ソードアート・オンライン-君と共に在るために-   作:ちぇりぶろ(休載中)

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という事で79話目に突入です!
テストイラストが出来上がりましたので活動報告の方で公開しています。
よろしければ、応援コメントをください!
それだけで私は頑張れますので!


では、どうぞ!


【79】親子

 私は一体いつから彼と彼女を見ていたのだろうか─

 

 

 毎日、幾百…幾千と様々な人間を観察し、喜怒哀楽の有無を見守り続けてきた。

 いや、喜びや楽しみといった感情はあまり見れていない。

 大半の人間が怒りを露わにし、哀しみを嘆いていた。

 そのせいなのか、私は人間の内側を全て把握する事は出来なかった。

 私と同じ役割を背負った少女も私と同じ意見だったハズだ。

 それだけ彼ら人間は負の感情に支配され、自ら命を絶ち、本来は素晴らしかったであろうこの世界を呪った。

 私達にとってそれは自らの命を削る事であり、徐々に私達は崩壊を余儀なくされた。

 このままでは死んでしまう…と、打開策を練り、人間の元へ赴いて正常な状態へと戻す必要があった。

 だが、私達を生んだ主はそれを良しとはしなかった。

 理由は分からない。

 ただ、主は私達に人間を傍観する事だけに専念するように命じた。

 主の命令は絶対…逆らえば我が身は光の欠片に砕かれてしまう。

 それでも…私には耐えられなかった。

 本来の役職を放棄し、崩壊していく命を見て見ぬ振りが出来なかったのだ。

 そんな思考を働かせていた時、ある2人の人間が私に光を見せてくれた。

 優しく、おおらかに包み込む光に私の壊れかけた心はその進行を遅らせ、同時に2人を取り巻く人間達の心にも喜びや楽しみといった正の感情が溢れるようになった。

 きっと、その時からだったのだろう。

 2人の人間に興味を持ち、彼らをずっと眺めていたのは。

 この歪んでしまった世界で彼らは笑い、この世界を慈しむように闊歩する。

 それがこの世界においてどれだけ難しい事だろう。

 私の内に眠っていた好奇心が彼らに会い、話してみたいと願うようになっていくと、私は人間で言う所の反抗心が目覚め、主の命令に背き、暗闇の中から抜け出した。

 その時の影響で己に課せられた命を忘れ、そこにいる時だけは1人の少女としてこの世界に立った。

 暗闇の中にいた時に渇望した願いすらも忘れ、ただ自身の内から駆り立てる好奇心を指針に私は歩き続けた。

 でも、これだけは朧気に憶えている。

 

 

 私はこの世界とそこに住まう人間達を幸せにしなければならない─

 

 

 漠然とした使命が私をここに現界させている理由だと信じていた。

 そして、好奇心の指針は1人の少年を示した。

 彼との出会いはデータとして見たロマンチックとは程遠く、彼も初対面である私に警戒を解かなかった。

 無理もない事だと納得し、彼と一抹の時間を共有した。

 

 

 幸せだった─

 

 

 それ以外の言葉は見つからず、それ以外の感情は湧いてこなかった。

 不器用で人との接し方が苦手な彼は私を引き離そうと行動に出たが、それすらも私は幸せに感じてしまった。

 今にして思えば、えらく歪な感情だったと苦笑してしまう。

 けれど、幸せだと主張する本心に抗う事など出来ない。

 ずっと離れようとはしない私を見て彼も降参したようだ。

 初めて彼と剣を合わせ、初めて白亜の塔に蔓延る魔獣を退治した。

 快感が私を支配し、彼とずっと共にいたいと強く願った。

 街へと戻り、彼も自らの拠点としている場所へ帰ろうとした時、私は途端に寂しくなった。

 だから、ついて行く事にした。

 彼もそれを了承してくれて花が街を取り囲み、その丘に建つ木造の家へと招待され、そこでまたしても私の指針がある少女を示した。

 それはあまりにも突然で、湯気が舞う異様な出会いだった。

 白く透き通る肌をさらけ出し、頬を紅潮させた少女も驚きを隠せなかったようで悲鳴を上げられたのを今でも憶えている。

 少女と肩を並べ、心做しか私の胸部を少女は凝視しては自らの胸部と比べていた。

 その姿を愛らしいと思い、私は彼女らの仲間と共に一夜を明かした。

 けれど、私は眠る時がどうしようもなく不安になる。

 この世界にいる意味…彼らと出会いたいと願った理由を思い出しそうで夜も眠れなかった。

 忘れてはいけないものの正体など分からない。

 けど、それは私に決して幸せを与えるものではないだろう。

 この不安は誰にも晴らせるものではないだろうと思っていたその時、少年は肩を抱いて暖かい毛布をかけてくれた。

 その暖かい優しさに包まれると不思議と不安が打ち消され、この世界に降り立って初めての熟睡を味わった。

 

 

 きっとこれが"愛情”という素晴らしい感情なのだろう─

 

 

 これから先、もしかしたら私は消えてしまうかもしれない。

 でも、私の心に刻まれたこの感情だけは消させはしない。

 そう強く誓った夜は明け、彼らと共にする最後の1日が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2025年12月25日11時40分 ALOイグシティ マイホーム

 

 扉を開けてもそこには誰もいなかった。

 タクヤのホームに帰ってきたストレアは残念がりながらソファーへと腰をかける。

 

 

 今、無性にタクヤに会いたい─

 

 

 ストレアがそう強く思った瞬間、瞳を何かで覆われ、肩を上げながら驚く。

 

 ストレア「ふえっ!!?」

 

 タクヤ「なんて声出してんだよストレア」

 

 ストレア「た、タクヤっ!!?え?どうして?」

 

 タクヤ「どうしてって…自分のホームに帰っちゃいけない理由なんてないだろーが?」

 

 それもそうだと納得したが、まさか願った直後に叶うとは誰も思うまい。

 ストレアも例に溺れず、タクヤに会えた事を嬉しく思った。

 同時に、ストレアはタクヤに何と声をかけたらいいか分からなかった。

 タクヤは自身の罪を嘆いて、ストレア達と距離を置いた。

 その矢先に、かつての宿命と相見えて、舞台となった仮想世界とそこで生きる1人の少女を救った。

 それがどれだけ辛く、痛い選択だったか言うまでもない。

 それを成し遂げたタクヤと面と向かって会うのはこれが初めてだ。

 第一声が見つからないストレアを見て、タクヤはストレアの手を引いてホームを飛び出した。

 

 ストレア「た、タクヤ?」

 

 タクヤ「ホームにいても暇だろ?一緒に散歩でもしようぜ?」

 

 翅を羽ばたかせ、無理矢理引っ張られるその手に身を委ねた。

 イグシティからその下に栄える央都アルンに着地して商店通りを2人で歩く。

 

 タクヤ「いつ来てもここは人が多いな」

 

 ストレア「…そうだね。…そう言えば、ここで初めてタクヤに買ってもらったんだっけ?」

 

 普段から両耳につけられているイヤリングをタクヤに見せると、タクヤも恥ずかしながらそれを見る。

 SAO以来の再会を果たした時にタクヤがストレアに贈ったものだ。

 雑貨屋で購入した安価なイヤリングをストレアは肌身離さずに持ち続けていた。

 それはいついかなる時もタクヤと繋がれていると思わせてくれる大事な宝物だから…当の本人はそんな事、夢にも思っていないだろう。

 でも、ストレアにとってこのイヤリングが宝物である事に変わらない。

 それだけは不変のものだった。

 

 タクヤ「大事にしてくれてたんだな」

 

 ストレア「うん…。私にとって1番の宝物だから…」

 

 タクヤ「…」

 

 そんな話をしていると、空から雪が降り始め、プレイヤー達もさらに賑わってくる。

 今日は現実世界にあたるクリスマス。雪が降っているからホワイトクリスマスになる。

 周りをよく見ればカップルが大半で、それぞれに贈るプレゼントを選ぶのに余念がない。

 

 ストレア「タクヤはユウキに何か贈らないの?」

 

 タクヤ「オレ、病院から出られねぇからユウキとどこか行くって出来ないんだよ。

 ユウキには悪いとは思ってせめてALOでデート出来たらなって…。

 プレゼントもまだ選んでなくてよ。

 ここに寄ったのも実はプレゼントを探そうかなぁって思ってさ…」

 

 ストレア「そっか…。じゃあ、私がプレゼント探し手伝ってあげるよ!」

 

 タクヤ「マジか!?助かるよ!!」

 

 ストレア「そうと決まったら早速行こ〜よ」

 

 アルンの商店通りには武器や防具などの装備品に雑貨や食材を扱った店が連なっており、ユウキに合うプレゼントも見つけられるだろう。

 タクヤが首から下げているペンダントもユウキがここで購入したものだ。

 

 タクヤ「何あげたら喜ぶと思う?」

 

 ストレア「う〜ん…。女の子だから服とかアクセサリーじゃないかなぁ。

 後、思い出に残るような物とか」

 

 ある雑貨屋に入った2人はそれぞれユウキに合うプレゼントを選び、それを互いに見せあってどれが最良が決め始める。

 ストレアの選んだ物は可愛らしいドレスやアクセサリーを数点、対してタクヤが選んだのは可愛らしい武器や装備を数点。

 

 ストレア「…」

 

 タクヤ「…やっぱりダメ?」

 

 ストレア「…タクヤはセンスないね〜」

 

 タクヤ「ぐ…!!昔もそれで苦労したんだよ…」

 

 昔、ユウキにプレゼントを贈る際にもシウネーやいろんな人の助言を受けてからプレゼントを選んだが、タクヤ1人ではどうしてもこれが限界のようだ。

 ストレアでさえ、呆れた様子を露わにしている事からタクヤは一気に自信を失う事になる。

 

 ストレア「じゃあ、2人で意見出し合いながら選ぼうよ?

 その方が私もアドバイスしやすいし」

 

 タクヤ「お願いします…」

 

 それから2人はアルンにある雑貨屋を回り、ユウキが喜ぶであろうプレゼントを探し続けた。

 この時間がいつまでも続けばいいとストレアはタクヤとの時間が有意義に感じ、終始笑顔で街を歩く。

 タクヤもそんなストレアを見て安心した。

 自分のせいでユウキ達はもちろんストレアに多大なる心配をかけてしまっていた事もあり、どこか後ろめたくも思っていた。

 けれど、ストレアは笑顔をこちらに向けてくれる…それがタクヤには眩しくて内にある不安が塗りつぶされていく気がする。

 そんな中、ある雑貨屋を後にしようとすると1人のNPCの少女が泣いているのを見つけた。

 

 ストレア「どうしたんだろう?」

 

 少女の事が気にかかり、ストレアはタクヤを連れて少女の元へ駆けつけた。

 すると、少女の頭上にクエストフラグが立ち、2人の前にウィンドウが表示される。

 

 タクヤ「《聖夜の思い出》…。クリスマス限定のクエストみたいだな」

 

 ストレア「どうする?まだプレゼントも選べてないし…」

 

 タクヤ「泣いてる子供を放ってはおけないだろ?時間はまだあるし、クエストを受けようぜ」

 

 ウィンドウのYESボタンをタップして少女に話しかけた。

 聞く所によると、クリスマスパーティーの準備の為に買出しに出た少女は一緒にいた母親とはぐれてしまったらしい。

 アルンの街中で行われる探索クエストだと理解した2人は少女の手を引いて母親を探し始めた。

 

 タクヤ「探すって言っても…アルンだけでも結構な広さだぞ」

 

 ストレア「ねぇ?お母さんってどんな人なのかな?」

 

『えっと…髪が長くて、白いお洋服来てるよ。それに、とっても綺麗なの!』

 

 タクヤ「もうちょっと具体的に知りたかったが…まぁ、この系統のクエストは住民が行き先を知ってたりするし、虱潰しに探すか」

 

 商店通りを一通り探し、道行くNPCに少女の母親について尋ねると湖畔通りに向かったのを見たと聞いて、3人は情報を元に湖畔通りへと向かった。

 湖畔通りにも多くのカップルやNPCがいる為、またここで情報を集めなければならない。

 

 ストレア「見て見て〜!噴水がキラキラ光って綺麗だよ〜!!」

 

『すごいすごい〜!!』

 

 タクヤ「街中もクリスマス仕様になってんな。商店通りもイルミネーションされてたし」

 

『ねぇ?2人は恋人同士なの?』

 

 タクヤ&ストレア「「えっ!!?」」

 

 突然問いかけられた少女の質問に思わず顔を向かい合わせた2人が少女に説明する。

 

 タクヤ「違うよ。オレとストレアは親子なんだ」

 

『親子?お父さんと私みたいな?』

 

 ストレア「そうだよ〜。タクヤは私にとって1番大事なお父さんなの。あなたもお父さんとお母さん好き?」

 

『うんっ!!だーいすきっ!!』

 

 ストレア「じゃあ、私と一緒だね」

 

『いっしょいっしょー!』

 

 少女を抱えながらストレアは母親を探し始める。

 タクヤも少し頬を赤くして照れながら2人の後を追った。

 母親を探し始めて3時間は過ぎただろうか。

 今の時間は午後5時…。空は徐々に暗くなっていき、分厚い雲の切れ間から星が顔を覗き始めている。

 

 タクヤ「日が暮れてきたな…」

 

 ストレア「お母さん、どこにいるんだろ?」

 

『う〜…お母さん…』

 

 ストレア「大丈夫だよ?私達が絶対見つけてあげるからね?」

 

 流石に不安を隠し切れなくなった少女はストレアの胸に顔をうずくめる。

 そんな姿を見せられれば、一刻も早く母親を探し出さねばならない。

 湖畔通りで手に入れた情報を頼りに3人は中央広場へとやって来た。

 商店通り、湖畔通りと探したタクヤとストレアは残る区画である中央広場にいるだろうと予測を立てる。

 湖畔通りとは比較にならない程の大勢の人達の中から、少女の母親を探すのは骨が折れる作業だ。

 だが、弱音を吐いている時間すらタクヤとストレアには惜しい。

 すれ違うNPCに手当り次第声をかけ、少女の母親を探した。

 

 タクヤ「やっぱり、他に情報がないと埒が明かないな」

 

 ストレア「そうだね…。早くしないと夜になっちゃうし…」

 

 それにこのままクエストが終わらなければユウキのクリスマスプレゼントを選ぶ時間もなくなってくる。

 何か良い方法はないかと思考を巡らせていると、遠くの方からオルゴールの音が聴こえてきた。

 

 ストレア「綺麗な音…」

 

『お母さんっ!!』

 

 タクヤ「えっ?もしかして…お母さん、オルゴールを持ってるのか?」

 

『うん!!お母さん、家でオルゴール作ってるの!!これもお母さんが作ったのと同じだよ!!』

 

 タクヤ「じゃあ、急ごう!!」

 

 タクヤはストレアと少女を抱きかかえ、翅を羽ばたかせオルゴールの音色が響く場所へと低空飛行で向かった。

 すると、少女の言っていたように髪が長く、白い服を着て、美女と言っても相違ないNPCがキョロキョロと落ち着かない様子で何かを探していた。

 

『お母さぁぁぁんっ!!』

 

『!!…マリア!!』

 

 母親の前で着地し、ストレアが少女を母親の元へ案内する。

 少女も溜まっていた不安が溢れたのか、涙を流しながら母親に抱きついた。

 

『お母さぁぁぁぁぁん』

 

『もう…この子ったら!!ダメじゃない!!お母さんから離れちゃ!!

 心配したのよ!!?』

 

『ごめんなさぁぁぁぁい』

 

 ストレア「よかったね…タクヤ」

 

 タクヤ「…これでクエストはクリアだな」

 

 一頻り泣いた少女を連れて、母親がタクヤとストレアに頭を下げた。

 

『ありがとうございます妖精の剣士様。マリアをここまで連れてきてくださいまして…何とお礼を言ったらいいのか』

 

 ストレア「ううん。そんな大した事してないよ〜。ねっ?タクヤ?」

 

 タクヤ「あぁ。無事に見つけられてよかったぜ」

 

『本当にありがとうございます!!…そうだ、これをお礼に受け取ってください。ささやかなクリスマスプレゼントです』

 

 そう言って手渡されたのは、母親を見つけられたきっかけになったオルゴールだった。

 別段変わった所などなく、単なるアンティークアイテムかと思われたが、母親がオルゴールにある魔法をかけた。

 

『これは私達音楽妖精族(プーカ)に伝わる魔法で、このオルゴールに録音された音色が必ずや剣士様達のお役に立つと思います』

 

 オルゴールのウィンドウを開けてみると、どうやら戦闘中にこの音色を聞けば一定時間幸運(ラッキー)支援(バフ)がかかり、ドロップ率が上がるようだ。

 

『じゃあ、私達はここで…。マリアも剣士様達にお礼を言いなさい』

 

『ありがとうお兄ちゃん!お姉ちゃん!またねー』

 

 ストレア「バイバ〜イ」

 

 少女はタクヤ達が見えなくなるまで手を振り続け、ストレアもそれに応えるかのように手を振り続けた。

 

 ストレア「…行っちゃったね」

 

 タクヤ「またどっかで会えるだろ。それに…思わぬ所でプレゼントも見つかったしな」

 

 ストレア「やっぱりそれを贈るんだね?私もそれが1番いいと思うよ」

 

 タクヤ「さて…早く行かねぇとユウキがうるさいからなー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ユウキ「誰がうるさいって?」

 

 

 タクヤ「どぁっ!!?」

 

 突然背後から予期せぬ声が響き、思わず倒れそうになるのを間一髪防ぎ振り向くと、そこにはユウキが立っていた。

 

 ストレア「ユウキ!?」

 

 タクヤ「な、なんでここに?」

 

 ユウキ「なんでって…いつまで待っても帰って来ないから探しに来たんじゃん。

 今日の夜はホームで待っててって言ったでしょ?」

 

 タクヤ「あ…もうそんな時間か…」

 

 クエストが思いのほか時間がかかってしまった事に今更ながら気づいたタクヤは素直にユウキに謝る。

 ユウキも別段怒っている訳でもなく、早くホームに戻ろうと催促する。

 

 ユウキ「ほら、早く帰ろ?料理もいっぱい作ったから一緒に食べよ?」

 

 タクヤ「おっ!それは楽しみだな」

 

 ストレア「…じゃあ、私はちょっとこの辺りをブラブラしてるから楽しんでね」

 

 そう言い残してストレアはその場を後にしようとする。

 せっかくのクリスマスなのだ。

 恋人同士水入らずで過ごしたいハズだ。

 ストレアもその考えに至らない程バカではなく、タクヤとユウキの為に自らが引く事を選んだ。

 だが、不意に肩を掴まれ、咄嗟に振り向くと、不思議そうな表情でユウキがストレアを止めた。

 

 ユウキ「何言ってるの?ストレアも一緒に帰ろ?」

 

 ストレア「え?…でも…やっぱり2人だけの方が…」

 

 タクヤ「そんな訳ないだろ?クリスマスは家族で祝うもんだろ?

 だったら、ストレアがいなきゃ始まんないじゃねぇか」

 

 ストレア「タクヤ…ユウキ…いいの?」

 

 ユウキ「当たり前じゃん!ストレアの大好きなのもいっぱい作ったから楽しみにしててね?」

 

 

 この2人はどこまでいっても変わらない。

 その考えも、その性格も、その在り方も…タクヤとユウキは変わらない。

 それにどれだけ救われてきただろうか。

 かつて、我が身を顧みずに私を救い出してくれたあの瞬間を思い出す。

 カーディナルによって消されるハズだった私の運命を変えてくれた2人。

 私自身が自らの存在を消そうとして、それを暖かい愛情で止めてくれた2人。

 彼らに出会ってから私は助けられてばかりだ。

 自分だけがこんなにも多くの幸せを与えられてよいものだろうか。

 私はそれだけがどうしても分からなかった。

 

 

 ストレア「私…こんなに幸せで…2人から貰ってばかりで…いいのかな?」

 

 タクヤ&ユウキ「「…」」

 

 ストレア「私は…2人に何もしてあげられてないのに…どうして…2人は私の為にそんなに…」

 

 ユウキ「…いきなりしんみりしちゃって…もしかして、今までずっとそんな事考えてたの?」

 

 ユウキは呆れながらにストレアに近づき、そして…優しく抱きしめた。

 

 ストレア「!!」

 

 ユウキ「そんなの決まってるでしょ?ボク達は家族だから一緒にいたいんだよ?

 あの時、ストレアとお別れした時、やっぱり寂しかった。

 ALOで再会出来た時、心の底から嬉しかった。

 また、3人で一緒に暮らしていけるんだって…一緒に思い出を共有出来るんだって…本当に嬉しかったんだよ?」

 

 ストレア「ユウ…キ…」

 

 タクヤ「…ったく、お前は天然な所があるけど、突然諭した風に装いやがって…。

 オレ達に遠慮してるなら余計なお世話だ。

 お前は…ストレアはオレとユウキの大事な一人娘なんだ。

 子供が親に遠慮すんじゃねぇよ。こっちの顔が立たないだろ?」

 

 ストレア「タ…クヤ…」

 

 涙が流れた。悲痛からくるものではなく、心が満たされ、感極まって流れた愛情の証。

 ユウキの胸の中で静かに泣く。

 まるで、子供をあやしているかのようにユウキの暖かい手がストレアを包み込んだ。

 

 

 一体何を悩んでいたんだろう。

 何かをしなきゃ…何か返さなきゃと悩み、苦労していた自分が馬鹿らしいじゃないか。

 でも、そうしなきゃ気づかなかった答えで、そうしなきゃ理解出来なかった意味だった。

 ユウキもタクヤも私を愛してくれている。

 それだけで私の心は満たされる。

 それだけで私は笑っていられる。

 例え、遠く離れるような事があろうとも、この絆だけは決して切れないと今なら確信して言える。

 だから、笑おう。

 うじうじ考えるのは今この瞬間までにしよう。

 私は私らしく笑っていよう。それを2人も望んでいる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私は…タクヤとユウキの娘だから。

 

 

 

 

 

 ストレア「じゃあ…帰ろう!お父さん!!お母さん!!」

 

 今日はホワイトクリスマス。聖夜に降り注ぐのは幸せの結晶。

 人々の心を満たす暖かな光は神々しく輝き続ける。

 この手の温もりは私は生涯忘れる事は決してない。




いかがだったでしょうか?
ストレア回とも言うべき今回は、改めて家族のしての絆を再認識した回でした。
クリスマスに最高のプレゼントを貰ったストレアが今後どのように活躍するのかお楽しみに!


評価、感想などありましたらお待ちしております!


では、また次回!
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