ソードアート・オンライン-君と共に在るために-   作:ちぇりぶろ(休載中)

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という事で44話目になります。
リアルで諸事情で更新が滞っていますが次の話は今月中に出来れば書き上げてそれから週刊連載にしたいと思います。
そして、今回で妖精剣舞編は最終回です。



では、どうぞ!


【44】明日への一歩

 タクヤ「…」

 

 空は夕暮れ時で間もなく大会も終了する時間帯だ。

 タクヤはキングの過去を聞いて胸が張り裂けそうな程、心がざわついている。

 どう言葉をかければいいのか、どう受け止めたらいいのか分からない。

 いや、分かっているのだ。

 自分にはキングの事を理解出来ない事を…。

 タクヤはその場にいなかったから…理解出来ない。

 

 タクヤ「…」

 

 キング「…」

 

 2人は静寂を保ち続ける。

 それがどこか歯痒くて、でも安心して…複雑な感情が入り混じり、その世界を構築していた。

 

 キング「俺は…もう…アイツには会えない…。

 会う資格すら…失くしたんだ…」

 

 タクヤ「…それは…違うんじゃないか?」

 

 キング「?」

 

 タクヤは重い腰を上げ、沈む夕陽に目を向けた。

 

 タクヤ「資格なんて…いるのか?」

 

 キング「…」

 

 タクヤ「会えないってお前が勝手に決めるんじゃねぇよ…。

 その娘はお前に会いたがっているハズだ」

 

 キング「…お前に…俺の何が分かる…!!」

 

 今までにない程怒りを露わにしたキングを前にそれでもタクヤは言葉を続けた。

 

 タクヤ「怖いんだろ?また罵られるのが…何も変わってない事が…。

 だからお前は会いに行けない…。前に踏み出せねぇんだ…」

 

 キングの気持ちなんて全然考えていない言葉をタクヤは敢えてキングに放った。

 予想通りキングは怒り、体を軋ませながらタクヤの胸ぐらを掴みかかる。

 

 キング「何も知らねぇお前が…知った口を聞くんじゃねぇ!!

 俺が…俺が弱かったから…姫奈は…心を閉ざしたんだよ!!

 なら、強くなるしかねぇじゃねぇか!!誰にも負けないほどの力があれば俺は…俺は…!!!!」

 

 タクヤ「…お前が欲しいのはただの力なのか?」

 

 キング「!!」

 

 タクヤ「力がどれだけ価値があるって言うんだ?

 力で支配する事に何の意味があるんだ?

 それをやっちまったらお前もそいつらと同じになるんだぞ?」

 

 タクヤには目の前にいる青年が駄々をこねているただの子供のように見えた。

 あれがないからダメだと、もっと楽な方へと進みたがる。

 それでは決して手に入れられない物を求めながらもキングは避けているだけなのだ。

 現実から…姫奈から…弱い自分から…。

 逃げて逃げて逃げて…辿り着いた先にあるものは本当にキングの望んだ物なのだろうか。

 

 タクヤ「力じゃ彼女は救えねぇ…。力だけあっても何も出来ねぇ…。

 本当の強さが分からないままじゃいくらやっても前には踏み出せねぇ…」

 

 キング「…だったら…俺が今までやって来た事は全て…無駄だったって言いたいのか…?

 何も知らないで呑気に仲間と楽しく生きてきたお前が…俺にそんな事を言う権利があるのかぁ!!!!あぁっ!!?」

 

 タクヤ「…権利なんかない。

 …それでも目の前で間違った道へ歩いている奴を放っとける訳ないだろ」

 

 かつての自分もそうだった。

 間違った道だと知っていても理由をつけてその道を選んでしまった。

 探せば他の道もあった事に気づきながらも…。

 その代償に仲間を捨てた。人をこの手で殺めた。あれは地獄だ。

 全てを失ってしまったら何も残らない事は誰にだって理解出来る。

 零れ落ちたものすら拾えない。

 

 タクヤ「お前が…キングが…間違っているって誰かが言わねぇとお前は止まれねぇじゃねぇか。

 だから、オレがお前を引き戻してるんだよ…」

 

 キング「お前なんかに…俺の気持ちが分かる訳がない…。

 何も失ってこなかったお前に…俺の気持ちが…」

 

 タクヤ「…わかるさ。オレも1度…全部失くしちまったからな」

 

 キング「!!」

 

 タクヤ「オレは…世間で言うところのSAO帰還者(サバイバー)ってヤツだ」

 

 その言葉を聞いてキングは目を見開いた。

 2年もの間生死をかけた戦いに巻き込まれてしまった者達の事を捉えた造語だった。

 それを去年の11月に終結へと導いた者がいるとネットで密かに噂になっていたのをキングは思い出した。

 

 キング「まさか…お前が…」

 

 改造された武器やステータスを持ってしてもこの男には敵わなかった。

 それ程の力を持っているとすれば答えは絞られてくる。

 この仮想世界で()()()()()()()()者なら納得もつく。

 あの二刀流使いでもかなり苦戦を強いられた記憶を掘り起こしながら考えてもこの男の強さは別格だった。

 

 タクヤ「オレはあの世界で仲間を1度は完全に捨てた…。

 そうしなければ仲間の命が消えてしまうからだ」

 

 キング「!!」

 

 ゲームオーバー=現実の死という常軌を逸したその設定の中、彼らは2年もの時を過ごしている。

 命の重さがすぐ横にある感覚はそれを経験した者しか分からない。

 

 タクヤ「そして、仲間の命を天秤にかけて俺は赤の他人を3人…殺した」

 

 キング「なっ…」

 

 タクヤ「今でも夢に出てくる時がある。

 殺した3人がオレを殺しに来る夢…。

 オレは一生忘れる事なんて出来ないし、彼らは許してくれないだろう。

 でもな…そうじゃなきゃ意味がないんだ。

 そうやっていつまでも後悔ばかりしてはダメだと…大切な人から教えてもらった。

 罪悪感に押し潰されそうになった時、オレは人を殺した裏でそうして救った人達がいるって知った。

 お前もその娘の隣にいてやるべきなんじゃないのか?

 どれだけ拒絶されてもお前が傍に居てやらないでどうするんだよ!!

 お前が手にしなくちゃいけないのは力じゃない!!

 誰よりもその娘を思う気持ちが一番大事なんだよ!!!!」

 

 キング「!!」

 

 タクヤ「罪を償って…また1から始めるんだ。

 今度は道を間違えず、彼女を笑顔にさせるようなやり方で…」

 

 そう言い残してタクヤはキングの元から去った。

 もう会う事はないだろうと心のどこかで感じながら。

 それにタクヤにはまだやるべき事が残っている。

 キングに啖呵を切っておいて自分が出来ないだのと口が裂けても言えない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ストレア「…」

 

 

 ストレアは自身の心の中でタクヤとキングの会話を聞いていた。

 それにはどこか自分と似た所があった。

 だが、タクヤとキングは違う。

 別々の道を歩いて、それぞれ違う困難にぶつかってそれを乗り越える為に奮闘している。

 今のこの状況を作り出してしまった自分が情けなく感じた。

 またタクヤ達に助けてもらう事が。

 次は自分が助ける番だと意気込みながらも結果はこの様だ。

 

 ストレア「…ホント、ダメだなぁ〜…私は…」

 

 今、シュラがストレアの核を修復しようと頑張っている。

 ストレアは何か手伝う事はないかとシュラに尋ねても邪魔だと言われる始末。

 自分の事なのにみんなに任せっきりでどうにも納得出来なかった。

 すると、外では懸命に呼びかけ続けている仲間達の姿があった。

 

『ストレア!!帰ってきて!!ストレア!!』

 

『ストレアさん!!起きてください!!』

 

『ストレア!!頑張って!!』

 

 ストレア「…私は何を頑張ればいいのかな?」

 

 ストレア自身はこの状況を覆すだけの力はない。

 

 シュラ「いいんだよ…今はそれで…」

 

 ストレア「シュラ…!!もう…終わったの?…私はみんなの所に帰れるの?」

 

 シュラ「あぁ…。なんとか繋がりはした。

 だが、ここからはお前次第だ。

 お前が本当に戻りたいと思えばプログラムは自動で作動する」

 

 ストレア「本当に…戻りたいと思えば…」

 

 戻りたいに決まっている。本当にそう思っている。

 まだ、やりたい事や見てみたいものだってあちらの世界には沢山ある。

 そう思っているのにどう足掻いてもこの世界から抜け出せない。

 真っ暗な空間だけがストレアの目に広がっている。

 

 ストレア「…どうしたら」

 

 シュラ「戻れない理由があるとすれば…お前も知らず内に恐怖を抱いているからだ。それじゃあ戻れる訳がない…」

 

 ストレア「恐怖…」

 

 あちらの世界は美しく、そして儚い幻想の世界。

 そこにはストレアにとって沢山の大切なものがある。

 でも、本心では恐怖を抱き、無意識にそれを拒んでいる自分がいるようだ。

 何をどう念じても恐怖を振り切っても本心には嘘はつけない。

 AIのくせにそこまで人間に似せるなんて悪趣味だとストレアは自虐混じりで笑う。同時に悲しくなる。

 こんな事も出来ないで何が仲間の元へ帰りたいだのと言えるのだろうか。

 

 シュラ「…」

 

 ストレア「…やっぱり…私は…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ストレア!!!』

 

 

 

 

 ストレア「!!」

 

 耳に響いてきた声がストレアの心を動かす。

 モニターに振り返ってみるとそこにはストレアにとって1番大事なものが映っていた。

 

 

 

 

 ストレア「…タクヤ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ユウキ「タクヤぁ…ストレアが…」

 

 タクヤ「…」

 

 ストレアの元へ駆けつけたがその姿を見て息を飲んだ。

 死んだように指1本動かないストレアの傍に腰を下ろし、その澄んだ頬をそっと撫でた。

 

 タクヤ「ストレア…。お前がこんな時に傍にいてやれなくて悪かった…。

 ずっと昔に決めてたのにな。ストレアはオレが守るって…。

 約束を破ったりして悪かった」

 

 ユウキ「タクヤ…」

 

 タクヤ「お前に初めて会った時、呑気で調子者とか思ってた。

 ヒースクリフにはタメ口聞いてたし。

 でも、不思議と嫌な気分にはなれなかった。

 なんていうか…落ち着くと言うか、一緒にいても飽きないというか…お前の事を嫌いにはなれなかった…」

 

 ストレアとの出会いは少し特殊でどこまで逃げてもタクヤを追いかけていた。

 観念したタクヤはストレアとヒースクリフと一緒に最前線を攻略してボスの下見まで一緒についてきた。

 

 タクヤ「攻略が終わってもお前はオレから離れようとはしなかったよな?一緒にホームに帰って、ギルドの仲間ともすぐ打ち解けて…ずっと前から一緒にいるような錯覚に陥っちまって…」

 

 ユウキ「そうそう。ボクとの出会いはお風呂場だったね。

 最初は胸の大きなお姉さんって印象しかなかったけど、その日一緒に過ごしてたら自然とタメ口になってたね!

 すごくハチャメチャでみんなを笑顔にしてくれた…」

 

 夕食を一緒に食べて、一緒に談笑して、その日は笑顔が絶えなかった。

 ストレアがいるだけで攻略の疲れなど飛んでいってしまう。

 

 タクヤ「でもお前は心に大きな悩みを抱えていて…オレはそれをどうにかしてあげたいって思った。

 もう…仲間を…家族を失いたくなかったから…」

 

 その日の夜、眠れないストレアと一緒に夜空の下酒を交わした事を今も覚えている。

 その時に見せた不安な表情を拭ってやりたいとタクヤは思った。

 会って数時間しか経っていないストレアにそんな感情を抱いたのは今考えればおかしいと言わざるを得ない。

 

 タクヤ「次の日に素材を集めにフィールドに行ったよな?

 そこでお前の本当の姿を知った」

 

 地盤沈下で地下へ落ちてしまったタクヤとユウキ、ストレアはその先にあった白い空間へと訪れた。

 そこはSAOを制御する為のコンソールの1つだった。

 ストレアはSAOにおけるMHCP(メンタルヘルスカウンセリングプログラム)という高度なAIだと知った。

 

 ユウキ「ストレアがAIって分かって、驚きはしたけどボク達の気持ちは変わらなかった。ストレアはボク達の仲間だって…家族だって…。

 でも、ストレアはカーディナルからバグ扱いされて消滅させられそうになった…」

 

 カーディナルは不純物は自動的に消去する。

 それは膨大なエラーを蓄積していたストレアも例外ではなかった。

 ストレア自身も自らの消滅は仕方ないと認識していた。

 だが、そんなストレアは涙を流してくれた。

 別れたくない。まだ一緒にいたいと言ってくれた。

 

 タクヤ「お前が消えそうになるのをオレ達は黙って見てるなんて出来なかった。

 クソ兄貴に負けたくないと思ってたし、何よりお前を失いたくなかったんだ」

 

 タクヤはコンソールを操作してストレアを自身のナーヴギアのローカルメモリーに保存する事でストレア本体の消去を防ぐ事に成功した。

 そして、オブジェクト化したストレアの心を肌身離さず持っていた。

 いつも一緒にいたかったから。

 

 ユウキ「そして、タクヤを助ける為にALOでボクはストレアと再会できた。嬉しかった。またストレアに会う事が出来て…」

 

 SAOをクリアした後、ALOに囚われていたタクヤとアスナを助ける為にユウキとカヤトはALOでストレアを現出させ再会を果たした。

 

 タクヤ「それからユウキ達と一緒にアルンまでオレとアスナを助け出す為に追ってきてくれた…。

 あの時の事は忘れたくても忘れられねぇよ」

 

 アルンまでユウキ達と一緒にストレアはタクヤを探し出してくれた。

 道中様々な困難を伴っているハズなのに、再会した時満面の笑顔でタクヤを迎えてくれた。

 

 タクヤ「これからみんなと一緒にまた冒険出来るって…そう思ってた…。でも、今ストレアは危険な状況に陥っちまってる…。

 また一緒にいろんな所に行こう。みんなと思い出を作ろう…。

 ストレアがいないとダメなんだよ。誰1人欠けちゃいけないんだ!!

 …だから、帰ろうぜ?オレ達の家に…みんなで一緒に!!」

 

 ユウキ「ストレア!!また一緒に冒険しよう!!」

 

 キリト「ストレア!!」

 

 アスナ「ストレアさん!!」

 

 ユイ「ストレア!!お寝坊は姉である私が許しませんよ!!」

 

 リーファ「ストレアさん!!帰ってきてください!!」

 

 カヤト「ストレアさん!!」

 

 みんながストレアの帰りを願っている。

 みんなの心にはもうストレアがいるのだ。

 だから、再会を願う。だから、一緒にいたい。

 愛している仲間を助ける為なら何だってやってみせる。

 ここにいる全員がそれを望んでいるから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ストレア「みんな…みんな…!!」

 

 ストレアは堪らず泣き崩れた。

 AIだからとか、人間じゃないからとか言っていた自分が恥ずかしくなる。

 目の前の愛すべき者達はこんなにも自分の帰りを願ってくれていると言うのに…。

 

 ストレア「帰りたい…!!帰りたい…!!私は…みんなの所に…タクヤとユウキの所に…お父さんとお母さんの所に帰りたい!!!!」

 

 瞬間、ストレアの体が強く輝き始めた。

 真っ暗な空間がストレアの輝きにより鮮やかな色を広がらせている。

 

 シュラ「それでいいんだよ。…ったく、面倒かけやがって…」

 

 ストレア「…ありがとうシュラ。私…もう迷ったりしないから…!!

 だから、私の中で見てて!!」

 

 シュラ「…それは出来ねぇな」

 

 ストレア「え?」

 

 すると、シュラの体が青白く光りだし足元から徐々に半透明になってきていた。

 

 シュラ「プログラムが作動したな。

 もうじきお前はアイツらの所に戻れるハズだ」

 

 ストレア「で、でも!!シュラの体が…なんで…!!?」

 

 シュラ「…さっき言った通り、本来はお前のコアプログラムを初期化しねぇと覚醒しない。

 正確にはコアプログラムに蓄積されたデータを許容量に収まるように消去しなきゃならなかった…。

 なら、オレの使っている分を消去すれば初期化せずに覚醒するって事だ。元々、オレはここにはいない存在だからな」

 

 ストレア「ダメだよ!!私の為にシュラが犠牲になるなんて!!

 消えないでよ!!せっかくまた会えたのに…!!」

 

 シュラ「オレはあの世界だから生きていられた…。

 でも、それもなくなった今はオレの居場所はどこにもない。

 これでいいんだよ。これが最善の選択だ」

 

 既に下半身は完全に消え去り、上半身も次第に姿を消していた。

 それでもストレアはシュラを何とかしようとするが、シュラに触れる事が出来ない。

 ストレアの体もあちらに帰る為に体が溶けていっているからだ。

 

 ストレア「そんな…!!シュラはこれでいいの!?

 タクヤだってシュラに会いたいって…!!」

 

 シュラ「何度も言わせんな。オレの役目はもう終わったんだ…。

 タクヤ(アイツ)があの世界を終わらせた瞬間に…。

 そんな顔すんな…。アイツらが悲しむだろーが!

 お前にはまだやらなきゃいけない事があるだろ?」

 

 ストレア「やらなきゃいけない事…?」

 

 シュラ「この先、タクヤがつまづく事がある。

 ユウキ(クソチビ)でも支えられない時がきっと来る。

 その時、お前が一緒になってアイツを支えてやれ…。

 お前らは家族だろ?なら出来るハズだ。

 その為に生きるって決めたんだろ?」

 

 タクヤに救われた時にストレアがたてた誓い。

 タクヤとユウキを絶対に守る。

 どんな時でもどんな絶望的な状況でも生涯支え続ける。

 それがストレアがたてた誓いだ。

 

 ストレア「…うん。…絶対に支えてみせる!!

 …シュラの分まで…2人を支えてみせるんだから!!」

 

 シュラ「その意気だ。お前ならやれる…。

 じゃあ、お別れの時間だストレア。達者でな…」

 

 ストレア「うん…ありがとう…シュラ。…もう1人の…お父さん…」

 

 空間は光に包まれ、2人の体は完全に消滅した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ん…」

 

 

 タクヤ&ユウキ「「!!!?」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ストレア「…ただいま…みんな…」

 

 

 タクヤ「ストレア…!!」

 

 ユウキ「ストレアー!!!!」

 

 ストレアが目覚めるとユウキは涙を流しながらストレアを強く抱き締めた。

 

 キリト「…よかった」

 

 アスナ「うん…!!本当によかった…!!」

 

 リーファ「ストレアさぁぁん〜!!!!」

 

 アスナとリーファは涙を浮かべた。

 キリト はそっと肩を撫で下ろす。

 

 ストレア「ごめんね…心配かけて…」

 

 ユイ「本当です!!みなさんがどれだけ心配したか…!!私だって…心配して…うぅ…うわぁぁぁん!!!!ストレアぁぁ!!!!」

 

 ストレア「ユイはそんなキャラじゃないと思うんだけど…でも、ありがとうね、お姉ちゃん…」

 

 ユウキと一緒にユイもストレアに抱きつきながら声を上げて泣き叫んだ。

 

 タクヤ「ストレア…」

 

 ストレア「タクヤ…。ありがとう…また、助けられちゃったね…」

 

 タクヤ「みんなが必死に声をかけ続けてくれたおかげだ。

 でも、本当によかった…。ったく、心配かけやがって!!」

 

 ストレアの髪を撫でながらタクヤは言った。

 ストレアも思わず涙が滲んでくる。

 こんなに自分の帰りを待ってくれる人がいる。

 AIであろうとストレアには違いないのだ。

 仲間がいなくなるのは誰だって辛い。

 そこには何の垣根もありはしない。

 

 ユイ「でも…ストレアのコアプログラムは修復不可能な程ダメージを負っていたのに…どうして?」

 

 ストレア「…実は私が帰って来れたのは…シュラのおかげなんだ…」

 

 タクヤ「シュラ!!?ストレアの中にシュラはいるのか!!?」

 

 ストレア「…ううん。今はもう…完全に消えてる…。

 私を助ける為にシュラが自分を犠牲にして…」

 

 タクヤ「…そうか」

 

 ストレア「ごめんねタクヤ…。シュラを…私は…」

 

 タクヤ「いいんだよ…。アイツが選んだ道だ。

 それにお前がそんな顔してたらシュラが化けて出てくるぞ?

 オレ様の行為を無駄にしやがってぇっ!!…ってな。

 だから、笑えストレア。笑って生きるんだ。

 それがシュラが望んだ未来なんだから…!!」

 

 ユウキ「うん…!!シュラにも同じ事言われたよ…。

 だから、シュラの分までタクヤとユウキを支える!!

 みんなと一緒に思い出を作っていく!!」

 

 迷ったりなどしたらシュラに顔向けできない。

 シュラが望んだのはそんな事ではないから。

 シュラと約束した。

 タクヤを支えてやってくれと。

 

 ストレア「タクヤ…ユウキ…みんな…大好きだよっ!!!!」

 

 

 

 

 

 こうして、短くも様々な出来事が起きた大会は幕を閉じた。

 ストレアが目覚めてすぐにアナウンスが流れ、出場者は本会場に転移された。

 運営側はキングのハッキングに対応を追われ、実質大会は勝者なしという形で幕を閉じた。

 キングはこれから罪を償う為に警察に出頭するだろう。

 運営も大会がこのような結果に終わってしまった事に痛く思い、出場者全員に優勝商品を配るという形で手を打った。

 観客からはブーイングが上がったが、タクヤ達はすぐにでもログアウトして休みたい気持ちが強かった。

 特にタクヤとキリト、カヤトは現実世界の肉体に何らかの影響がある可能性があったので菊岡の手配ですぐに検査入院する羽目になってしまった。

 診断結果は2週間絶対安静というもので学校が始まってすぐに3人は休学を余儀なくされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 拓哉「…暇だー」

 

 和人「…そうだなー」

 

 直人「アミュスフィアも取り上げられちゃいましたからね…」

 

 3人は横浜市立大学病院に入院していた。大部屋にまとめられた3人はベッドの上で暇を持て余していた。

 

 拓哉「病院ってやる事ねぇんだよなー…」

 

 和人「時間が経つのが妙に遅く感じる…」

 

 直人「まぁ、仕方ないですけど…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 木綿季「当たり前だよ!!3人共重症なんだから!!!!」

 

 部屋中にリンゴを剥いていたユウキの声が響き渡る。

 

 明日奈「木綿季…ここ病院だから…」

 

 藍子「そうだよ!静かにしてなさい!!」

 

 直葉「はぁ…病人とは思えませんね」

 

 和人と直人の隣には明日奈と直葉、藍子が位置づけている。

 4人共それぞれログアウトした直後に病院に付き添い、今日までずっと身の回りの世話をしてくれていた。

 

 拓哉「仕方ねぇだろ?暇なもんは暇なんだから」

 

 木綿季「手足が痺れてる状態で何言ってんのさ!!」

 

 病院に入院する事になって今日で3日。

 3人の手足はまだ痺れをきたしているが特に酷いのは直人だ。

 手足が痺れている上に筋肉繊維がズタズタになっているらしく、あと1歩で四肢が動かなくなっても不思議ではなかった。

 それで直人だけ入院期間が1ヵ月と2人より長めであるのだ。

 

 藍子「ネットでナオさんが傷つけられてるのを見て気が気じゃなかったんですから…。もうあんな無茶しないでください…」

 

 直人「…すみません。今後は気をつけます。

 心配してくれてありがとうございます…」

 

 藍子「だから!!ナオさんが退院するまで私、毎日来ますから!!」

 

 直人「ま、毎日ですか?でも、藍子さん今年受験じゃ…」

 

 藍子「受験よりナオさんの体を治す事の方が大事です!!」

 

 勢いで流された直人も首を縦に振る以外に選択肢はなかった。

 他の3人もなるべく見舞いに来てくれるようで何か悪い気持ちで一杯になっていた。

 

 和人「明日奈達は学校があるんじゃ…」

 

 明日奈「うん。流石に学校は休めないから放課後になるけど…」

 

 和人「いや、それだけでも嬉しいよ」

 

 拓哉「じゃあ次来る時なんか、暇を潰せそうな物持ってきてくれよ!

 2週間このままじゃ暇死にしちまう!!」

 

 木綿季「分かったから。今日ぐらいは安静にしてなきゃダメだよ?

 はいリンゴ!食べるでしょ?」

 

 綺麗に切られたリンゴを口に運んで貰いながら、不自由と感じたのは口に出さない。

 出したらまた小言を言われるのが目に見えているからだ。

 すると、ドアがノックされ呼びかけるとそこには総務省の菊岡誠二郎がいた。

 

 菊岡「やぁみんな!!元気かい?」

 

 拓哉「これをどうみたら元気に見えんだよ…」

 

 菊岡「あははっ。確かに、手足が動かせないんじゃ元気にはなれないか」

 

 和人「で…今日は何しに来たん…ですか?」

 

 和人が菊岡に尋ねると瞬時に表情を引き締めた。

 

 菊岡「今日はキングこと立花一騎の事で足を運んだ次第だよ」

 

 拓哉「…」

 

 菊岡「細かい事は省略させてもらうが立花一騎は大会終了後、近くの警察署に出頭した。総務省からデータを盗んだ容疑とALOのシステムにハッキングをかけた容疑を認めてね…」

 

 拓哉「それで…キングはどうなるんだ?」

 

 病室の空気が重くなっていくのを感じる。

 

 菊岡「こちらの弁護も含めてなんとか刑務所行きは避けられてね。

 執行猶予3年と賠償金で判決は下ったよ」

 

 直人「…」

 

 和人「よかった…のか?」

 

 菊岡「まぁ、しばらくは死に物狂いで賠償金を支払う事になるだろうが、こちらとしても()()()()()()()()()()に漕ぎ着けたよ」

 

 拓哉はログアウト直後に動かない体を酷使させ、菊岡にキングの弁護を要請しておいた。

 道を間違えたとは言え、キングにも何を捨ててでも守るべき者の為に力を求めていた。

 最初は菊岡も渋っていたが、条件が飲めないなら拓哉も出頭すると半ば脅迫じみた行為に出た。

 SAOで人を殺めたと本人が言えば、警察も捕まえざるを得ないだろう。

 タクヤもキングと一緒で何かを守る為に道を踏み外したのだから。

 

 木綿季「拓哉…」

 

 拓哉「…ナオや和人には悪いとは思ったけど…やっぱり、どうしてもキングの事を放っておけなくて…」

 

 和人「オレは別に…拓哉が解決させた事件だ。

 決定権は拓哉にあるんだからそれに従うよ」

 

 直人「僕も同意見だよ」

 

 拓哉「…すまねぇな」

 

 菊岡「まぁ、これでこの事件は一件落着という事だ。

 では、僕はこれにて失礼するよ。お大事に3人共」

 

 そう言い残して菊岡は病室を後にした。

 

 明日奈「…今思い返すと大変な事になっちゃったね」

 

 直葉「そうですね。でも、私はキングの事嫌いです!!

 あの人がいなかったらストレアさんはあんな事にならなかったんですから!!」

 

 木綿季「そうだね…。ボクも内心まだキングの事許せないけど…ストレアが許すって言ってるから…ボクも許す…ように頑張る」

 

 拓哉「…えらいぞ木綿季。辛い思いさせてごめんな」

 

 木綿季の頭を撫でながら拓哉は言った。

 木綿季も照れくさそうにするも、じっと拓哉に頭を撫でられている。

 

 直人「…」

 

 藍子「…ナオさんは本当によかったんですか?」

 

 直人「え?…いいんですよ。あの人にもあの人の矜持があった。

 やり方は間違ってるけど全てを否定出来ませんから…。

 これがベストなんですよ」

 

 直葉「直人君は甘いよ!!そんなにボロボロにされて…!!

 もっと怒ったりしていいのに!!」

 

 和人「落ち着けってスグ…!!

 直人がいいって言ってるんだからそれでいいじゃないか」

 

 直葉「でも…!!」

 

 直人「ありがとうございます直葉さん。優しいんですね?」

 

 直葉「そ、そんな事ない…けど…」

 

 藍子「…」

 

 木綿季(「これは…もしかして修羅場?」)

 

 明らかに藍子の目が直葉を捉えていた。

 その目は何か良くない感情が湧き上がっているのを感じたが木綿季は黙っておく事にした。

 

 菊岡「そうだ!大事な事を伝えるの忘れてたよ!!」

 

 拓哉「ノックぐらいしろ!!」

 

 いきなり再度現れた菊岡に怒鳴ったタクヤだが、体に力が入らない為、上手く声を出せない。

 

 菊岡「拓哉君。これ約束の報酬だよ」

 

 拓哉「報酬?」

 

 机の上に置かれたのは1枚の封筒だった。

 

 菊岡「じゃあまたよろしくね〜」

 

 今度こそ立ち去った菊岡を尻目に拓哉は木綿季に頼んで封筒を開けてもらう。

 

 木綿季「なんか1枚入ってるね」

 

 中を取り出すとどうやら小切手のようだが、ユウキはそこに書かれていた金額に思わず椅子から転げ落ちそうになった。

 

 拓哉「だ、大丈夫か!?」

 

 木綿季「な、なんとか…」

 

 明日奈「木綿季、それは?」

 

 木綿季「見てよこれ…」

 

 藍子と直葉も加わり小切手を見ると4人共顔を青くして拓哉を見つめる。

 

 拓哉「な、なんだよ…」

 

 和人&直人「「?」」

 

 木綿季「これ…本当に報酬?」

 

 拓哉「何をそんなに慌てて……は?」

 

 そこに書かれていたのは0が6つあり、先頭には1の数字が刻まれていた。

 つまりは…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 拓哉「100万円んんんんんっ!!!!?」

 

 

 

 

 

 和人&直人「「はぁぁぁぁぁっ!!!!?」」

 

 

 それ以降拓哉はことある事にみんなからせびられていくのだった。




いかがだったでしょうか?
総務省ってどんだけお金があるんですかね?
それに今日新たな三角関係が出来上がりつつありますがそれはまた後日に…。
次のネタをかんがえないとなー

評価、感想ありましたらどしどし送ってください!


では、また次回!
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