ソードアート・オンライン-君と共に在るために-   作:ちぇりぶろ(休載中)

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第8話に入りました。なんか書いてて熱い展開ってどう表現するのか分からずもしかしたら微妙な空気になってるかと思いますがどうか暖かい目で読んでくだされば幸いです。


では、どうぞ!


【8】力と心

 現在のレベル

 タクヤ Lv.64

 ユウキ Lv.61

 ジュン Lv.60

 テッチ Lv.60

 タルケン Lv.60

 ノリ Lv.58

 シウネー Lv.58

 

 

 2024年01月12日 14時10分 第50層 アルゲート

 

 今日オレとユウキはとある事情で最前線である50層にやって来ていた。

 残すところ後半分…クリアの日も近づいている。

 

 ユウキ「…ボク達に用ってなんだろうね」

 

 タクヤ「とりあえず行くしかねぇな。…っとここだここ」

 

 オレ達がやって来たのは路地裏にひっそりと佇んだ道具屋だ。

 指定されているポイントがここである為来たのだが、肝心の本人が見当たらない。

 もしや、中にいるのか?と、ドアノブに手をかけ中に入ってみる。

 

 エギル「おぅ!いらっしゃい!」

 

 ユウキ「えっ?エギル!?こんな所で何してるの?」

 

 エギル「何って…見ての通り商売やってんのさ…」

 

 タクヤ「もしかして…ここ買ったのか!?」

 

 エギル「おうよ!オレはアッチでも客商売していたからな。

 ここでもやろうと思って随分前から資金を集めてたんだ…」

 

 確かに、エギルは聞き上手だし何かと相談にも乗ってくれるいわゆるアニキ肌みたいな所があったが、まさか客商売をしていたとは驚きだ。

 

 エギル「っと…忘れてた。2人とも、ちょっと待っててくれ」

 

 そう言い残し、エギルが2階へと消えていった。

 しばらくして降りてきたがもう1人別の男も連れ立って降りてきた。

 

 キリト「わるいわるい…呼び出しておいて寝坊した…」

 

 ユウキ「キリト!えっ?2階って部屋があるの?」

 

 エギル「当たり前だろ…まぁ、今はキリトの隠れ家みてぇに使われてるがな!」

 

 キリト「そう言うなよ…オレもそれなりに手伝ってるだろ?」

 

 エギル「手伝いと言うより暇つぶしにしか見えんが…」

 

 タクヤ「いや、もういいから…とりあえず本題に入ってくれ。

 その為にわざわざオレ達を呼んだんだろ?」

 

 そう…事情というのはキリトから直々に相談したいとの事だった。

 他には聞かれたくないからここを選んだようだが…。

 

 キリト「そうだったな…。とりあえず座ってくれ…」

 

 オレ達は備え付けられたテーブルについた。

 エギルにコーヒーを人数分出してもらい、話に入る。

 

 キリト「実は、この前50層に到達してすぐの事だ。オレのスキル欄に妙なのが出てきたんだ…」

 

 タクヤ「妙なもの?」

 

 キリトがメニューウィンドウを出し、それをオレとユウキの前に見せた。そこには見た事ないスキルの名が刻まれていた。

 

 ユウキ「二刀流?…スキルってこれの事?」

 

 キリト「あぁ、いつの間にかこんなのが出てたんだ。エギルに聞いても知らないらしいし、念のためアルゴにも調査してもらったんだが…現時点ではそのようなスキルの話や噂はないらしい…」

 

 タクヤ「じゃあ、考えられるとすれば…」

 

 情報屋も知らない…そんなスキルも見た事はない…となると答えは次第に絞られてくる。

 

 キリト「あぁ…多分これは()()()()()()()だと思う…」

 

 ユニークスキル…その詳細は会得しているプレイヤーにしか分からないという言わば、その()()()()()()()()()()()となる。

 巷で言われているのは血盟騎士団団長のヒースクリフが保有している"神聖剣”とスリーピング・ナイツと親しい奴にしか教えていないユウキの"絶剣”だけだろうな。

 

 キリト「ユウキも前に変なスキルが出たって言ってたよな?」

 

 ユウキ「うん…"絶剣”スキルの事だね。でもあれは1度使ったきりでその後はいくらやろうとしても発動しなかったんだよね…」

 

 ユウキの使った1度目とは今装備している【ナイトウォーカー】の元となった【マクアフィテル】という剣が報酬で貰えるクエストの時だ。

 オレはその時の状況は知らないが、ボスをほぼ一撃で倒したらしい。

 

 キリト「使用する為の条件が満たされてないのか…もしく、バグによって本来使用出来ないスキルが発動してしまったのか…」

 

 エギル「後者の考えはまずないだろう。

 この世界を動かしているカーディナルは自立していてバグなどは自分で探して処理しちまう。

 だとしたら、そのスキルはスキル欄から消えてる事になるからな…」

 

 ユウキ「でも、いろいろ試してみたけどまったく出来なかったよ?

 あの時はボクもタクヤを助ける為に必死だったから…」

 

 タクヤ「う〜ん…わかんねぇなぁ…」

 

 ユウキ「それはそうと能力とかは?試してみたの?」

 

 キリト「あぁ。メリットは単純に剣を2本持てる事で攻撃力がほぼ倍になる…。でも…同じ性能の剣が2本必要だけどな…。

 でないとすぐに耐久値が尽きてしまうんだ…」

 

 タクヤ「なるほどな…。ってかこの話し合いオレいるか?

 ユニークスキルとか持ってねぇのに…」

 

 ここまでの話し合いの中でオレの必要性をまったく見い出せない。

 正直そんな事聞かせられてもアドバイスのしょうがない。

 

 キリト「いや、タクヤにはこの後、二刀流の熟練度上げに付き合って貰おうと思ってさ…」

 

 タクヤ「本心はそっちか!」

 

 ユウキ「まぁまぁいいじゃん!なんか面白そうだし!

 それに二刀流見てみたいしさ!」

 

 キリト「ほら…ユウキもこう言ってるし頼むよ…。

 後で何か奢ってやるからさ」

 

 タクヤ「…はぁ、仕方ねぇな…」

 

 ユウキ「さっすが!優しいタクヤも好きだよっ!」

 

 タクヤ&キリト&エギル「「「!!?」」」

 

 なんでコイツはここでそんな爆弾を落とすんですか…。

 

 エギル「おい…これはどういう事だよ?」

 

 キリト「お前達…いつの間に…」

 

 タクヤ「違う違う!!お前らが考えてるような事ではないっ!!

 さ、さぁ!早く熟練度上げに行くぞ!!」

 

 エギル「おいっ!隠す事ぁねぇだろ!!」

 

 タクヤ「えぇい!うるせぇ!!こっちにも色々事情があんだよっ!!」

 

 何を隠そうユウキは誕生会後も何もなかったように接してくれるが明らかに変わっていたのだ。

 1つはオレに対してのアプローチをするようになった事…

 もう1つはかなり頻繁にボディタッチが増えた事だ。

 周りやギルドメンバーにも最初はすごい聞かれたものだ。

 お前達は付き合っているのか?だとか、いつ結婚するんだ?だとか…。

 最初の1ヶ月はそれのせいでレベリングもままならなかった。

 でも、ユウキはそんな事お構い無しに来るので悩みの種は尽きなかった。

 

 キリト「…オレ、パーティ抜けて正解だったかもな…」

 

 タクヤ「お前も何勝手に哀愁漂わせてんだ!!ほらっ!!行くぞ!!」

 

 もうオレは半ば無理やり2人を連れ出し、エギルの店を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2024年01月12日 15時00分 第35層 狼ヶ原

 

 ここは普段誰も立ち寄らないがキリト曰くレベル上げをするのはいつもここだそうだ。まぁ、ユニークスキルなら見られたくないのも当然だな。

 

 タクヤ「熟練度上げるって決闘《デュエル》でもするのか?」

 

 キリト「あぁ、モンスター相手じゃ意味無いからな…」

 

 タクヤ「じゃ、やるか…」

 

 オレはキリトに初撃決着モードで決闘を申請する。

 すぐさまOKの返事があり、2人の間にカウントが刻まれていく。

 カウントが0になった瞬間、オレとキリトは前に出ていた。

 オレはいつもの様に初撃を避け、下からの攻撃を入れる。

 だが、それを左の剣でガードして右の剣でカウンターを狙ってきた。

 

 タクヤ「ちぃっ!!」

 

 オレはたまらず体をそらして避けたが、態勢を崩して手をついてしまった。

 そこに勝機を見出したのかキリトが左の剣で追い打ちをかけてくる。

 

 キリト「もらったっ!!」

 

 タクヤ「…ふ」

 

 キリト「!!?」

 

 カァァァン

 

 その音はオレが左の剣を足ではじき、地面に落下したものだった。

 オレは体を起こし、右の剣で水平切りを行う。

 キリトも剣をはじかれても動揺せず、冷静に後ろに引いて回避するがオレにとってこれは想定内の事だ。

 オレは水平切りしている剣を持った右の手を離し、それを瞬時に左手に持ち替える。

 

 キリト「なっ!!?」

 

 ユウキ「!!」

 

 左手に持ち替えられた剣はリーチを広くしキリトの胴を斬り裂いた。

 これにたまらずキリトも苦い顔をしていた。

 キリトはひとまず距離を取り態勢を立て直そうとした。

 

 キリト「…そんなのありかよ…」

 

 タクヤ「いやぁ…初めてやったにしてはうまく出来たな…」

 

 ユウキ「…すごい…!!」

 

 タクヤ「でも、これには弱点があるらしいな…」

 

 キリト「!…そういう事か…」

 

 オレの言った弱点についてキリトも気付いたらしい。

 

 ユウキ「どうゆう事?」

 

 キリト「さっきの攻撃でオレは斬られた訳だけど…HPは減っていないんだ…」

 

 オレが見た限りキリトHPは数ドットも減っていない…無傷の状態だ。

 

 タクヤ「多分、右手から離した瞬間に装備が外れちまったらしいな…

 だから、斬ってもダメージが入らなかったんだ」

 

 ユウキ「じゃあ、その技は実戦じゃ使えないって事?」

 

 タクヤ「そーゆーこと」

 

 キリト「じゃあ、再開するか…!」

 

 キリトがダッシュしてオレとの距離を詰めに来る。

 オレも咄嗟に反応して防御の構えに入る。

 だが、その防御は無駄となった。

 二刀流ソードスキル"エンド・リボルバー”が発動し、その攻撃を防御し切れなかったのだ。

 

 タクヤ「っちぃ!…容赦ねぇなぁおい…」

 

 キリト「そんな事したら熟練度あがらないだろ?」

 

 タクヤ「そりゃそうだっ!!」

 

 オレも負けずキリトに剣撃を加えるが、キリトのHPは1割も減らなかった。

 対してオレは防御したとはいえ、2割近く削られてしまっている。

 

 ユウキ「タクヤ!頑張れぇ!!」

 

 タクヤ「わかってるよっ!!」

 

 オレは乱戦に持ち込むべく攻撃の手を休めない。

 キリトも両手の2本の剣で1つ1つ丁寧にいなしていく。

 

 タクヤ「はぁぁぁっ!!」

 

 オレの剣に青白いエフェクトをが発生し、キリトに斬り掛かる。

 片手用直剣スキル"ホリゾンタル・スクエア”

 だが、キリトもソードスキルで迎え立つ。

 二刀流ソードスキル"ダブル・サーキュラー”

 

 キリト「これでどうだっ!!」

 

 互いのソードスキルがぶつかり周りに衝撃が弾け飛ぶ。

 だが、やはりスキルの差が出たのかオレのスキルは押し負けてしまいダメージが入った。

 オレのHPがイエローに入った所でブザーが鳴り、オレの敗北という形で勝負がついたのだ。

 

 タクヤ「…負けたァァ!!」

 

 キリト「これで51勝50敗だな…」

 

 タクヤ「次は負けねぇよ…」

 

 キリト「じゃあ、ユウキ…やろうか?」

 

 次はキリトとユウキの決闘《デュエル》が行われた。

 互いに目視では追い切れない程のスピードで勝負が行われている。

 ユウキのスピードについてくるキリトもそうだが、キリトの連撃にもはや感覚だけで避けているユウキも相当だ。

 勝負は長引いた末、キリトに軍配があがった。

 

 ユウキ「だぁぁ!!くやしい〜!!」

 

 キリト(「ユウキのスピードについていくだけでやっとだった…

 次やる時には何が起きるかわからないな…」)

 

 そんなこんなで3人による互先は夕方まで続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2024年01月12日 18時05分 第35層 狼ヶ原

 

 キリト「今日はこの辺で切り上げようか?」

 

 ユウキ「さんせーい…」

 

 タクヤ「疲れたぁ…」

 

 オレ達は休憩を挟んだ後約束の飯を奢ってもらってキリトと別れた。

 

 

 

 

 

 2024年01月12日 19時12分 第50層 アルゲート

 

 オレとユウキはキリトと別れた後、少しアルゲートの街を見て回る事にした。

 最前線である為、ボス戦で顔を合わせるプレイヤーがちらほらいた。

 

 タクヤ「それにしてもこの街は賑わってるな…。

 なんかこう…親しみやすいと言うかなんと言うか」

 

 ユウキ「ボクもこういうの好きだよ!賑やかだし」

 

 街には至る所に露店やプレイヤーが営業している店など、見てて飽きない。

 

 タクヤ「そろそろ帰るか?みんなが待ってるだろうし…」

 

 ユウキ「え〜もっとタクヤと2人きりでいたいよ〜」

 

 タクヤ「っバカ!!?こんな所誰かに見られたら変な誤解されるだろっ!!」

 

 ユウキ「そんな事ないも〜ん!タクヤって被害妄想激しいよ?」

 

 タクヤ「ほ、ほぅ…お前はそんな事おっしゃるんですか?」

 

 あまり強くは言い返せずオレとユウキは腕を組みながら仕方なく27層に帰る事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2024年01月18日 13時00分 第35層 狼ヶ原

 

 オレ達はあれからキリトと熟練度上げを続けている。

 ユウキもユウキで"絶剣”スキルの発動を目指して頑張っていた。

 休憩に入るとそこに1人のNPCがやって来た。

 

『だ、誰か…助けて…』

 

 タクヤ「ど、どうしたんだ!?」

 

『私のお母さんが…お母さんが…』

 

 ピコーン

 

 キリト「クエスト!?何でこんな所で…?」

 

 ユウキ「とりあえず受けてみようよ!!」

 

 オレはクエストを受諾しNPCの話を聞いてみる。

 話によれば、この先でゴーレムのモンスターが暴れまわりお母さんが攫われてしまったという事だ。

 

 キリト「討伐系のクエストか…。でも、この層にゴーレムなんて存在しないハズなんだが…」

 

 タクヤ「そんなのはこの際どうでもいい…クエストを受けたからにはやり切るまでだ!!

 …お前の母さんはちゃんと助けてやるから安心して待ってな」

 

 NPCは心なしか笑っているように見えた。オレ達はNPCを襲撃にあった村に預け、ゴーレムの足跡を追って行った。

 足跡は10分程走った所で途切れている。

 周りは岩場が多く存在している荒野フィールドに入っていた。

 辺りを警戒しながら進むと奥から女性の悲鳴が聞こえてきた。

 

 タクヤ「あっちか!!」

 

 ユウキ「いたよ!!ゴーレムと攫われたお母さんだ!!」

 

 ゴーレムはオレ達の存在に気づき、雄叫びと共に威嚇してくる。

 

 キリト「よしっ!!オレとタクヤでアイツの隙を作る!!ユウキはあのNPCを安全な所へ避難させてくれ!!」

 

 タクヤ&ユウキ「「了解!!」」

 

 作戦が決まり、オレとキリトがゴーレムの注意をこちらに向ける。

 ゴーレムもオレ達の方へ誘導でき、ユウキがその間にNPCを助け出した。

 

 ユウキ「もう大丈夫だよ!!」

 

『ありがとうございます!!』

 

 タクヤ「ぐはっ」

 

 ユウキ「タクヤっ!!?」

 

 キリト「コイツ…!!異常に硬いぞ!!」

 

 オレとキリトの2人がかりで攻撃するがゴーレムは怯まず攻撃してくる。

 剣での攻撃が効かないとはオレ達にとっては痛手だ。

 

 タクヤ「…こいつ相手に使えるか分かんねぇが…」

 

 オレはメニューウィンドウを開き装備していた剣を外した。

 

 キリト「何してるんだ!!タクヤ!!」

 

 タクヤ「(こいつ)でやるまでだよっ!!」

 

 ゴーレムは巨大だがそのせいで動きは鈍い。オレは懐に入り、モーションに入った。体術スキル"正拳突き”を発動させる。

 ゴーレムは一瞬怯み、HPも僅かだが削る事が出来た。

 

 タクヤ「いやぁ…体術スキル上げといてよかったぜ!!」

 

 キリト「だが、このモンスターは本来斧系や棍系のプレイヤーをパーティに入れて戦うんだろうな…」

 

 タクヤ「無いものねだっても仕方ねぇよ!!体術スキルでダメージが削れるんならそれしかねぇ!!キリトとユウキはフォロー頼む!!」

 

 オレはすかさず体術スキルを連続で叩き込む。

 体術スキルにはスキル発動後の硬直(ディレイ)が存在しない為、こんな荒療治が出来るのだ。

 

 タクヤ「うぉぉぉっ!!!!」

 

 オレはひたすらにゴーレムに正拳突きを叩き込んでいく。

 オレに攻撃を仕掛けようとすればキリトとユウキがそれを阻止している。

 だが、HPは1時間やって3割程度削れただけだった。

 

 

 

 

 sideユウキ_

 

 キリト「このままじゃさすがやばいぞ…!!」

 

 ユウキ「クエストを放棄すればまた挑戦できるけど…」

 

 このままではボク達のHPと集中力が底をついてしまうのは目で見るより明らかだ。

 だが、タクヤはボク達の声など届いておらずひたすらに正拳突きを叩き込んでいる。

 

 ユウキ「ボク達よりタクヤの方がもう…!!」

 

 キリト「…っ!!タクヤ!!一旦クエストを放棄するんだ!!

 またもう1度ちゃんと準備してくれば…!!」

 

 タクヤ「…ざけんな…」

 

 キリト「えっ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タクヤ「ふざけんじゃねぇって言ってんだよっ!!!!」

 

 ユウキ&キリト「「!!!」」

 

 タクヤがここまで怒っているのは初めて見た。

 確かに、ここでクエストを放棄すればあのお母さんも助からずまたリポップしてクエストは初期化されてしまう。

 ゲームなら初見で情報を得て、次に準備を整えて再度臨むというやり方ができる。

 このソードアートオンラインであっても自分の死以外は例外ではない。

 だが、タクヤはそれを許さなかったのだ。

 それ以上に感じたのはもっと別の感情だった。

 

 タクヤ「今ここでやめたらあのNPCの母親が殺されるんだぞっ!!

 お前達にそれがどれだけきつくて残酷なのか分からねぇのかっ!!?」

 

 キリト「だ、だが…このままじゃ全滅する…!!

 ここは一旦引くのが無難だ!!」

 

 タクヤ「降りたきゃ勝手に降りろっ!!オレは絶対ェに降りねぇ!!

 オレの目の前で殺させはしねぇ!!もう後悔したくねぇんだよ!!!!」

 

 ユウキ「!!」

 

 ボク達が呆気に取られてる間にゴーレムはタクヤに攻撃を仕掛けていた。

 ボクとキリトは反応出来ず、タクヤに直撃した。

 一瞬の隙をつかれゴーレムの攻撃をモロに食らってしまったタクヤは宙に舞った。

 

 タクヤ(「絶対ェ…殺させねぇ…!!」)

 

 着地と同時にゴーレムの懐に潜り込む。

 ゴーレムも攻撃して距離を置こうとするが、タクヤはそれを避け腕から一気に駆け上がりゴーレムの頭まで来た。

 

 タクヤ(「お前はオレの目の前でやっちゃいけねぇ事をした…!!

 母親を殺そうとした…!!オレの目の前でだ!!お前は…オレが…」)

 

 

 

 

 

 ピコーン

 

 

 

 

 

 タクヤ「殺すっ!!!!」

 

 すると、タクヤの両腕が青白い炎のようなエフェクトを発生させた。

 

 ユウキ「!!?」

 

 キリト「なんだ!?あんなの体術スキルにはないぞ!!?」

 

 見ただけで分かってしまった。あの一撃はさっきまでの比じゃないと。

 今なら何でも出来そうな気がする。母親を助ける事が出来る。

 

【一定の数値に達しました。"闘拳”スキルを発動します。】

 

 タクヤ「うぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」

 

 エフェクトは龍の形となり、ゴーレムの頭蓋に突き刺さった。

 

 グギャァァァァアァァァ

 

 初めてに近いゴーレムの苦痛の叫び声をかわきりにタクヤの拳はさらに追撃を与える。

 

 キリト「効いてるっ!!?」

 

 ユウキ「…タクヤ…?」

 

 タクヤ「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 殺すっ!!!!」

 

 ピコーン

 

【一定の数値に達しました。"修羅”スキルを発動します。】

 

 青白い炎のようなエフェクトはたちまちドス黒い赤へと変貌し、タクヤの体を包み込んだ。

 

 ユウキ「タクヤ…!!どうしたの…?」

 

 トドメの一撃がゴーレムの頭蓋を突き破り体を縦に真っ二つに叩き割った。

 ゴーレムはHPを全損し、程なくポリゴンへと四散した。

 

 タクヤ「ハァ…ハァ…ハァ…」

 

 キリト「…倒した?」

 

 ユウキ「タクヤ…?」

 

 ゴーレムを倒したと言うのにタクヤの体はまだエフェクトに包まれていた。

 

 キリト「タクヤ…!!ゴーレムは倒したんだ…!!スキルを止めるんだ…!!」

 

 タクヤがキリトの声に反応する。タクヤがこちらに顔を向けた。

 そこにはボク達の知っているタクヤの顔ではなかった。

 

 タクヤ「…殺す…」

 

 キリト&ユウキ「「!!」」

 

 それは一瞬の出来事だった。

 タクヤはキリトに突っ込み拳を振りかざした。

 キリトは間一髪の所でそれを防ぐが顔を見る限り手を抜く余裕はないようだった。

 

 ユウキ「!!…タクヤ!!やめてっ!!」

 

 ボクは我に返りタクヤをキリトから引き剥がす。

 タクヤはまるで何かに取り憑かれたように暴れていた。

 

 ユウキ「やめてっ!!タクヤ!!もう終わったんだよっ!!」

 

 そう言った途端エフェクトは消滅し、タクヤも自我を取り戻したみたいだ。

 

 タクヤ「お…オレは…」

 

 ユウキ「もう…いいんだよ…終わったんだよ…?」

 

 タクヤ「ユウ…キ…?」

 

 ユウキ「タクヤ…正気に戻ったんだね…よかった…」

 

 ボクはいつの間にか瞳から涙がとめどなく流れ始めた。

 なんで、こんな事になってしまったんだろう。

 なんで、タクヤがこんな目に合わなくちゃいけないんだろう。

 

 キリト「…大丈夫か?タクヤ…」

 

 タクヤ「キリト…?オレは一体…何を…そうだ!!ゴーレムは!!?」

 

 キリト「?…ゴーレムならお前が倒したじゃないか。

 ていうかさっきのアレはなんだったんだ?」

 

 タクヤ「アレ?…何の事だ?」

 

 キリト「!!…いや、覚えてないなら別にかまわない…」

 

 それから何度か質問したがタクヤはゴーレムを倒した時からキリトに攻撃を仕掛けた時までの記憶はないらしい。

 あのスキルの正体は謎のままだが、とりあえずクエストを終わらせてボク達は街へと帰った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2024年01月18日17時30分 第27層 ロンバール 宿屋

 

 ボク達は27層のロンバールの宿屋まで帰ってきた。

 タクヤの事を心配してキリトも宿屋まで付いてきてくれた。

 宿屋の前でキリトと別れ、中に入った。

 

 シウネー「おかえりなさい!今日もキリトさんと一緒だったの?」

 

 ユウキ「う、うん…熟練度を上げに35層まで…」

 

 ジュン「2人だけずりぃなぁ!今度は僕も連れていってよ!!」

 

 ユウキ「そうだね…キリトに相談してみる…」

 

 シウネー「…どうしたの?ユウキ…それにタクヤさんも…」

 

 ノリ「なんか元気ないみたいだけど…?」

 

 タクヤ「え…?あ、いや…」

 

 ユウキ「ち、ちょっと張り切りすぎちゃって疲れたんだよ!今日はボク達は先に休むね!また明日!!おやすみ!!」

 

 それだけを言い残してボクはタクヤと一緒に2階の宿部屋に向かった。

 

 シウネー「あっ!ちょっと!!ユウキ!!タクヤさん!!」

 

 テッチ「どうしたんだろうね?」

 

 タルケン「何かあったのでしょうか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 sideタクヤ_

 

 オレはユウキに連れられ部屋に入った。何がすごい嫌悪感と脱力感に支配されているオレの体はすぐにベットに向かっていた。

 

 ユウキ「…大丈夫?」

 

 タクヤ「…なんとかな…」

 

 それを最後に会話が切れた。

 ユウキにも何かあったのかと思ったが何も言ってこない。

 オレはあのゴーレムの最後を知らない。

 ただひたすらに殴っていたら目の前が真っ赤に染め上げ、そこから意識がなく気づけば戦闘は終わっていて目の前に倒れ込んでるキリトの姿があった。

 

 タクヤ「…ユウキ…」

 

 ユウキ「な、何?」

 

 タクヤ「オレ…何かお前達にしたのか?」

 

 ユウキ「…!!」

 

 タクヤ「図星…みたいだな…。オレは…何をしたんだ…?」

 

 オレは知りたかった。意識がなくなっていた間に何が起きたのか…。

 だが、ユウキもなんと言ったらいいのか分からないといった顔をしている。

 それだけである程度の想像がついてしまった。

 オレは…2人に危害を加えたのだ…。

 カーソルはグリーンのままだから防御してくれたんだと察しがつく。

 だが、そんな事は関係ない。オレは2人に危害を加えた…それが問題なのだ…。

 

 タクヤ「ユウキ…悪かった!!」

 

 ユウキ「えっ!!なんで…謝るの!!?」

 

 タクヤ「オレはお前とキリトに迷惑をかけちまった…。許して貰えるとは思ってねぇけど…それでも謝ろうと…思って…」

 

 ユウキ「…」

 

 ユウキからの返事がない。当然だ…それだけオレがやった事の罪は重い。

 仲間を手にかけようとしたのだ。許してくれだなんてどの口が言っているのか…。でも、オレには謝る事しか出来なかった。

 

 ユウキ「…本当だよ…。ボクとキリトがどれだけ心配したと思ってるの…?でも、ボク達もタクヤの守ろうとしていたものを諦めようとした…。タクヤがあそこでクエストを放棄してたらあのNPCは…」

 

 その先が言えないのはオレに気を使っているからなのか…。

 ユウキはそのまま黙ってしまった。

 オレもあの時、頭に血が登っていた。

 過去の出来事がフラッシュバックして我をなくしていた。

 あのNPCの母親が自分の母親とダブって見てしまっていた。

 あれはゲームの中での設定にすぎない。

 頭では理解しているつもりだったのだが、まだ払拭し切れていないらしい。

 いや…一生このまま拭い去ることの出来ない傷としてオレの中で残り続けるだろう。

 

 タクヤ「…オレ…もうここにはいない方が…いいかもしれないな。」

 

 ユウキ「!!?」

 

 このまま過去に囚われまた今日のような事が起きれば次は誰かを…仲間を…殺してしまうかもしれない…。だったら…

 

 タクヤ「オレ…ギルドを抜けるよ…」

 

 ユウキ「なんで…何でそうなるのさっ!!?」

 

 タクヤ「また今日みたいな事が起きたらオレは誰かを殺しかねない…。

 だったらこのまま、1人になればいい…」

 

 ユウキ「ダメだよ!!そんなの絶対許さないっ!!タクヤは間違ってるよ!!

 またタクヤがおかしくなったらボクが絶対に止めてみせる!!

 絶対に!!絶対に!!タクヤは!!…ボクが守るからっ!!!!」

 

 タクヤ「!!」

 

 ユウキ「…だからそんな事言わないでよ…。

 タクヤがいなきゃ…ボクは…」

 

 何故そこまでオレの事を思ってくれるのだろう…。

 オレの事が好きだから…?

 それだけで…怖い目にあって尚、オレといたがる理由はなんだろうか。

 でも…もし、それが許されるのならオレだってここにいたい。

 みんなと笑って、泣いて、楽しんで、悲しんで…いろいろな思い出をみんなと共有したい。

 

 ユウキ「…まだ1人がいいって…思ってる…?」

 

 タクヤ「…」

 

 ユウキ「…ボクはタクヤが好き…。それは今も変わらない…。

 今返事が欲しい訳でもない…。ただ…一緒にいたいんだ…。

 ギルドのみんなや…キリトやアスナ…他のいろんな仲間と一緒に生きていたいんだよ…。そこにタクヤがいなくちゃ意味が無いんだよ?

 タクヤにはそういうの…ある?」

 

 タクヤ「…あるに…決まってんだろっ!!

 オレだってみんなと一緒にいたいんだ!!

 でも、もう誰かを傷つけるぐらいなら1人になった方がいいんだよ!!

 オレは…!!もう…後悔したくねぇんだよ!!!!」

 

 後悔したくない。大切な人が目の前でいなくなるのは嫌だ。

 みんなが…ユウキが…目の前でいなくなったら…オレは…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ユウキ「大丈夫だよ…」

 

 タクヤ「!!」

 

 気づけばオレはユウキに抱きしめられていた。優しくオレの心を満たしてくれるかのように包み込まれていた。

 

 ユウキ「ボクは結構強いんだよ?タクヤにだって負けないんだから…。

 だから、自分を責めないで…?

 タクヤが守りたいって思っているものはボクの守りたいものなんだ…。

 それに周りにだって手伝ってくれる仲間がいる。

 タクヤが言ったんだよ?仲間なんだから遠慮するなって…。

 それはタクヤにも言える事でしょ?もっとボク達を頼ってよ…。

 ボク達も全力でタクヤを支える…。

 だから、タクヤはボク達を支えてね?一緒だったら何でもできる!!

 ボク達は…仲間なんだから…」

 

 オレの頬には一筋の涙が流れていた。

 感動したわけでも、痛いわけでも、悲しいわけでもない。

 ただ、心の底から嬉しかった…それだけだった。

 これでオレの罪が消える訳じゃない…。

 だが、オレにはみんなが…仲間が…ユウキがいてくれる。

 仲間が手を引いてくれる。誰かがつまづいたらオレが手を差し伸べる。

 仲間とは互いに手を取り合うものだと目の前の…オレより小さな少女に気付かされた…。

 

 タクヤ「…ユウキ」

 

 今なら…言える…。

 

 ユウキ「…なぁに?」

 

 オレの本心が言える…。

 

 タクヤ「オレは…」

 

 オレの事をこんなに思ってくれている…この少女への想いを…。

 

 タクヤ「…お前の事が…」

 

 オレは兄貴を殺すまで寄り道をしていけないと思ってた。

 でも、今なら違うと言える。

 それは寄り道ではない。道の上にあった確かなもの…。

 それを守る為に兄貴を…このゲームを終わらせなければならない…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タクヤ「…好きだ」

 

 そう…君と共に在るために…オレはこの世界を終わらせてみせる。

 




どうだったでしょうか?
ここでタクヤの新しいオリジナルスキル【闘拳】と【修羅】が出てきましたね。
それに2人が両想いになりました。
急な展開だったでしょうか?
頭の中ではこのぐらいのペースかなぁとかおもっているんですが、まぁよしとしときます。


では、また次回!
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