ソードアート・オンライン-君と共に在るために-   作:ちぇりぶろ(休載中)

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という事で53話目になります。
今回はシリーズもので次回ともしかするとその次まで続くのでよろしくお願いします。
週刊連載にも慣れてきて安定してきたし、挿絵でも挟んでいこうかなと野望を抱きつつあります。
まだなんとも言えませんがもし、挿絵を入れる時にはお知らせしますのでよろしくお願いします!
活動報告の方でも挿絵について書いてますので何か要望や質問があれば書き込んでください。


では、どうぞ!


【53】光の歌姫

 2025年08月05日09時00分 ALO 央都アルン

 

 ALOの中心に在るアルンは世界樹が天を貫かんばかりに聳え立ち、柔らかな陽光が街全体に降り注いでいる。

 この街には9つの種族の妖精達が立場を気にせず自由に闊歩している姿が目に付く。

 ALOというゲームは種族感で抗争し、どの種族よりも先に世界樹の頂きにたどり着く事が"グランド・クエスト”に設定されていた。

 だが、それはもう過去の話で運営がユーミルに委託されてからは誰でも自由に世界樹の頂きへと登れるようになった。

 イグドラシルシティと命名された街はアルンと遜色ない程に賑わいを見せていた。

 

 タクヤ「…はぁ」

 

 誰もが笑顔を撒き散らせながら街を歩いている中、闇妖精族(インプ)の青年タクヤは顔を俯かせ、事ある事にため息をついている。

 それは7月末に1本の電話を取った事が関係している。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2025年07時30分21時40分 陽だまり園前歩道

 

 拓哉「…もしもし」

 

 菊岡「いやぁ拓哉君、こんばんわ」

 

 電話の相手は菊岡であった。わざとらしく高い声で話しかけてくる菊岡に先程まで幸せの渦中にいた拓哉の気持ちが一気に冷めていくのを感じた。

 

 菊岡「もしかして、デート中だったかな?それは悪い事したね」

 

 拓哉「…何の用だ?」

 

 菊岡「つれないなぁ拓哉君。そういう甘酸っぱい青春は大人になったら味わえないんだよ?もっと学生は学生らしく元気でなくっちゃ!」

 

 拓哉「アンタが電話さえかけてこなけりゃ元気だったんだがな」

 

 皮肉混じりで菊岡に返すも簡単にあしらわれ、拓哉のテンションがまた更に下がっていった。

 

 拓哉「用がないなら切るぞ」

 

 菊岡「用ならあるんだよねー…。さてと拓哉君、君は"VRの歌姫”って知ってるかな?」

 

 拓哉「"VRの歌姫”?…聞いた事ないな」

 

 菊岡「じゃあ、こっちなら聞いた事あるんじゃないかな?"七色・アルシャービン”と言う少女の名を」

 

 拓哉「それならテレビで見た事ある…」

 

 七色・アルシャービン

 弱冠12歳で数々のVR関連の論文を発表し、博士号も取得した彼女はアメリカで日々VR技術の新たな可能性を見出していると言われている天才だ。

 

 菊岡「そして、彼女はVR技術をさらに先へと進める為に自らもプレイヤーとなってそこでアイドル活動をしているんだ」

 

 拓哉「へぇ…。研究にアイドルねぇ…。で、それがアンタの用事と一体どういう関係が?」

 

 菊岡「彼女は近々、日本に来日する事になっていてね。日本のVR技術の査定とまだ未発表なんだが、新しいVRMMOゲームの開発にも取り掛かるべく会議を開くらしい」

 

 話が全く見えてこないが、未発表のゲームが作られると聞いて拓哉は少なからず心を踊らせていた。

 VRMMOはSAOとALOしかプレイしていない為、次はどんなものが出てくるのか今から待ち遠しい。

 

 菊岡「でだ…。七色博士が来日するにあたって日本での護衛をぜひ拓哉君に頼みたいと向こうから仮想課(ぼく)を通じて依頼があったんだよ」

 

 拓哉「へぇ…そうなんだ……はぁっ!!?」

 

 菊岡「おぉ!期待していた通りの反応だ!」

 

 拓哉「ちょ、ちょっと待て!!なんでオレがそんな事頼まれなきゃいけねぇんだよ!!?ただの高校生だぞっ!!!」

 

 第一、それ程の有名人なら自前の護衛がついているのが当然だ。

 言わば七色博士にはVR技術の全てが詰まっているのだから、彼女を狙う輩も当然いるだろうし、護衛をつけずには歩く事も敵わないんじゃないだろうか。

 

 菊岡「実を言うとね、七色博士はSAO事件も知っていて世間じゃ"光”のアルシャービン、"闇”の茅場晶彦と比喩されているんだ。

 その茅場晶彦の弟がSAO事件を終結させたと知った彼女がぜひ拓哉君に会いたいと…」

 

 拓哉「えぇ…」

 

 菊岡「すまないが拒否権はないんだ。向こうが些か横暴でね…拓哉君が来なきゃ新作ゲームも協力しないと駄々をこねている。

 そこら辺は年相応な反応だが、この新作に日本の技術スタッフも力を入れていてね。何とかしたいんだよ」

 

 拓哉「…新作の為…か」

 

 菊岡「やってくれるね?」

 

 拓哉「…仕方ねぇな!ガキのお守り、頼まれてやるよ!!」

 

 菊岡「よかった…!!じゃあ、日時は折り返しメールで送るよ。では、頼んだよ拓哉君!!」

 

 通話を切って、面倒半分、好奇心半分を胸に抱いて拓哉は再び帰路へとついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タクヤ「場所と時間は…合ってるよな…?」

 

 七色博士が待ち合わせに指定したのはALOのアルンの世界樹前。

 時間は午前9時。本来ならば既にここに七色博士が来ているハズなのたが、未だにタクヤ以外世界樹に足を運んでいるプレイヤーはいなかった。

 それからしばらく待つ事30分。

 タクヤの前には人っ子一人現れず、途方に暮れていた。

 

 タクヤ(「人をさんざん待たせやがって…!!博士だかなんだか知らねーが、待ち合わせ時間に来ねぇとはどういう了見だコラ!!」)

 

 フラストレーションが募らせていると、階段から微かだが足音が聞こえてきた。

 

 タクヤ「やっと来やがったか…!!ここは年上として1つ説教でもしてやる!!」

 

 鼻息を荒くしながら階段の方へと足を運ぶ。

 足音も次第に大きくなっていき、いよいよ待ちに待った…は大袈裟だが、ご対面といこうじゃないか。

 

 タクヤ(「ん?…足音が…2つ…?」)

 

 徐々に階段下から姿が顕になってきた。

 頭には羽根をあしらった小さな帽子に腰まで伸びた銀髪が風に揺られ、外見はまるっきり少女の姿をしたプレイヤーがタクヤの前に現れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「プリヴィエート、初めましてタクヤ君!私はALO(コッチ)じゃセブンで通っているわ!!種族は予想通り音楽妖精族(プーカ)よ。よろしくね!」

 

 セブンと名乗った少女が小さな体を張り、拓哉にロシア語を交えた挨拶を交わす。

 そして、セブンの後ろには空色の髪をなびかせ、拓哉を凝視する青年の姿もあった。

 

 タクヤ「オレはタクヤ。しばらくの間よろしくな!…後、待ち合わせの時間に遅れたのはどういう理由だコラ」

 

 セブン「初対面よね私達!?なんでそんなに怒ってるのかしら!?」

 

 タクヤ「初対面だろーが関係ねぇ…。オレは約束を守れねぇ奴は大っ嫌いだ!!」

 

 礼儀は嫌という程教えこまれた身としては最初の段階からたるんでは後の関係も悪化させてしまう危険性がある為、この場でしっかりと躾なくてはいけない。

 

 セブン「そ、それは悪かったわ。ごめんなさい…」

 

 タクヤ「よしっ!いい子だ。今度から気をつけろよ?」

 

 セブン「…あれ?一応私って君を雇ってる側よね?…まぁいいわ。

 こっちの無愛想なのが私のマネージャー兼秘書のスメラギ君よ」

 

 タクヤ「オレはタクヤ、アンタもよろしくな!」

 

 スメラギ「…」

 

 握手を交わそうとタクヤが手を差し出すが、スメラギはしばらくそれを見たまま手を差し出す事はなかった。

 

 セブン「スメラギ君、挨拶はちゃんとしなくちゃいけないわよ!」

 

 スメラギ「…する必要はないな。何故なら、俺は貴様を認めていないからだ」

 

 タクヤ「!!…へぇ、初対面で結構な事言ってくれんな。…まぁ、最初から信頼しろっていう方が無理な話か。…だけど、これから一緒に行動する奴を前にその態度はないんじゃないか?」

 

 スメラギ「自惚れるな。貴様はあくまで俺の予備動員に過ぎない。お前こそ、セブンを叱ったが本来ならクライアントにあのような態度を取るのは愚行に他ならない。…次からは言動を改めるんだな」

 

 タクヤ「んだと…!!」

 

 セブン「もぉーっ!!!!会ってそうそう喧嘩なんかしないのっ!!!!スメラギ君も言い過ぎよ!!これからしばらく一緒なんだから仲良くしないと上手くいくものも上手くいかないよ!!!」

 

 スメラギ「フン…」

 

 顔を逸らしたスメラギをしばらく睨み続けたがこのままでは話が進まない事を危惧したセブンが手を叩き、悪い流れを切った。

 

 セブン「ごめんねタクヤ君。スメラギ君ったら変に気難しい人だから…」

 

 タクヤ「…別に」

 

 セブン「じゃあ、仕事内容なんだけど!タクヤ君にはスメラギ君と同様に私の側付きになってもらうからね。別に四六時中一緒にいるって訳じゃないけど、会議に出席する時やコンサートの打ち合わせの時に力を借りるわ」

 

 内容は至ってシンプルなもので、要はセブンの身の回りの世話やコンサートの準備にに携わるものであった。

 今回来日したのを期にALOで初のコンサートをやりたいというセブンの強い要望もあり、何かと人手を増やしかったらしい。

 

 タクヤ「概ね理解したけど、それってわざわざオレに頼む事か?セブンの周りにだってスタッフや…スメラギがいるだろ?」

 

 セブン「もちろんその通りなのだけど、タクヤ君は特別よ。なんて言ってもあの茅場晶彦の弟でSAO事件に幕を閉じた英雄だもの!その事には興味もあったし、色々話を聞きたいの!」

 

 タクヤ「過大評価じゃなきゃいいけどな…」

 

 スメラギ「…」

 

 スメラギが不機嫌そうにタクヤを睨んでいたが、敢えてその事には触れずにセブンの説明に耳を傾けた。

 

 セブン「今日は今からアルンの中央広場へ行って来週あるコンサートの設営をやってもらうわ。夕方…そうね、16時頃から現実世界(リアル)で新作ゲームの会議がまたあるからそれにも付いてきて貰おうかしら」

 

 タクヤ「…セブンって大変なんだな」

 

 セブン「え?そうかしら?」

 

 タクヤ「だってまだ12歳だろ?普通なら友達と遊んだり、もっと自由な時間を送ったりするもんじゃねぇか」

 

 セブンはタクヤの言葉を聞いてしばらく考える素振りを見せたが、すぐに笑顔を作ってタクヤの言葉を否定した。

 

 セブン「別にこの生活が苦に感じた事はないわ。VR技術は日々進歩してるし、その一端に関われる事はとても名誉な事よ。

 新しい可能性を模索してこれからの未来を今よりももっと明るくしたいもの!私がアイドルとして仮想世界にいるのだってライブに来てくれたみんなを笑顔にしたいからだし、私はそんな笑顔が見たいから頑張れるの!」

 

 子供の考えとは思えないセブンの発言にタクヤは終始目を丸くしていたが、セブンにはこの活動が誇りとさえ感じているようだ。

 確かに、これからのVR技術が発展していけばいつの日にかAIであるストレアやユイを現実世界でも認識でき、新たな可能性を見出せるかもしれない。セブンが手掛けているものはそういった夢のあるものなのだ。

 

 タクヤ「すげーな。まだこんなに小せぇのに色々考えてんだな!」

 

 セブン「技術を発展させるのに年齢なんて関係ないわ。知識があれば誰にだって可能性を口にする権利がある。

 日本ももっと広い視野を持ってもらって、才能がある人達を積極的に発掘してもらいたいわね」

 

 スメラギ「…セブン、そろそろ時間だ」

 

 セブン「もうそんな時間?じゃあ、タクヤ君。改めてしばらくの間よろしくね!頑張りましょ!!」

 

 タクヤ「あぁ、オレも出来る限りバックアップさせてもらうぜ!」

 

 それから3人はコンサートの準備に取り掛かるべくアルンの中央広場へと向かったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2025年08月05日09時30分 ALO央都アルン 中央広場

 

 中央広場へとやって来たセブン一行はそこに集まっていたセブンが立ち上げたギルド"シャムロック”と合流した。

 セブンは裏で当日のスケジュールやライブでの演出を考える為、数人のメンバーを連れて行った。

 

 タクヤ「…で、具体的にはオレは何をすればいいんだ?」

 

 スメラギ「…貴様にはあそこにいるメンバーと一緒に会場の準備をしていろ。俺はこれから必要な備品のチェックに入る。

 くれぐれも自分勝手な行動は慎め。セブンは貴様の事を高く買っているようだが、俺はその例には入らない」

 

 タクヤ「一言余計なんだよな…。へいへい、オレは大人しくやってるよ」

 

 スメラギと別れ、設営の準備をしている場所に向かったタクヤの後ろ姿をスメラギはしばらくじっと見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2025年08月05日12時30分 ALO央都アルン 中央広場

 

「よし、今日はここまでにしておこう。機材はライブ前日に届くからな」

 

 タクヤ「うぃーす。しかし、仮想世界でのライブの設営なんて簡単だと思ったが結構やる事があるんだなぁ…」

 

「あぁ、現実世界(リアル)と違って力仕事はそれほどないが、組み立ての手順を1つでも間違ったら最初からやり直さなきゃだからな。

 念入りに設計図を作って、手順通りに完璧に設営するんだ。お陰でいっつもドキドキしながらやってるよ」

 

 仮想世界の設営などボタン1つで完成されたものが現ると思っていたが、最初から組み立てていき、それを事ある事にセーブしていく事になるとは思わなかったタクヤは初めて仕事をしてみて単純に凄いと思ってしまった。

 設営メンバーも次々とログアウトしていき、残されたタクヤはスメラギに指示を仰ぐ為に備品チェックをしているテントへと足を運ばせた。

 すると、テントの中から聞き慣れない男性の叫び声を聞いて急いでテントへと入ると、備品メンバーであろう男性が頭を抱えながら挙動不審になっていた。

 

 タクヤ「どうかしたのか!?」

 

 スメラギ「なんだ今の叫び声は!!」

 

「あぁ…スメラギさん…。すみません!手違いで納品されるハズだったセブンさんの衣装がまだ届いていなくて…」

 

 スメラギ「何?ライブ衣装なら俺もチェックした。届いていない訳ないだろう?」

 

「それがその仕入れメンバーがここに来る途中で(キル)されて衣装の材料がドロップさせられてしまいまして…」

 

 スメラギ「馬鹿者!!あれ程気をつけろと忠告しておいただろ!!」

 

 スメラギの怒声にメンバーも肩を震わせてしまい、慌ててタクヤがその間に割って入る。

 

 タクヤ「なっちまったもんは仕方ねぇだろ。コイツもその仕入れた奴も悪気があったんじゃねぇんだから!」

 

 スメラギ「ならどうするつもりだ!あのライブ衣装は特殊なレアアイテムを使っている為、来週のコンサートまでに全て集められないんだぞ!!」

 

 タクヤ「やってみねぇと分かんねぇだろうが!!簡単に諦めんじゃねぇ!!」

 

 セブン「ちょっと!!そんな声を荒らげてどうしたのよ!!?」

 

 打ち合わせを終えたセブンか慌てた表情でテントの中に入り、事の顛末を聞いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 セブン「なるほどね…。それは確かに困ったわね。今から新しい衣装を用意するにも時間がないし…」

 

 さすがのセブンも事の重大さに冷や汗をかいた。

 そのレアアイテムを集めるのも困難だし、集められたとしてもそれで衣装を作れる程の裁縫スキル持ちがスタッフの中にもいないのだ。

 

「本当に申し訳御座いません!!」

 

 タクヤ「終わったもんをいつまでも気にすんなって。それでよ、そのレアアイテムってどこで手に入るんだ?」

 

「え?」

 

 スメラギ「おい。そんな事を聞いてどうするつもりだ?」

 

 タクヤ「どうするって集めなきゃ衣装は出来ねぇんだろ?だったら、集めるしかねぇじゃねぇか」

 

 セブン「確かにそうだけど集めるにしたってそのアイテムもドロップ率が低くて中々手に入らないのよ。仮に全部集められたとしても衣装を縫う裁縫スキル持ちがいないんじゃ…」

 

 最早絶望しかけたその時、タクヤはフッと笑って男性からレアアイテムのリストを受け取るとアイテムのドロップする場所を調べた。

 

 タクヤ「だからってじっとしてたら事態は好転しない。幸い裁縫スキル持ちのアテなら何とかなると思う。…てか、こんなにアイテム使うのかよ」

 

 スメラギ「…言っておくがアイテムを集めるのに人手を割く事は出来んぞ」

 

 会場の設営に備品補充、ライブのスケジュールに演出とここのメンバー達にはそれぞれの仕事がある為、衣装作りに協力は仰げない。

 

 タクヤ「分かってる。確かに、全員自分の持ち場があるしここのメンバーにはやらせねぇよ。オレがそのアイテムを集めてくれば文句ないだろ?」

 

 セブン「無理よ!!そのレアアイテムは各領地にバラけてるし1人じゃ絶対に…」

 

 タクヤ「誰が1人で集めるって言ったよ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 こういう困った時は仲間に頼るんだよ!!」

 

 セブン&スメラギ「「?」」

 

 目を丸くしていたセブンとスメラギを置いて、タクヤは話を進ませる。

 

 タクヤ「衣装が必要な正確な日にちは?」

 

 セブン「え?えっと…来週の12日には衣装がないと間に合わないわ」

 

 タクヤ「丸1週間か…。その日までに完成した衣装を持って帰ってくるからよ。待っててくれ!!ちゃんと現実世界(リアル)での仕事にも出るからそこは安心してくれ」

 

 セブン「え、えぇ…」

 

 スメラギ「ふざけるな!!仲間に頼ると言ったな?貴様の仲間をこちらが簡単に信用出来る訳がないだろ!!」

 

 タクヤ「…まぁ、当然の反応だよな。でも、今はこれしか方法はねぇし、アイツらは心配するような事はしねぇ!!」

 

 スメラギ「何を根拠に…!!」

 

 セブン「分かったわ」

 

 スメラギ「セブン!!?」

 

 セブン「スメラギ君の言いたい事も分かるけど今はコンサートを成功させるのが第一よ」

 

 セブンの言う事はもっともで、スメラギもそれが分かっているからこそ、セブンに意見出来ないでいた。

 

 タクヤ「ありがとう。じゃあ、早速アイテム集めに行くか!!あ、セブン!現実世界(リアル)での待ち合わせ場所はメッセで送ってくれ。ちゃんと時間までに行くからさ!」

 

 そう言い残してタクヤはテントを飛び出し、自身のプレイヤーホームがあるイグシティへと飛び立って行った。

 

 スメラギ「セブン!!アイツの言う事を真に受けるのか!!?」

 

 セブン「今はそれしか打開策がないじゃない。それに彼なら信用出来るわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なんてったって彼は"英雄”なんだから!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2025年08月05日13時00分 ALOイグシティ マイホーム

 

 キリト「お、来たな」

 

 ユウキ「タクヤー!!」

 

 アスナ「こんにちはタクヤ君」

 

 タクヤ「急に呼び出して悪かったなみんな!」

 

 タクヤはイグシティにあるマイホームへ向かう途中に仲間達に自身のホームへ来るように声をかけていた。

 それに応じてくれたのがユウキにストレア、キリト、アスナ、ユイ、リズベット、シリカ、ランの9人だ。

 

 リズベット「いきなり来てくれって言うもんだから店閉めて来ちゃったわよ」

 

 シリカ「でも、今日はあんまり人来なかったからちょうどよかったじゃないですか」

 

 タクヤ「悪ぃな。この埋め合わせはいつか必ずするからさ」

 

 キリト「で、いきなり呼び出してどうしたんだ?」

 

 タクヤ「あぁ、みんなにちょっと手伝ってもらいたい事があって…」

 

 それからタクヤはここにいるメンバー全員にセブンの事や今の状況を説明してこれからの事について相談した。

 

 アスナ「じゃあ、私達でそのリストに載ってるアイテムを持ってくればいいんだね?」

 

 ストレア「ひゃ〜!いろんな領地にバラけてるから結構大変そうだねー」

 

 タクヤ「無理も承知で頼んでんだ!もし、都合が悪ければ先に言ってくれてもかまわねぇ」

 

 ユウキ「大丈夫だよ!ボク達もタクヤとそのセブンって娘に協力するよ!」

 

 ラン「私も可能な限り力になります!」

 

 どうやら全員協力してくれるようでタクヤも心底ホッとした。

 

 タクヤ「で、アイテムを集めてから衣装を作るんだけど…アスナ、()()()ってALOにいるのか?」

 

 アスナ「うん。アシュレイさんもALOしてて裁縫スキルも完全習得(カンスト)してるよ」

 

 アシュレイとはタクヤ達と同じSAO帰還者(サバイバー)で当時の血盟騎士団の隊服を(こし)らえた程のファッションデザイナーである。

 

 リズベット「私達の装備もこの間アシュレイさんに作ってもらったのよ。ねぇシリカ?」

 

 シリカ「作ってもらうまでにいろいろありましたけどね…」

 

 タクヤ「アシュレイにも頼みに行くけど…あの人の事苦手なんだよなぁ…」

 

 当時、タクヤとユウキもアスナの薦めでアシュレイに装備を新調してもらった事があるが、その時にタクヤはアシュレイのお眼鏡にかかり随分と振り回されたものだ。それを見てユウキもアシュレイに苦手意識を持ってしまった。

 

 ユウキ「あの人…微妙に狂ってるし…」

 

 アスナ「で、でも腕は確かだから!!」

 

 キリト「今はとにかくそのアイテムをみんなで手分けして集めようぜ?

 ユイ、最適ルートを検索してくれないか?」

 

 ユイ「分かりましたパパ!!」

 

 ユウキ「ストレアもお願いっ!!」

 

 ストレア「あいあいさ〜」

 

 そんな話をしていると、セブンからメッセージがタクヤに入ってきた。

 読む限り会議の時間が早まったので今からすぐに合流してくれとの事であった。

 

 タクヤ「悪い!!セブンから呼び出しがかかった!!オレは行くけど時間を見つけてオレも手伝うから!!」

 

 キリト「オレ達もなるべく早くアイテムを揃えておくよ」

 

 タクヤ「助かる!!このお礼は絶対するから!!」

 

 リズベット「期待しないで待ってるわよ」

 

 リズベットの皮肉を皮切りにタクヤはその場でログアウトして行った。

 

 シリカ「それにしてもタクヤさんもいろいろ大変ですね…」

 

 キリト「あぁ、オレも1度セブンに会ってみたいな。これからのVR技術がどう進んでいくのか気になるし」

 

 アスナ「でも、菊岡さんはなんでセブンって娘の護衛にタクヤ君を指名したのかしら?」

 

 ユウキ「タクヤが茅場晶彦の弟だからセブンが興味を持ったって聞いたけど…」

 

 キリト(「それだけでタクヤを指名するのか?…菊岡の事だ。何か別の理由があるんじゃ…」)

 

 そう考え始めるとキリがない事を悟ったキリトは一息入れてみんなで作戦会議に入る事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2025年08月05日14時00分 東京都銀座駅

 

 拓哉は現実世界に帰ってくるや否や玄関に置いてあるバイクに跨り、すぐ様銀座へとバイクを走らせた。

 駐輪場にバイクを停め、待ち合わせ場所の駅前にやって来た拓哉は黒服のガタイのいい男性に案内され、同じく黒塗りのリムジンに乗せられた。

 怪しく思いつつも車内にはALOで見た容姿のセブンとスメラギがいた。

 

 七色「プリヴィエート!時間ぴったしねタクヤ君!!」

 

 拓哉「お前らもALOと同じ姿なんだな」

 

 七色「まぁ、ALOにはアイドル活動の他に研究も兼ねてるから同じ容姿の方が何かと都合がいいのよ」

 

 拓哉「ふーん…色々考えてるんだな」

 

 リムジンが走り始めて20分程が経過しただろうか。停めた場所の前には超高層ビル郡の中で1番の高さを誇ったビルが建っていた。

 これには拓哉も驚き、普段の私服を着てきた事を悔やみながらも七色に誘われ、中へと入っていく。

 エントランスも帝国ホテル顔負けの豪華さで拓哉は辺りを何度も見渡していた。

 

 七色「タクヤ君!少しは落ち着きなさいよ!」

 

 拓哉「いやだって、こんな所に来たの初めてだし…」

 

 住良木「…」

 

 しばらくすると案内を務める女性が10階にある会議室まで案内し、そこで拓哉達は数分の間、技術スタッフを待った。

 

 住良木「おい…俺達は退出するぞ」

 

 拓哉「え?なんで?」

 

 七色「そうね…その方がいいかも知れないわ。タクヤ君も新しいゲームの内容が分かっちゃったらつまらないでしょ?」

 

 拓哉「…確かに」

 

 住良木に連れられ拓哉は別室に移動した。

 案内されたのは先程に比べれば狭い部屋だったが、男性が2人で待つには充分すぎる広さである。

 案内人からコーヒーを差し出され、部屋には拓哉と住良木だけが残された。

 

 住良木「…」

 

 拓哉「…」

 

 コーヒーを啜る音のみが部屋に響き、重い空気が拓哉と住良木の間に発生している。

 七色が会議が終わるまでまだ相当時間がある為、拓哉はこの空気に耐えられるか心配になってきた。

 

 拓哉(「話す事ねぇし、何かと突っかかってくるし…気まずい」)

 

 住良木「…貴様は─」

 

 拓哉「ん?」

 

 住良木「貴様は七色の事をどう思う?」

 

 突然の質問に理解出来なかったが改めて考えても答えなど出せる訳がない。七色/セブンとは今日知り合ったばかりでセブンと長年行動を共にしているであろう住良木に聞かれてもどう答えればいいのか分からない。

 

 拓哉「どうって…別にどうも思ってねぇよ。今日知り合ったばっかりだぞ?逆にどうか思ってる方が不思議だよ」

 

 住良木「…七色はアメリカでも研究に研究を重ね、今の地位と権力を手に入れた。12歳の子供の為せる事じゃない」

 

 拓哉「まぁ、だろうな」

 

 住良木「七色は言った。『私が頑張れば頑張る程多くの人がVR技術の素晴らしさに気づいて近い将来誰も成し得なかった()()A()I()だって完成させられるわ!!』と…。

 俺にはその意味も凄さも半分程しか理解出来なかった」

 

 拓哉「いや、聞く限りオレはまったく理解出来ん」

 

 住良木「…だが、それを何故、あの娘が先頭に立ってやらなければいけないんだと、いつも思っている。本来なら普通に暮らし、普通に学校に通い、普通に友人を作っているハズだった…。それを七色は研究に費やし、友人と呼べる者が出来なくなってしまった。

 周りの人間に七色は近づき難い存在に変わったのだ…」

 

 カップに入ったコーヒーを全て飲み干した住良木は項垂れ、今にも発狂しそうな程に悲しんでいる。

 いや、悲しいというよりもおそらくこれは…─

 

 

 

 

 

 拓哉「…なんでお前が怒ってんだよ?」

 

 住良木「…今のは忘れてくれ。貴様は貴様の出来る事だけをやってくれればいい」

 

 部屋を後にした住良木の後ろ姿を拓哉はただじっと眺める事しか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2025年08月05日19時40分 東京都銀座駅前

 

 七色「はぁー…疲れたー!!」

 

 拓哉「お疲れ。結構長かったな」

 

 昼過ぎから始まった会議は日が傾き、夜になった所でお開きになった。

 まだ大体の方向性や設定などしか決まっていないが七色曰く、初回でここまで進められれば上出来との事だ。

 ビルから出てリムジンに乗るや否や小さな体をめいいっぱい仰け反り、疲れを少しでもなくそうと奮闘している。

 

 住良木「七色、行儀が悪いぞ」

 

 七色「いいじゃない。会議が長くて肩や腰が痛いだもの」

 

 12歳の発言ではないが、大の大人でもこれだけ長い時間部屋に詰めれば疲れが出てもおかしくはない。

 

 七色「今日はこれでもう終わりよね?」

 

 住良木「あぁ。明日は8時にコンサートの打ち合わせ。10時にスポンサーへの挨拶回り、13時には…」

 

 七色「だぁー!!スケジュールがみっちりすぎるー!!せっかく日本に来たんだもの、ちょっとぐらい観光もしたいわ!!私、秋葉原って所に行ってメイドカフェに行きたいの!!」

 

 拓哉「もうちょっと日本らしい所に行けよ…」

 

 住良木「悪いがコンサートが終わるまでの間、そんな暇はない」

 

 住良木の一言で肩をひどく落とした七色に鬼かと言うぐらい綿密なスケジュールを読み上げていく。

 やはり、12歳の少女にはこれだけの重労働は酷なのだろう。

 

 拓哉「じゃあ、コンサートが終われば多少時間があるんだな?」

 

 住良木「…取れても1日だけだ」

 

 七色「えぇっ!!?」

 

 白い灰になった七色を横に拓哉は話を続ける。

 

 拓哉「じゃあ、オレが東京を案内してやるよ」

 

 そう聞いた瞬間、七色に顔に生気が漲り、銀色の髪の毛を翻しながらタブレットで東京の観光スポットを検索し始めた。

 

 七色「1日しかないなら、計画的に名所を回らないと勿体ないわよね!今の内にスケジュール組んじゃおう!」

 

 拓哉「いきなり元気になったな…」

 

 住良木「…」

 

 七色「もちろん住良木君も来るでしょ?」

 

 住良木「俺は別に興味はない…。元々、3年前から日本にいたしな」

 

 七色「それだと私がつまんないじゃない!住良木君も私と一緒に来るの!はい決定!!」

 

 無理矢理住良木を巻き込んだが、七色にとって数年来一緒にいたパートナーがいなくては楽しいものも素直にそう感じれないだろう。

 住良木もこれ以上は言い返さず、黙って外の景色を眺めている。

 そんな事を画策しているとリムジンは銀座駅の前で停車し、タクヤを降ろした。

 

 七色「じゃあ、タクヤ君。明日は早朝に君の家まで迎えに行くから自宅で待ってるのよ?じゃあまたね、ダスヴィダーニャ!!」

 

 拓哉「おう!またな!」

 

 住良木「…」

 

 拓哉「…住良木」

 

 自分の名前が呼ばれるとは思わなかった住良木は驚いた表情で拓哉に顔を向けた。

 

 住良木「…なんだ?」

 

 拓哉「お前が何にキレてんのか知らねぇけどよ…。言いたい事があるならハッキリ言った方が楽になるぜ?」

 

 七色「?」

 

 住良木「…余計なお世話だ」

 

 リムジンは拓哉を残してホテルへと走って行った。

 車内では疲れがピークに達したのか七色は深い眠りにつき、その様子を見て七色にタオルケットをかけた。

 

 住良木「…」

 

 

『言いたい事があるならハッキリ言った方が楽になるぜ?』

 

 

 住良木「…それが出来れば苦労はしない」

 

 もうすぐチェックインしたホテルに着く。

 七色を起こして自室のベッドで寝かせなくてはならない。

 寝顔だけ見れば年相応の可愛らしい顔なのだが、住良木はそんな顔は3年いて滅多に見た事がない。

 

 住良木「…」

 

 すると、住良木の携帯に着信が入り、電話を取った。

 

 住良木「もしもし…─」

 

 

 

 

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いかがだったでしょうか?
今回からのシリーズはセブンとスメラギを軸に進んでいきます。
ゲーム中と内容は違いますから矛盾している箇所があるかもしれませんので、気づきましたらお知らせください。


評価、感想なども待っていますのでよろしくお願いします!


では、また次回!
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