ソードアート・オンライン-君と共に在るために-   作:ちぇりぶろ(休載中)

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という事で42話目です。
今回はかなりバトルシーンはカットしていると思います。
ついにキングの過去が紐解かれていきますのでお楽しみに。



では、どうぞ!


【42】輝かしき記憶

 何も無い真っ暗な世界にその青年はいた。

 

 ストレア「あなたは…」

 

 いる訳がない、存在するハズはない。

 だって、あなたは()()()()()()()()()()()()()()()…。

 ストレアの頭の中でそれを繰り返し続けるが、なら今ストレアの目の前にいる青年は何だと言うのだ。

 

「…」

 

 青年もストレアに気づき、近づいてくる。

 目の前まで近づいて愛想のない表情でストレアに言った。

 

 

 

「何してんだ…牛女が…」

 

 

 

 恐らくはストレアのスタイルを見てその蔑称を言ったのだろう。

 だが、ストレアはそんな事には気にも留めていなかった。

 その姿は親しみのあるものであったが、()()がまるで違う。

 その人とは別の存在。だが、ある意味1人の人間でもあるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ストレア「…シュラ…なの…?」

 

 

 シュラと呼ばれた青年は舌打ちを打ちながらも無言で頷く。

 彼の容姿はタクヤそのものだが、先程も言ったように中身は別の人格なのだ。

 彼は唯一カーディナルから作られたユイやストレアと同様にAIなのだが、彼だけは少し特殊であった。

 彼はタクヤの負の感情を司り、尚且つ自己の感情も併せ持っている。

 ユイやストレアのようにプレイヤーの精神ケアを目的として人為的に造られたAIではなく、カーディナルが()()()()()()()()()()()()()()()()し、シュラが生まれた。

 

 

 ストレア「でも、どうしてシュラがここに?」

 

 シュラ「居たくているんじゃねぇ…。

 オレはアインクラッドと共に消滅するハズだった。

 いや、正確にはタクヤのHPが全損した瞬間にオレは死んだハズだった。

 だが、何の因果か今はこうしてお前の核にいる」

 

 ストレア「核?」

 

 シュラ「まさか…知らずに来たんじゃねぇだろうな?」

 

 ストレアは無言で頷くとシュラから深い溜息が出てくる。

 ストレアらしいと言えばそれまでだが、事はそんなに呑気なものではない。

 

 シュラ「危機感持てよ牛女!!

 テメェが今どんな状況に陥ってるのか分かんねぇのか!!」

 

 ストレア「う〜ん…まぁ、なんとなくは…。

 ここは…私の心の中なんでしょ?」

 

 シュラ「…あぁ。だが、見ての通りここには何もない。

 真っ暗な空間だけが残っている。

 この状況がこのまま続くようなら…直にお前は死ぬ…」

 

 ストレア「…」

 

 見渡してもそこには黒が広がるばかりで他には何もない。

 ストレアはその光景を見てもあまり驚かなかった。

 

 ストレア(「あぁ…やっぱり…私は…」)

 

 何もない。

 この光景こそがストレアの心なのだから。

 キングに言われて気づいた。

 自分は所詮道具として人間達に造られた存在。

 人間と同等に扱われる訳でもなく、便利な物として利用されるAIだと再認識させられた。

 タクヤやユウキと一緒にいたせいで、AIとしての本来の存在意義があやふやになっていた。

 彼らは仲間だと言ってくれた。それは嬉しい。心の底からそう叫びたい。

 だが、彼らとストレアとの間には絶対に超えられない壁がある。

 人間と同じように振舞ってもそこにはやはり違和感が生まれる。

 食事も、運動も、睡眠も、人間が当たり前のようにしているものをストレアを始め、AIはそれらを情報としてしか知らない。

 

 ストレア「…ごめんね、シュラ。…こんな事になっちゃって」

 

 シュラ「オレに謝っても意味無いだろ。てか、誰も怒ってる訳じゃない」

 

 ストレア「私…キングに言われたんだ。人間のマネをして不愉快だって…。人間の中にはそう思う人もいるって事は知ってたつもりだったけど…」

 

 ストレアはその場にしゃがみこみ、顔を俯かせる。

 シュラもストレアの横に腰を下ろし、ストレアの話を聞く。

 

 ストレア「でも、気づいたら涙が出てた…。

 分かっていたハズだったのに…耐えられなかった…」

 

 ストレアがここまで落ち込むのは初めてに近い事だった。

 いつも陽気でみんなを和ませていた姿は今や見る影もなくなっている。

 

 シュラ「…」

 

 ストレア「タクヤとユウキは仲間だって…家族だって言ってくれた。でも…私はAIで…人間じゃなくて…2人の傍にいていいのかな…って思っちゃって…そうしたら、目の前が真っ暗になっちゃって…気がついたらここにいたの…」

 

 弱音は吐かないようにしようと決めていたのに、口からスルスル出てしまう。

 自分の意思とは関係なく、シュラに弱い自分を見せている。

 嫌悪感などはないが、どうしようもなく情けない。

 

 シュラ「…居たきゃいろよ」

 

 ストレア「え?」

 

 シュラ「お前がそこに居たきゃいればいい。

 お前は周りを気にするほど、繊細じゃねぇんだから…」

 

 ストレア「で、でも…私と一緒にいてタクヤとユウキは…周りから何か言われるかもしれない…。私といるばかりに…」

 

 シュラ「なら、そいつ等を全員ぶん殴る。てか、殺す。

 …アイツならそう言うがな」

 

 その言葉をタクヤが言っている姿は容易に想像が出来た。

 そうだった。タクヤはいつだってそうだったじゃないか。

 私がカーディナルに消されそうになってもタクヤはそれを必死に食い止めようとしてくれた。

 私がオブジェクト化した後もユウキはいつも声をかけてくれたではないか。

 2人はいつだって私と一緒にいてくれた。

 危ない事をしそうになったら止めてくれて心配してくれたではないか。

 

 シュラ「…ここはお前が自分の核を攻撃してもう9割方消えちまった。

 だが、まだ()()()()()()()()()()()()()()

 

 ストレア「?…どういう事?真っ暗だからもう何もないんじゃ…」

 

 シュラ「本当に何もないって言うのは真っ白なんだよ。

 まだ何も手がつけられていない状態…白紙なんだ。

 お前の感情プログラムはもう修復不可能な所まで来ている。

 1度、初期化しないとお前の存在自体が今度こそ消えてなくなる…」

 

 つまりはストレアの設定を1度全てリセットする必要があるという事だ。

 それにはタクヤとユウキとの記憶、仲間達と過ごした日々も含まれている。

 

 ストレア「…仕方…ないか…」

 

 そうしなければストレア自身が消えてしまう。

 記憶がなくなってもまた作ればいい。今までより楽しい時間をみんなと過ごせばいい。

 だが、そう踏ん切りをつけるのにはあまりにも突然の事でストレアも躊躇っている。

 

 シュラ「これは誰でもないお前の責任だ。

 逃げるな、目を逸らすな、下を向くな。

 …お前の望んでいるものは前にしかない」

 

 誰にだって忘れたくない思い出がある。

 だが、ここで立ち止まっていても積もるのは不安と後悔だけだ。

 前に進まなければならない。

 また、みんなと…仲間と一緒に笑い合いたいのなら。

 そんな中どこからか微かに声が聞こえてきた。

 

 ストレア「今…何か声が…」

 

 シュラ「…外からだな。相変わらずうるさい奴らだ」

 

 シュラが指を鳴らすと目の前にモニターが現れ、そこにはユウキを始め仲間の姿が映っていた。

 

 ユウキ『ストレア!!目を覚まして!!

 またタクヤとストレアとボクの3人で一緒に冒険しようよ!!

 タクヤもストレアの為に今もキングと戦ってる!!一緒に応援しようよ!!』

 

 ストレア「ユウキ…!!」

 

 シュラ「…アイツも映すぞ」

 

 さらに視点は切り替わり、おそらくは中継カメラをハッキングしたんだろうが、外は砂嵐で視界が悪い。

 中継カメラを砂嵐の中心まで移動させると、そこでタクヤとキングが今も戦い続けていた。

 タクヤは片手剣を捨て、両拳にグローブをはめたSAOを想起させる姿で果敢に攻めている。

 

 

 タクヤ『うぉぉぉぉっ!!!!』

 

 

 ストレア「タクヤ…タクヤ…!!」

 

 タクヤの名前を涙を流しながらただひたすらに呼び続ける。

 

 ストレア(「やっぱり…忘れたくないよぉ…。

 タクヤとユウキ…みんなとの思い出を忘れたくない…!!」)

 

 シュラ「…」

 

 すると、シュラは立ち上がりどこかへ歩き始めた。

 しばらく進むと1つの扉が開かれた。

 そこには赤く光を放っている球体が浮かんでいて、その下にはコンソールらしき端末が備えられていた。

 

 ストレア「…シュラ?」

 

 遅れながらストレアもそこに辿り着き、シュラに声をかけるが応答はない。

 後ろから手元を覗き込むと、凄まじい速さでホロキーボードをタップしていた。

 

 ストレア「シュラ?…何をしてるの…?」

 

 シュラ「…お前の記憶を消さないで済む方法を試してんだよ」

 

 ストレア「あ、あるの!?そんな方法!!」

 

 シュラ「あるにはある。…だが」

 

 指を止め、シュラがストレアに向き直った。

 

 シュラ「…いや、何でもない。

 出来るか分からんがやるだけやってやるさ」

 

 ストレア「後どれくらいで出来るの?」

 

 シュラ「この大会が終わってる頃ぐらいには間に合わせてやるよ。

 分かったんならさっさと戻れよ。気が散って仕方ねぇ…」

 

 ストレア「うん…!!ありがとう…シュラ…」

 

 ストレアはその場を後にしてモニターの前まで戻った。

 モニターにはタクヤとキングの激闘が映し出されている。

 

 ストレア(「私…もう迷わないから…!!また、みんなと一緒に…タクヤとユウキと一緒にいたい!!」)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ユウキ「!!」

 

 アスナ「どうしたのユウキ?」

 

 ユウキ「今…ストレアの声がした気がして…」

 

 リーファ「え?私には聞こえなかったけど…」

 

 無論ユウキ以外の者にはストレアの声など聞いていない。

 今もストレアは眠り続けているのだから。

 だが、ユウキには確かに聞こえた。

 一緒にいたい…と、ストレアからの思いの丈がはっきりと。

 

 ストレア(「ストレアも頑張ってるんだね…。

 大丈夫だよ。みんながついてる…ボクやタクヤだってついてるから…。

 だから、頑張れ!!ストレア!!」)

 

 ストレアの手を握りユウキも強く語りかけた。

 仮想世界なのにこの時のストレアの手は微かに暖かかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タクヤ「!!…ストレア?」

 

 キング「よそ見をするな!!」

 

 タクヤ「っ!!?」

 

 一瞬の隙を突かれたタクヤが両手剣の風圧で吹き飛ばされた。

 キングは正気を見出し、追撃に駆けた。

 

 タクヤ「おらぁぁぁっ!!!」

 

 振り下ろされた両手剣を白刃取りし、そのままキングを押し返す。

 胴が無防備になった所をタクヤの拳が火を吹いた。

 目にも止まらないラッシュにキングは息が出来ない。

 タクヤも無酸素運動をしている為、呼吸が出来ないが拳を止める事はなかった。

 

 タクヤ(「まだ…まだ…まだ…!!もっと…もっと…!!」)

 

 

 

 タクヤが装備しているナックルは大会前にリズベットに依頼して作ってもらった物だ。

 正式名称"無限迅(インフィニティ)”はタクヤが最高の武器を作ってもらう為に、貴重な鉱石を苦労の末に入手し、リズベット武具店に持ち込んだ。

 リズベットからすごく驚かれたがこの時はただキングと本気で戦いたいという純粋な気持ちだったので苦労なんて気にしていなかった。

 だが、今は違う。今、この武器を使うのは自分の為じゃない。

 仲間の為に今タクヤは拳を振るっているのだ。

 無限迅(インフィニティ)には他にはないエキストラ効果がある。

 それはヒットする度にクリティカル率とAGI(敏捷力)支援(バフ)が付与されるのだ。

 エキストラ効果は知られている限りでは"魔剣グラム”の"エセリアルシフト”と、シルフ隊による"フェンリルストーム”等があるが、プレイヤー自身に付与されるものは中々ない。

 故に相場にも出回っておらず、ALOでこれを装備しているのは実質タクヤだけという事になる。

 性能も上質な鉱石と腕利きの鍛冶師(マスターメイサー)により、店売りよりも格段に良かった。

 

 

 

 キング「ぐほっ」

 

 いくら自身を最強の矛と盾で飾り付けようとペインアブソーバーを停止している今、ダメージを食らい続ければどうなるかなど一目瞭然だ。

 ()()()()()()()

 仲間が味わった痛みを知るまでは決して止めたりなどはしない。

 

 タクヤ(「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」)

 

 体の中の酸素は全て消え去った。

 仮想世界だと言うのに呼吸までリアルに再現しなくてもいいと今ならそう思う。

 ならば、これが正真正銘最後の一撃だ。

 

 キング「!!?」

 

 支援(バフ)により強化された拳は"閃光”よりも、"絶剣”よりも速い。

 あの世界で最速だった"修羅”の如き一撃。

 

 

 

 

 

 

 修羅スキル奥義"孤軍奮闘”

 

 

 

 

 

 

 

 キング「っ!!!?」

 

 

 その威力は本家に劣るもののキング1人を倒すには十分すぎる威力を誇っていた。

 キングは真っ直ぐ飛ばされ砂嵐の中を突き破っていく。

 それと同時に砂嵐は効力を失い消滅していった。

 

 アストラ「砂嵐が止みましたよ!!」

 

 ユウキ「タクヤは!!?」

 

 アストラとアスナが防御壁を解き、外に出てみると、そこには膝を震わせながらも立っているタクヤと遠くで倒れているキングの姿があった。

 

 タクヤ「ハァ…ハァ…」

 

 ユウキ「タクヤ!!」

 

 タクヤ「…ユウ…キ?」

 

 すると、力が抜けたのかタクヤは膝から崩れ落ち、その場に倒れた。

 

 ユウキ「!!」

 

 すぐに駆け寄りタクヤを起こす。

 

 タクヤ「ハァ…ハァ…力が…出ねぇや…」

 

 体の至る所には切り傷が無数にある。

 それだけでどれだけの激戦だったのか容易に想像出来る。

 

 ユウキ「…お疲れ様。…ゆっくり休んでいいからね」

 

 キリト「本当に勝っちまうなんて…凄いしか言えないな…」

 

 タクヤ「おかげで…体はボロボロ…だけど…な…」

 

 アスナ「今、回復魔法かけるね!!」

 

 アストラ「私も手伝います!!」

 

 タクヤを横にしてアスナとアストラから回復魔法をかけられた。

 HPはみるみる全快し、体の痛みも幾分か楽になった。

 

 タクヤ「ありがとな2人共…」

 

 アスナ「それより…キングは?」

 

 タクヤ「あそこに……!!」

 

 タクヤが指で示した場所を見るが、そこにキングの姿はなかった。

 

 カストロ「まさか、全損してログアウトしたのでは?」

 

 タクヤ「いや…まだアイツのHPはイエローで止まってるハズだ」

 

「「「!!!!」」」

 

 ユウキ「まだ…終わりじゃ…ない…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 キング「終われるものかぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」

 

 

 

 

 

 タクヤ「!!?」

 

 キングは高台となっている崖に登り、タクヤ達を見下ろしている。

 

 キング「俺は…最強でなくてはならない…!!

 その為に…何もかも捨ててきたんだ…!!

 お前らのように…傷を舐めあって生きている…弱者とは違うっ!!!!」

 

 すると、メニューウィンドウを開きそこからあるアイテムを取り出した。

 

 キリト「あれは…」

 

 リーファ「木の実…?」

 

 木の実らしき物を口に頬張り、食堂から胃へと流す。

 すると、キングの様子がおかしくなり始めた。

 

 

 

 キング「ぐぐ…ぐぎ…がぎ…!!」

 

 

 

 アスナ「ど、どうなってるの!?」

 

 カストロ「…聞いた事があります。

 ALOには食べただけでステータスが爆発的に上昇する木の実がある…と。ですが、あれはゲームバランスを崩しかねないとかで実装されて3日でサービス停止になったハズです!!」

 

 タクヤ「…あのヤロー…ALOのカーディナルにまで手を出してたのか…」

 

 ユウキ「どういう事?」

 

 タクヤはこの非常事態いつ、何が起きるか予想出来ない為、ユウキ達にキングと盗まれたSAOデータについて知る限りを話した。

 

 アスナ「そんな…」

 

 キリト「なら、アイツは管理者権限が使えるのか?」

 

 タクヤ「いや、そこまでの権限は持っていないハズだ。

 その証拠に限定的な操作しかしてきていない。

 そんなの使われたらみんなここにはいないだろ…」

 

 キングが使えるのはあくまでSAOデータから武具のデータをALOにコンバートする事ぐらいだと読んでいたが、まさか、カーディナルに直接ハッキングをするとは誰にも予想出来ない。

 同時にそれだけの技術を有していながら何故こんな事をするのか疑問に思った。

 これだけの才能があれば専門分野で後世まで語り継がれていたかもしれないと言うのに。

 そこまでして何が欲しい?何がそこまでお前を動かす?

 その答えは目の前の行き場を失くした怒りの化身のみが知っている。

 

 

 

 

 キング「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!」

 

 

 

 

 キングのいた崖は崩れ、それを足場にキングが跳躍する。

 タクヤは翅を羽ばたかせキングに向かって渾身の右拳を振るった。

 だが、それは空を切り逆に回し蹴りを食らってしまったタクヤはそのまま地上に叩きつけられた。

 

 ユウキ「タクヤ!!この…!!」

 

 ついに我慢の限界に達したユウキが抜刀し、キングに挑む。

 

 キング「邪魔だぁぁぁぁっ!!!!」

 

 両手剣の剣圧で動きを止められたユウキにすかさずキングが一閃を繰り出す。

 

 ユウキ「ぐあっ!!」

 

 アスナ「ユウキ!!」

 

 地上に激突する前にアスナがユウキを止めに出た。

 なんとか間に合ったもののユウキHPは一気にレッドゾーンにまで落ちてしまっている。

 

 ユウキ「くっ…つ、強い…!!」

 

 タクヤ「下がってろ2人共!!キングはオレが止める!!」

 

 キング「俺が最強だ…俺が最強だ…俺が最強だ…俺が最強だ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺が最強だぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!」

 

 

 

 タクヤ「キングぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!!!!!」

 

 もう一度無限迅(インフィニティ)支援(バフ)を付与する為、キングの懐に潜り込む。

 

 キング「!!?」

 

 タクヤ「うらぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

 

 ラッシュを重ね、支援(バフ)がかかり、キングの腹を殴り続ける。

 

 キング「ぐおっ…ま、まだ…」

 

 タクヤ(「あと少し…あと少し…!!」)

 

 キングのHPもようやくレッドゾーンに入った。

 タクヤは今までよりも速く拳を撃ち続ける。

 

 キリト「キングを押してる!!」

 

 カストロ「なんて人だ…!!

 …アストラ!!タクヤさんに母なる海の衣(マザーズ・シャンブル)を!!」

 

 アストラ「了解ですっ!!」

 

 アストラがカストロの指示でタクヤに母なる海の衣(マザーズ・シャンブル)の魔法を唱えた。

 すると、タクヤの体に水の衣が纏われ、さらに回転が上昇する。

 

 キング「ふぅんっ!!」

 

 タクヤ「!!?」

 

 だが、タクヤの攻撃が効いていないのかキングは力を込め、タクヤを押し返す。

 

 アスナ「そんな…!!」

 

 アストラ「あ、ありえない…!!」

 

 

 キング「俺は…最強じゃなきゃいけないんだ…最強じゃなきゃ…生きている意味がないんだ…俺が…最強なん…」

 

 

 タクヤ「あぁ。強い…お前は強い…。

 そんな小細工しなくても十分に強いさ…」

 

 

 でも、それだけだ。

 本当の意味で強いという意味を理解出来ていない。

 何かを捨てて手に入れた力なんて高が知れている。

 

 キング「最強じゃなきゃ…俺は…」

 

 タクヤ「そうやって自分を追い込んで…縛り付けて…力を振るって…。

 そうじゃなきゃ生きれないような力は本当の力じゃない!!」

 

 タクヤは知っている。

 何かを捨てて手に入れる力がいかに脆いものか…。

 タクヤは知っている。

 そうやって大事なものを捨ててしまう辛さが…。

 

 キング「お前に…お前みたいに…何も捨てないで…俺より強いハズは…!!」

 

 タクヤ「あぁ…。オレ1人ならお前には勝てなかったろうな…。

 だから、仲間がいる…!!みんなで研鑽しあってそうやって人は強くなっていくんだ!!力も…!!心も…!!」

 

 タクヤは最後の一撃にシフトする。

 1人ではここまで辿り着けなかった。

 1人ではこの場にすら立てていなかった。

 

 

 タクヤ「みんなが…仲間がいたから…オレはここにいるっ!!!!」

 

 

 ユウキ「タクヤ!!いけぇぇぇぇ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タクヤ「自分を解放しろぉっ!!!!

 キングぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 修羅スキル奥義…"孤軍奮闘”

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それはキングを捉え、空高くまで押し上げる。

 HPが削られ続け、高度制限ギリギリまで昇った所でキングのHPはついに全損した。そこでタクヤの意識は途絶えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ヤ」

 

 

 何か聞こえる…

 

 

「…クヤ…」

 

 

 誰かがオレを呼んでいる…

 

 

「タクヤ!!」

 

 

 タクヤ「!!?」

 

 

 目を覚ますと空は澄み渡り、すぐ側にユウキの顔が覗き込んでいた。

 

 ユウキ「タクヤ!!無事?怪我はない?気はしっかり?」

 

 タクヤ「…耳が痛い以外は大丈夫」

 

 耳元で叫び続けられれば仮想世界と言えど鼓膜がやぶれるのでは?

 そんな事を考えながらもユウキの周りにはキリト達もタクヤを心配そうな顔で様子を伺っている。

 

 タクヤ「…体が…全然動かない…んだけど…」

 

 ユウキ「だってボクがタクヤに覆いかぶさってるから」

 

 タクヤ「…さいですか。…とりあえずどいてくれない?」

 

 名残惜しそうな表情をするも、ユウキは言われた通りタクヤから離れ、タクヤも上半身だけを起こす。

 

 アスナ「一応回復魔法はかけたんだけどどうかな?」

 

 タクヤ「HPは回復してるけど…精神的にはもう限界…」

 

 キリト「あれだけの激戦だったからな…無理もないか。

 しかも、空から落ちてくるしな…」

 

 タクヤは最後空中で気を失い、そのまま落下したようだが、ユウキがタクヤをキャッチしてなんとか墜落は阻止できたようだ。

 

 タクヤ「そうだ…。キングは?」

 

 ユウキ「…あっち」

 

 少し離れた所にキングが大の字になって空を見上げていた。

 

 タクヤ「…ユウキ。オレをキングの元に連れて行ってくれ」

 

 ユウキ「な、なんで?またキングが暴れだしたら今度こそ…!!」

 

 タクヤ「大丈夫だよ。…キングももう動く気力はないだろ」

 

 ユウキ「…わかった。でも、キングがまた暴れそうになったらすぐに止めるからね!!」

 

 それを承諾して、タクヤはユウキに肩を借り、キングの元に向かった。

 

 キング「…」

 

 空を見上げたまま指1本動かす事が出来ない。

 ペインアブソーバー機能を停止して体中に痛みが走っているせいだ。

 そこに同じくボロボロになったタクヤが現れた。

 

 タクヤ「…」

 

 キング「…何の…用…だ…?」

 

 タクヤ「…アスナ。キングに回復魔法をかけてやってくれないか?」

 

 アスナ「なっ!?ダメに決まって…」

 

 キリト「アスナ…オレからも頼むよ…」

 

 アスナ「キリト君まで…。もう!!どうなっても知らないから!!」

 

 アスナはキングに回復魔法をかけ、キングのHPが全快した。

 キングのハッキングの影響で全損してもログアウトしないのは今この時は良かったとタクヤは胸を下ろす。

 

 キング「…何の真似だ?」

 

 タクヤ「もう勝負はついた。…話ぐらいさせやがれ」

 

 キング「貴様と話す事などない」

 

 ユウキ「このっ…!!」

 

 ユウキがキングに斬りかかろうとするのをタクヤが静止させる。

 キングの隣に腰を下ろし、みんなにはストレアとカヤトの所に行ってるように言って2人きりにしてもらった。

 最後までユウキが駄々をこねていたがキリトとアスナが無理矢理連れて行ってくれた。

 

 キング「…」

 

 タクヤ「…まぁ、何から話せばいいか…。

 …キング、この大会が終わった後に現実世界のお前の元に警察が来るハズだ。罪はちゃんと償ってもらう…」

 

 キング「…」

 

 キングは敢えて何も言わなかった。

 弱者に言葉を発する権利がないとキングが考えているからだ。

 何でリアルの情報を知っているのかとかはこの際関係ない。

 

 タクヤ「…SAOデータの窃盗と、ALO…ユーミルにハッキングをかけた罪もあるから拘置所は覚悟してた方がいいぞ?」

 

 キング「…遅かれ早かれそうなっていた。悔いはない」

 

 タクヤ「…」

 

 キング「俺は最強になりたかった…。

 誰に負けない…屈しない強さが欲しかった。

 その為には何もかも捨ててきた…」

 

 キングは語り出した。届かなかった理想を。

 脆く崩れてしまった願いを。

 タクヤはそれ静かに聞いて言った。

 

 タクヤ「…それは1年前の事件が原因か?」

 

 キング「!!」

 

 キングは目を見開き、タクヤを見つめる。

 その視線に気づいたタクヤは目を逸らし、遠くで待っているユウキ達を眺めながら話し始めた。

 

 タクヤ「悪いとは思ったが、情報屋にお前の身辺調査を依頼してた。

 その時に聞いたよ…。

 1年前、お前がある女性プレイヤーとコンビを組んでいた事…。

 そして、そこで起きた事件も…」

 

 キング「…」

 

 

 キングを目を閉じ、あの時の記憶を思い返していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 キング「ここがゲームの中…」

 

 

 初めてキングがALOに降り立ったのは1年前の2月だった。

 SAO事件で騒がれていた時に発表されたVRMMOゲーム"アルヴヘイム・オンライン”。

 キングはそれを購入して今、この大地に降り立っているのだ。

 

 キング「すげぇ…リアルと大差ねぇ…!!」

 

 街を歩くNPCもリアルに再現され、本当にここに住んでいるかのような振る舞いをしている。

 カーソルの色を見ればNPCかプレイヤーはひと目で分かり、キング以外にも多くのプレイヤーが集まっていた。

 

 キング「っと、それより…アイツどこだよ…」

 

 

 

「おーい!!」

 

 

 

 キング「!!」

 

 遠くの通りから声がして振り向くとそこには現実世界の姫奈によく似たアバターがキングに向かって走ってきていた。

 

 キング「も、もしかして…姫奈?」

 

「やっぱりナイト君かぁ〜よかった〜人違いじゃなくて…」

 

 キング「なんで俺だって分かったんだよ?」

 

「う〜ん…雰囲気が似てたから。」

 

 だとしても、普通声をかけてきたりはしない。

 たまたま一騎本人だったからよかったものの赤の他人ならどうしてたんだとツイ声に出してしまいたくなる。

 だが、こうして無事に合流出来た訳で、今はそれよりも早く冒険に行きたいという好奇心が勝っていた。

 

 キング「ところで、プレイヤー名は何にしたんだ?

 ちなみに、俺はキングって名前だ」

 

「キング〜?なんか似合ってないね。ナイトでも良かったんじゃない?」

 

 キング「ナイトよりキングの方が強そうだ」

 

「ナイト君って見かけによらず子供だよね〜」

 

 キング「う、うるさいな…!!ゲームなんだから別にいいだろ!!

 それよりプレイヤー名はなんだよ?」

 

 すると、姫奈は急に黙ってしまい、心なしか頬も微かに赤い。

 

「…イーン」

 

 キング「は?」

 

「クイー…」

 

 キング「よく聞こえねぇよ。もうちょっと大きな声で…」

 

 クイーン「く…クイーン!!!!」

 

 突然耳元で叫ばれ、つい耳を塞いでしまった。

 周りも姫奈…クイーンの声に驚いている。

 

 キング「く、クイーン?…お前も人のネーミングセンス言えないじゃないか」

 

 クイーン「わ、私のは本名のもじりだし…。

 てか、キングとクイーンって…なんかその…恥ずかしいね…」

 

 キング「なっ!!?」

 

 確かに、キングとクイーンが一緒にいたら周りからは痛いバカップルに見えても不思議じゃない。

 それを思うとたちまち恥ずかしくなっていった2人はしばらく顔が見れなくなってしまった。

 

 キング「…こんな事ならもうちょっと考えればよかった」

 

 一瞬、アバターを作成し直そうと考えたが、このアバターの容姿はキングの理想としたものであった。

 たかが名前を変えたいが為にこのアバターを捨てるのはかなり勿体ない。

 

 クイーン「どうしたの?ナイ…じゃなくてキング」

 

 キング「なんでもない…。

 そう言えば姫…じゃなくてクイーンはリアルと瓜2つだな?」

 

 クイーン「私もびっくりしたよ。でも、やっぱりこの姿が落ち着くね!」

 

 2人は土妖精族(ノーム)に選択していた。

 あまり土妖精族(ノーム)を選ぶ女性プレイヤーはいないが、キングと一緒の方が何かと都合がいいという考えで事前に打ち合わせをしていたのだ。

 

 キング「よし!…クイーン、早速フィールド出ようぜ!!」

 

 クイーン「そうだね!!この翅も試してみたいし!!」

 

 こうして2人は初期装備のままフィールド散策に赴いたのだった。

 

 




いかがだったでしょうか?
ストレアの中に生きていたシュラ。
シュラの秘策とは?
そして、キングとクイーンの過去の出来事とは?
次回はこの2つを中心に描きますのでお楽しみに!

よかったら評価頂けると嬉しいです!


では、また次回!
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