ロクでなし魔術講師と謎の転入生   作:紅いきつね

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書いてしまった......

皆様、よければ応援よろしくお願いしますね


非常勤講師と転入生

金さえ積まれれば誰であろうと殺し、依頼を達成する。そんな暗殺業を営む家庭に少年は生まれた。

 

いや、生まれてしまったと言うべきか。

 

少年はまず身体を鍛える為に過酷なトレーニングをさせられた。

 

少年は血反吐を吐きながらも必死に耐えた。

 

その結果、親族から天才と期待される程の、トレーニングの効果を大幅に上回る身体能力を手に入れた。

 

しばらくして少年は剣術と魔術を時に知識として頭に、時に実践として体に叩き込まれた。

 

これも少年は凄まじい勢いで吸収していった。

 

親族はやはりこの子は天才だと更に期待を高まらせた。

 

そして少年はまだ幼いにも関わらず実際に仕事を任された。

 

少年は良くも悪くも才能に恵まれ、更に努力を怠らなかった。

 

しかし、やはり幼い子供に人を殺させるなど、そんなことは正しいはずもなかった。

 

 

 

 

悪行を働いた者が目標の依頼をこなした。時には魔術師さえも殺した。

 

そして少年は悪人を殺すことに躊躇いが無くなった。

 

 

 

悪人、そしてその者の家族などの関係者全員が目標の依頼をこなすようになった。

 

そして少年は例えその人自体が悪人ではなくとも関係者であるならば殺すことに躊躇いは無くなった。

 

 

 

悪人でなくとも、ただ金を積まれたからには殺すという掟に従い、ついに少年は平和に暮らす人々を手に掛けた。

 

そして少年は誰であろうと殺すことに躊躇いは無くなった。

 

一家の大黒柱であろう男を殺した。依頼だから。

 

子供を庇う母親であろう女を殺した。依頼だから。

 

泣き喚く子供を殺した。依頼だから。

 

 

いつしか少年の瞳からは光が消えていた。

 

口数が減っていった。

 

表情が消えていった。

 

それでも親族達は少年を鍛え、依頼をこなさせた。

 

果たして少年の変化に気づいた者は誰1人いなかったのだろうか。

 

いや、いたとしてもその才能を無駄に腐らせるまでには至らなかったのだろう。

 

 

その結果、少年は幼くして一族最強の実力者となった。

 

 

 

それからしばらく経ったある日

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少年は、一族の屍に囲まれ、返り血に染まり、虚ろな目で大雨の降る空を見上げていた。

 

 

*****

 

 

アルザーノ帝国魔術学院、沢山の魔術師を目指す者達が集う場所。そんな場所を目指し、俺は歩いていた。

 

なぜなら俺も今日からそこの学生として暮らすからだ。いわゆる転入初日の登校中である。

 

まぁもちろん知り合いはいないので1人での登校なわけだが。

 

時計を見る限り指定された時刻にはまだ早く、このまま学院に着いてしまうと時間を持て余す可能性がある。そう考えた俺は通りすがりに発見した公園で暇を潰すことにした。

 

 

俺は手頃なベンチに座り、ただ何をするわけでもなく、ある程度時間が経つまでなんとなく空を見上げていることにした。

 

それから少し経った時、俺は何者かが近づく気配を感じ取った。

少しだけ注意を気配を感じる方へ向け、待っていると、1人の青年が現れた。

 

その男はそこそこ良質な物と見えるホワイトシャツにスラックスを身にまとっていた。

 

着崩しているのが残念な雰囲気を感じさせているが。

 

「隣、失礼するぞ」

 

そう言ってその男は俺の隣に座った。

 

何故服が濡れているのだろうか。

 

水遊び?.....いや、そんな時期でもないはずだ。

 

暇を持て余していた俺は丁度いいと思い、話しかけてみることにした。

 

「失礼かもしれませんが、どうして貴方はそのようなずぶ濡れの状態に?」

 

「あぁ、これか?まぁ普通気になるよな......たまたま通りすがったアルザーノの女子生徒に魔術で噴水に叩き込まれた」

 

予想を超えた回答だった。

 

というかどうやったらそんな状況になるのだろうか。

 

「魔術って......たしか学院外での魔術の使用は罰則があると聞いていたのですが?」

 

「いやその通りだよ。最近の女の子っておっかねえわ」

 

たしかに突然魔術で噴水に叩き込んでくるような女の子とはお近づきにはなりたくないな。

 

 

近頃の女の子がどんなものなのかまるで知らないが。

 

 

「そういやその格好、お前も学院の生徒なのか?」

 

思い出したように彼は俺の制服を見てそう言った。

 

「えぇ、といっても転入生でして、今日が初めての登校なのですがどのぐらいで着くのか分からず、早めに家を出てみたもののどうにも早かったらしくここで時間を潰していたところです」

 

「ん?転入生?......」

 

俺が答えると彼は突然何かを考え始めたらしく、何事かぶつぶつ呟きだした。

 

「あぁ!そういや俺の担当のクラスに転入生が1人くるってセリカが言ってたけどそれお前か!」

 

「セリカ......という方がどなたかは存じませんが恐らくそれが私かと。ということは貴方は学院の教師の方ですか?」

 

セリカ......どこかで聞いたような聞いてないような名前だ。まぁ、思い出さないのなら恐らくはそこまで重要でもないのだろう。

 

「ま、そういうことになるな。非常勤だけど。ってか俺も今日から初出勤なんだけどな......そういや自己紹介まだだったな、俺はグレン=レーダス。よろしくな、転入生」

 

グレン......これもどこかで聞いた名前だ。しかもさっき聞いたセリカという名前よりも聞き覚えがある。

 

俺が聞いたことのある名前ということはどこぞの有名人もしくは......いや、これも今は考える必要はないだろう。

 

「自己紹介ありがとうございます、グレン先生。私はムラクモ=シラヌイと申します。未熟者ですがこれからよろしくお願いします」

 

俺は簡単な自己紹介をし、姿勢を正し頭を下げた。

 

「おいおいそんな固っ苦しいの勘弁してくれよ......もっと砕けてくれてもいいんだぜ?てかそうしてくれないと俺がむず痒いから頼む」

 

それを見た先生は頭掻きながらバツが悪そうにそう言った。

 

「初対面の年下にそんな態度取られてもいいんですかね......分かりました、グレン先生、これからよろしく」

 

「いいんだよ、尊敬されても困るし。まぁよろしくするのはいいけどここだけの話、俺、授業まともにやる気ねえからな?」

 

「......ん?先生、それはどういうことです?」

 

この先生、転入初日の生徒にとんでもないこカミングアウトしやがった。

 

もし俺が真面目にこれから学院で魔術を学んでいこうとしている生徒だったらどうするのだろうか。

 

「いやぁ、まぁ詳しくは言えねえし言いたくねえんだけどさ、俺、魔術嫌いなのよ。......あ、ちょっと待て、お前まさか魔術大好き人間だったりする!?いや、普通に考えたら学院にくるってことは十中八九そうだよな!?すまん、今のは忘れろ!」

 

今更気づいたように焦り始める先生。魔術学院、こんなの雇って大丈夫なのだろうか。

 

俺は別に魔術の真理を〜だの魔術は神聖な〜だの言うタイプの人間ではないがそれでも流石に心配になってくる。

 

 

でも......なかなか面白い先生だ。

 

 

それに......

 

 

 

 

 

隠しちゃいるが、この男、こちら側(・・・・)の人間だろう。分かる奴には分かるはずだ。

 

身を隠す事が目的だったが案外面白い生活を過ごせるかもしれない。

 

 

 

「先生、落ち着いてください。俺は別に魔術は神聖な〜とか語るような人種じゃありませんから」

 

「マジか!?いやぁ助かる!ぶっちゃけこの仕事も知り合いに押し付けられただけでさぁ......どうなるかと思ったがお前みたいな奴がいると知って少しは気が楽になったぜ!頼りにしてるからな!」

 

そう言って先生は手を差し出してきた。握手だろうか。

 

教師が転入初日の生徒に頼りにしてると言って握手を求めてくるとはこれ如何に。

 

「同じ魔術嫌いとして仲良くしようぜ?もうタメでいいよタメで、それになんかの縁だ、学院まで一緒に行かねえか?」

 

「魔術嫌いとは一言も言ってないんですけどね......そうだな、じゃ、行こうか先生」

 

まぁ好きとも言ってないが。

 

「おう!」

 

そう言って2人はのんびりと学院に向かって歩き出した。

 

 

しばらく歩いていた時だった。沈黙していた先生が突然言葉を発した。

 

「なぁムラクモ、お前......武術かなんかやってねえか?」

 

「武術か......一応護身術程度のものを軽く身につけてはいるが」

 

「護身術、ねぇ?軽く身につけた程度の割には歩き方に無駄がねえし雰囲気も隙がねえぞ?」

 

「おいおい......先生、ただの転入生に何を期待してるんだ......それに、例えそれが合ってたとしてそんなことが分かる先生は一体何者なんだ?」

 

「ただの非常勤講師だよ。......てかちょっと待て、時間やばいぞムラクモ、のんびりし過ぎたみたいだわ」

 

はぐらかされたがどうやらこの先生がこちら側(・・・・)だということは間違いなさそうだ。

 

 

 

「おいおい先生、初日からギリギリとか勘弁してくれよ?」

 

俺がそう言うと先生は爽やかな笑顔をこちらに見せ、こう言った。

 

 

「ムラクモ、ギリギリじゃない。完全にアウトだ」




最初だしちょっと短め
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