どうして目の前のこいつがこんなに好きなんだろう。
このさらさらの茶色い髪を指にからめて慌くのが好きだ。
緑がかった茶色い瞳が潤んで自分を見つめてくれるのが好きだ。
案外紳士で、妙に責任感が強くて、傷ついたオレを放って置けなくて、ツンツンしたかと思うとデレデ レに甘えてくるこいつが好きだ。
「高野さん。俺には面倒なものばかりついて来るし、それがあなたを傷つけそうで怖いです。でもお願いですから一生俺と一緒にいてください。」
プロポーズの言葉に続いて来たのはこいつのバックグランドについてだった。
それな、オレもちよっと考えた。お前って社長の息子で御曹司だし、きっとあの会社を継ぐんだよな。
ひょっとしてお前と結婚するヤツって、七光りって言われて傷ついたお前みたいに玉の輿って影口言われちゃったりするのかとか。
まあオレはお前と一緒に居られるならそんなこと別にどうってことないけどさ。
「あなたのキャリアを駄目にしそうで諦めようと何度思ったことか分かりません。」
それも知ってる。
編集長なのに部下に手を出したって言われてさ、左遷とかされるかもってお前気にしていることを知っている。
とは言ってもさ、オレが能無しだったらそれもありかもしれないけど、オレより能の無い奴に何かを言われてもどうってこと無いと思う。
「でも、あなたのことを諦めることは出来ません。」
それ、おんなじだな。
オレも何度も何度もお前を諦めようと思ったけど無理だった。
お前が二人の過去に対して持っている負い目が最後は二人を破滅に導くかもしれないと怯えていたのはお前だけじやない。
「だからお願いです。両親に会ってくれませんか?」
そんなにこの世の終わりみたいな顔すんなよ。
でもさ・・・、会うのはいいんだけどオレたちのことを賛成してくれるとは思えないけどな・・・。
オレはいいんだ。なにを言われても今更傷つかない。
でもお前が肉親から浴びせられる言葉がひどいものだったらオレが辛い・・・。
「ただ、二人の事は両親とは関係ないです。反対なんてさせませんし、もしそんなことを両親が言うなら俺は高野さんを選びます。ついて来てくれますか?」
そりゃまたすげー決断だわ・・・。
ひょっとして本気で駆け落ち?
一度やって見たいと思わなくも無かったけどそうか・・・、そこまで言われたならオレも腹括るしかねーってことだな。
「両親に会う日の服はプレゼントするので俺にコーディネートさせてください。」
はあ!?この期に及んでありのままのオレじゃだめってことか?
ありのままのオレは蟻のままってことか?
「高野さん、黒ばっかり着るけど以前一度着た若草色のニットが似合ってたし、あんな柔らかい色もいいなって。
一番の高野さんを両親に見せびらかしたいです。」
なんでお前こんなところで頬染めてるんだ。
見せびらかせたいってなんだよ・・・。
恥ずかしいヤツ・・・。
ホント調子狂う・・・。
「分かった。スカートも履いてやる。」
飛びっきりのお嬢様スタイルのヤツで決めてやる。
「ほ、本当ですか?初めて見ます。高野さんのスカート姿。」
初めてじやねーだろ。
高校の時見ただろ!
全国的に女子の制服はスカートなんだよ。
たとえ下に厚いタイツ穿いてたってな。
「ちやんとオレに似合うヤツ選べよ。」
「もちろんです。高野さん美人でスタイルもいいからなに着ても似合います。ビビアンとか行きましょう。あ、それよりクロエとか、コムサとかギャルソン?ああ、ローラアシュレイも捨てがたい。シャネルとかヨージはちょっと決まりすぎで嫌味かな・・・。」
なんでお前そんなことに詳しいんだ?わかんねー・・・。
でも惚れた弱みだ、仕方ない。
高校の制服以来の女装に挑戦だぜ。
女の子なんだからちゃんと膝閉じてくださいとかいつもうるさいお前だからスカートは封印していたけど、 今回ばかりは膝も閉じるし自分のことワタクシって言ってやる。
年上の女房は金のわらじを履いてって言うしオレたちうまくやれそうな気がする。
幸せにしろよ、絶対に。
以上高野女史の回でした。