリカが知らないのも無理はない。

 キリトの()()姿()を知っているのは攻略組の面々と鍛冶師であったリズベットしかいないのだから。

 だから、クラインはその姿に目を奪われていた。

 たった1人でフロアボスを倒したあの姿を忘れられる訳がない。

 キリトの両腕には黒の刀身を輝かせた剣と、翡翠色の刀身を輝かせる剣の2本が握られている。

 

 シリカ「クラインさん…あれは?」

 

 クライン「…気ぃ付けろよシリカ。…今まで以上にキツくなるぜ。

 奴が…キリトが本気になったからな!!」

 

 シリカ「本気…?」

 

 今までまでシリカにしてみれば充分にキリトは最強だった。

 上手くいっているのはクラインの支援とピナの攻撃によるものが大半だった。

 だが、キリトはシリカの予想はいとも簡単に超えていく。

 2本の剣を握った瞬間から感じるこの異様なまでの威圧感…。

 先程までがまるで遊びであったかのように思わせられてしまう。

 

 キリト「悪かったな…ここから全力で行かせてもらう…」

 

 クライン「…待ってたぜ!!」

 

 瞬間、キリトがシリカに向かって地を蹴った。

 その行先をクラインが割って入り込む。

 

 クライン「やらせねぇぞ!!」

 

 キリト「っ!!」

 

 片手用直剣よりもリーチが長い刀はキリトの射程範囲外から剣先が入ってくる。

 それを左手の剣で弾き、一気に距離を詰めて射程範囲にクラインを捉える。

 

 クライン(「さっきより…速ぇ!!?」)

 

 剣を2本持っただけでここまで違うのか…とクラインが思っている頃には既に斬られた後であった。

 

 クライン「がっ…!!」

 

 一体何回斬撃を食らったのか分からない。

 HPがグリーンであったのは覚えているが、今ではもうレッドを通り越HPは黒一色…つまりは全損させられてしまっている。

 

 シリカ「クラインさん!!」

 

 残り火(リメインライト)となってしまったクラインにはシリカの声き応える事は出来ない。

 キリトがシリカに迫るが、ピナが立ち塞がりバブルブレスを放つ。

 だが、今のキリトにそれが通用するハズもなく、無残にも泡は一瞬で弾かれた。

 

 キリト「…シリカ。出来れば降参してくれると助かるんだけど…」

 

 シリカ「うっ…うっ…」

 

 シリカはキリトのあまりにも異様な強さに恐怖し、その場に経たり込んでは思わず涙を流した。

 

 キリト「えっ?いや、あ…!?ちょっと待て…。

 な、なんで泣いてるんだ?」

 

 シリカ「だって…だって…キリトさんが…怖かったから…」

 

 カストロ「あーあ…。女性を泣かすなんて幾ら何でもやりすぎでは?」

 

 キリト「ち、違うんだ!!これはえーと…その…」

 

 とりあえずはシリカを慰め、落ち着いた所でシリカに再度降参するように交渉する。

 シリカもそこは仕方なくキリトに従い、降参した。

 ちょうど事き終わった時、森の奥からアスナとアストラが到着した。

 

 アスナ「キリト君!!カストロさん!!」

 

 アストラ「カストロ様!!ご無事…!!?

 ど、どうなさったんですかこの腕はっ!!!」

 

 アストラはカストロの腕を見るや否やすぐさま全回復魔法をカストロにかけた。

 斬られた腕はすっかり元通りになり、HPも全回復していた。

 

 アスナ「キリト君もお疲れ様。…二刀流使ったんだね?」

 

 キリト「あぁ…。最初は躊躇ったけどカストロに説教されちゃってな…」

 

 カストロ「あれが説教だというのでありませんよ。

 ただ、少しじれったかっただけです。

 アストラもよく頑張りましたね。

 あなたのおかげでどちらも欠員を出さずに済ました」

 

 アストラ「と、とんでもございません!!

 カストロ様の願いは私の願いでもありますので!!

 えっと、その…私には勿体ないお言葉…です…」

 

 すると、カストロは不意にアストラの頭を撫で始めた。

 それを意識したアストラはたちまち顔を紅潮させて心拍数が急激に増大する。

 

 カストロ「あまり自分を過小評価するものではありませんよ?

 アストラは私の為に十分すぎるほど尽くしてくれています。

 私にとってそれはとても幸せな事なのですよ?」

 

 アストラ「は、はい…///」

 

 キリト「えー…コホン。と、とりあえず…どうする?

 ここで戦うか?元々そのつもりだったんだろ?」

 

 カストロ「いえ。最終的には再戦を希望していますが、あくまでこの2組が最後まで残ったらと考えています。

 私は好きな物は最後にとっていく主義なので…」

 

 アスナ「そっか…。まぁ、アストラさんもまだMPが回復し切ってないし仕方ないね」

 

 お互いの利害も一致し、2組はその場を後にした。

 最後まで生き残り相見えようと約束を残して。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2025年05月12日 15時00分 山岳フィールド

 

 山岳フィールドは高低差が激しく、戦闘をするにしても地形を全て把握していなければ難しいフィールドに設定されている。

 そんな中、2組のペアがお互いを警戒しながら面と向かっていた。

 いや、面と向かっていたとは語弊があるかもしれない。

 片方は既に闘争心が消えており、片やもう1組も闘争心より恐怖心の方が勝っているからだ。

 

 リーファ「まさか…いきなりこの人に出会うなんて…」

 

 ストレア「良い引きしてるかもね…」

 

 リーファとストレアは顔を青ざめながらジリジリと後ろに退いていく。

 だが、その分目の前のプレイヤーは歩を進めてくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 キング「来ないならこちらから行くぞ…」

 

 

 

 二人の前に巨大な王の姿が恐怖と共に近付いてきた。

 

 

 

 

 




いかがだったでしょうか?
二刀流の戦闘描写って難しい…というか普段からの描写が難しい!
あまり文才があるわけでもなく、1人で酔っている感じも否めませんがどうか暖かい目で読んでくださいませ。



では、また次回!
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