ソードアート・オンライン-君と共に在るために-   作:ちぇりぶろ(休載中)

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という事で81話目に突入です!
祝一周年!!
ついにキャリバー編を書いていきますが、参考としてマンガ版、ラノベ版、アニメ版と拝見しているのですが中々にハードになると思われます。
しかし、そこをオリジナリティを加えつつ面白く書いていけるように頑張ります!


では、どうぞ!


【81】epキャリバー -ヨツンヘイム-

 2025年12月28日07時00分 埼玉県川越市 桐ヶ谷邸

 

 庭で木枯らしが舞い、冬の寒さを深める早朝。

 母の翠を見送った桐ヶ谷兄弟は朝食を食べながらタブレットでゲーム関連の記事を読んでいた。

 すると、和人の向かいに座っている直葉が驚愕の表情と共に和人にある記事を見せる。

 

 和人「むっ!エクスキャリバー発見!?…とうとう見つかったか」

 

 そこに書かれていたのはALOで伝説(レジェンダリー)級に位置づけられる"聖剣エクスキャリバー”の詳細であった。

 

 直葉「いつかは見つかると思ってたけど、予想より早く見つかっちゃったね」

 

 和人「オレ達も新生アインクラッドの攻略にかかりっきりだったからな。()()()()()()の事を見落としてた」

 

 ヨツンヘイムとは、ALOの主な舞台となっている妖精郷アルヴヘイムの地下にある大型ダンジョンであり、ソロプレイでは絶対的に攻略不可能と言われる難易度が設定されている超上級者向けの仕様となっている。

 しかし、高難易度という事もそこでしか手に入らないレアアイテムもあり、一部のプレイヤーがパーティーを組んで攻略しているのは知っていた。

 

 直葉「()()()()()は誰も手付かずだったけど、アップデートされてから増えてきたみたいだよ」

 

 和人「オレ達もタクヤとアスナの事がなければ挑戦してたんだけど…」

 

 以前、和人/キリトはALOでタクヤとアスナを救い出す為、央都アルンに向かう途中で、誤ってフラグを踏んでしまい、地下へと続く落とし穴に落ちたのがヨツンヘイムとの初めての会合であった。

 その時落ちたのがキリトにリーファ、ユイにユウキであり、《邪神級》モンスターとの戦闘を全力で避け、出口を探すハメになってしまった。

 

 直葉「私達みたいに()()()()()()()()みたいな邪神級モンスターとフラグ立てたのかな?」

 

 ヨツンヘイムでリーファ達が出会った象とクラゲを合わせたような《邪神級》モンスター”トンキー"と”デイジー"は巨人に襲われていた所を助けたのをきっかけに友好を示してきた。

 

 和人「あの気持ち悪い─」

 

 直葉「ん?」

 

 和人「…そのモンスターとフラグ立てる物好き…じゃなくて博愛主義者が他にいるとは…」

 

 直葉「気持ち悪くないもん!可愛いもん!」

 

 2体の背に乗り、出口へと送られたキリト達は道中、天井に刺されていた逆ピラミッドのダンジョンの最下層にそれを見た。

 黄金に輝くそれは彼らを魅了し、かつてない程の衝撃を食らったのを確かに覚えている。

 《聖剣エクスキャリバー》…ALOの中で最強と謳われた伝説の剣。誰も手にした事のない神話の宝。

 そう呼ばれるだけの神々しさと風格を兼ね備えた剣をキリトはいつか必ず手に入れようと誓っていた。

 あれ以来ヨツンヘイムには行ってなかったキリト達であったが、エクスキャリバーを他のプレイヤーに渡す訳にはいかない。

 

 和人(「それに…オレはあれを()()()()手に入れたい」)

 

 伝説の剣をキリトはシステムの力で簡単に呼び寄せてしまった。

 そうするしかなかったというのもあるが、一流のプレイヤーなら正規の手順でそれを手に入れたいと思うのは当然で、システムに頼らず自分の力で手に入れなければ意味がない。

 

 直葉「それで?…どうするの?」

 

 和人「ん?もちろん取りに行くよ。トンキーとデイジーに乗れる上限は7人だったな。オレとスグにアスナ、タクヤにユウキ…あとは…」

 

 直葉「シノンさん呼んだら?」

 

 和人「それだ!スグは里香と珪子、ひよりに連絡してくれないか?

 オレは明日奈達に当たってみるよ」

 

 直葉「了解!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 同時刻_結城邸

 

 

 明日奈(「年明け前に和人君に会いたいなぁ…」)

 

 浴槽に浸かりながらそんな事を思っている明日奈の心情はやや複雑だった。

 明日から結城本家のある京都に帰省する事になっている。

 別にそれ自体には何の不満もない。

 久々に会う祖父にもちゃんと挨拶をしたいと思う気持ちはある。SAO事件で心配をかけてしまった事も含めて会っておきたい。

 だが、結城本家は江戸時代から続く家柄であり、その考え方も古く、自らを身分の高いものとして見ている考え方に明日奈は否定的であった。

 その思想は分家の子息達にも伝わっており、新年の顔合わせにも憂鬱と言わざるを得なかった。

 

 明日奈「はぁ…」

 

 明日奈がSAOから帰還してようやく1人でも歩けるようになるやいなや、京都の本家に招集され、そこで向けられた視線は実に遺憾しがたいものであった。

 勝ち組のレールから外れた…。結城の名に傷をつけた…。

 目を見るだけで感情が流れ込み、明日奈は深く傷ついた。

 

 

 確かに、結城が望む未来は叶えられなくなってしまったかもしれない…。

 だけど、それは私が望むレールではない。

 SAOに囚われ、自暴自棄になっていた時があったのも否定出来ない。

 噂レベルの脱出方法に引っかかり、死にかけた事だってある。

 それはこれからの自分のキャリアに傷をつける事だったから。

 こんなくだらない茶番に人生を台無しにされてたまるか…と、今にして思えば考えが浅はかだった。

 しかし、私はあの世界で見つけた。

 母の…結城が敷いたレールの上だけが幸せに繋がっている訳じゃない事を…自分が見て、触れて、感じて、体験した数々の出来事がこれからの自分を形成し、自分自身が見つける幸せがあるのだと…大切な人に教えてもらった。

 彼は言った。

 

『今、オレ達が生きているのはアインクラッド(この世界)だ』

 

 その言葉が自分をどれだけ変えたのか本人は知りもしないだろうが、私はそれだけで自分だけのレールを見つける事が出来た。

 だから、それをちゃんと伝えなければならない。

 例え、結城から否定されても構わない。私には私の幸せがあるのだと言葉にしなければならない。

 

 

 瞬間、手元にあったスマホが震えた。

 それに気づき、すぐ様手に取って耳に傾けた。

 

 和人『おはよう明日奈。今って大丈夫か?』

 

 明日奈「和人君!!うん、大丈夫だよ。おはよう」

 

 和人『今日、これからみんなでクエストやろうって思ってるんだけど、明日奈は来れるか?』

 

 明日奈「大丈夫だよ。今日は1日何もないから。…うん…分かった…じゃあ、また後でね」

 

 着信を切り、明日奈は満面の笑みで小さくガッツポーズした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 同時刻_陽だまり園

 

 

 木綿季「うん!分かった!拓哉にも伝えるよ!」

 

 藍子「どうしたの木綿季?」

 

 自室で嬉しそうに話していた木綿季が気になり、藍子は尋ねた。

 

 木綿季「姉ちゃん!今からヨツンヘイムにクエスト行くんだけど一緒に行こうよ!」

 

 藍子「でも、私試験勉強が…」

 

 藍子は後、3ヶ月もすれば公立高校の試験がある。

 その為に追い込みをかけている藍子にとって何とも選び難い選択ではあったが、クエストより試験勉強の方を優先すべき事は明白で藍子も申し訳なさそうに断った。

 

 木綿季「1日ぐらい大丈夫だって。それに直人も誘ったら来るかもだよ?」

 

 藍子「…それなら…行こうかな」

 

 直人に会えると聞いた藍子はすぐに考えを改めた。

 何とも扱いやすいなと木綿季はニヤニヤしていたが、藍子はそれを知らない。

 

 木綿季「とりあえずボクは拓哉に連絡するから、姉ちゃんは直人の方をお願いね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2025年12月28日09時00分 ALO央都アルン リズベット武具店

 

 シリカ「クラインさんはもうお休みに入ったんですか?」

 

 リズベット武具店の中で武器の手入れを待っている間にシリカはクライン達と他愛のない会話をしていた。

 

 クライン「おう昨日からな!年末年始は荷が降りねぇから仕事のしようがねぇんだよ。

 社長なんかよ、正月に休みがあるんだからうちは超ホワイト企業だって抜かしやがるんだぜ!!?」

 

 シリカ「あはは…」

 

 クライン「それはそうとキリの字よ!?

 エクスキャリバーを手に入れたら次は俺様の為に《霊刀カグツチ》取りに行くの手伝えよ?」

 

 キリト「えぇ…あそこすごい暑いじゃん…」

 

 クライン「それを言うなら今日行くヨツンヘイムはクソ寒ィじゃねぇか!?」

 

 シノン「じゃあ、私もアレ欲しい…《光弓シェキナー》」

 

 2人の会話に入り込んだシノンの発言にその場にいたキリトとクライン、シリカは口をあんぐり開けて呆れていた。

 

 キリト「こ、コンバートして間もないのにもう伝説級武器(レジェンダリーウェポン)を御所望ですか?」

 

 シノン「リズが作ってくれた弓も素敵だけど、もう少し飛距離があればねー…」

 

 瞬間、奥の工房からシノンの話を聞いていたリズベットが文句を言い放った。

 

 リズベット「アンタねぇ…弓っていうのはせいぜい100mぐらいが射程距離なの!

 それをさらに遠距離から狙おうとするのはシノンくらいよ!」

 

 シノン「出来ればその倍は欲しいんだけど」

 

 リズベット「…はぁ…」

 

 ALOに来る前までGGOで凄腕の狙撃手(スナイパー)として戦ってきたシノンにとって弓の射程距離に不満を漏らすのは仕方ない。

 

 アスナ「おまたせー」

 

 リーファ「買ってきたよー」

 

 ユウキ「それにお菓子も買ってきたー」

 

 ストレア「買ってきたー」

 

 バスケットに所狭しと詰められたポーションや結晶を携え、補給係のアスナ達が帰ってきた。

 

 キリト「お菓子はいらないだろ…」

 

 ラン「私もそう言ったんですけど…」

 

 カヤト「買うって聞かなくて…」

 

 ユウキ「みんなで食べようよ!」

 

 呆れながらもユウキがテーブルに並べた菓子に手を伸ばし始めたキリトはまだこの場にいないメンバーについて聞いた。

 

 キリト「タクヤにシウネー、ルクスは?」

 

 ユウキ「シウネーはもうすぐ来るよ。ルクスとタクヤは少し遅れてくるみたい。…浮気かな?」

 

 キリト「そ、それはないだろ…」

 

 クエスト前から異様な殺気を放つユウキを宥めていると扉からシウネーが入ってきた。

 

 シウネー「遅れて申し訳ありません。来る途中で今日行くヨツンヘイムについて聞き回っていたもので…」

 

 ユウキ「それでどうだった?」

 

 シウネーが街で聞いた情報によると、今ヨツンヘイムでは殺伐とした状況になっているようだ。

 理由としては、エクスキャリバー取得のクエストが出回り、レイドを組んでヨツンヘイムに存在する《邪神級》モンスターを狩っているのだ。

 

 シウネー「聞く限り、どうやらお使い(スローター)系のクエストみたいです。

 そのせいでリポップの取り合いになってるみたいですよ」

 

 ユイ「補足すると世界樹前にいるクエストNPCが報酬としてエクスキャリバーを提示しているようです」

 

 キリト「つまり、そのクエストを受ければいいのか?」

 

 リーファ「でも、あの時見たのはダンジョンの最下層に刺さってたし、クエストの報酬で伝説級武器(レジェンダリーウェポン)を出すのもおかしいよ」

 

 リーファの言う事も理解出来る。

 ただでさえ、伝説級武器(レジェンダリーウェポン)は入手困難で、その詳細も運営から告知されてはいない。

 それが今になってクエストNPCの報酬として提示するのは少し疑問が残る。

 

 ユウキ「じゃあ、ボク達はデイジー達に乗せてもらってあのダンジョンを攻略しよう」

 

 ストレア「それにしても、タクヤとルクス遅いね〜」

 

 そんな話をしていると扉が開き、そこには顔を真っ赤にしたタクヤとルクスがやってきた。

 

 タクヤ「悪い…遅くなった…」

 

 ルクス「ハァ…ハァ…まだ心臓がバクバクいってる…」

 

 ユウキ「遅かったね。何かあったの?」

 

 タクヤ「いや、集合時間より2時間前からログインしてたから…偶然早くインしてたルクスと軽いクエストやってたんだけど…」

 

 ルクス「予想よりも複雑で…時間がかかってしまって…」

 

 遅れた事情は概ね理解したが、妙によそよそしい2人にユウキの何かが察知した。

 

 ユウキ「どんなクエストだったの?」

 

 タクヤ「ただのお使いクエだよ…」

 

 ユウキ「どんな内容なの?」

 

 タクヤ「いや…子供のお使いを手助けするだけで…」

 

 ユウキ「それにしては2人共顔が赤いけど?」

 

 タクヤ「き、気のせいだって…。なっ?」

 

 ルクス「う、うん…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ユウキ「2人でイチャイチャしてたの?」

 

 瞬間、ユウキの殺意が再び姿を現し、2人は全力で否定してユウキを宥める事に全力を注いだ。

 しばらくしてようやく落ち着きを取り戻したユウキだったが、まだ納得している訳ではなさそうだ。

 何故、タクヤとルクスが挙動不審になっているのかはまた別の機会に置いておいて、今はエクスキャリバー取得に全力を注ごう。

 しばらくして、奥の工房から全員分の武器の調整を終えたリズベットが息を切らしながら戻ってきた。

 

 リズベット「全員分…フルチャージ!!」

 

 耐久値を完全に回復させ、リズベットから各々専用の武器を受け取り、手に馴染ませるように最終調整を進めていく。

 

 キリト「今回は人数も多いし、2パーティーに別れて挑もう。

 パーティーリーダーはオレとタクヤだ」

 

 タクヤ「オレのパーティーメンバーはユウキにストレア、シウネー、カヤト、ラン、ルクスの7人だ」

 

 キリト「今日は急な誘いに応じてくれてありがとう。このお礼はいつか必ず精神的に…、行こう!!!」

 

 

「「「おう!!!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2025年12月28日09時20分 ALO央都アルン前ヨツンヘイム入口

 

 以前にヨツンヘイムから脱出した場所までキリトに案内され、一同は新生アインクラッドの迷宮区タワー1層分に及ぶ螺旋階段を降りていた。

 

 タクヤ「疲れたぁ…」

 

 シノン「流石にこれは堪えるわね…」

 

 階段を降る足音と共にタクヤとシノンが先の見えない階段に不満を漏らしていた。

 

 キリト「本来なら1時間かけて向かう所をここを使えばたった5分に短縮されるんだから一段一段感謝の意を込めて降りたまえ諸君!」

 

 シノン「…アンタが作った訳じゃないでしょ…」

 

 キリト「見事なツッコミを…どうもっ!!」

 

 瞬間、シノンの身の毛が逆なでされ、言葉では表せない程の悪寒が支配した。

 

 シノン「!!?」

 

 猫妖精族(ケットシー)にとっての弱点にあたる尻尾をキリトによって鷲掴みされ、思わず恥ずかしい声を上げてしまう。

 その声を聞けて御満悦のキリトは尻尾から手を離し、それを察知したシノンが爪を立ててキリトに反撃にかかる。

 爪は空を切り、嘲笑うかのようなキリトの表情を見て、シノンの怒りも最高点に達した。

 

 シノン「アンタ!!次やったら鼻の穴に火矢ぶっ込むからね!!!」

 

 クライン「恐れを知らねぇ奴だなぁ…」

 

 タクヤ「はははっ!シノンも可愛らしい声出せたんだな?」

 

 シノン「笑うなっ!!!」

 

 怒りの矛先をタクヤに向けたシノンはすぐ隣まで近づき弓を構える。

 

 タクヤ「タンマタンマっ!!?こんな所でやめろっ!!?」

 

 シノン「じゃあここを出たらいいのね!!?」

 

 タクヤ「それも勘弁してくれ!!」

 

 ユウキ「あー!!またタクヤがイチャイチャしてるー!!!?」

 

 タクヤ&シノン「「してないっ!!!!」」

 

 そんなくだらない話をしているとついに長かった階段にも終わりを告げる光が差し込み、より一層の緊張と警戒を強めた。

 

 タクヤ「いよいよ…!!」

 

 ユウキ「…行くよっ!!」

 

 一目散に外へと飛び出したタクヤとユウキが最初に目にした光景は、吹雪舞う極寒の地下世界…ヨツンヘイムだ。

 地上の気温とヨツンヘイムの気温とでは差が激しく、すぐに体に霜が降りている。

 アスナとシウネーはすぐに体の温度を高める魔法を発動し、タクヤ達に支援(バフ)をかけていく。

 頃合を見計ってリーファとユウキは丘から口笛を吹き、恩人である友のトンキーとデイジーを呼んだ。

 

 リーファ「あっ!来たよ!!」

 

 ユウキ「おーいデイジー!!」

 

 ユウキの呼び掛けに応えるように速度を上げて飛んできた。

 崖の淵に停止したトンキーとデイジーがリーファとユウキに長い鼻を巻きつけながら愛情表現を示してきた。

 

 タクヤ「…なんとも奇妙な光景だな」

 

 アスナ「2人の事が大好きなんだね」

 

 リーファ「トンキー、私達を乗せてくれる?」

 

 ユウキ「デイジーもいい?」

 

 乗せてもらうようにお願いするとトンキーとデイジーは声を上げ、快く承諾してくれた。

 次々と乗っていく中、最後の1人であるタクヤがデイジーに乗り込もうとすると急にデイジーが暴れだしタクヤを薙ぎ払ってしまった。

 

 タクヤ「ぐへっ!?」

 

 盛大に雪の上を転がり、入口まで押し戻されたタクヤは驚きの表情を見せる。

 

 タクヤ「何すんだテメェ!!?」

 

 見た限り怒りを見せているデイジーにストレアがコンタクトを取ってみる。

 

 ストレア「なになに?…うん…うん…なるほど…」

 

 タクヤ「何だって?」

 

 ストレア「えっとね…ユウキと仲良くしているのがムカつく…だって」

 

 タクヤ「んなっ!!?」

 

 モンスターとは言え、ユイやストレアと違って独自のAIを搭載したNPCでもないデイジーがそのような感情を見せるのはあまりにも信じられない事だ。

 

 キリト「すごいな…」

 

 クライン「デイジーも男って事だな。ユウキちゃんの事が好きだからタクヤに嫉妬しちまったんだな」

 

 タクヤ「そんなバカなっ!!?」

 

 しかし、このままここで立ち往生していては、エクスキャリバー取得に他のプレイヤーが先手を取りかねない。

 ユウキもデイジーに頼んでタクヤを背中に乗せて貰えるように促した。

 デイジーも渋々承諾したみたいで、タクヤに背中を近づける。

 

 タクヤ「まさか、こんな事になるなんて…」

 

 カヤト「日頃の行いが悪いからじゃないの?」

 

 タクヤ「んだとぉっ!!!」

 

 ラン「まぁまぁ、2人共落ち着いてください」

 

 キリト「じゃあ、全員乗った事だしそろそろダンジョンに向かおう」

 

 キリトの号令でトンキーとデイジーはエクスキャリバーが眠るダンジョンに飛んでいく。

 その道中、ヨツンヘイムの地上では四つ腕の巨人型モンスターがトンキーやデイジーと同種のモンスターを討伐するという異様な光景を目撃した。

 

 シウネー「あれは…」

 

 リズベット「何あれ!?プレイヤーがあの《邪神級》モンスターをテイムしてるの!!?」

 

 シリカ「それは絶対不可能ですよ!!猫妖精族(ケットシー)のマスターテイマーがアイテムでブーストしても成功率は0%ですもん!!」

 

 となると、あの四つ腕の《邪神級》モンスターはプレイヤー達に従っている訳ではないという事になり、あくまでモンスターのアルゴリズムに従って行動となるのだが。

 

 リーファ「ひどい…」

 

 ユウキ「…あの子達も助けられないかな」

 

 ストレア「流石に私達が束になってもあの数は太刀打ち出来ないよ。

 それにあそこにいるプレイヤー達はアルンでクエストを受けてるんだと思うよ」

 

 クエストNPCが流しているクエストの内容はヨツンヘイムにいる四つ腕の《邪神級》モンスターと協力して象クラゲ型モンスターを駆逐するというものだ。

 《邪神級》モンスターと協力するという最大の利点がプレイヤー達をヨツンヘイムへと後押ししているのだろう。

 だが、象クラゲ型モンスター…つまりはトンキーとデイジーと友好を築いているユウキ達にはこの光景は非常に由々しき状況であると言える。

 

 クライン「これもクエストの内容の1部だってぇのか…」

 

 キリト「オレ達は正規のクエストを受けている訳じゃない。

 ダンジョンを踏破してもNPCの報酬として提示されているエクスキャリバーを手に入れられないかもしれないな」

 

 アスナ「そんな…!!」

 

 瞬間、背後から閃光が放たれた。

 敵襲かと警戒態勢を取った一同の前に背丈…と言っても頭から腰までだが、有に5mはある女性のNPCが現れた。

 

「「「!!?」」」

 

 ウルズ『私は《湖の女王》ウルズ。我らが眷属と絆を結びし妖精達よ。

 そなたらに私と2人の妹から1つの懇願があります』

 

 タクヤ「懇願?」

 

 ウルズ『どうか、この国を()()()()()の攻撃から救ってほしい…』

 

 唐突に現れたウルズはタクヤ達にヨツンヘイムの現状を語ってくれた。

 このヨツンヘイムもかつては地上のアルヴヘイムと同じように世界樹"イグドラシル”の恩寵を受け、美しい水と緑に覆われていた。

 ウルズを含む《丘の巨人族》とトンキーやデイジーを含む眷属達が平和に暮らしていたらしい。

 今のヨツンヘイムからはそれを思わせる箇所はどこにもないが、タクヤ達は黙ってウルズの話を聞き続ける。

 

 ウルズ『ヨツンヘイムのさらに下層に氷の国《ニブルヘイム》が存在し、王である《スリュム》が鍛冶の神《ヴェルンド》が鍛えた全ての鉄と木を断つ剣…エクスキャリバーを世界の中心たるウルズの湖に投げ入れました。

 剣は世界樹の最も大切な根を断ち切り、ヨツンヘイムはその影響でイグドラシルの恩寵を失う事になったのです』

 

 ユウキ「その恩寵…が失われるとどうなるの?」

 

 ウルズはしばし沈黙を保ち、再度話を続けた。

 

 ウルズ『スリュムとその配下はニブルヘイムから大挙して攻め込み、《丘の巨人族》を幽閉し、ウルズの湖だった大氷塊に自らの居城である《スリュムヘイム》を築き、このヨツンヘイムを支配したのです』

 

 ルクス「だから、ヨツンヘイムはこんなに凍てつくんだね…」

 

 ウルズ『私と2人の妹はある泉のそこに逃げ延びましたが、かつての力はありません。

 しかし、《霜の巨人族》達は支配だけに飽き足らず、この地に今尚生き延びる我ら眷属を皆殺しにしようと画策しています』

 

 つまり、今地上にいる《霜の巨人族》はトンキーやデイジーまでも抹殺対象として狩り尽くそうとしているようだ。

 そうなればウルズ曰く、力を完全に失い、スリュムヘイムを上層に位置するアルヴヘイムへと浮上させる事になる。

 

 クライン「そんな事したらアルンの街が失くなっちまうじゃねぇか!!?」

 

 ウルズ『スリュムの目的はアルヴヘイムすらも氷塊に閉ざし、イグドラシルの梢まで攻め上がり、そこに実るという《黄金の林檎》を手に入れるつもりなのです。

 それを阻止しようと我々も何とかここまで逃げ延びてきたのですが、スリュムはついにそなた達妖精の力すらも利用し始めました』

 

 キリト「…だいぶ読めてきたな」

 

 シノン「どういう事よ?」

 

 タクヤ「街にいるクエストNPCさ。アイツも《霜の巨人族》の仲間なんだろーぜ。

 だけど、ヨツンヘイムは最高難度のダンジョンだ。協力させようにもそれだけのメリット…報酬が必要だ。

 だからこそエクスキャリバーなんだろうな」

 

 その仮説を信じるのなら、今タクヤ達が単独で向かってあのスリュムヘイムを攻略してもエクスキャリバーは入手出来ない事になる。

 だが、そのような非人道的なクエストを運営が見逃す訳もないし、カーディナルがそのようなクエストを生成する訳もない。

 答えが見つからないタクヤ達にウルズは補足をつけ話した。

 

 ウルズ『しかし、エクスキャリバーがスリュムヘイムから失われれば、再びこの地にイグドラシルの恩寵は戻り、あの城も溶け落ちてしまうでしょう』

 

 リズベット「え?じゃあ…エクスキャリバーが報酬っていうのは…?」

 

 ウルズ『おそらく、外見のみそっくりな《偽剣カリバーン》をエクスキャリバーの代わりに与えるつもりなのでしょう』

 

 ストレア「それってアリなの〜!?」

 

 ウルズ『その狡さこそがスリュムの強力な武器なのです。

 しかし、スリュムは眷属を滅ぼすのを焦るあまり1つの過ちを犯しました。

 配下の巨人を妖精達に協力させる為にスリュムヘイムから地上のヨツンヘイムに降ろしているのです』

 

 カヤト「となると…今から行くスリュムヘイムにはほとんど敵がいないって事ですか?」

 

 ウルズ『はい。今、あの城はかつてない程に護りが薄くなっています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 妖精達よ…スリュムヘイムに突入し、エクスキャリバーを要の台座から引き抜いてください』

 

 ウルズがそう告げると、リーファにトンキー達《丘の巨人族》の眷属の数を刻むメダリオンが渡されその場から儚く消えていった。

 

 ユウキ「こうなったらやるしかないね…みんな!!」

 

 キリト「あぁ。元々その為にここまで来たんだからな」

 

 アスナ「あの城に乗り込んでエクスキャリバーを手に入れなくちゃ…─」

 

 リーファ「トンキー達の仲間が殺されちゃうもんね!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タクヤ「ならさっさと行こうぜ?その王様ぶっ倒してエクスキャリバーをゲットするぞっ!!!!」

 

 

「「「おうっ!!!!」」」

 

 

 トンキーとデイジーはさらに加速して、目視できるまで迫ったスリュムヘイムへと向かっていった。




いかがだったでしょうか?
1周年という区切りで書いていくキャリバー編は3,4話ぐらいを目度にしております。
タクヤ達の活躍に期待ください。

P.S
近々、1周年記念イラストを上げますのでそちらもお楽しみに!


評価、感想などありましたらお待ちしております!


では、また次回!
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