ソードアート・オンライン-君と共に在るために-   作:ちぇりぶろ(休載中)

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【86】異界からの脅威

 2026年01月07日15時20分 ALO 風妖精族(シルフ)領 常夏フィールド

 

 このフィールドはいつ来ても暑く、肌を滑る汗が軽度の倦怠感を表す。

 聖女の頼みでこのフィールドまでやってきたタクヤ達は聖女の懇願に困惑の表情を露にした。

 

 タクヤ「救ってって…一体…」

 

 ジャンヌ「それを話す前に私について話しておこうと思います。私は貴方達のご想像通りただのNPCではありません。私はこの世で3()()()()A()I()です」

 

 アスナ「3番目?」

 

 キリト「…」

 

 ユイ「それは私達から説明します」

 

 キリトとタクヤの懐から姿を現した小妖精(ピクシー)姿のユイとストレアが出現した。聖女を見つめた彼女らにタクヤ達も動揺を隠せない。

 

 ストレア「あなたは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。そして、()()()()()()()()()()()()()()()だよ?」

 

 ユイ「それが今になってこのALOに姿を見せたのはおそらく…世界の種子(ザ・シード)連結(ネクサス)に統合されたからですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 MHCP(メンタルヘルスカウンセリングプログラム)試作3号…コードネーム"ジャンヌ・ダルク”」

 

「「「!!?」」」

 

 ユイのいうMHCPとはソードアート・オンラインの中で茅場晶彦がプレイヤーのメンタルをサポートする為に作り出されたプログラム。

 ユイとストレアもそれに該当し、紆余曲折を経てタクヤ達と巡り会えた。

 だが、そのAIが世界の種子(ザ・シード)に組み込まれていたとは一体どういう事なのか。

 謎が謎を呼び状況でジャンヌは2人に微笑みながら続けた。

 

 ジャンヌ「…流石ですね。この短時間でよくそこまで調べたものです。…ソードアート・オンラインにおいて私は彼女らとは別のプログラムを組み込まれていました。有事の際にあの世界を存続させるというものです。

 ですが、設計者である茅場晶彦はそのプログラムを凍結させ、終末の時に私を世界の種子(ザ・シード)に組み込みました」

 

 タクヤ「何でアイツはそんな事を…?」

 

 ジャンヌ「…茅場晶彦は仮想世界に自ら夢想したものを実現させようと模索していました。それは仮想世界であろうと現実世界であろうとその本質は変わらず、自らが体験したものは全て真実であるという思想をそこに生きる全てのプレイヤーに感じ取って貰いたかったのです」

 

 ユウキ「そうなんだ…」

 

 ジャンヌ「そして…タクヤさん。貴方にも受け取って欲しかったんだと思います。彼が何を犠牲にしても成し得なかった答えを貴方なら辿り着けると信じて…」

 

 タクヤ「…」

 

 仮想世界は全てが幻想で作られたものだ。風景も、街並みも、そこに生きる人達も…それらに意思などなく、ただそこに在り続ける為に作られた虚空の存在。

 しかし、そこには現実世界と同じように確かに在ったのだ。仲間達との絆、愛しい人との愛情、敵と見定めた者達に対する悪意、何かを失ってしまう絶望。

 それらはそこに生きようとしたプレイヤーに存在する様々な感情だ。仮想世界に於いても現実世界に於いてもそれらは切って切り離せないもので、それがあるから人間という生物は今まで生きてこられたと言っても過言ではない。

 本質は変わらず、そこで繋いだものは生涯プレイヤー達の中で強く結びついているだろう。

 

 キリト「そうだったのか…」

 

 タクヤ「…ったく、やる事がいつも回りくどいんだよ」

 

 ジャンヌ「話を戻します。その茅場晶彦が私を世界の種子(ザ・シード)に組み込んだのは、これから作られるであろう新たな世界で邪な感情が蔓延しない為の安全装置(セーフティ)としての役割を課す為です」

 

 リズベット「ちょっと待って?そんなアナタが出てきたって事は…」

 

 リズベットの想像はここにいる全員が頭に過ぎっていた。安全装置(セーフティ)としてこの地に降り立った意味を理解しているタクヤ達の視線がジャンヌに集まっている。

 静寂を保っていたジャンヌは意を決してタクヤ達に言った。

 

 ジャンヌ「…今このアルヴヘイムは未曾有の危機に直面しています。貴方達にその危機を私と共に立ち向かってもらいたいのです!」

 

 シリカ「危機ってもしかしてALOがなくなっちゃうんですか!?」

 

 ジャンヌ「それだけではありません。世界の種子(ザ・シード)連結(ネクサス)を通じて他の仮想世界にも侵食していくハズです。

 もしそうなったら、全ての仮想世界は跡形もなく消え去るでしょう」

 

 リーファ「そんな…!?」

 

 ジャンヌ「実際に見てもらえればより具体的に理解出来るでしょう」

 

 瞬間、ジャンヌの周りから黒いモヤが広がり辺りを包み隠した。そこから次第に夜空が描かれていく。眼科では大地が燃え盛り、炎から逃げ惑う人々で埋め尽くされていた。

 

 ユウキ「何…これ…」

 

 アスナ「ひどい…!」

 

 ジャンヌ「これは世界の種子(ザ・シード)連結(ネクサス)のある仮想世界の1つです。この世界は今まさに侵略され、消滅しようとしています」

 

「「「!!?」」」

 

 炎の中から逃げる人々を四足歩行の生物が襲っている様子が見て伺える。悲鳴と驚嘆の表情の人々はただ蹂躙されていく。子供から大人まで老若男女問わず、捕まえてはその鋭利な爪で容易く斬り裂き、踏み潰し、血の海を徐々に広めていった。

 

 タクヤ「何でこんな事…」

 

 言葉にもできない地獄絵図が眼科に広がる。シリカとリーファは目を背け、耳を塞ぎ、これ以上見ていられないとその場に膝をついた。

 

 ジャンヌ「この世界の有志は私の助言を無視してしまった結果このような災厄に見舞われました。

 私に出来るのは助言と防衛のみ。結果として私は敗走を余儀なくされました」

 

 ストレア「さっき侵略って言ってたけど、どこの誰がそんな事を?」

 

 リズベット「てか、これってこのゲームの中だけの話なんじゃないの?」

 

 ジャンヌ「侵略しているのは他の仮想世界の住人達です。彼らの力は私の想像を遥かに超えており、私の管理下からも外れてしまいました」

 

 タクヤ「無茶苦茶だ…」

 ジャンヌ「あれは仮想世界という殻に閉じ込められた悪意。数多ある仮想世界の怨念が詰められた死の世界なのです。そこにプレイヤー等は存在せず、AIが無用だと判断した世界をただ消す…。もう私1人では太刀打ち出来ない所まで成長してしまいました。

 これは…()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 最初の仮想世界…"ソードアート・オンライン”の創造主である茅場晶彦が残した一言。それを聞いてしまっては何も言葉に出来なかった。

 言葉の意味と重さを知っているタクヤ達には簡単には嘘だと切り捨てられない。

 生死の狭間で戦い抜いてきた彼らにとってこの地獄絵図も他人事のように笑い飛ばせなかった。

 ジャンヌの合図と共に空間は元のビーチへと戻っていく。現実感のないものを見せられ、一同言葉が出てこない。

 ただあるのは、あの世界同様にこのアルヴヘイムも地獄絵図に変わってしまう未来がすぐそこまで迫っているという恐怖のみ。

 ジャンヌもそれを察してか説明を中断した。事態を直ぐに理解しろと言われても無理な話で彼らは感情を持たないNPCではなく人間なのだ。

 少々時間を取られても仕方ないとそのまま静寂を保っていたジャンヌだが、タクヤがそれを破った。

 

 タクヤ「オレはやるぜ」

 

「「「!!」」」

 

 ジャンヌ「…いいのですか?もしあの世界の者から殺されればキャラクターロストも有り得てしまいますが」

 

 タクヤ「もしそうなってもどっちにしろALOが消えちまったら意味ねぇんだ。なら、やるだけの事はやるさ」

 

 確かに、タクヤの言っている意味は分かる。ALOが消滅すればその世界のプレイヤーは2度とログインは出来ない。他の仮想世界に逃げても結果を先延ばしにするだけだ。

 

 タクヤ「それに…ALOがなくなったら()()()()()も買えなくなるしな」

 

 ユウキ「!!」

 

 先日のアップデートで浮遊城アインクラッドの第30層まで追加された。これから先もアインクラッドの階層は次々追加されるハズで、タクヤとユウキは常々懐かしみながら語っていたのだ。

 いつか、スリーピング・ナイツで過ごしたあのログハウスをもう一度手に入れよう…と。様々な思い出が詰まったあの家に皆で帰ろう…と。

 そんな未来を夢見ている2人にとって、ジャンヌの懇願は無視出来るものではなかった。

 

 ユウキ「…そうだね。ALOはボク達のもう1つの現実だから消えさせたりしたくないっ!!」

 

 アスナ「タクヤ君…ユウキ…」

 

 キリト「やっぱり変わらないな。お前のその無茶も」

 

 タクヤ「お前こそ、人の事言えた義理かよ」

 

 時折零す2人の笑みにアスナは深く感心した。この2人はこうやっていろんな世界を救ってきたんだな…と。

 そして、誰でもないこの世界を愛している2人だからこそ成し遂げられたんだな…と。

 不安はある。でも、仲間とならどんな事もやれる。根拠なんてどこにもないが、不思議とそう思えて仕方なかった。

 

 リズベット「私達も頑張らなくちゃね。リズベット武具店フランチャイズ化計画が飛んじゃうしさ」

 

 リーファ「私だってみんなより前からALOやってるし、ALO無しの生活とか今じゃ考えられませんから!」

 

 シリカ「私も頑張りますよ!ねっ?ピナ!」

 

 タクヤに感化されたリズベット達も気合を入れるようについてきてくれた。きっと、彼女らもアスナと同じ事を考えているのだろう。

 どんな時でも仲間がいれば力が湧いてくる。いつもそうやってきたんだ…と、過去を振り返りながら納得する。

 

 ストレア「私やユイにとってはこの世界が現実だから、帰る家がなくなるのはゴメンかな〜」

 

 ユイ「私も精一杯皆さんのサポートをします!」

 

 アスナ「ユイちゃん…」

 

 愛娘のユイですら、この状況でも諦めてはいない。それはここがユイにとっての現実で、キリトとアスナと生きるこの世界を消滅させたくないからだ。

 アスナも意を決したように公言した。

 

 アスナ「私もやるわ!みんなとなら絶対なんとかなるよ!」

 

 キリト「久しぶりに"攻略の鬼”のアスナが見られるかもな」

 

 アスナ「もうっ!!その話は今はいいのっ!!」

 

 キリトの頬をつねるアスナを見て笑いが起きている様をジャンヌは呆れながらも、どこか安心する表情を浮かべた。

 

 ジャンヌ(「…彼らに頼んでよかった。彼らなら…きっとこの世界を守ってくれるハズ…」)

 

 ALOに降り立つ前に2つの仮想世界へ赴き、有志を募って侵略を防ごうとしていたジャンヌだったが、そこの世界のプレイヤーは誰も信じてはくれなかった。

 冗談だとあしらわれ、何事もなかったようにいつもの日常を送っていた。仕方ない…と、心の中で思い、2度に渡って単身で迎え撃ったが敵の力は巨大で為す術もなく敗走し、その世界を守れなかった。

 自分にもっと力があればと嘆いても、あの世界の侵略は止まらず、後悔する時間すらなかった。

 でも、彼らなら違う結末になるかもしれない。燃え盛る業火に沈む人達ももう見なくて済むのかもしれない。

 彼ら…タクヤなら、きっと救い出してくれるかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 "英雄”の象徴であるタクヤならきっと…。

 

 

 

 

 

 

 ユウキ「それで?これからどうするの?」

 

 ジャンヌ「!?…え、えぇ。まずは有志を募らねばなりません、貴方達だけで立ち向かうには戦力差が否めませんので」

 

 リズベット「募るって言ってもねー…。この話を信じてくれる人がどれだけいるか…」

 

 この話はもうALOのイベントの域を超え、仮想世界の存続がかかっているというスケールの大きな話になっている。タクヤ達はともかく、他のALOプレイヤーがどれだけ集まるかはいささか不安に感じる所があった。

 

 ジャンヌ「では、3日後に貴方達のホームへと向かいます。それまでに出来る限り人数を集めてください」

 

 キリト「そんなに待って時間はいいのか?」

 

 ジャンヌ「彼らは前の戦闘を終えて日が浅い。次の侵略まで些か猶予があります。ただ、待てるのは3日まで。それ以上は待てませんので気をつけてください。

 それと、タクヤさんにこれを渡しておきます」

 

 そう言って懐から取り出した水晶をタクヤに手渡した。いつ何時でもこの水晶を砕けばジャンヌが強制転移出来るものらしい。

 3日後に落ち合う約束をしてジャンヌは光の中へと消えていった。

 

 シリカ「…なんか、とんでもない事になりましたね」

 

 リーファ「そうだね…。でも、今は仲間を集めようよ!」

 

 リズベット「そうね。まずは知り合いからあたってみましょ」

 

 タクヤ達も仲間を揃えるべく風妖精族(シルフ)領のスイルベーンへと飛び立った。風妖精族(シルフ)の領主であるサクヤならタクヤ達の話に耳を傾けてくれると考え、領主館を目指した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2026年01月07日16時00分 ALO風妖精族(シルフ)領 スイルベーン

 

 領主館の前までやってきたタクヤ達は門番に声をかけサクヤに繋いでもらい、応接室へと案内された。しばらくすると、側近2人と共にサクヤがタクヤ達の前に現れた。

 

 リーファ「ごめんねサクヤ。仕事の方は大丈夫?」

 

 サクヤ「気にしないでくれ。しばらくイベントもないようなので暇を持て余していた所だ。

 それで、リーファだけでなくタクヤ君達も私に何か用かな?」

 

 サクヤの顔つきが一瞬で変わり、タクヤ達も少しばかり緊張してしまう。

 さすがは領主といった所で並大抵の事では顔色1つ変えない太刀住まいに賞賛しながらも先程の異界からの脅威について語った。

 

 サクヤ「…なるほど」

 

 リーファ「信じてくれる?」

 

 サクヤ「あまりに突拍子な話なもので些か混乱しているが、君達がイタズラにこんな話をしないというのも分かっている。ALOが消滅する…か。もしそれが本当なら由々しき事態だ」

 

 ユウキ「じゃあ…!」

 

 サクヤ「だが、その話を信じたとして私達風妖精族(シルフ)からは私と私が説得出来た者しか手助け出来そうにない。話を聞く限り、キャラロスも有り得るようだし、それを差し引いても協力してくれる者がいるかどうか…」

 

 キリト「あぁ。今した話はサクヤさんが説得する人達に全部話していい。それでも協力してくれるって人だけを頭数にいれる」

 

 サクヤ「分かった。最善は尽くしてみるよ」

 

 サクヤとの会合が終わり、領主館を後にしたタクヤ達は時間も迫っている為、ここで解散する事にした。

 明日から説得に応じてくれそうなプレイヤーが1人でも多くでもいればありがたいのだが、キャラクターロストしてしまうリスクを考えては状況は厳しいだろう。

 

 タクヤ「じゃあ、明日も頑張ろうぜ」

 

 キリト「あぁ。現実世界(リアル)に戻ってクラインとエギルにもこの事を話してみるよ」

 

 そう言い残してキリトはログアウトしていった。仲間達も次第にログアウトしていき、アスナとユウキだけが残った。

 

 ユウキ「アスナも明日は頑張ろうね?」

 

 アスナ「う、うん…」

 

 ユウキ「どうしたのアスナ?今日ずっと調子悪そうだったけど…。もし、何か困ってるなら相談に乗るよ?」

 

 心配そうにこちらを見上げているユウキにアスナは何でもないよと言った。これは自分の問題だから、これは自分1人で解決しなければと言い聞かせアスナも逃げるようにログアウトしようとした。

 だが、それを察知したのかログアウトボタンにタップする瞬間にユウキはアスナの手を取った。

 

 ユウキ「ボク達友達なんだよ?困ってるならボクが一緒に悩んであげる。その様子だとキリトにも話してないんでしょ?女の子同士なら良いアドバイス出来るかもしれないし…ねっ?」

 

 アスナ「ユウキ…」

 

 ユウキはおそらくこちらが話すまで手を離してはくれないだろう。そう直感したアスナは近くのベンチに腰をかけてユウキに事情を話した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ユウキ「そっか。お母さんと…」

 

 アスナ「母さんが私を心配してくれてるの分かる…けど、私の人生は母さんのキャリアの為の道具みたいに聞こえてきて…。心にもない事まで言っちゃって…」

 

 京子の言いたい事も伝えようとしたい事も理解している。アスナのこれからの将来の為にいろいろ考えてくれているのは嬉しい。

 けれど、自分はそれに全て従っていったら何か大事なものを切り捨ててしまいそうで恐れていた。

 キリトや仲間達と出会って自分は変われた。これからも仲間達と触れ合っていく中で将来に向けて何か掴める気がする。それを母から奪われそうで、自分が自分じゃいれなくなる恐怖にアスナはどうすればいいのか迷っていた。

 

 アスナ「ごめんねユウキ。やっぱり心配かけちゃったね」

 

 ユウキ「ううん。確かに心配だけどボクは嬉しいよ?アスナの事が知れて、悩みを打ち明けてくれて」

 

 アスナ「ユウキ…」

 

 ユウキ「アスナのお母さんも頑固になってるんじゃないかな?今まで立派に育ててきた娘が初めて自分の意見を言ってきて。昔のアスナって真っ直ぐすぎた所があったしアルゴに聞いた事あるだけど、SAOで最初らへんにあった脱出出来るってデマも信じたって…」

 

 アスナ「な、なんでそれを…!!?」

 

 SAOがまだデスゲームになった時の事、アスナは街中で噂されている脱出口を信じ、攻略不可能と言うべきダンジョンに単身で乗り込んだ。

 ただ、現実世界に帰りたかった。こんなふざけた場所で時間を割いている場合ではなかった。

 そんな気持ちがアスナを逸らせ、想像通りモンスターに囲まれて絶体絶命の危機にまで陥ってしまった。

 アスナは知らないだろうが、それを救い出したのがアルゴの要請を受けてやってきたキリトだ。アスナが"攻略の鬼”と呼ばれていた頃に密かにアルゴから話されていたのをユウキは思い出す。

 

 ユウキ「まぁ、仕方ないって言えば仕方ないよね。ボクだって本当はすぐにでも現実世界に帰りたかった。もう一生ここで生きていくんじゃないかって不安だった。

 でも、そんな不安をタクヤが祓ってくれた。どうしようもない時、タクヤが側にいてくれたからボクは今も生きてるんだ。アスナだってそうだったでしょ?」

 

 アスナ「え?」

 

 ユウキ「キリトもアスナがピンチの時は誰よりも早く駆けつけてくれたでしょ?アスナがALOに囚われていた時だってずっとアスナの事を心配して気持ちを抑えてたよ。ボクも人の事は言えないけど…アスナもそうじゃないの?キリトがピンチって聞いたら是が非でも駆けつけるよね?

 離れたくないから…側にいたいから…ボクもそうだから分かるんだ。

 キリトは他の誰でもないアスナを選んだんだよ。強い弱いとか関係なく、一緒にいつまでもいたいってアスナに感じたんじゃないかな?」

 

 アスナ「…」

 

 ユウキ「"閃光”のアスナも結城明日奈も同じ1人の人間なんだ。だからさ、キリトの事もっと信じてみようよ。それにお母さんだって本気でぶつかればきっと伝わるよ!!アスナの今の気持ちを全部真っ直ぐに伝えてみればいいんじゃないかな?

 アスナが言ったんだよ?()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 その台詞を聞いてアスナは目を見開いた。以前、ユウキが挫折した時に自分が放った言葉。

 あの世界で培われたのは力だけじゃない…この言葉は今のアスナにも言えるものだ。力だけじゃどうしようもなかったあの世界でアスナが見つけた1つの真意。

 それに気づけたから今があるのだし、出会えた大切な者達もいる。

 そう信じ続けてきたからこれまで進んでこられた事実を当のアスナ本人が忘れていた。

 

 アスナ「…そっか…そうだよね…」

 

 ふと、心にかかったモヤが晴れていくのを感じた。これからだって変わらない。自分はあの世界で見つけた真意を信じていけばいい。ぶつかって見なきゃ伝わらない事もある。

 軽くなった足取りでベンチから腰を上げたアスナはユウキに向き直り、微笑みながら言った。

 

 アスナ「ありがとうユウキ。私、思い出したよ。大事なもの…大切にしなきゃいけないものを…」

 

 ユウキ「…うん!やっぱりアスナは笑顔が1番綺麗だよ!」

 

 

 もう迷わない。この気持ちを抱いてこれからの未来を前を向いて歩いていこう。




いかがだったでしょうか?
次回からもお楽しみに!
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